李琴峰のレビュー一覧

  • 肉を脱ぐ

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    柳佳夜は会社では佐藤慶子と名乗り、勤めの傍ら 小説を書いている.会社には同性愛者の優香、男の社員で福島亮太らがいる.小説家としてのライバルは山下菜摘(川上冬華)でかなり売れている.慶子はエゴサで自分の名前を他人が語っているのを知り、密かにその人物の特定を試みる.その過程が本書の中で最も楽しめた部分だ.中国系の小池嘉美がその張本人だと判明し、二人がやり取りする場面が面白かった.あまり公表されない小説家の実態が描写されているのが良かった.作者は台湾生まれだが、日本語を駆使できる能力は素晴らしいと感じた.

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    2024年04月02日
  • 肉を脱ぐ

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    24.肉を脱ぐ
    エゴサの先には何もないどころか、とって変わられた自分がいた

    肉体に支配されたくない
    見た目やジェンダーでない
    ただこの心だけ、精神だけで生きたい
    そんな彼女の気持ちが…わかる気もするけれど
    それこそが最後の狂気へと向かわせる

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    2024年03月20日
  • 肉を脱ぐ

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    ネタバレ

    肉体に支配される精神。物事の見方がそうなってしまうと生きづらいだろうなと思いながらページを捲っていた。

    主人公は生身の自身を嫌悪し、精神だけの存在である「柳佳夜」というペンネームに縋って生きてきた。小説、会社、自身の性、すべてがままならない状態の中、「柳佳夜」という同姓同名のVTuberの存在を知る。Twitterにおいて、自分の存在を塗りつぶされて消されていく恐怖に襲われた主人公はVTuberの正体を探り始める。

    内容をまとめるとこんな感じなのだが、言葉では表せないぐらいの重苦しさと嫌悪感に囚われながら読み終えた。肉体と精神を分離しなければ耐えられないほどの現実を送りながら、人を蔑み高みから見下ろしているかのようなスタイル。昨今の、SNSの影響で自己顕示欲に押しつぶされそうになっている若者を究極形を主人公に見た気がした。

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    2024年03月17日
  • 肉を脱ぐ

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    肉体から受ける制約と葛藤する主人公。
    丁寧な筆致は作者らしいけど、少し息苦しい。ラストは安部公房みたいで迫力あったけど。

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    2024年03月03日
  • 肉を脱ぐ

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    “身体”を疎ましく思う女性が主人公。彼女はツテを頼りに持ち込みでデビューした兼業作家だが、2作目が編集者に認められず苦しんでいる。そんなとき、エゴサーチで自分の筆名と同じYouTuberが注目を集めていることを知り……。
    自分の身体に対する疑問、不信を突き詰めるとこうなるだろうという小説だった。精神の容れ物であるとしても、身体を生かすためには様々な要求に応えなければならないという矛盾や、女性であることの不合理がこれでもかと詰め込まれている。会社という組織の中でも彼女は異端だ。
    ラストシーンは非現実的だが受け入れられた。

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    2024年01月08日
  • 五つ数えれば三日月が

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    想いを寄せていた友人と何年振りかに再会し近況報告しながら昔の想いにひたる。狭い世界観に思うが台湾や日本で暮らしているので狭い訳ではないと思うが、狭い空間と人間関係で生活しているような雰囲気で余計な情報がないので落ち着いて読める。叶う事のない恋を大切に伝えることのできなかった胸のうち。切ない話だった。

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    2024年01月08日
  • 肉を脱ぐ

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    ネタバレ

    ラストのどんどん肉を剥ぎ落としていく行為、リアルに表現されていて、ほかの作品も同様の表現だったら犯罪者の心理的描写や異常者の作品があったとしたら気が狂いそう。
    内容も自分の身体の全てがいらない、お腹が空くのも排泄も身体のサイクル全てを拒否したい考えを持っているのに同名のYouTubeの存在を執念深く調べあげあり、自分の小説をエゴサして気にしたりと思考は固執している。会社で浮く事なく普通に働いている人間の内面は違うとゾワッとするそれでいて嫌悪感なく拒否反応も出ずに読めてしまったのは不思議。

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    2023年12月22日
  • 肉を脱ぐ

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    ラストシーンについて誰かと話したくなる作品です。
    この作品を読んだ他の方がどう解釈したのか気になります。

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    2023年12月19日
  • 肉を脱ぐ

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    p.65 「急に泣きたくなる時は、本当に少しでも我慢ができない。くしゃみみたいにね、涙が身体の中からとっさに湧いてきて、気がつくとポロポロ落ちている。他の会に行こうとか、誰かに気づいてほしいとか欲しくないとか、そんなこと考える余裕なんてないの」

    Twitterでのエゴサーチとか、Vtuberとか、個人情報の特定の方法とか…とてもリアル…李琴美さんの作品は本当に胸を抉られるようなリアルさが売りだよな…がーーーっとよんじゃう!

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    2023年11月28日
  • 観音様の環

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    ちょっと理屈っぽくって生真面目。そしてそれに照れながらも、自分の思いを文章にのせていく。李琴峰の話はちゃんと聞こうと思える。

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    2023年11月19日
  • 観音様の環

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    彼女はうまい。グロテスクな・想像もしたくない情景を、読める範囲で、リアルに描くのが。

    性暴力、国際結婚(必ずしも裕福とは限らず、夫婦の間には格差もあることがある)、性マイノリティ、そして外国人の貧困問題。リアルだ。

    前編である、『ポラリスが降り注ぐ夜』も読んでみたい。

    p.14 「望んでもなかなか手に入らないもの、自由(リバティー)、学位(ディグリー)、給料(サラリー)。望まなくても勝手についてくるもの、家族(ファミリー)、カロリー、政府(ミニストリー)。」


    p.21 勃起し射精できる男子と、生理が始まって妊娠できる女子。身体だけが一丁前に成熟しているのに、精神はまだ猿同然。男子は、電気あんまやかんちょーといったおふざけに興じ、女子はイケメンやアイドルの写真を回覧したキャッキャッ騒いだ。そんな人間の群れが学校と言う俺に閉じ込められていると、様々な色恋沙汰と当たり前のように付きまとう僻みや妬み、恨みといった負の感情、そしてそこからくる厄介ごとがあちこちで勃発していた。

    p.59 誰かに頼る事は、従属し、支配されることだ。手を差し伸べる人は、程度や方向性の違いこそ、あれ、みんな多少なりとも、そんな支配を望んでいるのだ。それが、優しさの対価で、この世界の摂理なのだ。

    p.80 おせっかいなんかじゃない。夏子の優しさは、切実な傷と痛みの経験から培われた、他者への想像力に裏打ちされたもので、それは一方通行の善意、つまり独善的なお節介とは本質的に違うのだ。独善は、毒のある善だ。

    p.83 奈津子が言った通り、東京では1人で生きていくのは、簡単と言えば簡単だが、弱者が生き延びるで行くのは難しいのだ。

    p.90 「拒絶されるのが怖い。排尿されるのが怖い。独りよがりの全員が怖い。こっちが願ってもないのに勝手に家族さらされるのが怖い。心に土足で踏み込まれるのが怖い。ジェシカを失うのが怖い。でも、対等じゃない関係がもっと怖い。依存し、16し、支配されるのが怖い。所有物とされるのが怖い。嫁姑問題とか、娘さん俺にくださいみたいな陳腐さが怖い。誰かに認めてもらわないといけない状況が怖い。何よりーー」自分の人生を自分で決められないのが怖い、とは口にできなかった。自分の人生だからって、自分で決められると思う方が傲慢と言うものだろう。

    p.102 「恋は盲目(LOVE IS BLIND)、結婚は腐ったワイン(marriage rotten wine)、哀れな人間(Poor humankind)」

    p.106 「時は過ぎ去り(Time goes by)、人々は別れを告げる(People say goodbye)。それが人生さ(that’s the life)」

    p.115 笑って謝りながら、しかし、世間一般的に、親と同じ出身地の人間と結婚する場合の方が、ひょっとしたら多いのかもしれないと思った。あの島だって、多くの人間の一生は、島の中で完結するだろう。島で生まれ、育ち、勉強し、働き、恋愛し、結婚し、また子供を産む。美しい後の循環、閉じられた、完璧な輪。その輪に閉じ込められるのが嫌で、私は逃げ出したのだろう。

    p.126 空覆い尽くしていた分厚い雲の層がいつの間にか割れていて、その切れ目から太陽の光が漏れ、幾筋もの金の光の束となって、港に降り注いでいた。港で入りしている船は、天啓を浴びているかのようだった。「天使のはしごだね」

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    2023年05月16日
  • 観音様の環

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    李琴峰さんの作品を読むたびに、誰1人として同じ環境で育ったわけではなく、人知れぬ過去を持っているのかもしれないと気付かされる。
    現代社会において、生まれた国や性別でマイノリティとして生きていかなければならない人が多くいる。そして少なくとも今の日本ではまだまだ生きづらさを感じている人が多くいる、その事実を直視したい。



    舞台はコロナ禍に入ったばかりの日本と台湾。
    主人公は台湾人の母と日本人の父の間に生まれたマヤ。台湾出身のパートナー、ジェシカとの会話の中でマヤの生まれ育った環境、島を飛び出してきたことを振り返りながら物語が進む。
    女性、性的嗜好、親の国籍、幼少時代の性的暴行、家族とは。
    複雑だが小説を通して学び知ることは多い。物語だからこそわかることが多くある。

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    2023年05月01日
  • ポラリスが降り注ぐ夜

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    新宿二丁目にあるバーのポラリスを巡り人が人を愛するのに異性愛や同性愛やトランスジェンダーの愛などの違いはなく、すべて愛しい人に対する愛であることが分かる。台湾出身で日本語で小説を書いている李琴峰さんの作品。

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    2023年04月22日
  • 透明な膜を隔てながら

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    台湾出身の芥川賞作家のエッセー。

    芥川賞受賞作品も、お名前も知りませんでしたが、日本語教師の視点で面白いと思える箇所がいくつもありました。

    なかでも、最初に覚えた仮名文字は片仮名で、その理由がポケモンだということ。外国籍児童にも、ポケモンの名前は片仮名学習に効果的でした。

    漢字圏の出身者だから日本語習得に有利ということはない、というのは、多くの在住中国人の方を見てきて感じていることで、この方の日本語の自然さは、本人の言うように「不断な努力と格闘によって手に入れたもの」なのでしょう。

    努力もせずに、外国語の習得をあきらめている人に読ませたい。

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    2023年03月12日
  • 独り舞

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    人の自死を美しいと思った経験があるので、たとえフィクションの世界であったとしても同じ感情を抱いている人物が存在してくれて感謝

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    2022年10月29日
  • 透明な膜を隔てながら

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    個人と個人を隔てるもの。属性と属性を隔てるもの。綺麗事を並べて無くなったかのように見せても、透明になっただけでそこにあるもの。正しさに立脚するように見えて、その実そうではないもの。

    透明な膜を隔てながら、他者を尊敬し理解しようとする試みの記録。

    “普遍性を探求しようとする日本文学は、しばしば「個」や「個」を含むコミュニティに作用する大きな力と、決して相対化してはならない「特殊性」「固有性」を見落とすキライがある。”
    まさに。
    その行き着く先は、政治性や社会性の排除、弱者に対する差別や偏見の無化と不可視化、そして現実に対する批判性の欠如である。

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    2022年09月20日
  • 向日性植物

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    ネタバレ

    詩的な美しい文章。
    台湾のレズビアンの女の子(女性)のお話です。異性愛、同性愛を問わず愛の形は様々でそれこそグラデーション。そういえば「恋」と「愛」の違いってなんだろう?初恋とは言うけれど初愛とは言わない?まあ、誰かを大切に愛しく思う気持ちにそんなのは関係ないか。男でも女でも他者を尊いと思う気持ちの中に、そこに他人が入り込んで自論を押し付けたりするような流れがなくなるといいと思う。日本では、同性婚が制度化されるのは遠い道のだろうな。敢えて「レズビアン文学」と銘打ったのは著者の熱い思いかもしれない

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    2022年08月31日
  • ポラリスが降り注ぐ夜

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    7人の女性のセクマイとしての物語がとあるレズビアンバーで交錯する。

    まず風景描写が良かった。
    二丁目近辺の描写がびっくりするほど精確になされていてゲイの自分としては感心した(李琴峰さん自身もレズビアンとのこと)し、
    台湾のひまわり運動についても雰囲気や温度感、匂いまでも伝わってきて、当時facebookで繋がっていた台湾の友人がたくさん情報発信をしていたが、むしろSNSを見るより伝わったかもしれない。

    またセクシャルマイノリティの中でもバイセクシャル・レズビアン・トランスジェンダー、アセクシャル、日本人・台湾人・中国人と多様な恋模様・人間模様が見られていて、このあたりの解像度の高さもLGBT界隈の作品では意外と見られないものだと思った。

    7人の物語が今ひとつにつながって大団円に…!という展開ではなくあくまで平行的で、それぞれの物語が淡々と進む。
    苦い話も多く、特にトランスジェンダーの登場人物はやはりセクマイの中でも苦しいことが多いが、最後に少しだけ希望があるような終わり方をするのはやはりそれらの物語が交差する場がきらりと光る「ポラリス=北極星」だからだろうか。


    ★時間とお金のムダ
    ★★普通〜微妙
    ★★★よかった
    ★★★★心が動いた(感動した、意表をつかれた、ショックだった)
    ★★★★★人生の本棚に入れたい 

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    2021年12月12日
  • ポラリスが降り注ぐ夜

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    私意外が仲の良い、あまり知らない人たちのグループの中で、身を潜めている。

    会話の内容が、私の日常の円とは全く重ならなくて、でもその集団では、当たり前でくくられている。
    そんな感じだから、会話に入ることもできなくて、かと言って無表情なのも異物になってしまうから曖昧に微笑んでいる。

    そんな気持ちに似ているのだろうか。
    想像したところで、本当のことは当事者でないと分からない。分からないけれど、知ることはできる。

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    2021年11月09日
  • ポラリスが降り注ぐ夜

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    意味合いが違うけど ジュンパ・ラリヒさんの「その名にちなんで」を思い出した。
    マイノリティとして生きること、そういう風にカテゴリーに分けられること。そしてカテゴリーに分けることは誰がやるの?…そんな疑問はいつも持っとかないと知らずに「たくさんいる派」の理論で押してしまう…

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    2021年08月24日