松嶋智左のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この一冊にこの作者のこの作品。
どの作品も重厚でした。
贅沢な一冊です。
作家さんてすごいなぁ、と特に感じたのは
一話あたりのページ数です。
この短いページ数でこの内容を紡ぐことができて
さらには登場人物たちのキャラクターをたたせる。
どのお話も人物たちのキャラクターが現実にいるような
リアルさがある。
物語の構成もしっかりしていて、この頁数で
よく物語のまとめができるな。
と、そういう観点からもおすすめします。
一話がしっかりしているので、一話読み終わると
本を一冊読み切った感じがして、
次の話にすすんだとき前の話を思い出すのが
難しかったくらいです。
それぞれの作家さんの別の未読本に興味を
持つことができました。 -
Posted by ブクログ
裏切りの捜査線
警察ミステリーをテーマにしたアンソロジー。
お見通し 米澤穂信
有名な芸能人のコンサートに殺害予告が届く。警察はコンサート会場付近の公園で過去に逮捕歴のある男を見つけ取調べをする。そして公園からは男が以前に持っていたものと同じナイフが発見される。
警察官の葛と丸山の酒の席での会話だが、警察官同士受け持っている事件の共有は出来ないが、偶然という形で丸山は葛に今回の事件の不満点を相談する。ある意味後味の良い作品であるが、米澤穂信独特の短編描写が見受けられとても面白い作品だ。
何故、「ナイフがその場所から見つかったのか」という一つの疑問から衝撃の理由に連なっていく。
メゾン・イニシェの怪 方丈貴恵
怪異、オカルトに執着する警官生駒と事件を受け持つ八条とのやり取りを通して、過去に殺人事件が起きたマンションで発生した事件を解決していく
生駒は時々鋭い指摘をするが、目線がオカルトに流れてしまい推理は的を得ない。八条は生駒の指摘を受けながら正しい道筋を組み立てていく。
最後、怪異についてもっと取り上げて少しオカルトチックに終幕した方が物語としてはオチを作れたのかと思う。警察ミステリーとは少し違った印象。
プライドの隙間 荒木あかね
警察署内で警察官の拳銃自殺が発生。そして死体の腰からは拳銃が盗まれている。警察官として日々の生活、特に拳銃の訓練に対して嫌な印象を持っている糸瀬は、余り表情は豊かではないが徐々に打ち解けてきた女性警官の高比良と共に無くなった拳銃の捜査を通して警察内部の陰険な部分と向き合いながら真相に近づく。
前日に荒木あかねの短編集を読んだばかりであり、今作のペアについても負けず劣らずの良いチームである。結末はシンプルだが人間関係を通じて面白さがあり、満足する作品だった。
家につく猫 松嶋智左
犯罪の匂い、雰囲気を嗅ぎ分けることの出来る刑事が些細な事でコンビニで買い物をしている老人の行動に疑問をもち、色々理由を付けながら老人の家を尋ねる。警察官の瞳と隼太かのペアがいきなり閉じ込められている所から始まり、謎の四人家族とのやりとりを取り上げる。
珍しい作風だと思うし、登場人物も面白いが、動機の部分が少し違和感があり犯人への恐怖感、緊迫感が物足りなかった。こういった作品はシリーズかされていると魅力がますので、後日調べてみたい。
コールバック 芹沢央
いじめ捜査を依頼された探偵。該当の学生を見張っていると同じように学生を尾行している男性を発見する。学生のいじめは行われているのか、そして、学生を尾行する謎の人物は何者か。
物語としては対象の学生が隠している真実を紐解いていく様な流れだが、ミッシングリンクがわかるとかなり深い話になる。子供は余りにも残酷であり、些細な事で人生を破壊された人間が、最後に驚きの行動をする。
警察を定年退職した正太郎が主人公であり、老年にある落ち着いた探偵である。若いバディ役ではなく、作風として終始重厚な形になっており今作にぴったりの探偵だ。
今作は、短編でありながらかなり骨太な作品。長編だったら何日間かはシリアスな作品を読みたくなくなる良作。定期的に摂取したくなる作風だし、もっと陰鬱な結末でもよかった。
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Posted by ブクログ
米澤穂信、方丈貴恵、荒木あかね、松嶋智左、芦沢央『裏切りの捜査線 警察小説アンソロジー』文春文庫。
5人の作家による警察小説アンソロジー。文春文庫の警察小説アンソロジー『捜査線』シリーズは様々な作家の短編が味わえるところに魅力があるのだが、当たり外れが大きい。
このアンソロジーで一番面白かったのは、松嶋智左の『ヤギノメ』シリーズの1編である『家につく猫』だった。他の短編は並みか、それ以下という感じで、文春文庫の警察小説アンソロジー『捜査線』シリーズは他の出版社の警察小説アンソロジーに比べるとレベルが低いなと感じた。
米澤穂信『お見通し』。人気ミステリー作家の1人であることは認識しているのだが、肌に合わないのか、これまで1冊しか読んだことが無い。さてこの短編。謎解きはよく解るし、警察小説としての雰囲気も良いのだが、言い回しというか文章がイマイチで損をしている。★★★★
方丈貴恵『メゾン・イニッシュの怪』。初読み作家。オカルトチックな雰囲気のある警察小説だったが、偶然ばかりが重なり、今ひとつ面白さは無かった。最後の最後までオカルトで突っ走った方が良かったのでは。★★★
荒木あかね『プライドの隙間』。史上最年少で第68回江戸川乱歩賞という『此の世の果ての殺人』は面白かったのだが、次作の『ちぎれた鎖と光の切れ端』が『Z世代のアガサ・クリスティによる超絶技巧の本格ミステリ』という物凄いキャッチコピーで紹介されていたので、昭和世代ど真ん中の還暦ジジイで普通の読書好きには敷居が高く、腰が引けて手を出せなかった。警察のような旧態然とした組織では虐めなどで心を病む警察官も居るようだ。自分が10年ほど暮らしている福島県でも、何度か警察官の拳銃自殺のニュースは耳にしている。しかし、警察官の拳銃自殺のニュースは第一報くらいで、自殺の理由などの続報が報じられることは殆んど無い。報道機関に圧力を掛けた一種の組織的な隠蔽なのかも知れない。署内の男子トイレで発生した若手警察官の拳銃自殺。あろうことか自殺に使用した拳銃が何者かにより持ち去られていた。★★★★
松嶋智左『家につく猫』。元警察官で白バイ隊員という異色の経歴に興味を持ち、デビュー作からしばらく追い掛けていたのだが、最近はご無沙汰している。『刑事ヤギノメ』シリーズからの1編である。このアンソロジーの中では最も警察小説らしく、時系列を反転させた構成も見事で、面白かった。いきなり拉致され、農家の納屋に監禁された2人の警察官。納屋の中には腹を刺され、瀕死状態の男性が横たわっていた。★★★★★
芦沢央『コールバック』。著者サイン入り本ということで購入した『火のないところに煙は』がイマイチだったので、以来読んだことが無かった。このアンソロジーでは唯一の探偵小説であった。中学生の虐めと心無い悪戯により苦しめられる人びとが描かれる。最近の虐めは陰惨極まりない。度々、虐めによる殺人まで起きているのだ。ネットやゲームといったバーチャルな世界でしか遊んだことが無い現代の子供たちは、現実世界で加減するということを知らないのではないかと思う。★★★
本体価格800円
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Posted by ブクログ
三星京香。176cmの長身と県警で特練生に選抜されるほどの剣道の腕を誇り、強い正義感とエネルギッシュかつ粘り強い捜査能力を有するなど、県警内でも高い評価を受けていた。
27歳で巡査部長に昇進したのを機に県警本部捜査1課に抜擢され、その能力を遺憾なく発揮していた京香だったが……。
正義感を貫いた結果、警察を逐われたあげく同僚の夫から離婚を切り出されてしまうなど、人生詰んだ状態になった京香の第二の人生を描くサスペンスミステリー。シリーズ1作目。
◇
思わず手が出た。とっさのことだった。あっと思ったときには右手が始動しており、しかも伸ばした腕の先は拳になっていた。
坂巻刑事部長は不思議そうな顔をしたまま顔面に迫る京香の拳を鼻で受け止め、スローモーション映像を見るように倒れていった。
京香にとって不運だったのは、坂巻がメタボ体型で女性警察官の拳すら跳ね返せない体幹でしかなかったことと、刑事部長室の床に雑多なものが転がっていたことだった。
顎をのけぞらせ後方によろけた坂巻は、足下に転がっていた鉄アレイに足を取られて仰向けにひっくり返った。
さらに運の悪いことに、ひっくり返った先の壁際にはチェストがあり、その側面に後頭部を強く打ち付けた坂巻は…… ( プロローグ ) ※全28話とプロローグからなる。
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元警察官の女性がミステリーをお書きになったと知り、興味が湧きました。
タイトルや表紙イラストを見て、軽いコメディ風の作りで読みやすいだけの作品かなと思ったのですが、読んでみるといい意味で期待を裏切ってくれました。
例えば、京香の幼なじみとして登場する藤原岳人についてネタ明かししておきます。
岳人は弁護士として、県内大手の法律事務所に勤めています。失業と離婚で1人娘を抱えて困窮する京香を見かねた岳人は、自身が勤める「うと法律事務所」への就職を斡旋。
おまけに京香が残業する際は、岳人が京香の5歳の娘つみきを保育園に迎えに行き、ひとり暮らしの自宅に連れ帰って面倒を見てやったりもするのです。
その岳人と京香は子どもの頃から互いに惹かれ合っていたという下地があり、今回のことで2人の距離が物理的にも精神的にも縮まったという展開になりました。
岳人はきっと、京香を支える最重要人物になるに違いない。この流れではそう思うのが自然でしょう。なのに、序盤の最後に岳人は惨殺されてしまいます。
岳人は、なぜ? そして誰に? 殺されたのか。ここから物語が動き始めるのです。
この岳人の弔い合戦だとばかりに事務所が総力を挙げて調査( 捜査 )に乗り出すことになり、京香も尖兵として大活躍するという意味では、なるほど岳人は重要人物です。
でも岳人の死はまったく予想だにしなかっただけに、驚きもしたしひどくショックも受けました。
こんな感じで、意表を突くようなストーリーがけっこうハードに展開していくので、読んでいても途中でダレるということがありません。
もう1つ、シリーズの魅力になっているのが京香のバディです。
芦沢夢良。うと法律事務所に勤める26歳のパラリーガルの女性です。
この夢良は不正が許せない潔癖気質で融通があまり利きません。でも常に一生懸命であり、誠実に物事に向き合う姿は健気でチャーミングそのものです。 ( 夢良はある事情から警察に対して嫌悪感を持っているのですが、詳細については作品をお読みください。)
そんな夢良が、法律事務所に不慣れな京香の調査をサポートすることになります。
大雑把なところがあり考えるよりまず行動してしまう京香に対して、小さなことでも行動する前に熟慮したい夢良。
アクセルの京香とブレーキの夢良という対照的な2人が、衝突しながら調査活動に勤しむさまがおもしろい。このあたりも物語をイッキ読みさせる理由の1つです。
大晦日。早々に床に入り除夜の鐘が鳴るまでの時間を楽しく過ごさせてくれた1冊でした。
☆本作は法律事務所が舞台とはいえ、リーガルミステリーではありません。あくまで主人公の京香が刑事時代のスキルや人脈を駆使して事件解決につなげていくというサスペンスミステリーですので、ご注意ください。