永田和宏のレビュー一覧

  • たとへば君 四十年の恋歌

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    歌人である河野裕子氏と永田和宏の出会いから、結婚・子育て・闘病、そして別れまでを、お互いの短歌とそれぞれが発表してきた文章を交えて、綴っていく。

    河野氏は主婦として母親としての役割を果たしながら、歌人としても大いに成功を収めてきた。永田氏は京大の教授としても活躍されている。

    2人とも歌人としてばかり時間を使えないのは同じであるのに、その歌はずいぶん様相が異なる。永田氏は仕事や歌の世界の区切りがはっきりしてるのに、河野氏はその境界が混じりあっていて、互いに有機的につながっているように感じる。これは、性別によるものなのか、彼女の個性なのか、とても興味深い。
    さらに、河野氏の文章(新聞や本などに

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    2015年04月19日
  • たとへば君 四十年の恋歌

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    相聞歌、というひとつの歌のカテゴリーがある。もともとは互いの安否を気遣う私的なやりとりを指し、それが『万葉集』では男女の恋歌を意味するものになり…と、起源を語れば色々あるのだろうが、なんというか、お互いに、相手を想い、相手に伝える、その双方間のやりとりそのものが「相聞」という言葉には含まれているのだと思う。そして、そういう意味では、この本はまさに「相聞」だ。

    京都大学内の歌会で初めて出会ってから、惹かれ合い、人生を共にしてきた2人の歌人、河野裕子と永田和宏。その2人の、出会った当時から、河野が60代という若さで乳癌で亡くなるまでの40年の間の「相聞歌」が、時間の流れや時代の背景と共に、力強い

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    2015年07月28日
  • 現代秀歌

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    永井陽子女史の「父を見送り母を見送りこの世にはだあれもゐないながき夏至の日」も河野裕子女史の「手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が」も美しくとても悲しい歌です。思わず涙しました。そして、著者永田和宏氏の『あとがき』の日付八月一二日は妻の河野裕子女史の亡くなった日であります。永田氏の妻と歌に対する愛情がひしひしと伝わってきました。

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    2015年01月31日
  • 近代秀歌

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    若いころアララギ派の歌人に魅かれていた。
    他の派の歌人の短歌は全く評価しなかったのだけど、歳とって、読み直し、永田さんの丁寧な解説を通して『読まなかった短歌』を素直に読むことができた。
    近代短歌を取り上げるとき、教科書的な解釈になってしまうことが多い。すでに名歌の評価が定まっているのだから、無難な歌紹介になってしまう。大義理のネタような薄っぺらい短歌を書く『歌人』もそうだ。
    とことが、永田さんの読み方はそれ以上の楽しさがある。
    また、永田さんは「会津八一が苦手」とのこと。それもさらりと述べているところにより一層の誠実さを感じた。

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    2015年01月29日
  • 歌に私は泣くだらう―妻・河野裕子 闘病の十年―

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    今思えば私は、子どもの頃から短歌には興味があったんだと思う。最初に覚えたのは、菅原道真か崇徳院のものだったか?
    (覚えたきっかけは『いちご新聞』や『はいからさんが通る』ではあったが・・。)
    短歌はふとした時、心にそっと寄り添って、自分ですら言葉にできない思いを気づかせてくれることが度々ある。

    いつからか、新聞の『折々の歌』や毎週月曜日の短歌のページには目を通すようになっていた。
    その選者である永田和宏氏(講評が特に好き!)を先に知ったのか、河野裕子氏を先に知ったのか今では思い出せないが、恐らく彼女の闘病が語られるようになってからは、双方ともに注目するようになった。
    新聞にも特集が載り、TVで

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    2015年01月28日
  • 現代秀歌

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    少し前からまじめに作歌を再開した私だが、その前はアララギ派ばかり、言ってみれば古い短歌ばっかりに接していた。
    作歌を再開して、今の短歌を読みだして、良い作品が豊富にあることに驚いた。短歌詠みなんてもっと小さな集団になってしまっていると思い込んでいたのだ。
    短歌とは変容しつつも、生きる人の最も近くにあって、仕事、家事、事件、恋愛、病そして死、最も直接的に訴えることができる文芸なのだとよくわかった。

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    2015年01月08日
  • 近代秀歌

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    「あなたが日本人なら、せめてこれくらいの歌は知っておいて欲しいというぎりぎりの100首であると思いたい」(はじめにより)
    正直ほとんどの歌を知らなかったので、歌人のこと、代表的な歌のことなど、勉強になった。

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    2014年12月27日
  • たとへば君 四十年の恋歌

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    相聞歌の極致を垣間みた。

    病気で自分、あるいは伴侶を失うこと、常に新鮮な目で伴侶と添い遂げることを短歌というフィルターで本当に鮮明に描いていると思う。
    エッセイを交えつつ配置された歌たち、両者の目線が混じる瞬間の感情のすれ違いや隙間を的確に描いた鬼気迫るノンフィクションであるとも感じました。

    可能なら、帯のある状態で買ってほしい。
    引用は、あえて自分の好みではなく象徴的な一首を。

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    2014年08月23日
  • たとへば君 四十年の恋歌

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    「たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらって行ってはくれぬか」

    河野裕子さんを知ったきっかけは谷川史子さんの『積極-愛のうた-』(集英社/2006年刊)の表題作で河野裕子さんの短歌が短編のモチーフとして使われていたことだった。

    谷川史子さんの漫画にも通ずる、純粋で真っ直ぐなんだけれども、芯が太く、汚れのない感情が31文字の短歌によって歌われていてとても感銘を受けた。

    河野さんの第一歌集『森のやうに獣のやうに』は絶版となっており手に入らなかった。

    この本が文庫化されていることもつい先日知り、急ぎ購入した。
    歌に生き、歌に死んだ歌人であることは間違い無いが、負けん気が強く人間味に溢れ

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    2014年02月13日
  • 近代秀歌

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    岩波新書の好企画

    明治・大正・昭和を中心に日本人の心のふるさととして永久に口ずさみ伝えるべき100首を選び、適切な解説をほどこした岩波新書の好企画です。

    「恋・愛」「青春」「旅」「四季・自然」などの項目ごとに、いつかどこかで目にした短歌の名作が続々登場するので、楽しみながらすいすい読めてしまう、それこそ面白くて為になる詩歌集なのですが、なかにはここで初めておめにかかる作品も多く、わたくしの日頃の、いな、これまでの不勉強に赤面せざるを得ない選集でもありました。

      我が母よ死にたまひゆく我が母よ我を生まし乳足らひし母よ 茂吉

     この斎藤茂吉の「赤光」の「死にたまふ母」が全篇のハイラ

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    2013年06月05日
  • 近代秀歌

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    短歌鑑賞の入門にと思って買った本。
    鑑賞、歌論だけでなく創作論としてもとてもよかった。なんとなくもやもや考えていたことが簡潔な言葉で書いてあって、あ、そうそう、それ、と思うことが何度もあった。
    気に入った歌を手帳に書き抜くだけでは飽きたらず、該当ページを折っていたら厚さが倍になってしまった。

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    2013年06月02日
  • タンパク質の一生 生命活動の舞台裏

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    今まで読んだ新書の中でいちばん面白かったです!
    テーマとなるタンパク質が馴染み深いものであるだけに、聞いた事のある用語も頻出し、簡単に入りこめます。とくに、コナンを読んだことがあるなら始め数ページで興味を持つ事がっちり請け合いです。

    タンパク質と人間の生涯の違いは、恋をしないことくらいかもしれません。彼らは淡々と、生まれて育ち、ときに病気になったり間違いを冒したりもしながら、せっせと働きやがて死んでいきます。中には途中で自殺を選ぶものもいます。
    タンパク質の生涯はすべて、世界である私たちを保つためのものなのです。感動して涙すら出てしまいます。

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    2013年04月28日
  • 近代秀歌

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    記憶すべき歌が網羅されていて、著者の軽妙で的を得た解説が秀逸だ.和歌に出てくる語句が校歌などによく使われるのは、古い学校では歌人に作詞を依頼するからかなと思った.我が母校の歌詞に「竝よろふ山」というのがあるが、斎藤茂吉の歌から採っているようだ.

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    2013年03月21日
  • タンパク質の一生 生命活動の舞台裏

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    タイトル通りたんぱくの一生について、かなり専門的な部分について解説しながらも、読み手が理解できるところまで噛み砕いて説明している。

    自身を(まさに)形作っている細胞の正体について知らないのは、あまりにもずさんすぎるだろうと思い、本書を購入したのだが・・・、読んでみると驚愕の一冊である。

    細胞組織のなんと精緻なことか!
    しかしそれでいて、彼らの仕事の大雑把なところは人間という特性の最小単位を体現しているようで非常に興味深い。

    たしかに、本書は専門的であり、読みにくい。しかし、ペンと紙を用意しイメージを描きながら読み進めることで十二分に本書を理解し楽しむことができるだろう。

    本書は、岩波新

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    2012年05月23日
  • タンパク質の一生 生命活動の舞台裏

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    [ 内容 ]
    細胞という極小宇宙で繰り広げられる生命活動の主役はタンパク質である。
    それぞれに個性的なタンパク質には、その誕生から死まで、私たちヒトの一生にも似た波乱に富んだ興味深いドラマがある。
    数々の遺伝病やプリオン病・アルツハイマー病など、タンパク質の異常が引き起こす病気の問題も含め、最先端の科学の現場からレポートする。

    [ 目次 ]
    第1章 タンパク質の住む世界―細胞という小宇宙
    第2章 誕生―遺伝暗号を読み解く
    第3章 成長―細胞内の名脇役、分子シャペロン
    第4章 輸送―細胞内物流システム
    第5章 輪廻転生―生命維持のための「死」
    第6章 タンパク質の品質管理―その破綻としての病態

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    2011年05月21日
  • タンパク質の一生 生命活動の舞台裏

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    平易な文章で、説明もうまく実に読みやすい。
    タンパク質という1つのテーマを、一生になぞらえて(というか実際そうなのだが)そのシステムを追っていく。そうすることで、システムの様々な要素が、一つ一つ意味を明確にもち、理解もしやすい。変に教科書的な説明にならない点、実に新書的に素晴らしいと思う。
    生物関連の内容を扱った本を読むたびに、そのシステムの複雑さ・巧妙さに驚かされるが、本書ももちろん例外でない。
    物理学が自然をシンプルなものに還元していく方向(もちろんその過程の複雑さはある)であるのに対し、生物学は途方もなく複雑なシステムであることを発見していく学問であると言えるのかもしれない。著者も言うよ

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    2011年04月23日
  • 知の体力(新潮新書)

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    とても考えさせられた大学院にこれからいく自分にぴったりだと思った
    なんとなく行く、とか就職のためにとか言ってたの恥ずかしい

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    2025年10月18日
  • タンパク質の一生 生命活動の舞台裏

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    タンパク質と言われても三大栄養素の一つくらいの認識だが、本書でそれを更新する。先ず、タンパク質とは「アミノ酸が一列につながったもの」。アミノ酸はタンパク質を構成する基本的な分子である。アミノ酸を作る原子は何でもいいわけではなく、窒素・酸素・炭素・硫黄・水素の五種類。私たちの身体で働くタンパク質を作っているのは20種類のアミノ酸である。

    タンパク質は、5~7万種類くらいあるらしく、その寿命も様々。数分という短い寿命しか持たないものもあれば、筋肉を作っているミオシンや、赤血球の主成分で酸素を運搬するヘモグロビン、目のレンズを作っているクリスタリンなどのように、数カ月の寿命を持つものもある。

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    2025年09月15日
  • 人生後半にこそ読みたい秀歌

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    恋愛、結婚、不倫、病気、老い、子ども、孫、ペット、死…「秀歌」にギュっと詰まっています。
    やきもち焼いたり悔やんだり愛したり憎んだり…昔も今も人はそれほど変わりませんね笑

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    2025年09月06日
  • 知の体力(新潮新書)

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    海外の最先端の研究をしている人たちのところに飛び込む。とても手が届かないと思い込んでいたが、実際には日本でやっているのと同じことをやっているんだと思えること、自分が世界と地続きになると気づくこと。その実感と自信は、その後の研究を推進する大きな力になる。なんだ自分でもやれるじゃないかという実感。

    失敗を多く経験してきた人間こそ、いざというときに肝も据わり、冷静な判断を行うことができる。
    みんなが使う言葉でしか自分を表現できない若者に、いったい独創性とか個性とかを期待できるものなのか。一企業を主体的に担うに足る人材とは、そんなものではないはず。やっぱり特殊性、自分はこうしたほうがいいんじゃないか

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    2025年08月10日