李琴峰のレビュー一覧
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ジェンダーっていうのはアイデンティティの根幹を為す部分だと思うから、そこが揺らいでいたり、周りに認めてもらえないというのはすごく辛いだろうな。あと、オードリー・タンの印象が強いけど、台湾でももちろんまだLGBTへの差別が強いんだなと改めて感じた。
読み進めるうちに連作小説になっていることに気づいて、構成もよかった。多種多様な人たちのジェンダーが描かれているけれど、この作品から感じたのは今の時代に至るまでの新宿2丁目の文化を気づいてきた人たちへの敬意だった。まだ広くLGBTという知識がなかった時代から地道に、連綿と居場所を築き上げてきてくれたことへの感謝の念に溢れた作品だった。 -
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ネタバレ台湾生まれの著者による2篇の物語から成る。双方とも同性愛、外国人という二重のマイノリティを持つ女性が主人公となっている。
五つ数えれば三日月が
自分自身が社会のパズルにはまり切れていない二人、自分が望む関係は分かっているのに、同性愛という(ストーリー上)超えられない壁があるが故にその方向に進めないもどかしさが何とも切ない。
ストーリーの面白さもあるが、情景描写がかなり特徴的である。特に主人公の梅が主人公の同級生と口づけとして家出したお寺のシーン、実桜と梅が花火をするシーンは文章からも美しい情景が浮かんでくる。実桜へ漢詩で想いを伝えるところもまた印象的だった。
セイナイト
一方こちらは交際をしているカップルの物語である。舞台はクリスマスの写生大会という不思議な感じだが、東京ではこのような場もあるのだろうか。絵舞との関係や、自分の使う日本語など、自分が拠り所にしているものがいかに不安定かが伝わってくる。 -
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読んでいる最中からずっと、帯に書いてある「純愛小説」という単語があまりしっくりこなかった。確かに女性同士の恋愛を描いた作品ではあるけど、純愛小説というよりもっと生々しくてリアリティのある、ほとんどドキュメンタリーのような文章じゃないか。後半の作品では新宿二丁目の歴史までまとめられている。登場人物一人ひとりの切実な生き方が全部刺さった。読んでいて苦しいほどだった。
というレビューを投稿しツイートしたあと、エゴサしたらしき編集者さんから引用リツイートで「純『恋』小説なんです」と教えていただいた。帯をちゃんと見たらほんとうに「恋」だった! 確認不足で反省。それにしても純「恋」は純「愛」よりもずっとずっとしっくりくるなぁ。
セクシュアリティには細分化された名前がたくさんある。作品中でたびたび登場するさまざまな呼称は、その呼称をつけることそのものについても考えさせられた。名前をつけることで自分の類型がわかって安心する人もいれば、名前をつけられることで枠にはめられたような気分になる人もいる。私はどうだろう。少なくとも、その名前だけで自分や他人を判断することがないように生きたいと思う。
【読んだ目的・理由】著者の記事を読んで興味を持ったから
【入手経路】買った
【詳細評価】☆4.0
【一番好きな表現】自分が子供なんて作らなくても、自分の遺伝子なんて後世に残さなくても、自分が刻んだ命の軌跡は人間の営みと共に、連綿と受け継がれていく。(本文から引用) -
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いろんな人の性への考え方があって、理解できるものもあれば出来ないものもあった。
自分の性に対する考えをもっと整理したいと思った。
藤野可織さんの話は首がもげるほど共感できた。
特に共感した部分。
「私は自分が子どもを望んでいるのかどうかわからなかった。いくら考えてもわからなかった。私は体力がなくて、だいたい無気力で、まともな生活もできず、一般の人よりも劣っていると言う感覚があった。子供なんて産んでしまったら責任のある決定をたくさんしなければいけなくて大変だし面倒だし疲れるだろうと思った。」
「私は、自分をコントロールできるということに振り回されていた。当たり前でありながら得難い素晴らしい権利に気持ちをぐちゃぐちゃにされ、一瞬ごとに子供がいてもいいと思ったりいたら終わりだと思ったりしていた。自分が情けなかった。」 -
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ネタバレずっと読んでみたいと思ってた本。
生まれる前の赤ちゃんが、自分の意思で生まれるか生まれないかを決められる世界があったらとても面白いと思った。
けど読んでみて実際にこの制度があったとしたら、生まれないと選択された側の母親の気持ちになるととても悲しい気持ちになる。産みたくても産めないし、産んだら罪になるなんて重たい話だなと思った。
小説の中の「自分の意思で決めることが重要なのではなく、それが自分の意思だと信じ込むことが大事」という文が心に響いた。
主人公が、合意出生制度にずっと賛成だったにも関わらず、いざ自分の立場になって反対された時に、合意出生制度なんてなかったらいいのにという気持ちになっていて、人間はどんなことでも自分に置き換えて、自分に利益がある方に考えがちなんだなと強く思った。
(3.6) -
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リレーエッセイ方式で17人の書き手が
『私の身体を生きる』という性をテーマに綴った作品。
想像していた感じと、かなり違っていた。
同じテーマでも書き手によって随分とみえる世界が変わるものだ。編集者から依頼された形で綴っているためか、何となく及び腰に感じる作品も少なくない。
女性しばりでリレーエッセイ集にした意味する所も、問いたいが、赤裸々告白をするものから、トラウマ的な内容を飄々と語ったものまで、多種多様・・・
トップバッターの島本理生さんの作品だけは、眠っていたような共感が呼び起こされる様な感覚があった。
恋愛ものがお得意な作家さんだけに、性の役割にも飄々と鋭い着眼点をお持ちだ。
色々な考え方や捉え方があるんだなぁと感じる一方、敢えて?競い合って?マイノリティ側に寄って描いている様に感じるものもあり、私にはあまり馴染まなかった。
性の話が公にはタブーとされていた時代を生きてきたからか、この歳になってそういう話ができる方が見つかると一気に距離が縮まる。
人によっては幾つになってもタブーなので、手探りと嗅覚?笑で探し当てる感覚に近い。
このテーマで男性バージョンもあったら読んでみたい。
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【目次】
Better late than never(島本理生)
肉体が観た奇跡(村田沙耶香)
「妊娠」と過ごしてきた(藤野可織)
身体に関する宣言(西加奈子)
汚してみたくて仕方なかった(鈴木涼美)
胸を突き刺すピンクのクローン(金原ひとみ)
私は小さくない(千早茜)
てんでばらばら(朝吹真理子)
両乳房を露出したまま過ごす(エリイ)
敵としての身体(能町みね子)
愛おしき痛み(李琴峰)
肉体の尊厳(山下紘加)
ゲームプレーヤー、かく語りき(鳥飼茜)
私と私の身体のだいたい五十年(柴崎友香)
トイレとハムレット(宇佐美りん)
捨てる部分がない(藤原麻里菜)
私の三分の一なる軛(児玉雨子) -
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「汚してみたくて仕方なかった」鈴木涼美
売春が無くならないのは、男側の問題の方が大きいけど、自分に値打ちが付くことに依存する女側の問題もあるのかもしれないと思った。女は性処理として利用されてきた時代が長く続いたせいもあり、完全に無くすことは難しいのだと悟った。
「トイレとハムレット」宇佐見りん
面白かった、、!確かに腹痛と苦悩のポーズは似ている。舞台が好きな理由として「シンプルだから」っていうのはすごく腑に落ちた。たった一つの物語、感情を演じているだけだもんな。現実の方が感情ごちゃ混ぜで騒がしいもの。
「私の三分の一なる軛」児玉雨子
生物は毎日ちょっと死んでおかないと生きられないって興味深い。睡眠を取ること=意識を手放すことが「生」繋がるのだとしたら、なんか「死」も生の延長のような気がして、恐怖心が払拭できる気がする。
自分は随分と「身体」というものに向き合っていなかったのだと思ったのと同時に、向き合わなかったという事はそれだけ健康であり、真っ当な人生を歩んでこられたという事なのかもしれないと思うと、親や環境に感謝した。でも1番大事な事は、何も深く考えず、ただ「人間」という生物として生きていく事だけを考えることかもしれない。