【感想・ネタバレ】人生後半にこそ読みたい秀歌のレビュー

あらすじ

細胞生物学者、歌人である著者が贈る、人生後半への応援歌。中高年は人生の困難をのりきる「収穫期」でもある。老いを自然に迎えるための、人生観とユーモアと覚悟を短歌から学ぶ。自ら後期高齢者になった経験から、深く読み解き身に沁みるエッセイと名歌。

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Posted by ブクログ

人生の後半にこそ心にしみる名歌をテーマごとに紹介する。定年、老後と金、老いらくの恋、介護、死別、食や酒のたのしみなど、様々な歌を読むと楽しい。「人生の終わりを徐々に知らしめていよいよ長き晩年がくる」「誰かひとりくらいは来てもよさそうなひとり暮らしの夕ぐれである」「沢瀉は夏の水面の白き花 孤独死をなぜ人はあはれむ」「浅き眠りの父を傍に読みふける介護の歌なき万葉集を」「『空きを待つ』その空きの意味思いけり特別養護老人ホーム」「今しばし死までの時間あるごとくこの世にあはれ花の咲く駅」「死はそこに抗ひがたく立つゆゑに生きてゐる一日一日はいづみ」「どっちみちどちらかひとりがのこるけどどちらにしてもひとりはひとり」

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2025年10月16日

Posted by ブクログ

ここ数日、薬の副作用で体調が悪く本を読めませんでした。
でも、私は胃腸科では逆流性食道炎があるので「食べてから3時間は横にならないでください」と言われているので寝ているわけにもいかず、二日前からちょっと辛かったですが、この本をがんばって読みました。

この本は先々週だったか、読売新聞の書評欄でも取り上げられていて、歌集が取り上げられるのは珍しいなと思い、私もちょうど読もうと思って積んでいました。今の私にちょうどぴったりなタイトルだと思います。

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第一部 人生後半へ

著者で歌人の永田和宏さんは2022年に後期高齢者になられたそうです。
中年とは45歳~64歳までだそうです。

〇中年は人生後半への入り口

中年に「門」を読むのは包丁を研ぎあげて鋭刃にさはるのに似る    高野公彦『水行』

漱石の「門」は私はさっぱりわかりません。

〇老いのユーモア

あかるすぎる秋のまひるま百円の老眼鏡をあちこちに置く    小島ゆかり『雪麻呂』

私よりひと回り年下の接骨院の奥さんが「この老眼鏡百円なの」とおっしゃっていました。

〇老後と金

老衰をわがするまでにかかるという数千万円をかなしく思う    藤島秀憲『オナカシコロ 短歌日記2019』

銀行の監視カメラにお辞儀して嬉しくて下ろす初の年金      
    三ツ松秀夫 朝日歌壇

〇老いらくの恋・秘めたる恋
斎藤茂吉と永井ふさ子の恋は秘めたる老いらくの恋。50代で28歳年下の女性と恋した茂吉の逸話はかなり可愛らしく感じられました。
斎藤茂吉記念館に行ったこともありますが、全然知りませんでした。
茂吉の歌は後に、母との死別の歌も出てきますが、こちらの話の方が面白かったです。

山なかに心かなしみてわが落す涙を舐むる獅子さへもなし    斎藤茂吉『暁紅』

50代の恋。

第二部 老いの先へ

〇介護の歌

浅き眠りの父を傍に読みふける介護の歌なき万葉集を
    笹公人『終楽章』

もっとも、言えてると思いました。昔と今では寿命が違いますから。この歌集で一番共感した歌です。
笹公人さんのこの歌集は読んでみたいです。

〇ケアハウスという場

「空きを待つ」その空きの意味思いけり特別養護老人ホーム    小山年男 朝日歌壇

これも、もっともな歌老いの歌というのは怖いです。

〇死ぬまでの時間
永田和宏さんの奥様の河野裕子さんは、癌で62歳で亡くなられていらっしゃるのは有名です。

あほやなあと笑ひのけぞりまた笑ふあなたの椅子にあなたがゐない    永田和宏『夏・2010』

最後までわたしの妻でありつづけたあなた、ごはんは、とその朝も言へり    同

河野裕子さんが亡くなられた2010年朝日歌壇をはじめとする投稿欄に河野さんの死を悼む歌が千数百通も寄せられたそうです。


第三部 たのしみへ
〇酒のたのしみ

若山牧水ほど酒の歌の多い歌人はなく、短い生涯の8600余首のうち酒の歌は370首あったそうです。

お酒の歌のところで、この本にほむほむが初登場します。

「酔ってるの?あたしが誰かわかってる?」「ブーフーウーのウーじゃないかな」    穂村弘『シンジケート』

〇友ありてこそ
まだ私は60代ではないのですが、栗木京子さんのこの歌は直球ど真ん中でした。

さよならは別れではなく約束と唄えば愉し六十代われら  
    栗木京子『南の窓から』

来生たかおさんです。
というより私には薬師丸ひろ子さんかな。

〇最後に
孫との日々をたのしむより

ユーコちゃんといふ人が居たと思うだらうか日向道なんかで    河野裕子『母系』

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2025年05月14日

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恋愛、結婚、不倫、病気、老い、子ども、孫、ペット、死…「秀歌」にギュっと詰まっています。
やきもち焼いたり悔やんだり愛したり憎んだり…昔も今も人はそれほど変わりませんね笑

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2025年09月06日

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なんか身につまされる歌多しだったわ。
この本読んで初めて知ったことも多かった。
斎藤茂吉と永井ふさ子との恋愛(不倫)
茂吉53歳、ふさ子25歳と年齢差は28歳
茂吉がふさ子に宛てた手紙の内容にびっくり。
”ふさ子さん、ふさ子さんはなぜこんないい女体なのですか何ともいへないいい女体なおのですか どうか大切にして無理してはいけないと思います”などなど’
あからさますぎ。でもこれら手紙を読んだあとは燃やすように約束してたみたいだから、何通かは燃やしたみたいだけど
ほとんど残していてのちに(茂吉の死後)出版してしまったからそりゃ物議を醸すよね。
でも、ふさ子は生涯独身を通したらしい。
川田順と俊子の老いらくの恋も、川田順は自殺未遂までしてでも最終的には結婚できたみたいで、小説にもなってるらしい、。
若山牧水はアル中で43歳で亡くなっているのも驚きだった。
下記のようなユーモアな歌もあれば介護や死を見据えた歌もあって読み応えあったわ。

好きだった歌
・人に害及ぼすとにはあらねども手帳の置き場所
 幾度にて忘る           斎藤茂吉
・忘れたのたのではない最初の一字が出ないだけ
 あの人あの人 えーとあの人    永田和宏
・疲労のつもりて引出ししヘルペスなりといふ 
 八十年生きれば そりやぁあなた  齊藤 史

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2025年08月08日

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私も人生 私も人生後半だが人それぞれに固有の人生がある
それにしても 私の孫は3歳 何を考えて行動しているのだろう不思議

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2025年07月17日

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後半ってことで覚悟しとくべきだったんですが「介護」「死別」「ペットロス」等の哀切ある歌が多めで、読後感をよくしようと最後に置かれたんだろう「孫」も己の生と死を見ていてセピア色な感じの集でした。「退職」「老いらくの恋」等は珍しいカテゴリで面白かった。

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2025年06月30日

Posted by ブクログ

短歌とその解説を読み、これから経験するであろう、人生の予習をさせていただきました。

近現代の幅広い歌人の方の中で、斎藤茂吉さんの歌が多く載せられていました。私の知らない姿が歌にありました。50代以降の人目をしのぶ恋、知らなかったなあ。孫を詠んだ歌、とてもユニークでした。

永田和宏さんが、病に苦しむ妻、河野裕子さんを思う歌は、涙なくして読めずという感じで。河野裕子さんの歌も同様です。

悲しみや辛さの中でも、自分自身としっかり向き合って短歌を詠む。ただただ、すごいなあと思いました。歌を詠むことそのものが、生きることであるように感じます。

介護の歌では、2年前に亡くなった父のことが思い出されました。介護真っ只中のときは気持ちの余裕がありませんでした。今回様々な歌を読み触発されて、とりあえず一首作ることができました。

その時々の心の揺れを、31文字で冷凍保存できる短歌。読まれることで解凍し、溶け出して多くの人の心に広がっていく。私もその溶け出したものを、ある時は共感、ある時は驚きとして受け止めました。

子どもの頃、時間は永遠に続くような気がしていました。「最後の時間を意識するからこそ、残された時間を精一杯生きたいとする」という言葉が、心に刺さりました。

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2025年06月17日

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ネタバレ

【目次】
はじめに
第一部 人生後半へ
第二部 老いの先へ
第三部 たのしみへ

身に沁みる歌の数々。
歌にまつわる解説のおかげでいっそう我が身に迫ってくる。

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2025年11月04日

Posted by ブクログ

永田さんと河野さん夫婦のドキュメンタリーを観たのは数年前。それで永田さんの歌の本を読んだ。
人生後半には以前とは異なるいろいろなことを感じ、それを自分も実感した。

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2025年10月06日

Posted by ブクログ

歌人であり細胞生物学者でもある著者。
著者が書いた亡き妻の闘病記を2冊くらい読んでとても感銘を受けた記憶がある。
大変な愛妻家で、ご家族はさぞかし、妻の河野裕子氏が亡くなるときには著者のその後が心配だっただろうなあと。それこそ、当の河野氏も、著者をおいて逝くことが一番の気がかりではなかったかと赤の他人の私ですら思うくらい。
本書は、タイトル通り、様々な歌集や一般の人が詠んだ歌などを引いて、人生の機微を思いめぐらしている。
著名な歌人の格調高い歌も数多くあり、誰もが一度は見たことのある有名な歌もいくつもあるものの、中にはちょっと間の抜けたような、人間のだらしなさのようなものを詠った歌もあり、むしろそちらがとても魅力的に見えた。
斎藤茂吉の不倫関連のエピソードも、よいことではないのだろうけれど、とても人間臭くて興味深かった。
また、ところどころ著者の学者たる考察が顔をのぞかせており、そういうところもちょっとしたエッセンスになっている気がする。

でも最も印象深かったのは、やはり著者の愛妻家ぶり。
亡き妻についてやその作品に言及する場面は、著者の愛が溢れて止まない。
永田淳や永田紅といった著者の子息である歌人らの作品やそのエピソードも出てきていて、本作もまた、著者の家族愛満載の著作だったなー。

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2025年08月22日

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