あらすじ
彬子女王殿下が日本美のこころを探す旅。
「赤と青のガウン」の著者・彬子女王殿下が6年間の英国留学を終えて次に向かわれたのは「日本美のこころ」を探す旅だった。
「神宮の御神宝」「皇居の盆栽」「皇室が育んだボンボニエール」など、日本の美を巡る旅を収録した「日本美のこころ」。
「烏帽子」「久米島紬」「漆掻き道具」など、日本の伝統工芸を支える最後の職人たちとの出会いを描いた「最後の職人ものがたり」。
その2冊を1冊の文庫として完全収録。
彬子女王殿下が4年間にわたって巡り続けた「日本美のこころ」を、54篇の美しく瑞々しい文章で綴った珠玉のエッセイ集。
※この作品はカラーが含まれます。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「伝統は残すものではなく、残るもの」という言葉が真理だと思った。いわゆる伝統と言われる堅苦しいものだけでなく、街も、生活も、慣習も。全部そうだ。
残るものにも、残らないものにも、理由がある。
もちろんこれまで築き上げられてきた日本の伝統文化が、なくなればいいとは思っていない。ただし、無理やり「残そう」とする動きには、違和感を感じていた。
残すのでは、残る、という言葉は、そんなことを考えていた自分にしっくりきた。
残っていくものにも、残っていかないものにも、必ず理由がある。
物を買うことにも、理由を持つことを最近意識している。何が気に入ったか、ずっと愛せるか、手入れして長く使えるか、想いを持って作られた物か。
ふるさと納税もそうだ。節税効果によってやや市場が荒れている気もするが、その土地で採れたものを選ばせていただくように心がけている。
消費者の選択意識や購買によう投票によって、この伝統文化も残るかどうか決まる。積極的に、文化や背景に共感できるものを手に取り、大切にする習慣をもちたい。
Posted by ブクログ
以前紹介した『日本美のこころ』『日本美のこころ 最後の職人ものがたり』をまとめた文庫本。めちゃめちゃ良い。人生で何度も読み返すであろう1冊。
自らのオックスフォード留学記をまとめ「赤と青のガウン」を発刊した彬子女王殿下。
6年間のイングランド留学を終えて、次に向かわれたのは「日本美のこころ」を探す旅だった。(博士号取得は、大英博物館所蔵の日本美術コレクションを研究)
『日本美のこころ』では、日本文化に精通された彬子女王の知識、気づき・発見、想いを、柔らかくユーモア混じった文体で読めるのが嬉しい。単純に勉強にもなるし、これから旅・観光をしたときに「彬子視点」を持って各地を巡ることができる。
盆栽・和紙・煎茶・浮世絵・磁器・土偶・蹴鞠・日本庭園などのモノから、皇居・正倉院宝物殿・出雲・高千穂などの場所、祭事まで、昔から連綿と紡がれてきた文化の過去と現在を楽しんだ。
『日本美のこころ 最後の職人ものがたり』では、彬子女王殿下が北は青森から南は沖縄・久米島まで日本各地の“最後の職人”を訪ね、取材している。
最後の職人とは、後継者不足・材料の枯渇・用途の減少により失われつつある伝統の手わざを、最後のひとりとなっても守り続ける矜持をもって、日々仕事に励む職人さんたちのこと。
烏帽子(えぼし)、杼(ひ)、蒔絵筆(まきえふで)、キリコ、丹後和紙などはギリギリ知っていたが、
烏梅(うばい)、和釘(わくぎ)、金唐紙(きんからかみ)、御簾(みす)、漆(うるし)かき道具など、見たことも聞いたこともないものを作っている職人さんもいて、とても興味深く読んだ。
特に印象に残ったのは、冒頭の「わたしが行きついた答えは『伝統とは残すものではなく、残るもの』であるような気がしている」との一文。
その後「今日までその技術が残ってきたのには理由がある。そして、その技術は失われるのにもまた理由があるのである」と続く。
目を見開いて日本文化・伝統を研究し続けてきたからこそ綴ることができた、彬子女王ならではの言葉には魂が宿っている。
Posted by ブクログ
わかりやすく、穏やかな文章で、飾らない
お人柄が伺える。日本文化といっても、日本美術、民藝、陶磁器等、ジャンルは多岐に渡るが、よく調べられていて、彬子女王の日本文化への
造詣の深さに驚かされる。
正倉院の螺鈿紫檀五弦琵琶
発見時、琵琶は、ばらばらの状態で見つかり
螺鈿細工も欠損していたが、オリジナルと新しい螺鈿とが識別できるよう修復作業がなされている
話などとても興味深く読んだ。
Posted by ブクログ
日本美といっても、こんなにも沢山あったのかと、驚きがありました。
宝石箱のような内容で、一つひとつを作る職人さんの思いや、職人さんとの出会いを大切にする彬子女王の思い。
端から端まで読むのは大変。
それくらい内容が濃く、知らないことばかりで、無知な自分には難しいと感じる箇所も。
でも、この本を通して、いかに自分が失われていくものについて無頓着だったか、よくわかった。
このまま消えていくものもあるかもしれないが、そこに心を砕く人々がいることが、とても尊いことだと思う。
ふとした出会いから、それを継承しようと決意した人も…。
とりあえずは一通り読み終えたのだけど、もう少し知りたいなという思いも湧き起こり、この本を手掛かりに、私も自分なりの日本美のこころを探す旅をしてみたくなった。
Posted by ブクログ
ずっと日本に住んでても知らない文化がたくさんあるものだなぁとしみじみした
1本ずつの話が短く、文章のリズムが良いので読みやすい
少しずつ大切に読んだ
折に触れ読み返したい
Posted by ブクログ
彬子女王が心動かされる日本の美しいものいろいろについて綴るエッセイ。
日本の美というとついつい江戸時代以前までさかのぼりそうな気がするけど、ここで紹介されているもののにはけっこう明治以降のものもあったり。彬子女王の研究対象が近代ということもあるだろうけど、西洋文明が入ってきた近代にあっても日本の美がそこかしこに生き、受け継がれてきたんだなと思った。
「最後の職人ものがたり」のほうは、絶滅危惧種の技をもつ職人たちについて綴る。最初のほうは一子相伝的な頑なな職人さんが多い気が。後半は幅広くなっていろんなタイプの職人さんが紹介される。やっぱり伝統を守ることも大切だけど、その「守る」って変化しながら柔軟な姿勢であることがけっこう大事なことのような気がする。