斎藤真理子のレビュー一覧
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韓国の手芸ポシャギを連想するような淡い色彩の表紙が印象的な本作は、身体的・精神的回復を目的とした医療の一環として長期の休暇で冬眠をする患者と、その様子を終始見守る冬眠ガイドとの共同生活を描いている話の連作になっているが、実際には冬眠ガイドという職業は存在しないのでSF的短編集と言えよう。人間も古の時代では、食料のない季節に冬眠していただろうという説はあるようだが、絶望と疲弊に満ち溢れた日常生活を送っている現代人にも長期の休養は必要だ。でも、薬による長期間の睡眠は体に良くないのでは?と心配になったが、寒い季節が苦手な自分は冬眠願望はあるので、一度経験してみたい。巻末の訳者あとがきで触れているように、パク・ソルメの描くこの不思議な世界は、睡眠と散歩と友情が大切なものだということを感じさせてくれている。冬眠者を見守りながら、散歩したりランニングしたり読書をしたり編み物をしたりというゆったりした時間を過ごせる冬眠ガイドという仕事は、時間拘束があるため終始緊張感はあるものの、自分の心をじっくりと見つめ直す時間もありそうで、意外と魅力的な仕事かもしれない。不安定な現代社会だからこそ創造された職業だと思う。タイトルにある「影犬」という言葉は初めて目にしたが、犬を大事にするお国柄なのか、もうこの世にいない犬の影法師が、心の病んだ人間の側に寄り添ってくるという。影犬と散歩して、ゆっくりと呼吸を整えることで、自分の心と時間の関係を修復できるという話が、とても素敵だ。韓国都市の地名と食べ物がたくさん登場して、現地に行った気分にもなったし、札幌や旭川が舞台になっている話は、日本人の自分には情景が浮かびやすかった。著者の他の作品にも触れて、パク・ソルメの世界を深掘りしたい。
(登場人物)ホ・ウン:歯科医、7年前も冬眠経験者、猫のチャミと同居、
先生(私とホ・ウンの大学時代の担当教員):温陽でも会ったが、20年以上一緒に暮らした奥さんと離婚して20代の弟子と再婚し子供を授かり、釜山に暮らしている。
テシク:私が温陽でガイドをしている時に近所のグラウンドでランニングをしている時に知り合ったガイド仲間。元サッカー選手だったが負傷のために選手を辞め、ソウルの大学の大学院でリハビリ学を勉強している。背は若干高めで痩せ型だが平凡な体型で、もの静かな印象。何年かぶりに会ったシオンからガイドを頼まれた。
テイン:テシクと8歳違いの兄。ガイドの資格をとって間もないテシクに、勤続10周年の長い休暇で旅行に行った後の冬眠ガイドを依頼した。
キム・シオン:職場が近かったテシクの冬眠ガイドを務めてその後も二人でよく会っていた。春には韓国を離れてカナダにしばらく住むことになっていた。 -
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彼女の著作は何冊か読んできたけれど、今回がもっとも理解しやすかった。このぐらい余白があって文字組みがゆったりしているとちょうどよい。
とはいえやっぱり抽象的な表現が多いので、気を緩めるとすぐに置いていかれてしまうのだけど。
「いちばん暗い夜にも」と題されたノーベル文学賞受賞所感がやけに胸に残った。
〈降りしきる雨脚を眺め、腕やふくらはぎを包む湿気を感じながら待っていたその一瞬、突然気づいたのです。私と肩をくっつけ合って立っている仲間たちも、向かいのビルの前にいるあの人たちも、その全員が全く同じように、「私」として生きているのだという事実を。私が雨を見ているのと同じように、あの人たち一人一人も雨を見ている。私が顔に感じている湿気をあの人たちも感じている。それは、大勢の一人称を同時に経験するという驚異の一瞬でした。〉 -
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ネタバレえ、ここで終わり?!
というところでブツっと終わった。
(全部で253ページあるけど、物語は195ページで終わる。あとは著者後書きとか解説。)
なるべく直訳になっているせいなのか、
???となる文章がちょこちょこあった。
内容自体は、少し前の日本を見ているようだし、
私も昭和かよ。みたいな文化が残ってる会社で働いているから、想像より「酷い世界だ、、!!」とはならなかったかも。(感覚が麻痺してそう、こわっ。)
といいつつ最後はすっごい胸糞。
キムジヨンの精神科医の先生(男性)。
「私は精神科医だし、妻も病んでいた時期あるから子どもを持つ女性の大変さなどはよく分かってるだよね。」的なこと言っておきながら、女性スタッフが出産を機にやめるとなったら
「彼女は顔も可愛いし服装もおしゃれだし私の好きなエスプレッソの量もよく覚えてるし良い人だった。でもやっぱ育児の問題があると困るなぁ、、次は未婚の人探さなきゃ。」
という発言。
可愛いとか言ってるのキモいし、コーヒーは自分で入れろだし、子育てする女性に理解あると言っておきながら自分ごとになると結局疎ましいんじゃん。っていう。
滅んで欲しいと思いました!!!! -
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医療行為として冬眠がとれるようになり、冬眠者を見守る「ガイド」という職が生まれた社会が舞台。といってもSF小説ではなくて、ちょっとした会話とか動物のしぐさとか風景のことがふわりふわりとか書かれている、装丁のほんの少し黄味がかった淡いシアンのような地色の短編小説。カルグクス(包丁麺)とかタコ炒めといわしの包みご飯(ミョルチサンバプ)とか豆腐トゥルチギとか、おいしそうな韓食がしばしば登場するのがたまらない。
P58 こういう冗談は冗談でしかないのに、なぜ、口の外へ出してみるといい気分になるのだろう?完全に冗談だとわかっていても、ほんのちょっと、三秒くらい、誰かが私にこのマンションをあげると言ってくれるところを脳のどこかが想定するのだろう。言葉は怖くて、言葉は楽しい。脳は素晴らしく、私は脳がほんとに好きだ。
P169 当時も今も韓国は、さっさとやれない人やぼーっとした人には過酷な国だけど、孫樹はさっさとできない法、私はボーっとしているほうだった。ぼーっとしているのにどうしてさっさとやれたの?と聞かれるかもしれないが、時々そういうこともあると思う。 -
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「翼」だけ読んだ。
怠惰なヒモ男の話。はじめの「剥製にされた天才」云々の部分は意味がよく分からず読み解けなかった。それ以降はするする読めたが、特別印象に残った部分はなく。結構あっさり終わった。
ヒモ男は子どものようで、読んでいて意外とイライラしないが、かといってチャーミングだと感じるほどでもない。
ヒモ男の魅力(?)ならば、坂口安吾「いずこへ」や「私は海をだきしめていたい」の主人公の方が断然優っていると個人的には思う。魅力といってよいのかはよく分からないが…とにかくかなり印象的ではあった。
解説曰く、彼らや彼らの部屋は「資本主義化された京城(ソウル)のメタファー」とのこと。そして、冒頭の私にはよく分からなかった部分は、視点の転換を担っているというようなことも書かれている。
解説読んでもいまいちよう分からん。笑
これ、そんな人気なんか〜。。私には難しい。
検閲バリバリの頃のを読み解けるような読解力と知識がない。。