伊藤典夫のレビュー一覧
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映画『2001年宇宙の旅』は映画史上に燦然と輝く名作である。歴史上最高のSF映画として名を挙げる人は数知れず、その影響力は計り知れない。本作がその映画版と並行して執筆されていたこともまた、あまりに有名であるが、映画と異なる部分もかなり多い。
まだ人類が月面着陸を果たしていない時代に、宇宙ステーションや月面基地、また木星探査に向かう宇宙船等をこれだけ微細に設定し描写していることにただただ驚くばかりであるが、2024年現在これを読んでもほとんど違和感を感じないことも本当に驚嘆すべきことである。ディスカバリー号が土星を目指していく後半から結末に向けては何とも形容できない世界観が提示され、クラー -
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〈カワイイ〉をキーワードにラファティ作品20作を収録した短篇集。
前半は『町かどの穴』のほうが好みの作品が多いかなと思っていたのだが、後半は「とどろき平」以降ぜんぶ好きだと言っても過言じゃない。「うちの町内」、荒俣宏の傑作アンソロジー『魔法のお店』に収録されてたのか!あのなかでは薄味なので覚えていなかったけど、もう随分前にラファティに出会っていたんだなぁ。以下、気に入った作品の感想。
◆「ファニーフィンガーズ」
ヘパイストスをモチーフに、製鉄という魔術が使える長命者の父娘と、ただの人間な母、娘の恋人のトンチンカンだけど切ないすれ違いを描く。「町かどの穴」もそうだけど、お母さんキャラがある -
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60〜70年代に活躍した奇想の作家R・A・ラファティの作品から、〈アヤシイ〉をキーワードに19作を選出した短篇集。
好き!!!!!!!!今ずっとラファティを読んでいる。以下、気に入った作品の感想。
◆「どろぼう熊の惑星」
「町かどの穴」のスラップスティックっぷりも嫌いじゃないけど、最初に心をグッと掴まれたのはこれ。ナスカの地上絵のように地表に残された宇宙船の等身大構造図というビジュアルイメージと、その種明かしが楽しい。怖くないコズミック・ホラー。この人が書くものには〈宇宙的郷愁[プラネタリー・ノスタルジア]〉という言葉がぴったりだ。
◆「山上の蛙」
死をめぐる謎かけ言葉が賢者と愚者の秘 -
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ネタバレ【無常の月】
表題作にして白眉。
ある夜、月が異常な明るさで輝きだす。月は太陽光を反射している。つまり地球の反対側、昼の領域はもう……。というお話。
月という身近な存在に異常が起きるという掴みから、想像力を働かせて未曾有の事態にたどり着く衝撃。主人公は事態に勘づくが夜の街は平和そのもの、さて人類最後の夜をどう過ごすか、という哀愁。論理と情緒が両方詰まったハードな展開に心揺さぶられた。自分が読んだここ数年の短編では一番かも。
【帝国の遺物、中性子星、太陽系辺境空域】
同じ世界感を共有しており、ワープあり異種族ありで王道SF感がある。中性子星やブラックホールのアイデアは既視感がすごいけど、逆にこ -
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ネタバレ 購入済み
過去と今
カート・ヴォネガットは自身が体験したドレスデン爆撃をもとに、この小説を執筆したらしい。
自身で体験されたことあって、表現は、生々しく、そして、ユーモアに書かれている。
ただし、物語として見ると、少し味気ないのかなと思う。
同じ作者の作品のタイタンの妖女の方が、ストーリーとしては好きだ。
場面がコロコロ変わるのだけど、そこまで印象が残るような、物事は起きないから、多分味気ないと感じたのだと思う。
トラルファマドール星人は4次元の目を持っていて、時間を自由に行き来することができるという。
だから彼らは宇宙の終わりも知ってるし始まりも知っているそう。
主人公も、作品中人生の時間の枠で、様々な瞬間 -
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原題 2001 : A SPACE ODYSSEY
D'où venons-nous ?
モノリスに与えられた〝きっかけ〟により、
Que sommes-nous ?
道具を駆使することで世界のあり様を変え、
Où allons-nous ?
ヤペタスを通って似合の玩具を手に入れる。
HAL(アルファベット順で一文字ずらすとIBM)9000の反乱は、人が作り出した道具に人が除外されるという、進歩の昏迷に息苦しくなります。
相対性理論(光より速くは移動できない)が足枷となって知的な存在との邂逅はないでしょうし、宇宙で孤立していることに変わりはないですね。
それじゃつまんないな -
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「2001年宇宙の旅」といえば、スタンリー・キューブリックの映画で有名ですが、その原作者(というか小説版)がビッグ3、アーサー・C・クラークであることは、たぶん知ってる人は知っている。本書は、映画版「2001年宇宙の旅」を下地にした続編です。なぜ映画版と記載したかというと、原作と映画版では舞台が違うんですね。原作は目的地が土星であるのに対して、映画版は木星。ということで、本書では木星を舞台に話が展開していくことになります。
素晴らしい作品の続編、かつ、特にその続編が当初計画されていなかった場合においては、どうしても続編自体が蛇足と思われたり、一作目と比較されて下にみられる印象があります。とこ -
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ネタバレ映画2001年宇宙の旅を製作50周年記念上映で視聴しており、帰りに本書を書店で購入して帰って以来積んでいたがようやく消化。アーサー・C・クラークは地球幼年期の終わりを途中まで読んだ程度。
本書と映画の関係がいまいち掴みきれていなかったが、どうやら原作でもノベライズ化でもなく制作は同時進行だった模様。途中までは足並み揃えていたが……ということらしい。訳者あとがきに試写会に参加したレイ・ブラッドベリの逸話が載っており、ちょっとクスッとした。
映画が観念的すぎてよくわからなかった……と消化不良に陥る人は多いのではないかと思うが、本書はかなり丁寧にさまざまな事柄が説明されているため読後はスッキリする -
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ネタバレSFというより本気の戦争小説でした。
翻訳なので実際の文章はわからないけど、ただ少なくともこの文章は読みやすくて良かったです。さりげなく散りばめられた目を引く文章の数々。ヴォネガットの場合は、美しいとか迫力がある系よりも含蓄に富んだ文章で、言葉のゆるい空気以上に直接的に語りかけてくる。異星人、時間跳躍、第三者視点(人称)。体裁だけ見たら特殊でいざ思い起こすと複雑多岐に渡る内容なのに、それを簡潔に読ませようとする作者の力量が凄い。現実の物事を語る上で非現実の目が巧く作用しておりSFだから伝わるモノもあることを思い知らされた。加えて全体的にブラックユーモアのある文体が悲壮感を増します。
主人公の