あらすじ
多様な性的アイデンティティを持つ女たちが集う二丁目のバー「ポラリス」。気鋭の台湾人作家が送る、国も歴史も超えて思い合う気持ちが繋がる7つの恋の物語。
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Posted by ブクログ
初めての李琴峰さんの作品。台湾出身という日本語を母国語としない彼女が書く圧倒的な語彙力に驚かされる。
そもそも彼女の本を読むきっかけは、早稲田大学の冊子に投稿した文章を読んだから。「早稲田に留学に来た当初拙い日本語で、、、」と流暢さと博識ぶりが溢れた文章。2013年来日とはまだ10年経っていないではないか!興味が湧いた。
新宿二丁目にあるレズビアンアバー「ポラリス」を取り巻く台湾、日本、中国で育った彼、彼女らの苦悩の人生、様々な性自認。7つの短編小説に、過去から現代までの変化の中に作者の思いが込められている。
新宿の道端で人生相談をしているくだりが印象深い。ー神よお与え下さい。変えられるものを変えていく勇気を。変えられないものを受け入れる冷静さを。そしてその両者を識別する知恵を。ー
人は1人では生きられない。見えないが為、知らないが為に他者を傷つけてしまうことがないように生きたい。
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すごいよかった!!!!!!!!!!
女を好きな女たちの話で、自分が知らなかった色々について触れていたり、トランスジェンダー女性の話が出てきたりして物凄く好きだな…と思った。
夏子の章で、オーストラリアに行った先で出会った人が、30歳のことを「みにくいアヒルの子がちょうど白鳥になる頃」と表現していてすごく良かった。それを聞いた後の夏子の独白もすごく良い。
三十歳。日本でなら、白鳥も老い衰える頃だろう。そもそも白鳥になんてなれないのかもしれない。生まれてから死ぬまで、ずっとアヒルのままかも知れない。
この独白が日本での窮屈さを表現していると感じてすごく気に入った。
Posted by ブクログ
LGBTQや性的マイノリティと括って理解したつもりになって安心してしまう(私も含めた)マジョリティたちへ突きつける小説だった。(SDGs=エコ みたいなね)
彼らはマーケティングの道具じゃないし、国籍や性的志向、性自認に年齢も異なる個別具体的な人間なのだと。インターセクショナリティという言葉を理解するとっかかりになる物語。
台湾や中国の政治について、トランスジェンダー女性のレズビアンについて、必要なのは理解や共感ではなく「制度と権利」なのだと感じた。マジョリティがそれについて扱うときの無邪気な暴力に、ほんとにほんとに自覚的にならねばならないと思う。
Posted by ブクログ
レズビアンものの小説を読んだことが初めてなので新鮮だった。
日本国外のレズビアン運動や、新宿二丁目に関する知識がなかったため読んでいて馴染みのない要素が多かった。
文章としては読みやすく、登場人物の感情の機微も共感できるものだった。
Posted by ブクログ
新宿二丁目にあるバーのポラリスを巡り人が人を愛するのに異性愛や同性愛やトランスジェンダーの愛などの違いはなく、すべて愛しい人に対する愛であることが分かる。台湾出身で日本語で小説を書いている李琴峰さんの作品。
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7人の女性のセクマイとしての物語がとあるレズビアンバーで交錯する。
まず風景描写が良かった。
二丁目近辺の描写がびっくりするほど精確になされていてゲイの自分としては感心した(李琴峰さん自身もレズビアンとのこと)し、
台湾のひまわり運動についても雰囲気や温度感、匂いまでも伝わってきて、当時facebookで繋がっていた台湾の友人がたくさん情報発信をしていたが、むしろSNSを見るより伝わったかもしれない。
またセクシャルマイノリティの中でもバイセクシャル・レズビアン・トランスジェンダー、アセクシャル、日本人・台湾人・中国人と多様な恋模様・人間模様が見られていて、このあたりの解像度の高さもLGBT界隈の作品では意外と見られないものだと思った。
7人の物語が今ひとつにつながって大団円に…!という展開ではなくあくまで平行的で、それぞれの物語が淡々と進む。
苦い話も多く、特にトランスジェンダーの登場人物はやはりセクマイの中でも苦しいことが多いが、最後に少しだけ希望があるような終わり方をするのはやはりそれらの物語が交差する場がきらりと光る「ポラリス=北極星」だからだろうか。
★時間とお金のムダ
★★普通〜微妙
★★★よかった
★★★★心が動いた(感動した、意表をつかれた、ショックだった)
★★★★★人生の本棚に入れたい
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私意外が仲の良い、あまり知らない人たちのグループの中で、身を潜めている。
会話の内容が、私の日常の円とは全く重ならなくて、でもその集団では、当たり前でくくられている。
そんな感じだから、会話に入ることもできなくて、かと言って無表情なのも異物になってしまうから曖昧に微笑んでいる。
そんな気持ちに似ているのだろうか。
想像したところで、本当のことは当事者でないと分からない。分からないけれど、知ることはできる。
Posted by ブクログ
意味合いが違うけど ジュンパ・ラリヒさんの「その名にちなんで」を思い出した。
マイノリティとして生きること、そういう風にカテゴリーに分けられること。そしてカテゴリーに分けることは誰がやるの?…そんな疑問はいつも持っとかないと知らずに「たくさんいる派」の理論で押してしまう…
Posted by ブクログ
夏の白鳥のお話が好きでした。一つ一つの物語の登場人物が繋がっていてそれぞれ全く違う背景があって中国台湾日本オーストラリア昔の日本と複数の場所と時代を横断しているけど繋がっていて面白かったです。あと街中人生相談やってる人に相談しに行くところも、どんな相談乗ってくれるんだろうと思ってたので少し知れて良かったです。
Posted by ブクログ
ジェンダーっていうのはアイデンティティの根幹を為す部分だと思うから、そこが揺らいでいたり、周りに認めてもらえないというのはすごく辛いだろうな。あと、オードリー・タンの印象が強いけど、台湾でももちろんまだLGBTへの差別が強いんだなと改めて感じた。
読み進めるうちに連作小説になっていることに気づいて、構成もよかった。多種多様な人たちのジェンダーが描かれているけれど、この作品から感じたのは今の時代に至るまでの新宿2丁目の文化を気づいてきた人たちへの敬意だった。まだ広くLGBTという知識がなかった時代から地道に、連綿と居場所を築き上げてきてくれたことへの感謝の念に溢れた作品だった。
Posted by ブクログ
読んでいる最中からずっと、帯に書いてある「純愛小説」という単語があまりしっくりこなかった。確かに女性同士の恋愛を描いた作品ではあるけど、純愛小説というよりもっと生々しくてリアリティのある、ほとんどドキュメンタリーのような文章じゃないか。後半の作品では新宿二丁目の歴史までまとめられている。登場人物一人ひとりの切実な生き方が全部刺さった。読んでいて苦しいほどだった。
というレビューを投稿しツイートしたあと、エゴサしたらしき編集者さんから引用リツイートで「純『恋』小説なんです」と教えていただいた。帯をちゃんと見たらほんとうに「恋」だった! 確認不足で反省。それにしても純「恋」は純「愛」よりもずっとずっとしっくりくるなぁ。
セクシュアリティには細分化された名前がたくさんある。作品中でたびたび登場するさまざまな呼称は、その呼称をつけることそのものについても考えさせられた。名前をつけることで自分の類型がわかって安心する人もいれば、名前をつけられることで枠にはめられたような気分になる人もいる。私はどうだろう。少なくとも、その名前だけで自分や他人を判断することがないように生きたいと思う。
【読んだ目的・理由】著者の記事を読んで興味を持ったから
【入手経路】買った
【詳細評価】☆4.0
【一番好きな表現】自分が子供なんて作らなくても、自分の遺伝子なんて後世に残さなくても、自分が刻んだ命の軌跡は人間の営みと共に、連綿と受け継がれていく。(本文から引用)
Posted by ブクログ
淡々と日常の恋愛、悩みを短編という形で小説に書いている同性愛者、他にも用語がたくさんあり覚えきれないが様々な形があることをこの作家から知る。内容は事件や衝撃的なインパクトある話ではないので忘れてしまうけど何故か読みたいと思うのは何が魅力なのか考えた結果、主人公の内奥を覗いているからだと気づく。だからミステリーや刑事物を読みたいとは思わなかったのだ。この歳で読書傾向に気づくとはどんだけ暇つぶしだけのために読んでいたのかがわかる。そして本を読むことは教育にいいのは読んで考えるひとらに当てはまり暇つぶしで読んでいたらためになった、影響を受けたということはいっさいない。
この作家から影響を受けた、読んでよかったと読み終えて余韻に浸りながら自分の糧になったこともこのサイトに書いていく事を今年の目標にしよう。
Posted by ブクログ
新宿二丁目にあるレズビアン・バーに立ち寄る女性たちを描く連作短編集。その中にはもちろんレズビアンもいれば、バイセクシュアルも、Aセクシュアルも、トランスジェンダーもいるし、彼女たちの中の多くは当然のように、日本出身者ではない。性的マイノリティの女たちの、最初から国境で分断されることのないつながり、そうした女性たちを受け入れるアジア最大のゲイタウン二丁目の懐の深さを描き出している。
ただ、ひとつひとつの章で登場人物の背景が懇切丁寧に説明されるようなパターンがくりかえされ、ここに集う人々の多様さを伝えることが目的化されすぎているようにも感じた。せっかく小説なのだから、彼女たちの多様さだけでなく複雑さに触れるような瞬間がもっと欲しかったと思う。
Posted by ブクログ
新宿二丁目のレズビアンバー「ポラリス」に訪れる様々な人たちの話。
私は性の違和感を持ったことがないので、違和感を持って生まれた人の大変さは自分なら耐えられないだろうと思う。自分自身の問題としても大変なのに社会とも闘わなくてはいけないなんて、ハード過ぎる。
私は人間というカテゴリーでしか見ないので、そういうのは気にしたことがない。セクシャルマイノリティより人間としての性格の方が私にはずっと重きがある。良い人か良い人じゃないかの方がずっと大切なこと。
あまり知識がないので色々な違いとか悩みとか、とても興味深かった。
ノンフィクションっぽい?
すごくリアルで、物語というより、ノンフィクションなんじゃないかと思った。
特に台湾や中国のLGBT事情や社会問題については日本人では漠然としか分かり得ない真実のようなものを感じた。
当事者としてはきっとここが舞台なんじゃないかとか、掲示板でビアンはこういう誘い方するなぁとか共感できる部分が多かったです。
評価低いのは個人的に文章読みにくいなと感じたからです。