あらすじ
台湾で生まれ、15歳までは「あいうえお」も知らなかった著者は、日本語の何に魅了されたのか。第二言語として日本語を学ぶことの面白さと困難さ──。日本語への新たな知見があふれる、芥川賞作家による珠玉のエッセイ集。
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Posted by ブクログ
元々は中国語(台湾華語)話者である著者が、日本語に興味を持ったことをきっかけに、作家として知られるようになるまでの時期をつづった自伝的エッセイ集。
文章は明晰で、とても読みやすかった。著者の考え方や指向性がしばしば顔をのぞかせる点も魅力的だ。
なかでも、日本語を言語学的な視点から見つめ、分析する部分が特に興味深かった。
Posted by ブクログ
台湾出身の著者がどのようにして日本語を学んでいったかがよくわかる。著者は、日本語教師の経験もあり、日本語教員の勉強をした私にとって興味深い内容もたくさんあった。
同じく台湾にルーツを持つ作家、温又柔の祖父母は日本語を話せたが、著者の祖父母はそうではなかった。日本占領下の台湾人は皆日本語が話せるものと思っていたので少し驚きだった。著者の祖父母は田舎に住んでいたそうだ。地域によってそのような差がある事を初めて知った。
日本語の仮名は、「同じ文字であれば、どこで現れても発音は同じ」(p37)というのは日本語母語話者の私には当たり前過ぎて気付かなかった。例えば、英語では同じ「i」でも単語に寄って発音が異なる。iceとpigのように。
それから、日本語ではないが韓国語のハングルの子音は、調音部分を表しているのも初めて知って目から鱗だった。
Posted by ブクログ
日本語を愛する台湾生まれの作家さんのエッセイ。日本語を好きになった経緯を述べ、日本語と中国語・台湾語の特色を挙げる。改めて日本語の特色を教えてもらう。母語話者では意識せず気の付かないところに光を当ててくれる。だからこそ、日本語からの祝福、そして日本語への祝福なのだな。
Posted by ブクログ
言語学・日本語教育学に興味のある方におすすめです。大学入試の国語の問題や、小論文の課題文に引用されてもおかしくないような内容でした。
著者が小・中学生の頃に、どのように日本語に触れ、学習していったのかという点は、第二言語学習得において参考になります。
特に印象に残った章は「小さい魚は催眠術をかける」「日本語お上手ですね」です。
日本語は当たり前にあるもの過ぎて、形がどうだとかいちいち考えたことがありませんでした。しかし、日本語の「文字の形の美しさ」が「日本語への興味のきっかけ」ということで、そのような捉え方があるのだと気付かされました。
また、「日本語お上手ですね」という言葉の受け止め方も、考えさせられました。その理由を考察されていましたが、納得です。