李琴峰のレビュー一覧
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ネタバレ生まれるまえに生まれたいかと問われたら?
この世に生まれるかどうかの決定権を親ではなく胎児が持てるようになった時代、母親はその決定の日までお腹で子供を九か月育てる。もしリジェクトされたら…恐ろしいほどのストレスが母親を襲う。
胎児が自ら生を拒否、リジェクトできるけれど胎児なのでなにをもってリジェクトするのか、というのは母親には分からず恐怖でしかないと思っていたがある程度の年数が経つとすんなりとこの制度は運用され続けている。人間の適応力に感心しつつどこか仄暗く冷やかな雰囲気を感じ読み進んで、結末には納得できたかと言えばそうでもないのは私はこの制度の中で生きていないからだろう。
作品としては -
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難しすぎず格式高い美しい文章が心地よい。私が読む日本の現代小説ではあまり見ない熟語が使われていて文章のリズム感も良い。杜甫の『春望』『贈衛八処士』、邱妙津の『ある鰐の手記』『モンマルトルの遺書』、中山可穂の『白い薔薇の淵まで』などの作品が散りばめられ、著者が漢詩や日本の小説に精通していることが窺い知れる。この作品がデビュー作であることに驚く。
主人公・紀恵が精神的に追い込まれていく様子がすごくリアルで苦しかったし悲しかった。紀恵に対して台中女中の女の子たちが攻撃的なところや薫が拒絶する場面は悔しくて歯痒かった。こんなふうに扱われる必要性なんてないのに!鬱になってしまった紀恵が狂乱している己と -
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性というか性別(性自認や対象)というか、性欲というか性癖とか、性体験とか。
「性」のことはご法度的で親子、恋人、親友でも避けたりするわけで、孤独な世界だと思ってきたけれど。それが女性作家が17人も語るわけで下品上等、生々しくて面白い。
面白い、と言ってる事を下品と言う人もいると思いますが、多様性?とあえて言葉にすれば線引きしないでよ、と。
面白いというのは具体的に変えれば興味深い、が適切か。いやらしい意味でなく、前述のようにご法度な他者の世界に興味があるわたしは、作家がこうもあけすけにエッセイとして実体験や思想を語ってくれてありがたく。
本として残るので結構なカミングアウトもあったりするわ -
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自由や人権が保障されているのなら、その先の死の自由も尊重されるべきである。
本作の核と言ってもいい制度「合意出生制度」は、生まれる前の子どもに直接、この世に生まれたいのか、それとも生まれたくないのか問うところから始まる。
環境や個人の特性などで人の“生きやすさ”は変わる。
なら、そもそも幸せになるのが難しい人生なら、生まれてこなければいいのではないか?
わざわざ生まれて、無期懲役に近いこの人生を彷徨わなくても良いのではないか?
なぜ法の元で“生”は保障されるのに、“死”は必ずしも保障されないのか?
そんな、一言では片付けられないような問いが本作には詰まっていた。
ただ、“ -
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今の私だったら生まれてこない方を選択するけれど、生まれる前に同じ選択をしたかと聞かれると自信がない。
結局は責任の所在?自己責任論に落ち着こうとしてるのか。
意思決定の権利や自己決定の権利等、目に見えないけれど私たちが作り出したことで存在するもの。それらをどうやって可視化して責任の所在を明確にするか。
上手くいかないことを自分のせいにしたくないだけ、自分の選択の責任をとれないだけなのかな。でも生まれてくる時点で持ち合わせてるものは人によるから格差はある。平等はありえない。自分のコントロール下にないものは、責任をとらずに済む逃げ場がほしくなる。
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ネタバレ産むこと・産まれることの本質について深く考えさせられる作品。当然のことながら、太古の昔から現在に至るまで人間が産まれることについて本人の合意は介在してこなかった。産まれるという言葉が受動態であるように、生の始点はあくまで受け身なのだということを誰かの詩で読んだことを思い出す。好むと好まざるとにかかわらず、まず生まれてしまう。そこには不条理という名の実存主義的苦悩が付き纏う。出生にあたって生の自己決定権を行使することで、人生のオーナーシップを得ることができるという主人公の実感も分からなくはない。
とはいえ、出生への合意とは何なのだろうか。我々が下すあらゆる決断は、それまでの人生で経験したことによ -
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生まれてくることを選べる子ども達と、産みたいと思う母親たちの話
とにかく設定と、それに血肉を通わせる描写力に圧倒された。
今と数年前でも、子育ての考え方がかなり変わっていることに驚くことがよくある。なので今から数十年後、この話のように根本から「常識」が変わっていてもおかしくないと思えた。
数十年後、もしもこの話の設定が現実になったとしたら、その時の読後と今の読後の感想は全く違うものになるかもしれない。だとしたら私たちの信念や感情はどれだけあやふやなものの上に成り立っているんだろう。
そんな不安定な世界で、それでも何かを選択する母親達、お腹の中の子ども達に思いを馳せた。