伊藤典夫のレビュー一覧

  • スローターハウス5

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    人生すべての出来事がパッケージされ、並列で同時に存在するとしたら、そこに何か意味を見いだせるのか。意味を見いだすことに意味があるのか。残るのは圧倒的な諦観、あるいは禅でいう「空」。ユーモアだとすれば苦みしかないブラックユーモア。

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    2025年08月23日
  • スローターハウス5

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    著者自身が戦時中に体験した「ドレスデン無差別爆撃」を基に書かれた、半自伝的長編小説。
    SF小説であるが、昨今の小説でよくある近未来的な機械や怪獣が出てくるわけではなく、主人公の設定にSF要素が盛り込まれている。

    作中に引用されている「ニーバーの祈り」からこの小説を知った。
    久しぶりに読み返したくなり、再読。

    異星人に誘拐されてから、主人公のビリーは自分の意思とは無関係に時間を行き来する「けいれん的時間旅行者」となった。
    これによって、ビリーは地球人には考えつかない、いくつかの学びを得る。
    例えば、
    ・今死んでいる者は過去の瞬間では生きており、その瞬間は常に存在し続ける
    ・未来の瞬間も過去と

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    2025年07月24日
  • 2001年宇宙の旅〔決定版〕

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    ネタバレ

     アーサー・C・クラーク氏の『2001年宇宙の旅』は、1968年にスタンリー・キューブリック監督による映画とほぼ同時に世に出された、極めて特異な成り立ちをもつSF作品である。その背景には、冷戦下の宇宙開発競争があり、アポロ計画が頂点に向かって進んでいた当時の高揚と不安が色濃く反映されている。人類が月を目指し、地球の外に「次なるフロンティア」を求め始めていた時代に、この作品は誕生した。科学技術の進歩への期待と、その一方で人間の倫理や意識はそれに追いついているのかという懸念――その二重性が本作の根幹をなしているように思われる。
     物語の出発点となるのは、太古の地球に現れた黒いモノリスである。これは

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    2025年07月23日
  • 華氏451度〔新訳版〕

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    ネタバレ

    本が見つかると燃やされるディストピアの話

    巻貝ってワイヤレスイヤホンのこと…
    リビングの家族たちって4面ではないにしてもプロジェクターのこと?
    なんだか現実と似通ってきていて怖くなった。

    P91 ベイティーがしゃべりまくっているところをもう一度読み直したい。
    ダイジェストとかショート動画とか面白くてつい見てしまうけど、確かに深く考えないから記憶に残らない。
    好きな本が映画化されても気に入らないのは個人的に大事だと思うところが省略されてしまうからかもしれない。
    こんな講義をされて昇火士に疑問を抱いている人が納得できるだろうか。全く逆でベイティはモンターグを煽っているように感じた。ベイティこそ

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    2025年07月09日
  • 2001年宇宙の旅〔決定版〕

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    ネタバレ

    月の裏側で発見された四角い石板「モノリス」が発した信号をもとに土星の衛星を目指す人類と、地球外生命体の初接触を題材にしたお話。

    名前だけ知っていたHAL9000がどういうものなのか知りたくて聴いたが、状況が段々悪化していく辺りは想像より怖くて良かった。
    「デイジー・ベル」が歌われたのはこんなやべえシーンなのかよと思った。
    超性能の人工知能なのに、嘘を付こうとすると処理落ちでもするのかレスが遅くなるのがかわいい。

    後半へ近づくにつれて段々と概念的な内容が多くなっていったが、自分の認識を越える何かを見てしまった場合、こんな感じの感想になるんだろうかなどと思った。

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    2025年06月10日
  • 華氏451度〔新訳版〕

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    映像やドラマ、上っ面だけのエンタメに満たされ、みなが深く考えることのなくなってしまった世界。考えるもととなる書物――諸悪の根源――をこの世から消し去るのが「正義」とされる社会。そうした近未来社会を、ひとりのファイアマンの視点から描く。
    発表は1953年。アメリカでは、あのマッカーシズムの嵐が吹き荒れていた。テレビも一般家庭に普及しつつあった。さらには全面的な核戦争の脅威もあった。そうした時代状況を背景にした作品として読める。少なくとも、ブラッドベリの憂慮はそこにあった (必ずしも反知性主義や全体主義のことまでは考えていないように思う)。
    まず新版の伊藤典夫訳で読み通した。次に比較のため、旧版の

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    2025年05月04日
  • 2001年宇宙の旅〔決定版〕

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    ページ数は軽めで、内容もテンポ良くスイスイ読めた。タイトル通り2001年という時代設定ということもあり、登場する科学技術やガジェットは未来の空想物というよりほぼ現実の物に近い。ただしこれが書かれたのが1960年代ということを思い返すと、、驚くべきこと。今現在2025年の時点で、2060年頃の未来をこれほど正しく予想できるかと言われると、かなり難しいだろう。

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    2025年02月12日
  • 2001年宇宙の旅〔決定版〕

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    映画の印象と大分違った。映画は数年前、リバイバルで観たが、HALとの対決?が見所な印象が残ってるが、小説だとあっさりだった。

    また、宇宙を航行するシーンは非常に面白かった。宇宙の巨大さ、広大さが想像できる、読ませる文だ。

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    2024年11月19日
  • たんぽぽ娘

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    ネタバレ

    Robert F. Youngの200以上ある短編から某北鎌倉の古書店作品で登場した「たんぽぽ娘」をはじめとしたボーイ・ミーツ・ガールものを13編収録。SFという括りではあるけど、その範疇ではないと思われる作品もちらほら。やはり「たんぽぽ娘」が抜きんでていると思う。おじさんと少女のロマンスかと思ってからのラストは良い終わり方だった。とてもロマンチックな短編。他に「荒寥の地」「ジャンヌの弓」も良かった。あとがきで訳者が少女愛をこじらせ長編は壊れていると書いているが逆に壊れっぷりが気になってしまった。

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    2024年10月13日
  • スローターハウス5

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    ネタバレ

    カート・ヴォネガッド・ジュニア、
    そして訳者の伊藤典夫さん。
    どちらのファンになったのかわからないが、とにかく読みやすい!
    そして訳し方が好き。
    扉の紹介からまずやられた。
    著者が自分のこの本について紹介をする部分があるのだが、
    “この本は物語形式を模して綴られた小説である。”の後に“ピース。”とある。
    現在ご存命で81歳になられる伊藤さんの訳し方がとにかく読みやすくすいすい入ってくる。

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    2024年12月07日
  • バゴンボの嗅ぎタバコ入れ

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    ネタバレ


    ●死圏
    ○あらすじ
     成層圏の外側に霊界があって死者がたむろしているとしたら、の世界。
     アメリカが核をソ連に命中させるため、命中したことを確認するために成層圏の外側にUFOを飛ばしたことで、その霊界は発見される。
    ○キャラは何を欲しているか。
     UFOに載った人は、死んだ妻を欲している。打ち上げ計画の最高責任者は、核をソ連に打ち込むことを欲している。計画に参加した科学者は、計画に対して自分が完璧な技術力を発揮したという事実を欲していて(つまり計画の成功)、途中からは霊界の存在の解明を欲している。
    ○感想
     霊界の存在をどうやって博士たちに信じさせるか、のところが面白かった。傍にいる死者が誰

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    2024年04月20日
  • スローターハウス5

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    作者が戦時中に体験した事実に基づいた半自伝的SF小説。戦争をはじめとする、作者が直面した目を覆いたくなるほど辛い体験の数々。そこから目を逸らすのではなく、「そういうものだ」と受け止め、それでも楽しかった瞬間を思い出して(あるいは、その瞬間を訪れて)前を向いて歩んでいきたい。そんなメッセージを感じる、とても素晴らしい作品だと感じました。

    最近「歌われなかった海賊へ」を読んだばかりだったこともあり、精神的にキツいところもあったのですが、別の視点から戦争を知ることができたことは、貴重な読書体験がでした。

    SF作品として見ると、小松左京「果しなき流れの果に」や、今敏の映画「千年女優」に近いかもしれ

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    2023年12月30日
  • スローターハウス5

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    SFであると同時に戦争小説。死の場面に必ず出てくる「そんなものだ」のフレーズ。達観したというより死に鈍感になってしまう怖さ。主人公が戦前、戦中、戦後と絶えず時間を行き来することで戦争の愚かさが強調されたような気がする。

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    2023年11月18日
  • 2001年宇宙の旅〔決定版〕

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    ネタバレ

    昔、映画を観て内容よくわからなかった…となっていた作品。読んでみるとこれまで自分が触れてきた小説やゲームなどの作品のなかに2001年の影響があるなと感じられたのは面白かったし、内容について自分なりにこうなんかあぁなんかと考えることができたので良かった!

    個人的に印象深いのがTMA•1が〈月を見るもの〉に最初に与えた豊かな暮らしへの羨望という所だった。道具を使う知性とかがヒトザルを人へと押し進めたものっていうのはなんとなく想像しやすかったけど、意志や心といった精神性はこれまで見過ごしてきたなと感じた。道具を用いるのにもそこに至る動機がなければ何も得られない。明確な目的を持ってはじめて道具に用途

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    2023年11月12日
  • スローターハウス5

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    ネタバレ

     名作と言われる『タイタンの妖女』がさっぱり面白いと思えなくて、疎外感を味わっていたものだ。そこでもっと評価の高いものを読んで、それでダメなら本格的に合わないのだろうと随分前に買ったのをようやく読んだ。SF的な要素はあんまりおもしろいとは思えなかったのだけど、ドレスデン爆撃の現場で地獄を見た人がその様子を描写するためには、こねくり回して形にするしかなかったことがうかがえる。諦観や虚無感が満ち満ちている。相当なPTSDがあるのではないだろうか。こちらとしては平々凡々とした人生を送っており、圧倒的な現実に立ち会ったことなどない。

     人が死ぬたびに「そういうものだ」と差し込まれ、村上春樹の「やれや

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    2023年10月04日
  • 3001年終局への旅

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    ネタバレ

    SFを読みたい夏だった…(もう9月)
    読みたい本(アンドロイドは電気羊の夢を見るか?)がまだ手に入らないので、積んでいたこれを読むことにしたのだった。以前2061年まで読んだが、ちょっと疲れたのでこれだけ残しておいて、気が向いたら読むことにしていたのをやっと読めた。2061年はレビューを2016年に書いているね…長い間積んでしまったね…ようやく会えたねプール…

    一応、フランク・プールが主人公というのは読む前から知ってて、だから3001年ではボーマンとプールが再会するだろう、してくれという希望を持って読み始めて、そこだけを目指して読み進めた本であった。
    よかった。それだけで高評価。

    モノリス

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    2023年09月22日
  • 猫のゆりかご

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    8月上旬に読んだ。
    原爆の父であるとされるハニカー博士の投下当日の様子、こども達からの証言や関係者をめぐる旅から始まる前半
    “本書に真実はいっさいない”と目次の前に明言されていることを忘れて、この時期に「たまたまー”定められたとおり”とボコノンならいうだろう」手元にやってきたこの本を読み、
    原爆開発側の国の視点にも触れるつもりになりページをめくっていった。

    「もしあなたの人生が、それほど筋のとおった理由もないのに、どこかの誰かの人生とからみあってきたら、その人はおそらくあなたの〈カラース〉の一因だろう」などと、最もらしい教義を散りばめてボコノン教の世界、謎の島サン・ロレンゾに読みながら連れ去

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    2023年08月13日
  • 2001年宇宙の旅〔決定版〕

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    映画を観る前に原作読んでおこうと思い手に取った本、結果的には先に映画を観ればよかった。
    映画は退屈で、足りない部分・補完・状況含め小説の方が断然面白い。ただリアルタイムで観た世代は未来へのワクワク感や想像力、映像技術など心に残る一本になったのは理解できる。

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    2023年07月24日
  • スローターハウス5

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    SFをはじめて読んだ。めまぐるしく場面がかわるのに読みやすく、おもしろかった。生きるとか死ぬとかいうことをよく考えるので興味深かった。徹底的な「SO it goes.」にじわじわと打ちのめされる。本から離れ現実世界に戻ると不思議な余韻がつづく。こんな体験ははじめてです。

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    2023年07月08日
  • 2001年宇宙の旅〔決定版〕

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    1968年の作。HALとか結末とか、こういう話だとは知らなかった。
    月面基地で、低重力だと子供の成長が早いというのは、そうなの?と思った。

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    2023年02月26日