中野剛志のレビュー一覧
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中野剛志氏の著書は結構読んでいるが、今回もシニカルかつ的確な分析が光っている。
ここ最近積極財政か緊縮財政どちらが相応しいかがメディアで議論されるようになった。日本がやっとこのような状況になったのも、10年以上前から様々なメディアで経済について語っていた著者の功績もあると私は思っている。そんな人物が書いた新書が難しいはずがない。昨今メディアで取り上げられる経済テーマに関しては基本的なことがこの本でわかるようになっている。
きっと、経済についてあまり勉強してこなかった人からしたら、今までなんとなく学んできた知識を覆す内容ばかりだろう。だからこそ、本書のタイトルは『どうする財源』なんだと思う。(も -
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本書タイトル「脳・戦争・ナショナリズム」から何を想像して書店で手に取ったか、奇妙な組み合わせだなと思いながらも、脳科学者中野信子氏、批評家の中野剛志氏、そしてズバズバともの言う哲学者適菜収氏と普段良く手に取って読んでいる御三方の座談会形式に、いったいどんな会話がなされたか気になって読んでしまった。内容はタイトルそのまんま、3名の分野がそのまんま話の中心として、なんかこう、練り上げられていくと言う表現が正しいのか、形容し難いが面白い内容となっている。
まずは信子氏の脳科学的な知見が飛び出してくる。人の見た目に関して描かれる書籍は数多くあるが、本に書いて文字に起こして大丈夫か不安になる様な記載でか -
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著者の話のエッセンスは前著(「基礎知識編」)で言い尽くされている。それぐらいわかりやすくシンプルということだ。本書は、なぜその主張が世の中に広がらないのかを論じている。その着眼点や議論の進め方は切れ味鋭いが、それは著者の立ち位置がユニークでブレないからこそ、生み出されたものだろう。ただ、この議論が実際にグローバル化にブレーキをかけ格差是正につながるという道筋を具体的かつ現実的に描けているかというと若干心もとない。新自由主義がやはりシンプルで勢いのある議論を展開しながら、肝心なところで“トリクルダウン”という甚だ怪しい理屈に走ったことが想起されるが、著者の議論が同様のものでないことを祈りたい。1
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知ってるつもりではいたが、深刻だ。
日本のウォーギルドインフォメーションプログラムのように、自虐史観を植え付けなくても、西洋に蔓延る贖罪の意識。帝国主義における加害者としての過去。それに加えて、ポリティカルコレクトネス等に代表されるような、差別意識の積極的抑止ムード。そうした、ちょっと大人な態度の欧州に対し、移民たちがやりたい放題だ。日本も決して人ごとではない。
古代ギリシャの哲学者はテセウスの船と言う有名な逆説をまとめあげた。英雄テセウスが航海に使った船はアテネの市民の手で保存されていた。市民は船の部材が朽ちると新たな木材で置き換えた。さて、テセウスが航海に使った部材が全て置き換えられた -
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著者はウェーバーやトクヴィルなどの社会科学の古典に書かれた内容が、現代の社会問題にも通用する鋭い分析でありながら、あまり顧みられていない現状を憂いています。新自由主義、グローバリズム、構造改革、ウクライナ戦争などなど、現代の諸問題に対する答えがすでに社会科学の古典の中にあるというのは、面白いと思うと同時に、なぜそれが顧みられないのかすごく不思議になります。
大勢の人間が集まってるくる「社会」はあまりに複雑で、自然科学のようにある程度正確に現象を計測したり、一般的なモデルを構築するのが難しいからでしょうか。複雑すぎる故に、社会について語る人の立場によっていろんなもっともらしい論を展開できてしま -
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世界中の経済活動が相互に繋がった世界。ウクライナ紛争やスーダンの内戦、干魃や洪水などの災害が世界のどこかで発生すると、原材料の高騰や輸送手段が停滞して混乱を招くなど、現代社会はグローバル経済の名の下で綿密に絡み合っている。一方アメリカやイギリスでナショナリズムを鼓舞するような指導者が現れ、自国最優先を謳う政権が第1党になるなど、閉鎖的にブロック経済に向かう流れもある。とは言え一度絡み合った世界から抜け出すのは難しい。日本もTPP参加を積極的に進め、遅れてやってきた自由経済圏競争の流れに飛び込もうとしている。最近ニュースでも環太平洋諸国による強固な連携を強調することが多い。これはひとえに中国の南
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デフレは需要不足・供給過多、貨幣価値が上がる。インフレは真逆。対策も真逆。デフレ対策は直感では誤ったように見える物がおおい。日本はずっとほぼ真逆である、インフレ対策として働く政策を実行してきた。
仮想通貨は発行量上限が決まっているがゆえに問題が生じる。皆が使い始めたときに供給量が増えないので貨幣価値があがり、デフレになる。
貨幣とは負債の一形式であり、経済において交換手段として受け入れられた特殊な負債である。「ロビンソンとフライデーしかいない孤島」のたとえ。ロビンソンは春に野いちごを収穫してフライデーに渡す。秋にはフライデーがとった魚をロビンソンに渡す。春の時点で、クルーソーにはフライデーに対 -
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ドイツの哲学者オズヴァルト・シュペングラーの『西洋の没落』を読み解きながら、日本の没落に警鐘を鳴らす本。自らをシュペングラーに並べた表題は流石に背負ってるなと思うが、名前負けせず。シュペングラーの現存在と覚醒存在を形態素として分析する理論を、恐らく私などはそのまま読めば理解不能な箇所も中野剛志が明解に解説してくれる。
いつもながら、感想というか思考や記録が散逸になるが、本著の論旨体系ではなく、自らの補完のために、以下メモ書き。
1750年から1830年の間に起きた第一次産業革命では、蒸気汽関、紡績機、鉄道などが生み出され、1870年から1900年の間に起きた第二次産業革命では、電気、内燃機 -
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この本で面白かったのは「世界対戦とニューディール」の章で、戦争が労働条件向上に役に立つという事実。アメリカは第二次世界大戦で国内の労働者の協力を得るために、勝ったあかつきには労働環境含め社会保障を充実させることを約束した。それだけ勝つためにはなりふり構っていられなかったのだろうと思う。戦後はその約束のもと労働者階級の発言権を認め、格差の少ない社会を実現した。その状況も長くはつづかなかったわけだが、日本の戦後社会も似ていたように思う。今や労働者の経営者に対する交渉力などゼロに等しい。戦争が正しいなどと言う気はさらさらないが、アメリカの歴史上労働者が最も恩恵を受けたのは戦争中だった事実には複雑な思
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本書は、新自由主義に対して警鐘を鳴らす。
日本における'失われた三十年'を、社会科学の視点から解きほぐし本質的要因に迫りあぶり出す。
新自由主義の基本原理'市場原理により需給はバランスする'という経済思想は、不確実性を軽視し楽観的な思い込みにより誘導される。古典的な社会科学には、現代の混迷を紐解く数々のヒントがあり、それを紹介しながら、行き詰まった現況への指針を示している。組織改革が思うように進まない理由、効率性がかえって非効率化を生み出すというジレンマ、ドラスティックな改革や民主主義は多数者の専制を生み、全体主義に陥るリスクがあることを歴史から明らかに