李琴峰のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレディストピアの後の、ユートピア。そこは弛まぬ努力と歴史認識の確度で持ち堪える世界。決して楽しく幸せなユートピアではなく、過去の歴史から今を勝ち取り、誰からも奪わず、いや奪われたり奪った過去を神事として秘匿し、安寧を維持するのだ。
李さんは台湾育ち最初は独学で日本語を学び自らの書き言葉を日本語に定め、その背景からこの小説でも美しい言葉、その音や見た目を存分に駆使して、言葉が、入り混じる島の言語が核となり、マイノリティなんて概念が日常の暮らしでは必要ないかの暮らしぶりの小さな島で、マイノリティを包摂し、言葉と自然、植物、風、海に守り守られ暮らしを立てていく。
私たちの住むディストピア。
最近小説やニュースを読めば読むほどディストピアは架空や仮想ではなく、加速的に今ある現実だと思う。
大ノロは言う。
歴史を受け継ぐ責任は重い。昔のことを知っている人間は、常に先のことを考えながら生きていかねばならんからな。
歴史を女たちに手渡す。
一般的な家族概念、地のつながり、血縁からの解放。
クニの支配を逃れ争わない、歴史を男に渡さない。
不安定な今を、ノロとなった女の子たちは少し先を見据えながら歴史を知り死者を想い未来をひらいていく。
-
Posted by ブクログ
凄い...。言葉・身体・存在・行動。それに向けられる悪意。それと葛藤する"人間"を抉る物語でした。ある場面では現実の差別が我が事のように悔しくて涙が出た。ある場面では言葉・身体・存在(例えばSNSアカウントも存在の一つ)・行動への希望を得た。
自分も身体への違和感や苦痛は子どもの頃から持っているけれど、それとは別に、性暴力に遭って以来後遺症でどんどん身体がままならなくなり、本もゆっくりしか読めなくなってしまった、そんなままならない身体の今ゆっくりでもこの本を読み終えることができて良かった。
ラストに向かう描写の悲哀というか皮肉というか、表現が正しいか解らないが"自分が成仏する"ような感覚を得た。主人公が"言葉の重み"を獲得するに至る場面に震えた。李琴峰さんの小説はどんどん凄い場所に昇っていく(語彙力がなくてすみません)。出会えて良かったし、ぜひ読んでほしい作家さんです。
個人的な身体感覚を一つ話すと、私は心に刺さる小説を読むと生きていることへの確信を得たように身体が内側から震え出して、地面から浮き上がるように魂が軽くなるのを感じる。どんな時も本は光。素敵な小説を読ませてくれてありがとうございます。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ終わり方まで須く好みだった 文章自体もさらりと重すぎず植物のようだ 女子校時代に抱いた感覚を呼び起こさせる 小旻の最後のエピソードが胸に刺さる 彼女が殆どのキャンディをかつての同士たちに渡す気持ちが痛いほどわかる なぜならセクシャリティの変化は以前のコミュニティに属せなくなる可能性を秘めているからだ 特にレズビアンであるというセクシャリティで強く繋がった絆の中では
キャラクターが濃い作品ではない 皆密やかに生きている 木のテーブルの丸い跡をありありと想像できる 木蓮の香りや窓を開けた際の風にそよぐその葉のさまも ジワジワと心に沁みる作品だった
この小説が書かれた時には台湾ではまだ同性婚が許されていなかった 今はもう特注でなくてもウェディングケーキに飾るボイタチの新婦の人形は手に入るのだろうか これを読んで同性婚が家族の在り方の根本に関わるなんて言えないはずだ だって彼らはずっといるのだから
また翻訳者である李琴峰氏の解説も非常に興味深い 台湾のレズビアン文学と日本のものとの対比とある種の批判が書かれている 社会へのコミットの仕方の違いだ これはレズビアン文学に限らず現在も日本という国が共通に持つ課題であろう 権利を勝ち取った国と与えられた国の対比なのかもしれない
-
Posted by ブクログ
ネタバレ「台湾の地方出身者であること、女性であること、性的招集者であること、外国人であること、非母語話者であることー多くのマイノリティ属性を否応なしに押し付けられている身として、私は生きているだけで常に様々な隔たりを感じている。(あとがきより)」
社会においてマイノリティであることで、差別的な扱いを受けたり、無意識に気づ付けられることがある。そして私たちの多くはそれがわかっているようでやはり分らぬままこの社会を生きている。
マジョリティになることもあればマイノリティになることもある。否、この発言こそが何か違和感を感じるところであるが、これ以上なんといえばいいのか、閉口すべきなのだろうか。
著者自身のことを「台湾で生まれ育ち、自らの意思で日本に移住した一個人」に過ぎないという。本人がおっしゃるのだからそれ以上でも以下でもない。この姿勢が作品にも表れており、力強い作品となっているのだろう。
私たちの周りには目には見えないが、自分と他者を隔てている、気を抜けば忘れてしまうまさに「透明な膜」がある。著者はその膜に穴をあけようと、言葉紡ぎ続けている。
これはなんという美しい行為なのだろう。自分で臨んだ生まれたわけでもないこの世界に生を受けて生きることは、とても苦しくつらいものだ。だからこそ生きることがこんなにも輝くのかもしれない。
著者の紡ぐ言葉はとても魅力的だ。その言葉が心に刺さり、喜怒哀楽様々な感情が残る、いい意味でへばりついてくる、そんなエネルギーを感じていた。今回このエッセイを読み、少し理解できたような気がしている。
李琴峰氏だからこその表現や物語がここにある。それは紛れもない事実であって、私はこれからもその言葉を楽しみに生きようと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ初めての李琴峰さんの作品。台湾出身という日本語を母国語としない彼女が書く圧倒的な語彙力に驚かされる。
そもそも彼女の本を読むきっかけは、早稲田大学の冊子に投稿した文章を読んだから。「早稲田に留学に来た当初拙い日本語で、、、」と流暢さと博識ぶりが溢れた文章。2013年来日とはまだ10年経っていないではないか!興味が湧いた。
新宿二丁目にあるレズビアンアバー「ポラリス」を取り巻く台湾、日本、中国で育った彼、彼女らの苦悩の人生、様々な性自認。7つの短編小説に、過去から現代までの変化の中に作者の思いが込められている。
新宿の道端で人生相談をしているくだりが印象深い。ー神よお与え下さい。変えられるものを変えていく勇気を。変えられないものを受け入れる冷静さを。そしてその両者を識別する知恵を。ー
人は1人では生きられない。見えないが為、知らないが為に他者を傷つけてしまうことがないように生きたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ台湾の百合小説を李琴峰さんの翻訳で読める、という。
これは読まないわけにはいかない。
1982年生まれの私の学生生活、憧れの先輩、恋と別れ。
繊細な筆致によって、恋愛だけではなく高校生という少女から大人になるときの脆さや危うさを描いた作品。
好きな人の名前を呼ぶ、出会う、その一瞬の特別な、何もかもが新鮮で瑞々しさに溢れていたとき。読んでいて涙が出そうになりました。恋をするってこういうことだったな。
たぶん原文の味をちゃんと残していると思われる、李さんの翻訳も素晴らしいと感じました。ところどころ、日本語っぽくない語順になっているのが面白い。
#向日性植物 #NetGalleyJP -
Posted by ブクログ
すごいよかった!!!!!!!!!!
女を好きな女たちの話で、自分が知らなかった色々について触れていたり、トランスジェンダー女性の話が出てきたりして物凄く好きだな…と思った。
夏子の章で、オーストラリアに行った先で出会った人が、30歳のことを「みにくいアヒルの子がちょうど白鳥になる頃」と表現していてすごく良かった。それを聞いた後の夏子の独白もすごく良い。
三十歳。日本でなら、白鳥も老い衰える頃だろう。そもそも白鳥になんてなれないのかもしれない。生まれてから死ぬまで、ずっとアヒルのままかも知れない。
この独白が日本での窮屈さを表現していると感じてすごく気に入った。 -
Posted by ブクログ
LGBTQや性的マイノリティと括って理解したつもりになって安心してしまう(私も含めた)マジョリティたちへ突きつける小説だった。(SDGs=エコ みたいなね)
彼らはマーケティングの道具じゃないし、国籍や性的志向、性自認に年齢も異なる個別具体的な人間なのだと。インターセクショナリティという言葉を理解するとっかかりになる物語。
台湾や中国の政治について、トランスジェンダー女性のレズビアンについて、必要なのは理解や共感ではなく「制度と権利」なのだと感じた。マジョリティがそれについて扱うときの無邪気な暴力に、ほんとにほんとに自覚的にならねばならないと思う。