永田和宏のレビュー一覧
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まさか炉の材質、厚み、高さなど各種寸法から操業の一部始終まで解説されるとは思わなかった。鉧(けら)や銑(ずく)など、読み方も意味も分からない。本書を読んで自分で鉄を作ってみてね、ということなのか… プロト・ヒッタイトで初めて鉄が3700年前に知られて以来、言われてみれば鉄は最も使われている金属だといえそうだ。地球の核も鉄で1/3の質量を占める。鉄は炭素を吸収すると融点が下がり、銅と同じように木炭で溶かすことができた。最初はアナトリアで銅鉱石が少なくなり、硫化鉄を含む硫化銅鉱石を用いたことで偶然に発見されたようだ。取り除いた不純物は石灰と反応してスラグ(ノロ) として分離される。スラグを見れば製法が分かるというのも興味深い。鉄が広まったのはヒッタイトが滅亡してからで、帝政ローマが始まる頃までが初期鉄器時代となるが、イングランドには前500年、インドや中国には前400年、南アフリカには紀元後1000年に伝わった。しかし本書では鉄が伝わった期間が章によって違ってるのが難点で、インドに伝わったのはアーリア人が侵入した前800年頃と言ってる箇所もあれば、中国は前600年だとする箇所もある。どっちだ??ローマ帝国が滅亡してから西ヨーロッパに新しい製鉄法がさらに拡大した?製鉄方法によって伝播時期が違ってるのかもしれないが読み取れない。AIに聞く方が間違いなさそうだ。14世紀に溶鉱炉、産業革命期で初めて木炭の代わりに石炭が使われるようになった流れ。1856年からは転炉による大量生産で鋼の時代が来る。鉄鋼はだいたい30〜40年でスクラップとなり、日本がスクラップ輸出国に転じたのは1990年代なのだという。1960年代から生産を急増させた背景がうかがえる。さらに意外なことに、現代の製鉄法は400年前の木炭溶鉱炉から同じ原理で、製鋼法もベッセマー転炉から進歩していないのだそう。ただ規模が大きくなった分、生産効率は大幅に上がっているといえる。しかしいまだに石炭(コークス)を使っていてCO2排出による環境負荷が大きく、マイクロ波を使った製鉄法について解説されている。今ではどういった取り組みになっているのか気になった。
製鉄が日本に伝わったのは6世紀後半と比較的遅いが、たたら場といえば「もののけ姫」を観たイメージくらいしかないものの、日本では赤鉄鉱(非磁性体)が早々に枯渇し、川から砂鉄(磁鉄鉱、磁性体)を取って製鉄に応用したのはユニークだ。操業は三日三晩も連続してやっていたとは…人力の時代は大変だ -
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歌人であり細胞生物学者でもある著者。
著者が書いた亡き妻の闘病記を2冊くらい読んでとても感銘を受けた記憶がある。
大変な愛妻家で、ご家族はさぞかし、妻の河野裕子氏が亡くなるときには著者のその後が心配だっただろうなあと。それこそ、当の河野氏も、著者をおいて逝くことが一番の気がかりではなかったかと赤の他人の私ですら思うくらい。
本書は、タイトル通り、様々な歌集や一般の人が詠んだ歌などを引いて、人生の機微を思いめぐらしている。
著名な歌人の格調高い歌も数多くあり、誰もが一度は見たことのある有名な歌もいくつもあるものの、中にはちょっと間の抜けたような、人間のだらしなさのようなものを詠った歌もあり、むしろそちらがとても魅力的に見えた。
斎藤茂吉の不倫関連のエピソードも、よいことではないのだろうけれど、とても人間臭くて興味深かった。
また、ところどころ著者の学者たる考察が顔をのぞかせており、そういうところもちょっとしたエッセンスになっている気がする。
でも最も印象深かったのは、やはり著者の愛妻家ぶり。
亡き妻についてやその作品に言及する場面は、著者の愛が溢れて止まない。
永田淳や永田紅といった著者の子息である歌人らの作品やそのエピソードも出てきていて、本作もまた、著者の家族愛満載の著作だったなー。 -
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ネタバレ著名な方々(山中伸弥、羽生善治、是枝裕和、山極壽一、永田和宏)の講演・対談集。この著名人の中に興味がある人がいれば楽しめる。何者でもなかった頃、いわゆる若手時代が語られている。自分に響いた箇所は以下。
「どうしたってインターネットで得られないものがある。それは、考え方です。知識をどう使うか。どうやっておもしろいことを見つけ出すか。」
「人間の一番重要な能力は、諦めないということです。動物はできなかったら諦めちゃう。人間はしつこいんです。」「失敗しても失敗しても諦めない。だから人間は空を飛べるようになったし、海中深く潜れるようになったし、様々な道具を発明して、人間の身体以上のことができるようになった」 -
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自分でも言うが、同世代のアンソロジーをつくるのは難しいのではないか。『近代秀歌』は評価が定まりつつあるなかからえらんだわけだしその方針に従うべきでは。本著は、永田和宏の好みを出ない。永田の選は時代の濾過を経て残るか決まる訳だが、百人一首形式における定家の選は定家あってのものである。古今・新古今においても、寄り集まってえらんだわけだし、集合知というのは、時代の変りに人数で篩うという意味があるのではないかと思うわけだ。
選の方針にしても『近代秀歌』にならって、人口に膾炙した歌をえらぶべきではないか。例えば、俵万智なら「サラダ記念日」の歌をえらぶとか。
個人的な好みとして、現代短歌はわかりにくく好き出ないと思った。相聞・挽歌・青春を除けば、端正な近代短歌のが好みである。そう言う意味で佐藤佐太郎などはよい。
ここから各人好きな方面に手を伸ばすと言う意味での入口としては一定の価値がある。 -
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DNAからmRNAに遺伝情報が転写されてアミノ酸が合成されるプロセスは学校で習った気もするしよく知られている。本書は、そこから先のタンパク質の振る舞いについても解説した本。誕生−成長−輸送−輪廻転生+品質管理と章立てされている。まさに分子生物学の最前線なのだろう。
・DNAはめちゃコンパクトに折り畳まれているが一本のヒモである。枝分かれなのない一本のヒモなので、そこから作られるアミノ酸の列も一本のヒモになる。情報の保存のためにはこれ大事。
・分子シャペロン。アミノ酸の列=ポリペプチドがきちんと折り畳まれて(フォールディング)タンパク質になるのを手助けするタンパク質。まず、らせん状のαへリックスや平たいβシートを形作ってから、立体的な3次構造を作る。さらにサブユニットが会合して4次構造となる。ポリペプチドはきちんとフォールディングされるとは限らず、結構失敗して分解されたりしている。
・アミノ酸には親水性のものと疎水性のものとがある。基本水分の細胞内部にタンパク質
がうまくなじむには外側を親水性にして、疎水性のアミノ酸は内側に配置しないといけない。また疎水性のアミノ酸同士は凝集しやすいのでそれもまずい。
・システインに含まれる硫黄同士が結合するジスルフィド結合。タンパク質のフォールディングのクリップ的役割。
・分子シャペロンは熱ショックタンパク質(HSP)・ストレスタンパク質としても働く。熱などのストレスがかかった時に誘導されて、タンパク質の変性を防いだりする。また変性したタンパク質を元に戻すシャペロンすらある。
・合成されたタンパク質の輸送には、宛先指定に葉書式と小包式がある。微小管などの繊維が細胞内を走っており、小胞がそれの上を目的地まで走る。複雑。
・アミノ酸はリサイクルされている。数分の寿命しかないタンパク質から、数ヶ月の寿命を持つものまである。時間遺伝子もタンパク質の分解を利用している。ピンで分解するユビキチン・プロテアソーム系と、バルクで分解するオートファジー系とがある。
・品質管理のステップ。生産ラインのストップ→シャペロンによる修理→廃棄処分→細胞アポトーシスすなわち工場ごと閉鎖。うまくいかないとフォールディング異常病に。白内障、アルツハイマー、パーキンソン、プリオン病・・・
まさにミクロコスモス。これが自分の体で起こっていると真剣にイメージすると眩暈がしそうだ。