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Posted by ブクログ
表題作「闇が落ちる前に、もう一度」を含めた5編で構成された短編集。
ジャンルはSF・ホラー。
擬似的な体を与えられたことで心・意識を獲得し、アイドルとして活動しているAIの少女と、AIには心などないと考えるタレントの男性、二人の問答で展開される1編「時分割の地獄」が特にお気に入り。
自分の認識している世界の姿は本当に正しいのかを考えさせられる異質な世界のあり方を描いた表題作や、誰もが一度は妄想するような世界の終わりに翻弄される少年少女を描いた「審判の日」など粒ぞろいで楽しめた。
ホラー色の強い残り2編も独特の雰囲気のある話だった。
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表紙を見て、「あれ? 『アイの物語』が文庫になったの?」と思った。
しかし、よく見るとタイトルが違う。
内容は、『アイの物語』につながるし、『神は沈黙せず』にもつながる短編集である。
今の自分は、本当にいるのだろうか。この世界は誰かに作られたものなのではないのか。そんな考えを持つとき、創造神を信仰に持たない自分にとって、「創造主」は、ひどく不気味だ。
小説を読むのは良い。
しかし、自分が登場人物で、楽しみも、痛みも、喜びも、悲しみも、愛しさも、切なさも、怖さも、怒りも、何もかもが作られたものだとしたら、それは、恐怖だ。
はじめから決まっている、アカシックレコードの上にいるのも許せるものではない。
しかし、そうした怖さを、小説の中に入れ込んで、それを覗き見る、ということが、わたしたちにはできる。
作った箱庭に人を住まわせ、上から見下ろす、悪趣味な観察。
自分は、その、覗かれている人なのではないか、という、ホラーよりもホラーな恐怖がテーマになった(と勝手に思っている)物語の集まりになっている。
『闇が落ちる前に、もう一度』宇宙が終わるまでに、したいことは何?
『屋上にいるもの』意思は、誰のもの?
『時分割の地獄』わたしは、生きているの?
『夜の顔』在るべきもの、あるはずのないもの、その差は
『審判の日』審判は、誰?
これを読んでみて、気に入ったら、ぜひ、『神は沈黙せず』を。
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代表作『アイの物語』で心温まる短編を惜しげもなく披露してくれた作者だけに同傾向の話が多いのかなと思って読んでみたが、引き出しの多さに驚かされた。「屋上にいるもの」は完全にホラー小説の類だけど、怖さにステータス全振りしていない所が良い意味で作者の味だと思う。
「夜の顔」や「審判の日」みたいに、普段通り過ごしていたはずの日常が異世界へと姿を変えてしまう描写は、ディックの作品を連想させる。
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ホラーがかったSFの思考実験が中心の話5つ。もしも世界が8日前に始まったものだったら、AIが殺人のために、別の人格を持った人物を想像したとしたら…等。
思考実験的なAIの話は、わかるんだけど他の作品よりも怖くもないし意外性も少なく、何でこれだけSFマガジンに収録で、あとのは単行本のための書き下ろしなのかなあ?という印象。
小松左京「こちらニッポン」みたいな「審判の日」と「屋上にいるもの」は非常にシンプルなホラーでありSFなので、万人向けに読みやすいのだが、他の作品はちょっとメタな世界観を理解できない人には辛いかもしれない。
買う場合は、電子書籍もおすすめします。ちょうどいいボリュームなので。
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「神は沈黙せず」と同じように「アイの物語」の為に読んだ本。短編集です。
やっぱり山本氏好きだ!
これでやっと「アイの物語」を読む準備ができた。
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「闇が落ちる前に」☆4
ストーリー:
宇宙物理学を学ぶ学生を主人公に、「極大エントロピー宇宙モデル」の証明実験が導き出した恐るべき世界の真実が明らかに・・・
感想:
読んでいて「小林泰三」を髣髴とさせる専門用語、そして未知なる分野へのロマンを感じずにはいられない内容でした。科学でありながらホラーのような寒気を含んだストーリーが非常に良かったです。
「屋上にいるもの」☆3.5
ストーリー:
マンションの最上階に住む男性が、ある雨の夜に、屋上からまるで太鼓をたたくような音を聞く。いったい屋上には何がいるというのか・・・
感想:
冒頭から露骨なぐらいホラーの雰囲気を醸し出しているのに中々進まない話にやきもきしましたが、これは「闇が落ちる前にもう一度」とはホラー×不思議な感じが黒「乙一」のような感触でした。
「時分割の地獄」☆3
ストーリー:
バーチャル・アイドルのゆうなと、AIに心があることを認めない男との対話を通して、心とは何かを問う。
感想:
男とゆうなの答弁が非常にうまく、哲学的な面白さが目立つ作品でした。最後の「良心」は非常にうまく出来ているなぁと感心してしまいました。
「夜の顔」☆2
ストーリー:
会社員の青年が婚約者の実家に挨拶に行った帰り道、夜の街で、路地の奥から彼を見つめている中年男の顔を目撃する。青年は、世界そのものへの懐疑心、作り物ではないかといった恐怖を募らせていき・・・
感想:
なんというか・・・中途半端に哲学的要素を加えたホラー?といった感じで、うまく組み合わせたというよりは中途半端でどっちつかずな感じ。文章、表現、語り口調といった面はさすが「山本弘」と言えるからこそちょっと勿体無さを感じる作品でした。
「審判の日」☆3.5
ストーリー:
ある日突然、ほんの一握りの人間を残し、この世界から全ての生物が消えてしまった。その世界に直面した姫田亜矢子と蓮見悟は困惑しつつも生き抜く術を考えていくが・・・
感想:
実際良くあるストーリーかもしれない、でも結末へのもってきかたでいくらでも色を変えられるストーリーなのかもしれない。こういったストーリーの作品は、特に「自分だったらどうするだろう」とか感情移入してしまい、色々考えさせられた作品でした。
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良い短編集だ!
とまでは言えないが、それなりに人に勧められる本だと思う。
表題にもなってる『闇が落ちる前に、もう一度』と、『審判の日』が好き。
闇が~は、五秒前世界創造説に少し捻りを加えたもので、審判~は、人類がほとんど一瞬のうちに消えてしまった世界の話し。
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先日読んだ「アイの物語」がなかなか良かったので、山本弘さんをもう一冊。これも、なかなかです。
ジャンルとしてはSFに入れたけど、「闇が落ちる前に、もう一度」「時分割の地獄」「審判の日」がSF、「屋上にいるもの」「夜の顔」はホラーでしょう。つまり、SFとホラーが交互に出てくる感じです。
SFは思わぬ視点で引き込まれます。
研究したらこの宇宙がわずか17日前に出来たという証拠しか出てこなかったり、「アイの物語」同様のAIドル(AI=人工知能のアイドル)の殺人劇やら、突然わずかな人類を除いて全生物が消えた世界など、突拍子のない世界(褒め言葉ですよ)です。
ホラーにはさほど興味は無いのですが、それなりに楽しめました。
Posted by ブクログ
当たり前に思っているこの世界が偽りの世界だったら?現実が突如崩壊したら?といったモチーフで編まれた短編集。SFありホラーありで飽きさせない。粒揃いだが、大傑作「アイの物語」に繋がるテーマを持つ「時分割の地獄」が特に良かった。
Posted by ブクログ
「闇が落ちる前に、もう一度」
著者 山本弘
出版 角川文庫
p17より引用
“ある考え方が間違っていることをきちんと示しておくのは、
科学の進歩にとって有益です。”
と学会会長である著者の本領が発揮された、
SF短編集。
全5話収録。
上記の引用は、
表題作に出てくる大学教授の一言。
一歩一歩確実に進むことの大切さと、
間違いを知ることの大切さを教えてくれていると思います。
同じ著者の大作「神は沈黙せず」を読んだ後なので、
この位の長さの短編集は、
一話ごとの長さが非常に読み心地がよかったです。
私の一押しは「夜の顔」。
かなり怖いですので、
ホラーが苦手な方は覚悟を決めて。
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SF感の強いホラー短編集のような感じ。私はホラーが苦手なので多少の不快感を覚える話もあったが、タイトルにもなっている一話目と最終話である「審判の日」の二つを読むだけでも価値があるように感じる。
この手の・・ディラックやフェッセンデンっぽいとでもいうのかな?実のところ宇宙は誰のものなんだっていう話が個人的に好きなこともあり、ジャンル的には苦手な部類にも関わらず高評価になっている。この系統の話が好きな人には楽しめる一冊じゃないだろうか。
これを読んでワクワクしたのなら同著者の「神は沈黙せず」を読まれることを是非オススメしたい。
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短編集。
全部いい!
現実を理解する人間の知覚は制限されている。ならばどんな世界が真実だろうと不思議じゃない。
そもそも現実ってなんだ?
宇宙ってなんだよ?ビックバンで生まれたって言うけど、じゃあなんでビックバンが起きたわけ?
上のような存在があってもおかしくないじゃないか。もしかしたらこの世界は模型かもしれない!
一度は考えたことがあるような、実感とはほど遠い「現実」世界を扱うSF作品。
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何冊か読んだ山本弘氏の作品の中では、よりダークで恐怖感をテーマに描かれている世界、という印象を受けた短編集。
人の心とは何か、という深いテーマを、AIによってアプローチする氏のいくつかの作品でも見られた手法。
これは興味深い上に、まだまだ探っていくと面白い予感がするのだけれど、惜しむらくは山本氏が病魔により今後新作を期待できない状況にあることだ。
SF界にとって大いなる損失であり、いちファンにとってもとてもとても残念。
回復を祈る。
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SF短編集。しかしもともとホラー文庫で出すために書かれたそうで、そういう風味で読みやすい。しかし科学で原理や未来について考える必要がある問題は、哲学に近くなるね。高度な人工知能は心を持つと言えるのか、とか。
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日本を代表するSF作家の初期短編集。
山本弘氏のすごいところは、SF世界のバックボーンとなる科学知識が非常に卓越しているところである。
とくに人工知能に関する理論的記述は凄まじい。
そんな山本氏であるが、本書は各章によって若干完成度にばらつきがあり、「審判の日」「闇が落ちる前に、もう一度」は短いながら熟成された世界観があるが、「屋上にいるもの」や「夜の顔」など若干オカルト方面に傾きすぎた話もある。
山本SFの入門書としてはおすすめ。
Posted by ブクログ
最近凝っている山本作品をまとめて借りた。短編集である。
文庫版で「闇・・・」を、ハードカバー版で「審判・・・」を借りたのだが、中身は同じだった。タイトルを変えて発刊したんだなぁ。もう少し考えて借りればよかったかな。
作品は、ラスト1行が素晴らしい冴えを魅せる「闇が落ちる前に、もう一度」、オカルト風でイマイチの「屋上にいるもの」、AI・仮想現実のひとつの解釈となる「時分割の地獄」、ディックあたりが書きそうな(というか実際に書いている)「夜の顔」、発想がユニークだが昇華しきれていないと思う「審判の日」。
まぁまぁかな。
Posted by ブクログ
ホラーよりのSF短篇集。テーマ的には『神は沈黙せず』や『アイの物語』に繋がるものが多いのかな。「屋上にいるもの」の正体も山本弘らしかったね。お気に入りは表題作と「時分割の地獄」。
Posted by ブクログ
>>この宇宙はどうして生まれたのか?宇宙の果てはどうなっているのか?“宇宙の本当の姿”を追い求め、ある独創的な理論に到達した宇宙物理学者。しかしこの理論に従うと、宇宙の寿命はわずか17日間ほどでしかなくなる。バカバカしいまでの理論の誤りを証明するために、彼は大がかりな実験を始めたのだが…。表題作のほか4編を収録。
単なるジャケ買い。
だが、表題作にまず恍惚。
ホラーもあるがSFの香り。どちらに転んでも微妙な按配だが、古き良きSFホラーを味わいたい方にはおすすめ。
表紙とは違って、煌びやかさのないチープ・ノスタルジックな作品集。
Posted by ブクログ
短編集なので1冊の本としては★★★でもこの2作は★★★★級
『闇が落ちる前に、もう一度』 一ページも読みおわらないうちに、ぴんときた。これって『クラインの壺(岡嶋二人)』みたいな話なんじゃないの?ビンゴ。まさに『クライン〜』と同じ怖さを描いたお話。自分が立っていると信じていた地面をふと見ると、そこには何もなくなっている。…いや、なくなっているのではなくて、はじめから何もなかったのでは。
『夜の顔』 「神は沈黙せず」につながる作品なのではないかな。あまりにも荒唐無稽のようでいて、でも誰かに話してしまうと本当に私の身にも起こりそうな気がしてしまう。山本弘の大胆な発想に脱帽。