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名作「町かどの穴」など不思議で奇妙な魅力溢れる19篇を収録。“SF界のホラふきおじさん”ラファティの粋を集めたベスト短篇集
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Posted by ブクログ
60〜70年代に活躍した奇想の作家R・A・ラファティの作品から、〈アヤシイ〉をキーワードに19作を選出した短篇集。 好き!!!!!!!!今ずっとラファティを読んでいる。以下、気に入った作品の感想。 ◆「どろぼう熊の惑星」 「町かどの穴」のスラップスティックっぷりも嫌いじゃないけど、最初に心をグ...続きを読むッと掴まれたのはこれ。ナスカの地上絵のように地表に残された宇宙船の等身大構造図というビジュアルイメージと、その種明かしが楽しい。怖くないコズミック・ホラー。この人が書くものには〈宇宙的郷愁[プラネタリー・ノスタルジア]〉という言葉がぴったりだ。 ◆「山上の蛙」 死をめぐる謎かけ言葉が賢者と愚者の秘密の鍵になっているというSFミステリー的な仕掛けがよくできてるんだけど、それより伝説の猛獣に挑んだクライマーと彼の死の謎を追う主人公、そして現地人の剛健なシェルパのマッチョな結びつきを描いたクライミング小説として面白かった。よそ者なのに終始自分のほうが山にも獣にも詳しいようなそぶりでシェルパを見下す主人公は、リッチな白人"探検家"のカリカチュアだろう。 ◆「秘密の鰐について」 アヴラム・デイヴィッドスンの「ナイルの水源」を連想させるアイデアだけど、流行りの源ではなく消滅させる力のほうにスポットが当たり、それが鼻の鳴らし方とかなのがアメリカ人っぽい! 彼らの仕草が流行ってしまったらどうなるんだろう、とか考えてるとオチが容赦なさすぎる。 ◆「世界の蝶番はうめく」 導入のウソ蘊蓄が好きだ〜〜〜! ドイツをひっくり返す蝶番は鉄製、カフカスのは青銅製、ピレネーのは水晶製で、本物は木製。恰好良いなぁ〜〜〜。本篇は藤子・F感のある寓話。暴力の描き方が人形劇のよう。 ◆「われらかくシャルルマーニュを悩ませり」 このなかで一番好き! 〈不純粋科学研究所〉シリーズは全部読みたい。アニメ的なビジュアルの変化を会話のやりとりで読者に汲み取らせちゃう上手さ。エピクトがすごい可愛くて、円城塔の『Self-Reference ENGINE』の巨大知性体にもえていた過去の記憶が蘇ってきた。いまラファティが生きてたら、実際のAIとのおしゃべりを落とし込んで面白い小説に仕立てたりしたかな〜と夢想してしまう。 ◆「その曲しか吹けない」 原文から子ども用教育番組みたいな口調で書かれているってことなのかな。この内容にこの文体を選んだのがワザあり。この話と一つ前の「他人の目」に顕著なように女性は圧倒的他者として描かれることが多いようだけど、だからこそ宇宙や歴史の向こう側に通じている存在とも見なされている気がする。そこでバランスが取れているのか、不思議な好感を持ってしまう。ラファティ世界の女性を集めたら、レオノーラ・キャリントンの『耳ラッパ』みたいな物語ができる気がするのだ。 ◆「完全無欠な貴橄欖石」 架空の生き物も含めてひとつの世界がすっぽり入り込んでしまう"世界島"エクメーネを召喚するお話。インスタントなまじない言葉で「地誌を招き寄せる」キャラクターたちがどこまでも俗っぽく自分勝手でいい。ボルヘスみたいな材料を使った幻想地誌学小説なのに、仕上げはあくまでナンセンス。それでいて「テンペスト」的な植民地主義をチクッと刺していくのが憎い。 ◆「《偉大な日》明ける」 これはものすごく今っぽい世界を書いてると思った。〈自由〉が実現し、「ありのまま」や多様性が全肯定されると、一人ひとりの個性やアイデンティティはむしろ薄れてゆく。実現されるまで可視化されなかった〈自由〉のデメリット、既得権益を失った者たちによる揺り戻し、満ちあふれるポジティブ・バイブスの胡散臭さ。時代を考えるとヒッピーカルチャーを皮肉った作品なのかな。終始戸惑っている主人公がこのユートピア/ディストピアのアイデアを生んだ張本人だという設定がひねくれてて面白い。 ◆「つぎの岩につづく」 正直ムズくて理解できてない気がするんだけど、万の時をかけて輪廻するキュートなファム・ファタルもの? 最後にサラッと欲望を口にする教授が怖い。考古学SFというとテッド・チャンの「オムファロス」が私の記憶には新しいんだけど、それに比べてここで繰り広げられるアナクロニズムのなんともギャートルズ的なことよ。そんでこの人、詩を作るのも上手いな。 酒場で交わされるホラ話のテンポ良さに、昔話の作法に則ってモチーフが繰り返されるクラシックな語りの型、偽書からのウソ引用の面白さが加わってキアラン・カーソンみたい!と思っていたら、ラファティもアイルランドにルーツのある人なのだなぁ。SF的なスケール感とオトボケの落差で笑わせるところ、それに異星へのノスタルジアが薫るところはダンセイニかはたまたタルホだし、「遠近法」とか「向日性について」みたいなものを全然違う視点で書いててもおかしくないという意味で山尾悠子っぽさすら感じてしまう。SF界にこんな作家がいたのかぁ。
読み終えて、少したって、収録されていたタイトルを眺めてみる。どれも味がある小説で「あぁ、面白かったなぁ」と密かに幸せな気分になれる。もちろん読んでいる最中も楽しめるのですが、じわじわと染み込むおもしろさ、と評した方が、なんだかしっくりきます。 そんな不思議で奇妙な物語19篇を収録した本書は、R・A...続きを読む・ラファティのベストコレクションその1。その1ということは、その2もあるようで、本書は「アヤシイ篇」で、その2は「カワイイ篇」とのこと。カワイイ篇も超気になる。 「われらかくシャルルマーニュを悩ませり」をはじめ、本書では<不純粋価額研究所>シリーズが計3篇収録されている。このシリーズ、ばからしくてとても好き。 表題にもなっている「町かどの穴」は、その癖の強い文体もあって、アヤシイ篇の幕開けを飾るに相応しい作品かと。その他、「どろぼう熊の惑星」や「山上の蛙」、「世界の蝶番はうめく」、「いなかった男」、「つぎの岩につづく」あたりも印象的。もちろんそれ以外も。 カワイイ篇もぜひ読んでみよう。
「町かどの穴」★★★ 「どろぼう熊の惑星」★★★ 「山上の蛙」★★★ 「秘密の鰐について」★★ 「クロコダイルとアリゲーターよ、クレム」★★★★ 「世界の蝶番はうめく」★★★ 「今年の新人」★★ 「いなかった男」★★★ 「テキサス州ソドムとゴモラ」★★★ 「夢」★★ 「苺ケ丘」★★ 「カブリート」★...続きを読む★★ 「その町の名は?」★★★★ 「われらかくシャルルマーニュを悩ませり」★★★ 「他人の目」★★★ 「その曲しか吹けない」★★ 「完全無欠な貴橄欖石」★★ 「《偉大な日》明ける」★★★★ 「つぎの岩につづく」★★★
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町かどの穴 ラファティ・ベスト・コレクション1
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R A ラファティ
牧眞司
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