伊藤典夫のレビュー一覧

  • スキャナーに生きがいはない

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    SF。連作短編集。はじめての作家。
    20世紀から130世紀にわたる未来史。時間的なスケール、世界観的なスケール、どちらも驚異的。
    内容は、背表紙にあるように、「奇妙で美しく、グロテスクで可憐」。一言では表現出来ない、あらゆる魅力がある。
    好きな作品は「マークエルフ」「昼下がりの女王」「ガスダブルの惑星より」「スズダル中佐の犯罪と栄光」。

    以下、印象的な作品のメモ。
    「第81Q戦争」
    見世物としての戦争。森博嗣『スカイ・クロラ』に酷似。
    「マーク・エルフ」
    主人公カーロッタの生い立ちが素敵。マンショニャッガーがよいキャラ。
    「昼下がりの女王」
    前話から続く物語。後半はジュヌヴィーブ夫人代筆らし

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    2016年12月30日
  • 瞬きよりも速く 〔新装版〕

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    まず装丁がかっこよく、タイトルもかっこいい。そしてあとがきまでもかっこ良かったです!個人的には「ザハロフ~」「芝生で泣いている女」「交歓」が良かったです。

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    2016年11月09日
  • 猫のゆりかご

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    仕事できつかった時、この本が救ってくれた。
    今悩んでいることは生きる上で本当に重要なのか?悩んでいることは周り、自分にとって何か本質的に影響を与えているのか?
    そうマインドセットしたら、なんてことないくだらないことだった。
    大人になったら、本質的なことが見えにくくなる。それがただのあやとり(にせもの)だと気付けないのだ。
    子供は猫のゆりかご(あやとり)をいつまでも見つめて、猫なんていないし、ゆりかごもないことに気づく。
    あなたが悩んでいることに、"猫はいますか?ゆりかご、ありますか?"
    そうヴォネガットに語りかけられた気がした。

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    2016年05月23日
  • たんぽぽ娘

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    知らない内に文庫で発売されていて迷わず購入!
    たんぽぽ娘は何度読んでも、みずみずしい作品だと思います。
    その他の作品も、不思議な気持ちや切ない気持ち、色々な感情が湧き上がってくる素敵な作品ばかりです。

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    2015年02月18日
  • 2010年宇宙の旅〔新版〕

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    友人から「蛇足」と聞いていたが
    後日談?くらいにのんびりと読めば良いと思う。
    取り敢えず彼と和解出来たのは本当に良かったと思う。
    良かった、本当に良かった。

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    2013年04月24日
  • 2010年宇宙の旅〔新版〕

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    2001年より面白かった.

    ちょうど「幼年期の終わり」をもっと洗練させた感じの内容.
    途中のHALとのからみもどうなるのか気になって一気に読んでしまった.

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    2011年07月15日
  • 2010年宇宙の旅〔新版〕

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    ネタバレ

    2001年宇宙の旅の続編…と言わなくてもタイトルでわかりますね(^^;)。
    あれで終わりかと思いきや、さらにその後日談が前作の登場人物と新登場人物で繰り広げられます。

    前作は映画と小説で設定が違うよ、という前提で話が作られていたのに対し、今作は前作の設定は設定だけど映画の設定を踏まえて今回は書くよ、というスタンスなので初めは若干混乱します。
    あんまり詳しく書くとアレなのですが、2001年で映画→小説と進めると「あ、設定が違うんだ、小説はこうなんだね」と納得して終わるわけです。
    で、その影響下にあって続きのつもりで読み始めると2010年は「映画はこうだったからやっぱり映画の設定で続けるよ」と宣

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    2011年05月28日
  • 3001年終局への旅

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    まさか主人公が「彼」だとは想像もしていなかった。
    3001年終局への旅は、この壮大なオデッセイシリーズの一応の終わりとして納得のいくものであった。

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    2018年11月10日
  • スローターハウス5

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    ネタバレ

    なかなか興味深い小説だった。

    時間旅行は本当に忙しそうで、読んでいるこちらも場面が次々変わるので目まぐるしさはあったが、それがまた不思議な体験で面白かった。

    戦争の描写などもリアルでよく、独特のテンポが作品のコミカルさを失わずに読者を楽しませ、そこに作者が体感したであろう光景が落とし込まれているため、感情が揺れ動き飽きる事がなかった。

    宇宙人に囚われるシーンもSFの王道で面白く、その他のシーンもとても良かった。ふとした時に読むのがおすすめです。

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    2025年12月21日
  • 華氏451度〔新訳版〕

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    本が禁止された世界。
    本がぞんざいに扱われるのは苦しかったですが、知識欲に抗えなくなり、自分の現状を顧みることができた主人公を見習いたい。

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    2025年12月15日
  • 華氏451度〔新訳版〕

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    消火、ではなく、昇火士。
    あらゆる本を焼き尽くす公務員。人々が余計なこと、例えば生きる意味とか、政治とか、戦争とか。を、考えないように。
    そんな未来の反知性主義の極みのディストピアで、「事実の意味」を「考える」ことを知ってしまう主人公、昇火士モンターグ。
    空っぽのつるつるとした表面的な楽しさでは、満たされない部分がある。何も聞こえない、何も話さない、何も映し出されない夜の森の闇のなかでだけ、満たされていくものが確かにある。

    「書物は命の顔の毛穴をさらけだす。」

    物語の冒頭に登場してすぐに消えてしまう少女は言う。「まじめな話のときでも笑うし、返事は間をおかずに出てくるし、わたしがきいたこと

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    2025年12月09日
  • スキャナーに生きがいはない

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    人類補完機構と名付けられた物語群。断片的な編を通して語られる荒唐無稽、奇想天外な宇宙を舞台にした一大スペクタクル。圧倒的な世界像。

    以下、抜粋

    アンダーヒルは、言葉が内から流れ出すのを感じた。言葉はなんと不自由なものだろう。それに比べて思考のスピードと楽しさときたら一くっきりと澄んで、手っ取り早い心と心のふれあい!

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    2025年12月08日
  • 2001年宇宙の旅〔決定版〕

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    本作は、もともと映画として構想された物語の小説版ということもあり、映像的なスケールの大きさと思想的な深さが同居している作品だと感じました。中でも強く印象に残ったのは、やはり HAL9000 の存在です。

    日本では AI に「人間を超えた万能の存在」というイメージが根強い一方で、海外では「高性能ではあるが融通の効かない機械」として描かれることも多いように思います。HAL9000 はその両者を象徴するような存在で、人間以上の知能を備えていながら、プログラムされた使命ゆえに暴走してしまう。その姿は、AI の可能性と限界の両方を静かに問いかけてきます。

    壮大な宇宙の描写と、人類の進化をめぐる哲学的

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    2025年12月04日
  • 生存の図式

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    ネタバレ

     気密性が高くタンクが空で食料等物資を米国から英国に輸送していたタンカーがUボートの攻撃により海底に沈む。その中で生存乗組員は、し尿ー豆(二酸化炭素ー酸素)の生態系を作り出し、子供、孫を生み、文化・技術を口承により伝えていく。一方破滅に瀕し、宇宙に乗り出したイルカ型宇宙人は冷凍睡眠の不具合により世代型移民船にならざるを得なくなる。
     お決まりの通り宇宙人は地球を目指していたことがわかり両種族は戦争となるが、世代を超えた両者が種族の橋渡しをする。
     「宇宙の孤児」、「ホーンブロワー」、「レンズマン」が引かれ、孫子には登場人物から名前がとられる。

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    2025年12月02日
  • 華氏451度〔新訳版〕

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    最初はなかなかシーンの映像が浮かばず、話に入り込めなかった。ただ、どの時点からかはわからないが、どんどん画が浮かぶようになって、どんどん読み進められた。
    読書を楽しめる幸せをより一層噛み締めた。

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    2025年11月10日
  • 華氏451度〔新訳版〕

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    1953に書かれたディストピア小説

    本を焼く仕事のファイアマン
    本を読むのは法律違反

    物事がどう起こるかではなく、なぜ起こるかを知りたがっていた。

    事実については話さない。事実の意味こそ話す。私はここに座っている。だから自分が生きているとわかるのだ。

    必要なものは、ひとつめは情報の本質。そしてふたつめは余暇、考える時間。3つめは、最初の二つの相互作用から学んだことにもとづいて行動を起こすための正当な理由。

    テレビは「現実」だ。即時性があり、広がりもある。こう考えろと指示してがなりたてる。あまりに早く結論に持ち込んでしまうので、反論する暇もない。
    テレビは人を望み通りの形に育てあげて

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    2025年11月10日
  • スローターハウス5

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    私にとって、文学的美しい作品を読みたいなら、
    カートヴォネガットになることを確信させた作品になったと思う。

    もちろん、ヴォネガットの作品は読んだ後に、自身に何が残ったのかを答えることは難しいが、作品を通して非日常的のようで日常の中にある世界を読者に見させてくれていると思う。

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    2025年10月22日
  • 華氏451度〔新訳版〕

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    ネタバレ

    「書物を燃やして、いろんな考えを制限する」という仕事に誇りを持っていた主人公の隣に引っ越してきた少女が、主人公の考えを変えさせていくというのが大まかな流れで、この少女の出現がこの小説のキーだと思っています。
     消火士ではなく、昇火士という名前でちょっと笑っちゃいました。思いっきりのディストピアの世界観の中でのストーリーで面白く読ませていただきました。1953年にこの小説が発表されて70年以上経ちますけど、昔からよくこういう考えを思いつくよなってつくづく感じます。

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    2025年10月21日
  • 華氏451度〔新訳版〕

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    ★4.5。
    書かれた時代はマッカーシズムの時代。
    ということは2025年の今、ある意味同じような状況になっていることからして、傑作が生まれ、人々の意識の偏りが何らかの形で是正されていくような。
    それくらいのインパクトのあるお話、そして焚書とかタイパとか、いつの時代・場所でもあまり人間の発想と問題意識はあんまり変わらないんだなぁとある意味感慨深くもあり。

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    2025年10月13日
  • 華氏451度〔新訳版〕

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    ネタバレ

    今から70年ほど前に書かれた未来の形なので、レトロな未来感はあるけど、それはおいといて面白い。中盤まではファイヤマンとしての生活、社会構造や価値観の掘り下げなので、現代の物語構成に慣れてる人からするとテンポが遅すぎるし、序盤に出てきた少女の後半の影響を期待してしまうかも、そして後半に出てきた老人達や本の記録についてのところは、斬新だし面白いけど、その設定も説明的で少々活かしきれてない気もする(あの結末としては重要ではある)。エンタメ性は低く全体的には退屈なのだけど、そんなこと別にいいや。というくらい哲学、思想、設定がとても面白い。あと、好き期待は分かれるあろうけど地の文の力は圧倒的にすごい。本

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    2025年10月09日