李琴峰のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この作品の舞台は
子供を産むためには
その子供の本人からの同意が必要になる
「合意出生制度」が浸透した近未来の世界。
子供自身が
「生まれる意思」を持って生まれたからこそ
自分の生を恨むことなく
後悔せずに力強く生きることができる。
だからそれは正しい制度だと
多くの人々は信じて疑わない。
子供が「生まれたい」と同意した時は
それでいいだろう。
「生まれたくない」と結果が出た時
胎内に子を宿してから
胎動を感じ 愛情を注ぎ続けた
母親の気持ちは
激しく踏みにじられてしまう。
「合意出生制度」の検査が
本当に正しいものだと
誰も確実には言えないのに。
従わなければ
法を犯すことになってしまうなんて…。
人間はより良い社会にするために
日々努力をしているけれど
その努力した先に
このような法律ができてほしくないと
強く感じた。
母である彩華は
「人生の初っ端から自分の意思が
無視されたという事実が、この子にとって
一生解けない呪いになるかもしれないって
そんな気がするの。
私は自分の子供の出生に、呪いじゃなくて
祝いを捧げたい、
それが合意出生制度がもたらした
最大の恩恵でもあるでしょ?」
そして自分の身勝手な願望の産意で
産んではいけないと決断した。
それはその社会で生きているからこそ
そういう考えに至ったのかもしれない。
私はその社会に生きていなくて
本当に良かったと思った。
人生は幸せばかりではない。
辛いこともたくさんある。
それでも そんな人生でも
私はこの世に生まれてきて良かったと
何十年も生きてきて
やっと 今
心から感じられるようになったのだから。
そう思える自由がある
現代社会に生まれてよかったと
この作品を読みながら感じました。 -
Posted by ブクログ
凄かった。エッセイというものをほぼ読んだことがなかった私にとって強烈な読書体験だった。
ほんタメというYouTubeチャンネルで紹介されており興味を持って読んでみた。これは、映像化はきっと難しい、本という媒体のみを通して伝えられる感覚だと思った。
共感できる部分も多く、一方で共感できなかったあの子の振る舞いはこんな感覚にルーツがあったのではと思い至るところもあって、強烈に胸に響いた。私の感じたもやもやを言語化してもらったようで嬉しさもあった。自身も女性性を元とした経験はポジティブ面、ネガティブ面ともにあり、同じような経験をした作家がそれをどう捉えるかを聞けたことが嬉しかった。
性に関する体験をもとに感情が描かれていて、一読するだけでは飲み込みきれなかった部分もあった。一作ずつ丁寧に読みといていきたい。 -
Posted by ブクログ
「私の身体」を「生きる」とは何だろう。いや、「私の身体」とは何だろう。そもそも、「私」とは何だろう。
各作家たちの切り口は様々だが、みな共通しているのが、己という存在を不可欠に構築するこの肉体というものの生物的な役割にも社会からの眼差しにもかなり戸惑い、苦しみ、受け入れたり受け入れられなかったりしながらどうにか生きている点で、強く連帯感を持ちながら読んだ。
痛ましさを感じたのが、執筆陣の女性たちはほぼほぼみな性被害の経験がある点。私にもあるし、私の友人たちもほとんどあると思う(学生の頃、痴漢が話題になったとき、その場にいた10人ぐらいのなかで痴漢に遭ったことがない子は1人しかいなかったことを覚えている)。この社会で、そうやって女性は、否応がなしに「私の身体」は本当に私のものなのかと、「私」がモノとして扱われ得るということに向き合わされてしまう。時には、まだ第二次性徴も迎えていないうちに。だからこそ、このようなアンソロジーが興味深い。
とはいえ男性視点の「身体」やその社会的表象については私にはわからない部分なのだが(この辺りのアンコンシャスバイアスについて、鳥飼茜さんとパートナーの方との会話が面白かった)。男性作家たちに、同じテーマでアンソロジーを書いてもらったらどのようなものが生まれるのだろう?と好奇心を抱く。