このエッセイは,皇族である著者が,オックスフォード大学に学士~博士課程学生として留学した時の経験をまとめたものである.
最初は,皇族の方の留学記という物珍しさからこの本に興味を持った.実際,その特殊な立場ならではでのエピソードもふんだんに盛り込まれている.けれども,読み進めていくうちに一人の人間
...続きを読むが留学先で奮闘した記録として,この本をとても好きだなあって思うようになった.
特に,文章から著者の丁寧な人柄がとても伝わってきた.作中では留学でお世話になった人たちとのエピソードや博士学生として苦労した話がいくつか紹介される.その中で嬉しいことや大変な思いをしたことは素直に表現されていて,読者としてもなんだか応援したい心地になった.
また,皇族だからといって特別扱いを受けることもなく,一人の博士学生として学問に真摯に向き合うさまはとても励みになったな.色々な場所に調査に行ったり,たくさんの人とコミュニケーションを取る著者の奮闘ぶりはとてもすごいと思ったし,そういうひたむきさがこの留学記の厚みを生み出しているのだなあと感じた.