伊藤典夫のレビュー一覧
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ネタバレ吉野朔実が子どものときに読みたかった本として挙げていたため、興味を持って読むことにした。どうしてこれを子どものときに読みたいと思ったのだろう、と疑問に思ったが、確かに小さな頃に見ていれば、価値観というか見方がひっくり返ったかもしれない(?)。
最初はただの普通の話だと思っていたが、空想の島「サン・ロレンゾ」が出てくるにつれ、段々と不思議な世界に突入していく。一般人がアイス・ナインという一歩間違えば大量殺戮兵器にもなり得るようなものを持っていて、この道具を個人の好きに使ってしまって、きな臭くなっていく。ハニカーの子どもたちに対しては、良心もある程度の分別もあるけれど、私欲も勿論持っている人間 -
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・R・F・ヤング「たんぽぽ娘」(河出文庫)の 「編者あとがき」にかうある。「ヤングの短編集を編むとき、ぼくが特化したのは、ロマンスものーーというか、彼のボーイ・ミーツ・ガールものである。ほか の作家ならいざ知らず、彼の作品中ずばぬけた出来ばえを見せているのはボーイ・ミーツ・ガールものとそのさまざまなヴァリエーションだった」(384 頁)。確かに、これはこの通りの短篇集である。これ以上でもなくこれ以下でもない、ボーイ・ミーツ・ガールもの集成である。巻頭の「特別急行がおくれた日」から最後の「ジャンヌの弓」までの全13編、外れはない。どれもおもしろい。
・巻頭の「特別急行がおくれた日」は蒸気機関車運 -
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かわいいタイトルだけど、内容は相当に人を喰っている(笑)。
ジャンルは終末世界SFになるのだろうか。架空のボノコン教という宗教が出てくるのだが、その『ボノコンの書』の冒頭はこんなだそうだ。
「わたしがこれから語ろうとするさまざまな真実の事柄は、みんな真っ赤な嘘である」
すべての物事は大まじめに進んで行くが、それらは同時にとても滑稽で、それでいて哀れである。
目がまわる、目がまわる。うんざりするほどの混沌と単純さが入り混じった世界で、しかしヴォネガットさんは現実をありのままに語る。この作家さんは、そんな現実をそのままジョークにしてしまうのだ。いやはや。
現実に対してユーモアで反骨しているのだ -
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ネタバレこの本は「2001年宇宙の旅」から始まったシリーズの完結編です。
2001年宇宙に放り出された飛行士が1000年後、
海王星付近で偶然回収され、蘇生しました。
浦島太郎となった飛行士フランク・プールが見た3001年の世界は、
宇宙と繋がる軌道エレベーターや、脳に直接情報をダウンロードできるキャップなど、
まさに「未来はこうだ!」みたいな科学雑誌の世界でした。
だけどタイムマシンや光速宇宙船はありません。
ここら辺の、SFでありながらリアリティを感じさせる絶妙なサジ加減に
アーサー・クラークの勉強熱心さと作家の腕を感じます。
SFの大家が描く未来予想図を楽しんでいるうちに、
物語は人類の危 -
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ネタバレもはや説明の要すらない大傑作「2001年宇宙の旅」の9年後を舞台とした続編。設定上は、小説版ではなく映画版の続編となっており、遺棄されたディスカバリー号が漂流しているのは木星衛星群の宙域です(この辺りのいきさつは、クラーク自身による「作者のノート」に詳しいです)。
宇宙飛行士4人が死亡、1人が行方不明となったディスカバリー号事件から9年後、木星衛星群探検のきっかけを作ったヘイウッド・フロイド博士は、ディスカバリー号回収のためにHAL9000の生みの親・チャンドラ博士と共にロシアの宇宙船に乗って木星へと旅立つ。9年前と何ら変わらぬ政治的な駆け引きに翻弄されつつも、ボーマン船長が残した謎のメッセ -
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SFもあり、ちょっといい話風な短編もあり、の短編集。
序文などにもある通り、テレビが普及する前の時代、雑誌の読み物が一般的な娯楽として広く楽しまれていた頃に雑誌に掲載されていたもの。
古きよきアメリカ、的な香りもし、同時に、皮肉のきいた社会批判も織り込まれていて、まだ作家として駆け出しの頃のものでありながら、独特の個性が感じられます。
いちばん印象に残ったのは、「パッケージ The Package」かな。
ちょっと先の未来(書かれた当時はだいぶ先の未来、だったはず)の話、という設定。
苦労して事業を成功させ、念願の新型住居を購入したアールとモードのフェントン夫妻。
世界一周旅行を -
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2000年に上製本として発売されていた、ヴォネガットの短編集がこのほどようやく文庫化された。
書かれたのは1950〜60年代で、半世紀も前のもの。
ヴォネガットが短編を生活の糧として量産していた時期があり、
その大半はスリック雑誌に掲載された。
かつて、短編集「モンキー・ハウスへようこそ」が編まれたが、
そこから漏れてしまった23篇がここに収録され、短編の大方が網羅されたことになる。めでたい。
ここに収録されているのは短編で、しかもアーリー・ヴォネガットと言うべき作品群。
彼一流の文明批判や、どうしようもない人への「諦めと愛情いっぱいのまなざし」はすでに健在、
さすがというべき。ただ、長編に -
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本を読むのなら、とりわけ「小説」を読むのなら、あなたは自分自身がひっくり返っても書けないと思える本を読むべきだ。結末の予想や著者の思想・背景を探るような余裕さえ無い程、自分を振り回してくれるような本を読むべきだ。
そういった本を見つけるために本屋に行くべきだ。その際は出版社別ではなく、著者別にあらゆる出版社の文庫が雑然と並ぶ本屋を選ぶのが好ましい。あ行からわ行までくまなく検分するうちに、きっと心に引っかかったまま忘れかけていた作家の名前が見つかるからそれを手に取ってみるのが良い。そんな名前が見つからないなら、題名の良い本を引っ張り出して背表紙のあらすじを読むと良い。そんな題名が見つからないなら -
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