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Posted by ブクログ
難しすぎず格式高い美しい文章が心地よい。私が読む日本の現代小説ではあまり見ない熟語が使われていて文章のリズム感も良い。杜甫の『春望』『贈衛八処士』、邱妙津の『ある鰐の手記』『モンマルトルの遺書』、中山可穂の『白い薔薇の淵まで』などの作品が散りばめられ、著者が漢詩や日本の小説に精通していることが窺い知れる。この作品がデビュー作であることに驚く。
主人公・紀恵が精神的に追い込まれていく様子がすごくリアルで苦しかったし悲しかった。紀恵に対して台中女中の女の子たちが攻撃的なところや薫が拒絶する場面は悔しくて歯痒かった。こんなふうに扱われる必要性なんてないのに!鬱になってしまった紀恵が狂乱している己とそれを俯瞰する理性的な己に分離している状態が日記形式によって上手く表現されている。
ストーリーの途中からバッドエンド寄りにどんどん進んでいったのでハラハラしながら読んだ。初めからずっと死の予感はあって、もう破滅的結末に突き進むしかないのかと諦めかけていたがそうでなくて本当に良かった。終盤に小雪と話して「自分で、良かった」の箇所で泣いてしまった。ずっと呪っていた「災難」が自分の愛する者に降り掛からなくてよかったと瞬時に思えるその心根が尊い。
著者の他作品も読みたいし、『ある鰐の手記』読みたすぎる。復刊してくれ〜〜〜
Posted by ブクログ
文体・構成の工夫と、終盤の崩しが主人公の心情と見事に響き合うデビュー作。
最近は李琴峰にはまっている。広い意味での少数派からの視点という意味で共感できる部分が多いからかな。
これで3冊目。どれもテーマが明確である。
本作品は著者のデビュー作で、セクシャルマイノリティであることの生きづらさがテーマである。簡単に言ってしまえばだが。実態はもっと深い。
文体と構成に特徴がある。
主人公は「彼女」と呼び、その他は徹底して固有名で呼ばれる。三人称の文体というわけではない。「彼女」をすべて「私」に置き換えても成立する。この文体は、自身が分裂してもう一人の自分を眺めているような感覚をもたらしているように感じた。
物語の終盤までは現在・東京と過去・台湾を章ごとに行ったり来たりする構成になっている。最後の4章でパターンが崩れ、物語は大きく展開する。この効果は絶大で、主人公の心の動きに見事に連動している。
明治の文豪が使うような難しい熟語や漢詩がときどき登場し、中国語・日本語文学への造詣の深さが伺える。
といっても文章は実に読みやすい。
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