伊藤典夫のレビュー一覧
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中々、クセのある小説である。
冷戦期の核戦争をメタファーとした物語であるはずだから、コミカルに語られているのであれば嫌悪感しかないのではと思いながら読み始める。だが、いきなりそのクセに絡めとられてしまう。
語り手は、原爆を開発した科学者についての本『世界が終末をむかえた日』を書こうと考えた。世界が終末をむかえた日というのは、広島に原子爆弾が落とされた日のこと。その日、世界はどのようであったのか。
調査の中で、科学者が「氷よりも高温でも溶けない新物質(アイスナイン)」を開発していたことを知る。地球上のすべての水を凍らせかねない、究極の兵器。語り手はその調査の過程で、カリブ海の小国にたどり着 -
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風景描写に関して、わかりづらさがあります。
モンターグの心風景なのか、実際の風景なのか曖昧になる部分があります。言い回しなんかは海外小説独特なものがあるので、はっきりいうと読みづらいです。エンタメ小説というよりは、もっと文学的。
「情報」がテーマです。
ベイティーとモンターグの掛け合い部分が1番好きです。
本は何も言ってないぞ!
この一言が痺れますね。数々の意味を持ったベイティーだからこそ言える名台詞です。
ジョージオーウェルの1984年を予言の書と言われるのと同様に、この本も予言の書です。
圧縮された情報、おしゃべりな壁。
思い当たる節にギクリとしました。 -
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本作品を知ったきっかけはビブリア古書堂事件手帖。
同名タイトルの栞子さんの本棚で『たんぽぽ娘』一度読んでいるがロバート・F・ヤングの他の作品も読んでみたいと思い手に取った。
『たんぽぽ娘』が面白かったので他の作品もきっと素晴らしいものが多いだろうと期待を胸に宝箱を開けるような気持ちで本を開いたのだが思っていたのと少し違っていた。
というのも『たんぽぽ娘』の持つ物語の雰囲気と他の作品がちょっと違う感じだからかな。
『たんぽぽ娘』は甘くて切なく余韻が残る読後感があり、情景描写やあの有名な「おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた」という詩のような世界観が他の作品からは感じられなかった。 -
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ネタバレ「キャット・クレイドル」の名は、宇宙船の名として知った。『宇宙英雄物語』の最終話にぽっと出てきたキャラの愛機だ。ぽっと出のキャラだが紅龍を逮捕するなどの活躍をしており、もっと活躍する予定のキャラだったらしいことがおまけページに書かれている。
別の機会に同名の小説作品が存在することを知った。
本を手に取るまで『タイタンの妖女』の著者の作品であることを知らなかった。知ってしまえば期待は爆上がり。クールに虚無を積み重ねていく語り口調はパラニュークや『パルプ・フィクション』を思わせるもので、発表順からすれば影響を与えたかもしれない側となる。
短いエピソードの連なりで物語は構成されている。外堀が少し -
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『So it goes.(そういうものだ)』の連発に嫌気が差した。せめて『Let it be.(あるがままに、そのままに)』にしてくれ!(笑)
爆撃自体による被害は広島・長崎の原爆や東京大空襲を上回ると言われるドレスデン爆撃を中心にした物語。事実をそのまま小説にしたのでは余りにも悲惨な話になってしまうので、今までの作者の作品群を絡めた、ちょっとコミカルなSF仕立ての物語になっている。ただ、どうなのか(!?) 舞台が目まぐるしく変わるので、自分には読み辛い小説だった。
巻末の解説にもあるが、放射能による後遺症は被爆者のみならず、その子孫にも及ぶ事もある。被害の大小を比べるものではないが「 -
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ネタバレ映画は何度か途中で挫折したせいで、一応最後まで目を通したはずだが内容はほとんど覚えていない、くらいのインプットで今回読んでみた。
この小説と映画は同時進行で制作、今のメディアミックスの形で作られていたということを、前書きで初めて知って驚いた。1960年代といえば米ソの宇宙開発競争真っ只中。そんな中、製作されたこの作品は、すごい熱量で迎えられたのだろう。
本の半分くらいまではなかなか話が進まないが、第四部でボーマン船長が出てきてからストーリーが急速に展開していく。個人的に一番印象に残ったのは人工知能HALの殺害シーン。人工知能を『殺害』と表現するのはなんだか可笑しな気がするが、まるで人間を解体