あらすじ
4000年前、アナトリアで発明された鉄ほど人類の社会と文明に影響を与えた物質はない。温度計もない時代に、どのように鉄を作ったのだろうか? 鋼、玉鋼、錬鉄、銑鉄、溶鉱炉、転炉、平炉、反射炉──アナトリアの最古の製鉄から現代の製鉄法、さらに日本固有の「たたら製鉄」も紹介しながら、鉄作りの秘密に迫る。
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Posted by ブクログ
実際にたたら製鉄を文献調査や監察で止まらずに、再現実験で研究した著者によるものなので、文明が崩壊したあとになっても、この本があれば製鉄技術が回復できるのでは無いだろうか?というレベルの書籍。
実験データの部分を読み飛ばしても、製鉄の歴史について興味深く読めるし、実験データを(ある程度)読むことで、たたら製鉄の話が、現代の主流となっている製鉄法とは別の、CO2排出量を抑えた新たな製鉄法の提言(どこまで大規模にできるモノなのかはなかなかわからないが)に繋がっていく。
Posted by ブクログ
まさか炉の材質、厚み、高さなど各種寸法から操業の一部始終まで解説されるとは思わなかった。鉧(けら)や銑(ずく)など、読み方も意味も分からない。本書を読んで自分で鉄を作ってみてね、ということなのか… プロト・ヒッタイトで初めて鉄が3700年前に知られて以来、言われてみれば鉄は最も使われている金属だといえそうだ。地球の核も鉄で1/3の質量を占める。鉄は炭素を吸収すると融点が下がり、銅と同じように木炭で溶かすことができた。最初はアナトリアで銅鉱石が少なくなり、硫化鉄を含む硫化銅鉱石を用いたことで偶然に発見されたようだ。取り除いた不純物は石灰と反応してスラグ(ノロ) として分離される。スラグを見れば製法が分かるというのも興味深い。鉄が広まったのはヒッタイトが滅亡してからで、帝政ローマが始まる頃までが初期鉄器時代となるが、イングランドには前500年、インドや中国には前400年、南アフリカには紀元後1000年に伝わった。しかし本書では鉄が伝わった期間が章によって違ってるのが難点で、インドに伝わったのはアーリア人が侵入した前800年頃と言ってる箇所もあれば、中国は前600年だとする箇所もある。どっちだ??ローマ帝国が滅亡してから西ヨーロッパに新しい製鉄法がさらに拡大した?製鉄方法によって伝播時期が違ってるのかもしれないが読み取れない。AIに聞く方が間違いなさそうだ。14世紀に溶鉱炉、産業革命期で初めて木炭の代わりに石炭が使われるようになった流れ。1856年からは転炉による大量生産で鋼の時代が来る。鉄鋼はだいたい30〜40年でスクラップとなり、日本がスクラップ輸出国に転じたのは1990年代なのだという。1960年代から生産を急増させた背景がうかがえる。さらに意外なことに、現代の製鉄法は400年前の木炭溶鉱炉から同じ原理で、製鋼法もベッセマー転炉から進歩していないのだそう。ただ規模が大きくなった分、生産効率は大幅に上がっているといえる。しかしいまだに石炭(コークス)を使っていてCO2排出による環境負荷が大きく、マイクロ波を使った製鉄法について解説されている。今ではどういった取り組みになっているのか気になった。
製鉄が日本に伝わったのは6世紀後半と比較的遅いが、たたら場といえば「もののけ姫」を観たイメージくらいしかないものの、日本では赤鉄鉱(非磁性体)が早々に枯渇し、川から砂鉄(磁鉄鉱、磁性体)を取って製鉄に応用したのはユニークだ。操業は三日三晩も連続してやっていたとは…人力の時代は大変だ
Posted by ブクログ
金属工学の専門家による鉄の歴史と実験報告、たたら製鉄から考案した電子レンジ製鉄の提案。個人的にはオーパーツであるデリーの鉄柱の記事や日本刀の刀身の表現に注目。
専門家故製鉄炉の構造や素材の数値に詳しいが、そもそもをよく分かっていないので理解できたとは言い難い。
Posted by ブクログ
他の方もかかれてるように、マニア向けです。
歴史上の製鉄法を分かりやすく解説してくれる一冊かと思いきや、分かりやすくない!図が少ないし分かりにくい…。既に製鉄に精通したマニア以外はまず言葉から装置を想像することもできず、置いてきぼりになります。
Posted by ブクログ
カーボンニュートラルの理解を深める上で、二酸化炭素排出量の多い製鉄業、高炉メーカーによる水素還元鉄を勉強しようと思った。
鉄中の炭素濃度を高めると融点が下がり、より低い温度で製鉄する事ができて、リン濃度も低くなる。強く送風する事で脱炭が起こり、炭素濃度が下がってしまう。炉を高くして、浸炭領域を長くする事が重要。ブードワー反応による、一酸化炭素での還元。この過程で二酸化炭素が排出されるという事。
化学成分分析が出来なかった時代でも、理屈にあった物づくりが出来ていたという事実は面白い。何故、インドのデリーの鉄柱は錆びないのか。陰謀論のような話もあるが、原理を知る事が重要だ。