永田和宏のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
歌人である河野裕子氏と永田和宏の出会いから、結婚・子育て・闘病、そして別れまでを、お互いの短歌とそれぞれが発表してきた文章を交えて、綴っていく。
河野氏は主婦として母親としての役割を果たしながら、歌人としても大いに成功を収めてきた。永田氏は京大の教授としても活躍されている。
2人とも歌人としてばかり時間を使えないのは同じであるのに、その歌はずいぶん様相が異なる。永田氏は仕事や歌の世界の区切りがはっきりしてるのに、河野氏はその境界が混じりあっていて、互いに有機的につながっているように感じる。これは、性別によるものなのか、彼女の個性なのか、とても興味深い。
さらに、河野氏の文章(新聞や本などに -
Posted by ブクログ
相聞歌、というひとつの歌のカテゴリーがある。もともとは互いの安否を気遣う私的なやりとりを指し、それが『万葉集』では男女の恋歌を意味するものになり…と、起源を語れば色々あるのだろうが、なんというか、お互いに、相手を想い、相手に伝える、その双方間のやりとりそのものが「相聞」という言葉には含まれているのだと思う。そして、そういう意味では、この本はまさに「相聞」だ。
京都大学内の歌会で初めて出会ってから、惹かれ合い、人生を共にしてきた2人の歌人、河野裕子と永田和宏。その2人の、出会った当時から、河野が60代という若さで乳癌で亡くなるまでの40年の間の「相聞歌」が、時間の流れや時代の背景と共に、力強い -
Posted by ブクログ
今思えば私は、子どもの頃から短歌には興味があったんだと思う。最初に覚えたのは、菅原道真か崇徳院のものだったか?
(覚えたきっかけは『いちご新聞』や『はいからさんが通る』ではあったが・・。)
短歌はふとした時、心にそっと寄り添って、自分ですら言葉にできない思いを気づかせてくれることが度々ある。
いつからか、新聞の『折々の歌』や毎週月曜日の短歌のページには目を通すようになっていた。
その選者である永田和宏氏(講評が特に好き!)を先に知ったのか、河野裕子氏を先に知ったのか今では思い出せないが、恐らく彼女の闘病が語られるようになってからは、双方ともに注目するようになった。
新聞にも特集が載り、TVで -
Posted by ブクログ
「たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらって行ってはくれぬか」
河野裕子さんを知ったきっかけは谷川史子さんの『積極-愛のうた-』(集英社/2006年刊)の表題作で河野裕子さんの短歌が短編のモチーフとして使われていたことだった。
谷川史子さんの漫画にも通ずる、純粋で真っ直ぐなんだけれども、芯が太く、汚れのない感情が31文字の短歌によって歌われていてとても感銘を受けた。
河野さんの第一歌集『森のやうに獣のやうに』は絶版となっており手に入らなかった。
この本が文庫化されていることもつい先日知り、急ぎ購入した。
歌に生き、歌に死んだ歌人であることは間違い無いが、負けん気が強く人間味に溢れ -
Posted by ブクログ
岩波新書の好企画
明治・大正・昭和を中心に日本人の心のふるさととして永久に口ずさみ伝えるべき100首を選び、適切な解説をほどこした岩波新書の好企画です。
「恋・愛」「青春」「旅」「四季・自然」などの項目ごとに、いつかどこかで目にした短歌の名作が続々登場するので、楽しみながらすいすい読めてしまう、それこそ面白くて為になる詩歌集なのですが、なかにはここで初めておめにかかる作品も多く、わたくしの日頃の、いな、これまでの不勉強に赤面せざるを得ない選集でもありました。
我が母よ死にたまひゆく我が母よ我を生まし乳足らひし母よ 茂吉
この斎藤茂吉の「赤光」の「死にたまふ母」が全篇のハイラ -
Posted by ブクログ
今まで読んだ新書の中でいちばん面白かったです!
テーマとなるタンパク質が馴染み深いものであるだけに、聞いた事のある用語も頻出し、簡単に入りこめます。とくに、コナンを読んだことがあるなら始め数ページで興味を持つ事がっちり請け合いです。
タンパク質と人間の生涯の違いは、恋をしないことくらいかもしれません。彼らは淡々と、生まれて育ち、ときに病気になったり間違いを冒したりもしながら、せっせと働きやがて死んでいきます。中には途中で自殺を選ぶものもいます。
タンパク質の生涯はすべて、世界である私たちを保つためのものなのです。感動して涙すら出てしまいます。 -
Posted by ブクログ
タイトル通りたんぱくの一生について、かなり専門的な部分について解説しながらも、読み手が理解できるところまで噛み砕いて説明している。
自身を(まさに)形作っている細胞の正体について知らないのは、あまりにもずさんすぎるだろうと思い、本書を購入したのだが・・・、読んでみると驚愕の一冊である。
細胞組織のなんと精緻なことか!
しかしそれでいて、彼らの仕事の大雑把なところは人間という特性の最小単位を体現しているようで非常に興味深い。
たしかに、本書は専門的であり、読みにくい。しかし、ペンと紙を用意しイメージを描きながら読み進めることで十二分に本書を理解し楽しむことができるだろう。
本書は、岩波新 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
細胞という極小宇宙で繰り広げられる生命活動の主役はタンパク質である。
それぞれに個性的なタンパク質には、その誕生から死まで、私たちヒトの一生にも似た波乱に富んだ興味深いドラマがある。
数々の遺伝病やプリオン病・アルツハイマー病など、タンパク質の異常が引き起こす病気の問題も含め、最先端の科学の現場からレポートする。
[ 目次 ]
第1章 タンパク質の住む世界―細胞という小宇宙
第2章 誕生―遺伝暗号を読み解く
第3章 成長―細胞内の名脇役、分子シャペロン
第4章 輸送―細胞内物流システム
第5章 輪廻転生―生命維持のための「死」
第6章 タンパク質の品質管理―その破綻としての病態 -
Posted by ブクログ
平易な文章で、説明もうまく実に読みやすい。
タンパク質という1つのテーマを、一生になぞらえて(というか実際そうなのだが)そのシステムを追っていく。そうすることで、システムの様々な要素が、一つ一つ意味を明確にもち、理解もしやすい。変に教科書的な説明にならない点、実に新書的に素晴らしいと思う。
生物関連の内容を扱った本を読むたびに、そのシステムの複雑さ・巧妙さに驚かされるが、本書ももちろん例外でない。
物理学が自然をシンプルなものに還元していく方向(もちろんその過程の複雑さはある)であるのに対し、生物学は途方もなく複雑なシステムであることを発見していく学問であると言えるのかもしれない。著者も言うよ -
Posted by ブクログ
タンパク質と言われても三大栄養素の一つくらいの認識だが、本書でそれを更新する。先ず、タンパク質とは「アミノ酸が一列につながったもの」。アミノ酸はタンパク質を構成する基本的な分子である。アミノ酸を作る原子は何でもいいわけではなく、窒素・酸素・炭素・硫黄・水素の五種類。私たちの身体で働くタンパク質を作っているのは20種類のアミノ酸である。
タンパク質は、5~7万種類くらいあるらしく、その寿命も様々。数分という短い寿命しか持たないものもあれば、筋肉を作っているミオシンや、赤血球の主成分で酸素を運搬するヘモグロビン、目のレンズを作っているクリスタリンなどのように、数カ月の寿命を持つものもある。
タ -
Posted by ブクログ
海外の最先端の研究をしている人たちのところに飛び込む。とても手が届かないと思い込んでいたが、実際には日本でやっているのと同じことをやっているんだと思えること、自分が世界と地続きになると気づくこと。その実感と自信は、その後の研究を推進する大きな力になる。なんだ自分でもやれるじゃないかという実感。
失敗を多く経験してきた人間こそ、いざというときに肝も据わり、冷静な判断を行うことができる。
みんなが使う言葉でしか自分を表現できない若者に、いったい独創性とか個性とかを期待できるものなのか。一企業を主体的に担うに足る人材とは、そんなものではないはず。やっぱり特殊性、自分はこうしたほうがいいんじゃないか