伊藤典夫のレビュー一覧
-
-
-
Posted by ブクログ
ドレスデン無差別爆撃の話。
ビリーが第二次大戦における米軍爆撃機隊の活躍する深夜映画を逆向きに観て、負傷者と死者を乗せた穴だらけの爆撃機が逆向きに飛び立ってゆき、爆弾や銃弾を吸い込み、新品に戻り、軍需工場で解体され、鉱物になり、それをだれにも見つからない地中深く埋める、という一連の映画逆再生のシーンが切ない。
p. 33大量殺戮を語る理性的な言葉など何ひとつないからなのだ。
p. 44死んだものは、この特定の瞬間には好ましからぬ状態にあるが、ほかの多くの瞬間には、良好な状態にあるのだ。いまでは、私自身、誰かが死んだと言う話を聞くと、ただ肩をすくめ、トラルファマドール星人が死人に -
Posted by ブクログ
2001年宇宙の旅の続編(ただし小説版ではなく映画版の設定を引き継いでいる。)
ソ連国籍のレオーノフ号に、アメリカ組のフロイドら3人がソ連宇宙飛行士たちと同乗し、2001年に乗員を失ったアメリカ船ディスカバリー号を回収することを目的に木星へ向かう。
フロイドらはディスカバリー号の回収を行いつつ、木星軌道に浮かぶ、前作から謎に包まれていた物体モノリスに接近し、その調査に挑む中、モノリスが驚くべき行動にでる。
文系人間の私にはちんぷんかんぷんの内容が多く、かつ人名が紛らわしいの何ので追いつくのに必死でした。ですが理屈はわからなくても情景が目に浮かぶ描写で楽しみ、モノリスの行動に度肝を脱ぎ、主 -
Posted by ブクログ
「猫のゆりかご」ってなんだろう。
マザー・グースの詩に
「風が吹くと、ゆりかご揺れる、ゆりかご揺れて赤ちゃん落ちる、落ちると...」(思い出したまま)
という恐いのがある。
読み始めてすぐに謎はとける、がその後の展開に怖ろしい予感。
世界が終末をむかえるのか。
短い文章の章立て。勿論シニカル。さびが効いている。
たたみかけて大団円に。まるでSFXの画面を観ているよう。
「専制」「大統領」「とりまき」「兵士」「科学者」「金持」「多くの貧困者」「カルト宗教」「カリスマ教主」「アメリカ」「ジャーナリズム」
と、キーワードを上げるだけで現代と酷似している。1960年代に書かれたSFだのに。
-
Posted by ブクログ
普通、物語のはじまりが思い出からだったり、思い出がはさまれたりすると情緒がただようのである。が、この小説は「けいれん的時間旅行者」という思い出の進行、なんとも読者は不思議な気持ちにさせられる。
主人公ビリー・ピルグリムは現在、過去、未来を行ったり来たりしている「けいれん的時間旅行者」。そうなったのは戦争に召集され、襲撃を受け敗退、逃げ出した森の中で死ぬ思いをした時。
そこから過去に行くのだが、その過去が現在や未来へ続き、また現在へ戻るという複雑な経過。夢かうつつかまぼろしかということになるのだが…。
過去現在未来は一瞬、一生は一瞬。つまり、中国のことわざ「一炊の夢」、だから一瞬一瞬を大切 -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かったけど、謎が多いまま。
2001年宇宙の旅は、原作と映画が後の方でずれたため、映画の内容に合わせて少し書き換えられている。
土星だったのが木星に。などなど。
9年前に土星(設定が今回木星へ変更)の調査に行った宇宙飛行士たちの中でボーマンだけが、星がいっぱいという言葉の後いなくなった。
今回は宇宙船ディスカバリーを探しにいくことと、ボーマンはいったいどうなったかの調査のため旅立つ。
ハルを復活させたけど、覚えてなかった。
今回のハルはちゃんと仕事をしていた。
フロイド博士だけが、ボーマンの意識と接触し、早くここから去った方がいいと忠告される。
なんとか、みんなを説得させたが、帰 -
-
Posted by ブクログ
1945年2月。捕虜としてドレスデンにいたカート・ヴォネガットは、連合国軍によるドレスデン爆撃を目の当たりにした。長年その体験を小説にしようと考えてきた彼は、ビリー・ピルグリムという男を創造する。ビリーは同じくドレスデン爆撃を生き残ったが、帰国後にトラルファマドール星人に捕まって以来〈けいれん的時間旅行者〉となって、過去・未来の区別なくランダムに時空を飛び回ることになった。PTSDに悩まされる帰還兵の心理をSFに落とし込んだ反戦小説。
あからさまに兵士のトラウマからくるフラッシュバックを題材にした作品なので、「SF…?」と疑問符を浮かべながら読んでしまったけど、本文中に「二人とも人生の意味 -
Posted by ブクログ
SFマガジン700収録の一遍がいいな、と思ったので。
まずは短編集から。
数々の賞を取られた作家さんなのに、ちゃんと読むのは初。
SFマガジン700収録の『ホール・マン』はこちらにも収録。
結果、この一冊の中で一番好きなのは『ホール・マン』だった。
静かで、クールで、ちゃんとSF。
ファンタジーじゃなく。
というのが素敵。
全体として3種類くらいにタイプ分けできるかなーと思う。
まずは、ああ、これがSFってものだな、というタイプ。
異星人とか宇宙とか。
軽く読めるしこれを(私が好きな)ハードSFと呼んでいいものかは悩むけど、ちゃんとしている。
ちゃんとしているというのは、ファンタジーじゃ