大矢博子のレビュー一覧
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めちゃくちゃ読み応えがあった。クリスティファンにはたまらない興味深い分析やトリビアがふんだんに書かれているし、文章もとても読みやすい。
当時の時代背景、社会情勢、人々の価値観と暮らし、そしてクリスティ自身の人生と照らし合わせながら、作者とともに作品を読み解いていくのがとても楽しかった。異邦人としてのポアロと中の人としてのマープルの対比や、移りゆく時代、クリスティの真骨頂である人間関係の妙、騙しのテクニックの多様さなどなど、切り口がどれも興味深くてあっという間に読んでしまった。
特に、「メイヘム・パーヴァ」という概念を本書で初めて知り、勉強になった。というのも、マープルものに代表されるような、のどかで平和な小さな村の中で複雑に絡み合う人間関係という設定が大好きなので、それがひとつのジャンルとしてちゃんと名前がついているというのがうれしかった。他に同じメイヘム・パーヴァものとしては、ブラウン神父なども当てはまるのではないかと思う。原作はあまりハマらなかったのだが、BBCのドラマ版は大好きで定期的に観ている。
本書で紹介されている作品の半分以上はすでに読んでいたが、また読み返したくなったし、まだ読んでいない作品は早く読みたくなり、持っていない作品は買いに走った。ちなみに、ハヤカワのクリスティ文庫版の『ナイルに死す』には誤訳があり、新訳版で修正されたとのトリビアが載っており、慌てて新訳版を購入。旧訳版と照らし合わせながらじっくり読むのが楽しみ。
なお、東京創元社から出版されていることからすれば当然だが、本書ではすべて創元推理文庫版が紹介されているので、ハヤカワクリスティ文庫版派の私には不慣れなタイトルもところどころあった。
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Posted by ブクログ
ネタバレ488作品中、私が読んだことがあるのは50数作品でしたが、それで判断するに、彼女が面白いと思った本は私も面白いと思ったものがほとんどなので、多分このガイドは私的にははずれが少ないと思われます。
なので、前のめりにリストに追加。
特に、最近どっぷりハマっている幕末・明治についての作品を紹介した第三部は、私にとっては宝の山。
章のタイトルで紹介すると
『着いてるね、乗ってるね~飛脚と日本鉄道事始め』
『萌え予見~女子がときめく新撰組小説』(なんて秀逸な章タイトル!)
『奥州連合離脱~東北諸藩の戊辰戦争』(とっさに気づかなかったけど、これはイギリスの欧州連合(EU)離脱に引っ掛けていたんですね)
『新徴組!~庄内藩の戊辰戦争』
あたりに読みたい本がどっさりと。
そのほかにも
『それにつけてもおやじはヒール~真田昌幸の「最期」読みくらべ』
「そして輝くウルトラ僧!~直虎だけじゃない尼城主』
『三国な戦士のテーゼ~「三国志」冒頭読み比べ』
『負けるは西だが後で勝つ~関ヶ原で動かなかった者たち』
『世界の尾張とハードボイルド・ワンダーランド~藩邸のテーマパーク』
『四百年と十年前から愛してる~築城に賭けた思い」
『時をかける症状(後編)~SFで歴史を読むということ』
などなど、章タイトルを読んでいるだけでもわくわくしますでしょう?
学校で習う歴史は、一つ一つのできごとの名前と年号。
でも、本当の歴史って、デジタルな点のつながりではなく、アナログな流れなのだと思う。
”歴史は断章ではない。連綿と続いている。だから面白いのだ。”
全く同感。
白虎隊についてすらほとんど知らなかった私。
庄内藩の戊辰戦争なんて、全然知らなかった。
会津と違って全戦全勝だった庄内藩。負けはしなかったけれど、同盟藩がことごとく負けてしまったのだから、これ以上戦っても無意味と戦いから降りたのだ。
それに対して薩摩藩の戦後処理は、領地は安堵、藩主は隠居させられたが弟が家督を継いで家名存続。ほとんど罰せられなかった。
これって、関ヶ原の時の、薩摩藩と同じだ。
西軍で唯一領地を安堵された薩摩藩だからこそ、庄内藩にこのような対応ができたのではないか。
対して、会津に対する長州の手厳しさは、関ヶ原の戦後処理で、吉川広家をだまし討ちにした形で中国地方のほとんどを取り上げたられた恨みは250年たっても消えなかった。
まさに歴史は断章ではない。連綿と続いている。
大いに満足して本を閉じたのだけど、ちょっとだけ。
ちょっとだけ、いい?
せっかく築城で一章設けたのだから、白井喬二『富士に立つ影』は入れて欲しかったなあ。
築城家が主役の話って、なかなかないのだから。
築城にも流派があって、現代のプレゼンよろしく城主の前で討論をして優劣を決めるのが、面白かったなあ。
もちろんそれ以外にも人物設定や、物語の構成なども面白かったけれど。
何しろ高校生の時、誕生日プレゼントとして友達に買ってもらった全7巻のうち、主人公が出てくるのが1巻の最後か2巻の最初か…そのくらい。
死んじゃってからもしばらく話が続く、超大河小説。
今はちくま文庫から全10巻で出ているらしいです。おすすめ。
あと、これは児童小説なんだけど、伊藤遊の『鬼の橋』と『えんの松原』
これは絶対入れて欲しかったなあ。
大人でもなじみのない平安時代を舞台に、平安京という都市が持つ闇と、人の持つ業が、そして『えんの松原』では天皇家の持つ闇というか業というかしがらみまでもが、怖ろしく、恐れ多く、そして切なく迫ってくる、すっごくいい小説なの。
あと個人的に気になっていることがあるのですが、妖怪と畏れられ忌み嫌われていた鳥居耀蔵が、いかにして宮部みゆき『孤宿の人』の加賀様のような人になったのかを書いた小説、誰かご存じないでしょうか?
私の中では加賀様と鳥居耀蔵が全然つながらないのです。
歴史は断章ではない。連綿と続いている…はずだよね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ昔、まだインターネットがこんなにも普及していなかったころ
パソコン通信なるものがあり
掲示板みたいなものと思って貰えばいいんだけれど
その中のひとつニフティサーブというものを利用していて
主に自転車の会議室にどっぷりはまっていた時期があった
1990年代の後半頃のこと
自転車という大きなくくりの中に、ロードやマウンテンバイクなどと
細分化された括りの会議室があり、地域別の会議室などもあった
パソ通自体もそんなに誰もがやってるものでもなく
ましてや若い娘(27歳〜30歳くらい)はもっと少なく
パソオタ気味のおっさん中心の会議室の面々に
まあ可愛がって貰っていたわけだ
当時から新聞連載を持っていたので
多少は文章が書けた、というのも理由かもしれんが
何しろテキストベース、顔は見えない世界だ
27歳女子だ、かわいがるだろう普通
自転車の会議室なんで、そのうちツーリングしようという
オフ会話が盛り上がり、実際に会議室のメンバーに会った後では
サルというあだ名がつけられたタカクラの位置は微妙に変わっていた
そんな事はもう忘れたが
そんな会議室で、飛び抜けて面白い文章を書く人がいた
年の頃は同じくらいの女性だ
面白いだけでなく時折会議室で持ち上がる議論にも加わり
ずばっと自分の意見を述べたり、歴史に詳しかったり
いったい何者なんだろう1?と思うくらい、その人の書き込みは
燦然と輝いていたのだった
そして会ってみるとイマドキ(当時のね)のボディコンスーツに
身を包んでバシっとメイクも決めた美人で巨乳のお姉さんだった
こちらはスッピンのモンチッチ
年はひとつしか違わないのに
あんな面白い文章書いて、そのうえオシャレ人間(BY 海月姫)
なのにそのオシャレ人間の中身はサバサバとしていて漢(おとこ)だった
そりゃあ憧れるだろう普通
会議室では彼女のことを姉と呼んで慕い尊敬していた
そしてちょっぴり憎んでいたのだった
やがて彼女が名古屋に嫁いで
私も結婚し自転車の会議室からも遠ざかったけれど
彼女がたちあげたミステリ書評サイトでの活躍は
眩しく見つめていたのだった
その彼女の初の著書が
「脳天気にもホドがある。」
サブタイトルは
「燃えドラ夫婦のリハビリ日記」
(東洋経済新報社)
著者は大矢博子さん
彼女のダンナさんが脳出血で倒れ
その後の1年間をまとめた本だ
帯の背表紙部分に書かれている通り
「お笑いリハビリ日記」
である
彼女のダンナさんは筋金入りの鉄オタ自転車オタ
パソオタ、ドラゴンズオタだ
脳出血の後遺症で失語症になったダンナさんは
嫁の名前は言えなくても
「クモハ」という電車の名前は出て来るという
そんなような介護エピソードも笑いが満載で
あと夫婦でドラゴンズファンだから
ドラゴンズの動向も頻繁に挟み込まれる
どんな介護日誌やねん、である
同様の脳卒中関係の患者さんやご家族には
とっても役に立つ実用知識もたくさんあり
何より元気になれると思います
名古屋の書店ではドラゴンズのコーナーに置かれてるらしい
(もう一度、どんな介護日誌やねん)
おすすめです -
Posted by ブクログ
闘病リハビリ日記。おそらくこういう立場になってしまった人が読めば役に立つし、励まされる点が多いと思います。だけど「励ます」といってもおためごかしな雰囲気はぜんぜんなくて。そりゃね、介護も大事だけど。何もすべてを犠牲にする必要なんてないんですよね。
そして「なまもの!」読者にとっては面白ーく読めるエッセイです。もちろん、今はかなり元気にされてるってのを知っているからこそ笑って読めるんですけどね。野球ファンではなく鉄道ファンでもない私ですが、はい、充分に面白かったです。これは続編も読みたいぞー(あとがきのオチは「なまもの!」読者には周知ですが。あまりにできすぎなシチュエーションですよ)。
みほろさんのほのぼのカットも満載。「なまもの!」読者はもちろん、Ayalist読者も、身内にリハビリ必要な人がいる方、いないけどいつかはなってしまうかもな方、とにかく万人にお薦めです。 -
Posted by ブクログ
まず、装丁がステキです。作品を知っていれば、ますます楽しめる仕掛けで…
そして内容もスゴイです!
教科書というか、とにかくスゴイんです(笑)。
クリスティーの作品を、翻訳されている全出版社のものを読みたくなり…それが無理でも、いくつか読んだ気でいる作品も再読必須…みたいな。
中身を紹介し始めると全部になってしまいそうで、無理…
初心者より、これまでクリスティーを読んだ、ポアロさんのドラマを観た、ミス・マープルのドラマを観た、映画化作品を観た…など、どの切り口からでも触れたことのある方は、ぜひ手に取っていただきたいです。特に翻訳されたものについての考察も良く、翻訳でしか読まない(読めない…)日本の読者向けの解説書でもあります。
P102 欄外の「満潮に乘って」のヒロインに対するメッセージ、すばらしいです!
初めは食わず嫌い気味で敬遠してましたが、読んでその凄さを知った1冊。 -
Posted by ブクログ
「平岩弓枝」の短篇時代小説集『「御宿かわせみ」ミステリ傑作選』を読みました。
ここのところ時代小説が続いていますね。
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「平岩弓枝」の「御宿かわせみ」は江戸人情だけじゃない、ミステリも侮れない!
物理トリックに心理トリック、フーダニットにホワイダニット……「御宿かわせみ」には、びっくりするほど秀逸なミステリ作品が多い、と書評家「大矢博子」が、トリックを切り口に七作品を厳選。
かわせみシリーズの傑作『矢大臣殺し』は、「アガサ・クリスティ」へのオマージュか?
巻末の著者インタビューに、創作のタネあかし、あり。
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2018年(平成30年)に刊行された「御宿かわせみ」シリーズの傑作選です、、、
書評家「大矢博子」が悩みに悩んで7作品を厳選… 巻末には選者「大矢博子」による7作品の解題と、著者「平岩弓枝」への創作の種明かしインタビューも収録されている貴重な作品です。
■はじめに 大矢博子
■「御宿かわせみ」登場人物
■倉の中(『御宿かわせみ』所収)
■風鈴が切れた(『水郷から来た女』所収)
■藤屋の火事(『白萩屋敷の月』所収)
■矢大臣殺し(『雨月』所収)
■残月(『かくれんぼ』所収)
■三日月紋の印籠(『佐助の牡丹』所収)
■築地居留地の事件(『新・御宿かわせみ』所収)
■解題 大矢博子
■著者に訊く「御宿かわせみ」とミステリ
江戸時代末期を舞台に、大川端の小さな旅籠・かわせみを舞台としたシリーズが始まったのは1973年(昭和48年)、、、
その「御宿かわせみ」と、舞台を明治初頭に移して第二世代が活躍する「新・御宿かわせみ」は、あわせて40巻を超え、作品数は300を超えるそうです… その中から選び抜かれた7篇ですからねー どの作品もクオリティが高く面白かったです。
伊勢屋のご隠居が首を吊ろうとしている現場に居合わせた「るい」と「お吉」… 自分の嫁いびりのせいで嫁と奉公人が駆け落ちしたのを気に病んでのことだろうと息子は語るが、後日、奉公人は殺されているのではという話が飛び込んできて、、、
遺体をどこに隠したのか… が焦点となる『倉の中』。
殺人事件が起き、「東吾」の知り合いの女按摩の夫が下手人として捕らえられる… 妻が別の男と同衾していることに怒り、現場に踏み込んで間男を殺したのだ、、、
しかし、女按摩には身に覚えがなく、何のことだとわからないという… 証言が食い違う中、疑わしい人物はいるものの、どんな手を使ったがわからずハウダニットが愉しめる『風鈴が切れた』。
旅籠の藤屋が火事になり、今日から来た若い娘のうち、ひとりが逃げ遅れて亡くなった… 生き残った「お幸」は、江戸の大店・近江屋の川内が若い頃に京の女性に産ませた娘で、父を訪ねてきたというが、、、
ミステリ慣れした読者なら、あのパターンだな!と見当がつくトリックでしたが、謎解きのメインはそこではなく、中盤で起きる殺人事件… 犯人が動機を吐露する場面が印象的な『藤屋の火事』。
飲み屋の店内で、嫌われ者の名主の息子が殺された… ちょうど近くで仇討ち騒ぎがあり、人々の注意がそちらに向いた間の出来事だった、、、
ところが「東吾」と「長助」のもとには次々と自分が下手人だと名乗る人物が現れる… 「アガサ・クリスティ」のあの名作を想起させる展開に、さらにひと捻りが加えられ全体的にコミカルな風味づけがされている『矢大臣殺し』。
20年前に人を殺して遠島になっていた「おきた」が、御赦免で江戸に戻ってきた… 当時「おきた」を取り調べたのは「源三郎」の父親、、、
しかし「おきた」は動機を語らないままだったという… 真相があまりにも衝撃的で、強い余韻を残す『残月』。
旗本の屋敷で印籠がなくなり、妾腹の少年「徳太郎」が疑われた… ところがその印籠は、、、
ちょっとほっこりできる日常の謎を描いた『三日月紋の印籠』。
「東吾」の兄夫婦の養子で、実は「東吾」の実の息子である「麻太郎」がイギリス留学から帰ってきた… 引き続き居留地の医者の家で医学を学ぶ予定だったが、その屋敷でダイアモンドの指輪が紛失し、使用人が疑われ「麻太郎」は解明に乗り出すが、、、
文明開化当時ならではの道具立てや外国人への事情聴取等、江戸ものとは異なる味わいが楽しめる『築地居留地の事件』。
ホントにどの作品も愉しめましたねー 敢えて選ぶなら『倉の中』、『藤屋の火事』、『矢大臣殺し』、『残月』が印象に残りましたね、、、
『著者に訊く「御宿かわせみ」とミステリ』を読んで、このシリーズは、『グランドホテル』×「アガサ・クリスティ」×"捕物帳"を「平岩弓枝」という作家で割った作品なんだなー と感じました… そりゃ、面白いはずですよね。