伊藤典夫のレビュー一覧
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オデッセイ4部作の最終作。
2001年宇宙の旅から1000年後の第4ミレニアムが始まった時代が舞台となる。2061年の最後の章が3001年となっているので、2061年の続編かとも思われるが、作者のクラーク氏としては独立した作品だということだ。
登場人物や、内容の描写に関しては、オデッセイ前3作を引き継いではいるが、4部作品はそれぞれ独立したものとしている。今回は最終作なので、全てが明らかになると思われたが、読後の感想としてはなんとなくはぐらかされた感じもある。しかし、今回再び2001年で活躍した人物が帰って来たのは驚きだった。
1000年後の世界というのはどんなだろうか。自分にはちょっと想 -
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さー、久々にハードSFでも読んでみるか!と手に取ってみたら全然違った、という本。
むかしSFはよく読んだけど、この著者は初めて読む。
なぜハードSFだと思ったかというと、別件で調べものをしていて「アイス・ナイン」という物理学方面の単語に出合ったからだ。
9番目の氷? なんか素敵じゃん。と。
ところが、開いてみたらこれはそういった科学的興味の本ではなく、著者自身が冒頭で示唆している通り虚妄の大伽藍で、平たく言えば偉大なるホラ話だったのである。
さて、作中でいうアイス・ナインは、常温・常圧で水を凍りつかせる「種」なのである。
たとえばコップの水にそれを落としたら、その水はたちまち凍って -
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これも、結構前に購入したのだが、なぜかそのまま積ん読になっていた。2001年宇宙の旅を読んでから10年以上経っており、内容も忘れていたので、最近また2001年を再読してから読んでみた。
続編だと聞いていたのだが、(新販)ということもあってか、色々と手直しをしたと書かれていた。旧版の方は読んだことはないのだが、やはりその時代を反映した形で書き直されるのだろう。2001年では米国とソ連という大国が出ているが、今回はすでにソ連はなくなっている。この小説での国際情勢の変化はよくわからないが、今回の内容は、米国とロシアの協力がテーマに書かれていたように思う。
主人公が、ボーマンからフロイド博士に変わっ -
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SF成分の摂取。飯田橋の書店のフェアで見つけたのだっけな。
初めての著者だったけど表題「たんぽぽ娘」「11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス」「ジャンヌの弓」あたりが好きだったな。ロマンスの方がうまくまとまってる気がするんだよなぁ。いやオチがつきやすいからすっと入ってくるという話かもしれない。
そうか。全編訳者の厳選した傑作だから、どれもしっかりまとまってるんだ。一定の完成度が担保ぽされてる。実際どれも読んで面白かったし、ギミックや世界観に唸った。ただやはり短編だから、「こじんまり」綺麗にまとまってる感もあって。物足りない感もあったのかな。その中でスパイス的にハッピーなロマンス要素がある -
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SF。中短編集。
人類補完機構シリーズが5作品。うち4作品はキャッシャー・オニール・シリーズ。
キャッシャー・オニールの物語は、冒険小説の趣向が強い。
情景描写の美しさと、キャラクターの魅力が素晴らしい。
やはり「嵐の惑星」がベストか。ト・ルースが魅力的すぎる。
「三人、約束の星へ」は極めて特殊なキャラ設定・場面設定が印象的。好きだなぁ。
シリーズものの作品以外は、あまり好きではなかった。「親友たち」が良かったくらい。それでも、人類補完機構シリーズの作品を読めるだけで大きな価値がある一冊。
それにしても、なぜこんなに美しいのか…。これで全作品が翻訳され、コードウェイナー・スミスの新たな作品を読 -
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2年ぶりのティプトリー作品は、装丁がこれまた印象的な「あまたの星、宝冠のごとく」。この作品、初訳にしてなんと2016年刊行。早川書房の創立70周年を記念する文庫企画「ハヤカワ文庫補完計画」の一環として発表されたようですが、没後30年を経過してなお読書を魅了し続けるティプトリーになんだか感動してしまったり。
本書は中期から晩年にかけての10篇を収録。2年前に読んだ「故郷から10000光年」に比べると、やはりどれも読みやすい作品ばかり。あのついていくのが大変な作風にちょっぴりの懐かしさを覚えつつも、とりわけ以下4作品が印象に残りました。
「ヤンキー・ドゥードゥル」
薬漬けの帰還兵を描いた作品で -
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壮大すぎてなにがなんだかわからないといったところはあるが、やはり今回もSFらしいSFで、満ち足りた読後感。
ハルとの最後のやりとりは緊張感がある、そして小さなどんでん返しもチャンドラ博士のユーモアが垣間見られて愛おしい。偏屈な人がここぞという時に見せる笑顔って恐ろしく魅力的だよなーと。
そして、ハルとボーマンの和解もよかった。ボーマンの独白部分の描写や2人?の会話はできる短く抑制が効いているが、ボーマンがハルに対し懐かしさや親愛の情を感じていることが、よくわかった。意識生命体となった彼は、言葉以外の手段でそういったものを伝えて来た。著者の手腕だなー。
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ワン・アンド・オンリーな孤高のSF作家、ハーラン・エリスンの日本独自編集短編集。
日本人SF者として何が嬉しいかって、収録作全てが伊藤典夫氏の翻訳だということ。エリスンの作品は、全編これ暴力と狂気の世界です。猥雑で非情で容赦のないこの世界観を、悪趣味一歩手前のギリギリのラインで美しい言葉遣いでまとめる手練の技は、正に伊藤典夫氏の職人芸。
10編の短編が収められていますが、「これSFじゃないでしょ」な作品も結構あります。でも、何だろうなぁ、SFというジャンル分けするのがもったいないような独特の存在感。
ブラッドベリの妖艶さでもなく、ディレイニーのスタイリッシュさでもなく、正に「エリスン節」とし -