伊藤典夫のレビュー一覧
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本を読むのなら、とりわけ「小説」を読むのなら、あなたは自分自身がひっくり返っても書けないと思える本を読むべきだ。結末の予想や著者の思想・背景を探るような余裕さえ無い程、自分を振り回してくれるような本を読むべきだ。
そういった本を見つけるために本屋に行くべきだ。その際は出版社別ではなく、著者別にあらゆる出版社の文庫が雑然と並ぶ本屋を選ぶのが好ましい。あ行からわ行までくまなく検分するうちに、きっと心に引っかかったまま忘れかけていた作家の名前が見つかるからそれを手に取ってみるのが良い。そんな名前が見つからないなら、題名の良い本を引っ張り出して背表紙のあらすじを読むと良い。そんな題名が見つからないなら -
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「タイタンの妖女」のヴォネガットによる半自伝的SF小説。
読み始めは内容が全く分からずやめようと思ったが、飛ばし読みで最後までたどり着いた後、解説を読んでこの小説のイメージがつかめたので、もう一度読んでみて少し理解ができた。
筆者がそれまで書いてきた小説を踏まえて、実際に経験した第二次大戦の連合国によるドレスデン無差別爆撃という悲劇について描いたものらしい。
「そういうものだ」という言葉が繰り返されることで、醒めた目線を感じさせるが、それはきっと怒りが溢れ返るのと同時に、同じことを繰り返す人間に対する呆れが感じられた。
村上春樹はヴォネガットの影響を受けていると福田和也の本にあったが、 -
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ネタバレ物語は、人類誕生期に現れた黒い石板「モノリス」とヒトザルが邂逅する場面から始まる。モノリスとの接触を契機に、ヒトザルは骨を武器として扱いはじめ、知性の芽生えを得る。その進化の延長線上で、数百万年後の人類は再び月面でモノリスを発見する。そこから土星(映画では木星)方向へ発せられた信号を追うべく、人工知能HAL9000を搭載した宇宙船ディスカバリー号が旅立つ。しかしHALは機密保持と任務遂行の矛盾に耐えきれず暴走し、乗組員と対立する。生き残ったボーマンは土星の衛星で巨大モノリスと接触し、人類を超えた存在(スターチャイルド)へと変容していく。
本書は、映画と小説がほぼ同時進行で制作された珍しい作品で -
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数年前に宇宙モノを読んでみたくて手に取ったものの挫折した為、オーディブルにて再チャレンジ。
今読んでも当時期待していた宇宙モノとは大部分が違っていたなと感じた。なんせ未知と邂逅しても何ひとつ分からないまま終わってしまうのだ。そうだったのかというカタルシスもないまま、一体何だったのだろうと煙に巻かれた感じがある。
唯一面白かったのはHALとの攻防だった。やけに自身の正当性を説いて譲らないAIとのやりとりがつい最近自分の身の上にも起こっていたからだ。軽く腹を立ててやれやれとプロンプトを閉じ、何なら履歴から削除して終えたやり取り。自分はそれで済んだ。だがHALとのこのやり取りはどうだろう。地球から遠 -
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ネタバレ華氏451度は書物の紙が引火する温度(摂氏233度)。
あらすじ:
戦争間近のとある都市。昇火士のモンターグは、隣に越してきたクラリスという少女に会う。家では薬漬けの妻ミルドレッドがラウンジの壁とおしゃべりするばかりで、自分の生活に幸せを感じない。唯一心を許せたクラリスは姿を消してしまう。
モンターグは昇火現場から本を盗んで読むようになった。かつて読んでいた本の知識を持つ上司ベイティーが、離職しそうなモンターグを牽制し始める。逃げるモンターグはかつて公園で出会った大学教授フェーバーと再会し、昇火士間で揉め事を起こして梵書をやめさせる方法を算段する。
ユスリカのように小さいインカムでフ -
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実は私たちは、本を燃やされてもなんともない社会に生きているのではないか。
レイ・ブラッドベリのSF小説『華氏451度』を読んで、そんな感覚を抱きました。
描かれる世界は、書物を所有するだけで重罪となる社会。
本を焼くことを任務とする昇火士が、家々に押しかけては蔵書を焼き払う。
それによって社会の秩序は保たれる。
誰もが、「こんな世界、ディストピアだ」と感じると思います。
ただ、現代に生きる私たちも、そんなに変わらないのではないでしょうか。
本に触れなくても困らず、失ってもさして心が痛まない。
ブラッドベリは、「書物を軽視する社会」そのものをディストピアだと示したのだと思います。
救 -
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映画を見てから本書を読み始めたため、イメージがある状態で読み進めることができた。内容は一部異なるが、映画より小説版の方が好み。映画ではシュールに感じていた点が本著では丁寧な文体で描かれており、より深く物語に入り込むことができた。逆に小説だけだと世界観に戸惑ってしまったかも。小説だけで理解が難しかった方は映画見るのもおすすめ。
様々な名著からの引用が巧みに用いられており、巻末の引用まとめの数を見て驚き。またあとがき記載されていたが新訳にあたり、消火士→昇火士とした点が見事な訳で素晴らしい。
今はTVはもちろん、スマホの利用が当たり前になった時代で、改めて本のあり方を感じさせてくれる一冊だった -