李琴峰のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ肉体に支配される精神。物事の見方がそうなってしまうと生きづらいだろうなと思いながらページを捲っていた。
主人公は生身の自身を嫌悪し、精神だけの存在である「柳佳夜」というペンネームに縋って生きてきた。小説、会社、自身の性、すべてがままならない状態の中、「柳佳夜」という同姓同名のVTuberの存在を知る。Twitterにおいて、自分の存在を塗りつぶされて消されていく恐怖に襲われた主人公はVTuberの正体を探り始める。
内容をまとめるとこんな感じなのだが、言葉では表せないぐらいの重苦しさと嫌悪感に囚われながら読み終えた。肉体と精神を分離しなければ耐えられないほどの現実を送りながら、人を蔑み高みから見下ろしているかのようなスタイル。昨今の、SNSの影響で自己顕示欲に押しつぶされそうになっている若者を究極形を主人公に見た気がした。 -
Posted by ブクログ
彼女はうまい。グロテスクな・想像もしたくない情景を、読める範囲で、リアルに描くのが。
性暴力、国際結婚(必ずしも裕福とは限らず、夫婦の間には格差もあることがある)、性マイノリティ、そして外国人の貧困問題。リアルだ。
前編である、『ポラリスが降り注ぐ夜』も読んでみたい。
p.14 「望んでもなかなか手に入らないもの、自由(リバティー)、学位(ディグリー)、給料(サラリー)。望まなくても勝手についてくるもの、家族(ファミリー)、カロリー、政府(ミニストリー)。」
p.21 勃起し射精できる男子と、生理が始まって妊娠できる女子。身体だけが一丁前に成熟しているのに、精神はまだ猿同然。男子は、電気あんまやかんちょーといったおふざけに興じ、女子はイケメンやアイドルの写真を回覧したキャッキャッ騒いだ。そんな人間の群れが学校と言う俺に閉じ込められていると、様々な色恋沙汰と当たり前のように付きまとう僻みや妬み、恨みといった負の感情、そしてそこからくる厄介ごとがあちこちで勃発していた。
p.59 誰かに頼る事は、従属し、支配されることだ。手を差し伸べる人は、程度や方向性の違いこそ、あれ、みんな多少なりとも、そんな支配を望んでいるのだ。それが、優しさの対価で、この世界の摂理なのだ。
p.80 おせっかいなんかじゃない。夏子の優しさは、切実な傷と痛みの経験から培われた、他者への想像力に裏打ちされたもので、それは一方通行の善意、つまり独善的なお節介とは本質的に違うのだ。独善は、毒のある善だ。
p.83 奈津子が言った通り、東京では1人で生きていくのは、簡単と言えば簡単だが、弱者が生き延びるで行くのは難しいのだ。
p.90 「拒絶されるのが怖い。排尿されるのが怖い。独りよがりの全員が怖い。こっちが願ってもないのに勝手に家族さらされるのが怖い。心に土足で踏み込まれるのが怖い。ジェシカを失うのが怖い。でも、対等じゃない関係がもっと怖い。依存し、16し、支配されるのが怖い。所有物とされるのが怖い。嫁姑問題とか、娘さん俺にくださいみたいな陳腐さが怖い。誰かに認めてもらわないといけない状況が怖い。何よりーー」自分の人生を自分で決められないのが怖い、とは口にできなかった。自分の人生だからって、自分で決められると思う方が傲慢と言うものだろう。
p.102 「恋は盲目(LOVE IS BLIND)、結婚は腐ったワイン(marriage rotten wine)、哀れな人間(Poor humankind)」
p.106 「時は過ぎ去り(Time goes by)、人々は別れを告げる(People say goodbye)。それが人生さ(that’s the life)」
p.115 笑って謝りながら、しかし、世間一般的に、親と同じ出身地の人間と結婚する場合の方が、ひょっとしたら多いのかもしれないと思った。あの島だって、多くの人間の一生は、島の中で完結するだろう。島で生まれ、育ち、勉強し、働き、恋愛し、結婚し、また子供を産む。美しい後の循環、閉じられた、完璧な輪。その輪に閉じ込められるのが嫌で、私は逃げ出したのだろう。
p.126 空覆い尽くしていた分厚い雲の層がいつの間にか割れていて、その切れ目から太陽の光が漏れ、幾筋もの金の光の束となって、港に降り注いでいた。港で入りしている船は、天啓を浴びているかのようだった。「天使のはしごだね」 -
Posted by ブクログ
李琴峰さんの作品を読むたびに、誰1人として同じ環境で育ったわけではなく、人知れぬ過去を持っているのかもしれないと気付かされる。
現代社会において、生まれた国や性別でマイノリティとして生きていかなければならない人が多くいる。そして少なくとも今の日本ではまだまだ生きづらさを感じている人が多くいる、その事実を直視したい。
舞台はコロナ禍に入ったばかりの日本と台湾。
主人公は台湾人の母と日本人の父の間に生まれたマヤ。台湾出身のパートナー、ジェシカとの会話の中でマヤの生まれ育った環境、島を飛び出してきたことを振り返りながら物語が進む。
女性、性的嗜好、親の国籍、幼少時代の性的暴行、家族とは。
複雑だが小説を通して学び知ることは多い。物語だからこそわかることが多くある。 -
Posted by ブクログ
台湾出身の芥川賞作家のエッセー。
芥川賞受賞作品も、お名前も知りませんでしたが、日本語教師の視点で面白いと思える箇所がいくつもありました。
なかでも、最初に覚えた仮名文字は片仮名で、その理由がポケモンだということ。外国籍児童にも、ポケモンの名前は片仮名学習に効果的でした。
漢字圏の出身者だから日本語習得に有利ということはない、というのは、多くの在住中国人の方を見てきて感じていることで、この方の日本語の自然さは、本人の言うように「不断な努力と格闘によって手に入れたもの」なのでしょう。
努力もせずに、外国語の習得をあきらめている人に読ませたい。 -
Posted by ブクログ
個人と個人を隔てるもの。属性と属性を隔てるもの。綺麗事を並べて無くなったかのように見せても、透明になっただけでそこにあるもの。正しさに立脚するように見えて、その実そうではないもの。
透明な膜を隔てながら、他者を尊敬し理解しようとする試みの記録。
“普遍性を探求しようとする日本文学は、しばしば「個」や「個」を含むコミュニティに作用する大きな力と、決して相対化してはならない「特殊性」「固有性」を見落とすキライがある。”
まさに。
その行き着く先は、政治性や社会性の排除、弱者に対する差別や偏見の無化と不可視化、そして現実に対する批判性の欠如である。 -
Posted by ブクログ
7人の女性のセクマイとしての物語がとあるレズビアンバーで交錯する。
まず風景描写が良かった。
二丁目近辺の描写がびっくりするほど精確になされていてゲイの自分としては感心した(李琴峰さん自身もレズビアンとのこと)し、
台湾のひまわり運動についても雰囲気や温度感、匂いまでも伝わってきて、当時facebookで繋がっていた台湾の友人がたくさん情報発信をしていたが、むしろSNSを見るより伝わったかもしれない。
またセクシャルマイノリティの中でもバイセクシャル・レズビアン・トランスジェンダー、アセクシャル、日本人・台湾人・中国人と多様な恋模様・人間模様が見られていて、このあたりの解像度の高さもLGBT界隈の作品では意外と見られないものだと思った。
7人の物語が今ひとつにつながって大団円に…!という展開ではなくあくまで平行的で、それぞれの物語が淡々と進む。
苦い話も多く、特にトランスジェンダーの登場人物はやはりセクマイの中でも苦しいことが多いが、最後に少しだけ希望があるような終わり方をするのはやはりそれらの物語が交差する場がきらりと光る「ポラリス=北極星」だからだろうか。
★時間とお金のムダ
★★普通〜微妙
★★★よかった
★★★★心が動いた(感動した、意表をつかれた、ショックだった)
★★★★★人生の本棚に入れたい