Posted by ブクログ
2010年09月13日
SFもあり、ちょっといい話風な短編もあり、の短編集。
序文などにもある通り、テレビが普及する前の時代、雑誌の読み物が一般的な娯楽として広く楽しまれていた頃に雑誌に掲載されていたもの。
古きよきアメリカ、的な香りもし、同時に、皮肉のきいた社会批判も織り込まれていて、まだ作家として駆け出しの頃のもの...続きを読むでありながら、独特の個性が感じられます。
いちばん印象に残ったのは、「パッケージ The Package」かな。
ちょっと先の未来(書かれた当時はだいぶ先の未来、だったはず)の話、という設定。
苦労して事業を成功させ、念願の新型住居を購入したアールとモードのフェントン夫妻。
世界一周旅行を終えて新居に帰ってきた二人のもとに、チャーリーという男が訪ねてくる。
彼はアールの学生時代の級友で、裕福な家庭に育ち医者になった男。
苦学生だったアールは裕福だったチャーリーに対し、コンプレックスのようなものを抱いていた。
今や成功者となったアールのもとにやってきたチャーリーは、擦り切れた服、ほこりまみれの靴、といういでたち。
きっと金を借りに来たのでは、と思ったフェントン夫妻は――という話。
短めの短編が23編も入っていて、あまり読書慣れしていない人でも読みやすいし、内容も楽しめると思います。
娯楽小説的に書かれているけれど、垣間見える姿勢、のようなものが個人的にはとても好き。
2007年の4月に亡くなってしまったんですね、この人。
新作を楽しみに待つ、ということがないのは残念です。
そういう楽しみ方をしたかった作家です。