中野剛志のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ外貨準備としてのドルを各国が保有するため、ドルの需要は国際貿易における需要よりも準備通貨としての需要の分だけ多くなる。ドルの価値は国際貿易の需給の均衡点より高く評価されている。また米国は世界員準備通貨を供給する必要があるから経常収支赤字となっている。トランプとニクソンの類似性。商品貨幣論と「信用貨幣論(貨幣とは特殊な負債)」。商業銀行は新規の融資を行うことで銀行預金形式の貨幣を創造(信用創造、貨幣創造)。貸出は口座に金額を記帳するだけ。個人や企業は、銀行によって発行された負債である銀行預金を使って勘定を決済し、さらに銀行は最上層の政府の負債を使って勘定の最終的な決済を行うために、中央銀行に準備預金を設けている。自国通貨を創造する政府及び中央銀行は、自らの負債を返済するために自らの負債を使っている、すなわち、政府は自国通貨建ての国債の償還を自らの負債である自国通貨で行っている。よって、変動為替相場制下(=自国通貨は不換通貨=負債のピラミッドの頂点は自国通貨)で自国通貨を発行する政府は、債務履行の意志を放棄しない限り、財政破綻に陥ることはないし、そうなった実例もない。政府が国債を発行し民間が購入すると、民間銀行が有する準備預金(中央銀行が民間銀行に対する信用創造によって供給した中央銀行の負債)が政府預金に振り替えられる。この政府預金を使って政府が民間に支出を行うと、その支出額と同じ額だけ支出先の民間事業者の口座がある民間銀行の準備預金が増え、同時に当該民間事業者の銀行預金も増える。すなわち、国債の購入によって減った民間銀行の準備預金は、政府支出の結果、準備預金として戻ってくる。つまり、国債を発行して政府支出を行うと、民間経済への貨幣供給が増えるが、民間銀行の準備預金の増減はない。為替取引高の8割はドル。各国中央銀行の外貨準備は、ドル6割、ユーロ2割、円5%、人民元3%。ドルが国際通貨であるということは、米以外の国は、国際決済に米の銀行システムを使わざるを得ない、ということ。国際決済の多くは、米の民間銀行の当座預金勘定(準備預金)間の振替を通じて決済される。それゆえ、米の民間銀行には多数の非居住者名義のドル建て預金口座が集中している。そして、米の民間銀行が信用創造を行い、居住者名義及び非居住者名義のドル預金を設定することで、国際通貨ドルが供給される。この米銀行システムを管理しているのが米政府。つまり、海外の政府や企業のドル資産は米政府の管轄下。ゆえに米国は一方的に他国のドル資産を凍結できる。トリフィンのディレンマ(基軸通貨国アメリカはドルを政界に供給するために国際収支(特に経常収支)を赤字にしなければならないが、その赤字がドルに対する信任を損なうというディレンマ)は存在しない。中国の米国債大量保有は、経常収支黒字によって積みあがったドルを運用する必要があったから。仮に米国債を売り浴びせたとしても、その結果ドル安になれば損をするのは大量のドル資産を有する中国。しかもドル安(人民元高)は中国の輸出競争力を弱める。中国にとって米国債は、米に取られた人質。輸出主導レジームは賃金抑圧、自国通貨切り下げ、内需低迷。これに外需を提供したのが債務主導レジーム。低所得者でも債務拡大により消費を増加。共通するのは労働者の所得は低迷する一方、資本家やグローバル企業の利益は拡大し、所得格差が拡大。この2つのレジームの成立がグローバル・インバランス。自由市場は自然に発生するものではなく、制度として人為的に造られるもの。そして、制度を造り執行するためには政治権力が必要、なので、新自由主義は口では政府の介入を否定しながら、強権的な政府介入と必然的に結びつく。暗号通貨は信用貨幣ではなく、供給量には上限がある。よって、暗号通貨は預金痛tかと異なり、需要に応じて柔軟に供給できない。現在の中国が自由貿易を望んでいるのは、過剰生産のはけ口を求めてのこと。中国における安価な製品の輸出は、輸入国に対するデフレ圧力となる。つまり、中国はデフレ不況を輸出する「近隣窮乏化策」をとろうとしている。
-
Posted by ブクログ
「西洋の自死」というタイトルもなかなか奇抜だが、書き出しの「欧州は自死を遂げつつある。少なくとも欧州の指導者たちは、自死することを決意した」という一文がまた衝撃的である。
本書が書かれたのは、2018年。2026年現在の混乱を予言するかのような内容。そして、中野剛志氏が本書冒頭で述べるように、私たち日本人は本書を「日本の自死」と読み替えて読み進める必要がある。もはや移民問題は、日本には関係ない話ではないのである。
ヨーロッパの所謂グローバルエリート層は一体何を考えているのか私にはとうてい理解ができない。
多様性を全面に打ち出し、移民による経済効果、少子高齢化問題の解決を声高に叫ぶが、いずれの効果も他の先進国からの移民だけを取り上げたもの。言うまでもないが他の先進国からの移民は少数なのであって、圧倒的大多数の移民はアフリカ、バングラデシュ、中東など低開発国からの移民である。彼らの経済効果は欧州にとってプラスどころか大幅な赤字である。
欧州首脳陣は、植民地時代の贖罪意識に囚われ過ぎているのではないか。それも異常なまでに。
更にドイツでは、第二次世界大戦中のホロコーストの後遺症を引きずっており、移民を拒否することはナチスと同じことをしていると錯覚してしまっている。また、ドイツ以外の国でもナチスに加担していたという罪悪感があるため積極的に移民を受け入れているという背景がある。
しかし、イスラム教徒を多量に受け入れてきたために現在ではイスラム教徒の移民がユダヤ教徒を差別または攻撃しているというとんでもが起きている。
自虐史観というのは、日本にもあるから国家を上げての贖罪意識がどういうものかというのは理解できる。日本でも周辺諸国(韓国、中国)への配慮で、未だに国家のトップが靖国神社への参拝が叶わない。
ヨーロッパでは、移民による犯罪が起きた時、マスコミは事件を報じず、被害者さえも人種差別主義者のレッテルを貼られるのを恐れて告発しないというからもはや狂気である。
欧州では移民問題を論じることはタブーであり、少しでも批判的なことを言うと人種差別主義者のレッテルを貼られ、社会的に抹殺される。
私が全く理解できないのは、イスラム教徒によるテロ攻撃が起きた時、市民の誰もが怒らないこと。テロに負けない、私たちはすぐに立ち直るというスローガンのもと、何事もなかったかのように振る舞うが、何の罪もない犠牲者や遺族たちは人生を捻じ曲げられてしまったのである。それも最悪な形で。
そもそもイスラム教徒の移民を受け入れなければこのような被害はなかったわけで、移民政策を推し進めた国家に見殺しにされたようなもの。なぜ犠牲者たち、遺族、市民たちは立ち上がって怒らないのか。それほどまでに欧州は思考停止に陥ってしまったのか。
今後、10年、20年経った時に欧州がどのような姿になっているか想像するだけで恐ろしい。 -
Posted by ブクログ
●トランプ・ショックの本質は、関税ではなく貨幣にあると喝破した本。
●基軸通貨ドルが果たした役割や今後の経済システムの展望を考察する。→信用貨幣論というい新しい知見を学ぶことができた。
●本書は、第二次トランプ政権がもたらす激震を、表面的な「関税交渉」や「自国第一主義」のレベルではなく、「国際通貨体制の根本的再編」というマクロな視点から解読する一冊。本書の核心は、トランプ政権の経済ブレーンであるミラン氏の論文に基づき、「基軸通貨であることは、もはやアメリカにとって利益よりも重荷(製造業の衰退と経常赤字の固定化)になっている」と判断している点にある。この「トリフィンのディレンマ」を強引に解消し、ドルを切り下げて製造業を復活させようとする試みが、ニクソン・ショック以来の国際経済秩序を根底から覆そうとしている。著者は、主流派経済学が信奉する「商品貨幣論(貨幣=有価物)」を厳しく批判し、「信用貨幣論(貨幣=負債の記録)」のレンズを用いることで、世界経済の歪みを鮮やかに描き出している。「自国通貨を発行できる政府が財政破綻することはない」というMMT(現代貨幣理論)的視点をベースに、なぜ新自由主義的な変動為替相場制がグローバル・インバランス(構造的不均衡)を是正できなかったのかを論証していく過程は、これまでの貨幣論・経済論にはない新しさと説得力を感じた。主流派の貨幣論とは異なる信用貨幣論のレンズで世界経済を見るという新しい視座を与えてくれた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレマールアラーゴ合意の内容
基軸通貨であるドル債を通貨準備として保有する動機が常にあるため、金利が下がる。
関税の引き上げは輸入インフレの可能性があるが自国通貨高が相殺する。輸入は減らず関税収入が入る。
各国のドル債を売らせてドル安を演出、同時に超長期債と交換して金利の上昇を抑制する。そのために、関税と安全保障の傘を使う。
関税と安全保障の傘の脅し、国際緊急経済権限法で、 ドル安を狙う。
商品貨幣論=貨幣は商品交換の手段としてそもそも価値があるものが貨幣となった、とする説。
信用貨幣論=価値が時間を超えて移転することに貨幣の価値を置く。借用証としての貨幣。
貸し出しの源泉は貯蓄か、信用創造か。
貨幣は国家の負債。納税の手段として法定しているから流通する。通貨が流通するのは国家の役割。通貨の価値を支えているのは徴税権。
機能的財政=国家財政は国民経済に与える影響を基準にする。国債は金利を操作するための手段であり、金利が上昇しないのなら、上限はない。
イギリスのトラスショックとは。
財政出動に対して年金基金が保有国債を投げ売りをしたためにおこった。すでにインフレ気味のところに財政出動をしようとした。財政運営と金融政策の協調の必要性を提示した事例。
固定相場制で経常赤字の国は、外貨の制約のため、輸入量を減らす必要があり、政府支出は制限される。変動相場制では、その制限がない。輸出産業がないと、通貨安でも輸出が増えない。
ドルが国際通貨である以上、国債決済にアメリカの銀行システムを使うことになる=預金封鎖が脅威になる。これがアメリカだけが享受できる法外な特権というべき。
基軸通貨であれば、対外債務が持続不可能になることはない。対外債務による破綻=基軸通貨から外れる、こと。しかし、ドルに変わる通貨は今のところない。
低金利によって新興国に資本が流出すると、自国通貨高になった新興国は、自国通貨を発行して外貨準備として蓄積した。
信用創造の歯止めはないので、実態がない需要でもバブルは起きる。貨幣の供給について弾力性が高い。
トリフィンのジレンマ=世界がドル通貨準備を必要とするために、アメリカの経常赤字は解消できない。そのためドルの信認が低下するというジレンマ。
信用貨幣論から言えば、これは存在しない。
記事苦痛過酷だから経常収支は赤字、ということはない。1880年から1913年まで、ポンドが基軸通貨だったがイギリスの経常収支は黒字だった。1960年代のアメリカも赤字ではなかった。アメリカの経常収支が赤字だったのは、アメリカが経済運営に失敗したから。それを隠すためのものがニクソンショック。
中国がアメリカ国債を売っても、FRBが購入すればいいだけ。中国のアメリカ国債売却は、ドル資産の凍結を恐れるため。
ドルの準備資金としての需要がなくなれば、基軸通貨から外れる。
変動為替相場制は、貿易収支を調整できるはず。これは新自由主義の想定。しかし、価格弾力性が低いものは、交易条件が悪化しても価格は下がらず、輸入額は上がる。
相手国は自国通貨高からデフレ圧力がかかる。その結果輸入量が減る。この結果、貿易収支は改善できない。
変動為替相場制では、輸出主導経済では、自国通貨高になるが、国内のインフレ圧力は下がる。その結果、インフレを輸出できる。
経済の金融化によって、株主資本に報いるため賃金上昇は抑制され、消費需要は低迷する。グローバリゼーションも労働コストの上昇を抑える方向に働く。
輸出主導の国も、グローバル競争を勝つために賃金抑制に動く。内需が低迷するので、ますます外需に頼る結果、外貨が蓄積する。
債務主導の国は、所得が伸びなくても資金が還元するので債務拡大による消費拡大が可能となった。
このレジームの源泉は、債務主導の国のバブル。常にバブルは弾けて、再び起こる。
グローバル・インバランス=過剰貯蓄論が問題になるが、この原因は輸出主導と債務主導のバランスの問題。これは新自由主義が引き起こした。
中国の台頭の契機は、WTOの加盟。中国は貯蓄率が高い。内需主導が難しいので輸出に頼らざるを得ない。
グローバル・インバランスを是正するために関税政策を取るのは無意味。
アメリカは2010年政治資金の上限規制を撤廃した。この結果、テック業界の資金が流れ込んだ。人材も回転ドアという仕組みで、太いパイプがつながった。
テクノリバタリアンとは、新自由主義より先の自由放任主義。
トランプ政権のベッセントとバイデン政権のサリバンの経済哲学の違いがある。
新自由主義は、政府の規制を嫌うが、その自由を守るために、政府の強権を必要とする。自由市場は自然にできるのではなく、制度として人為的に作る必要がある。
暗号通貨は希少性故に価値があるが、貨幣は流動性がなければ貨幣とはならない。暗号通貨というより暗号資産というべきもの。資産の裏付けはない。
アメリカが基軸通貨国特権を武器にできるのは、SWIFTがあるから。それに対抗してオフショア市場に資産を移すだけでなく、別のシステムを作ろうとしている。ロシアのSPFSに中国、インド、イラン、トルコも参加できるようにした。中国はCIPSを立ち上げた。EUは、INSTEXを立ち上げた。
基軸通貨特権によるドル依存を武器にしようとすると、基軸通貨制の崩壊につながる。 -
Posted by ブクログ
中野剛志氏らによる座談会は、日本経済の長期停滞の根源を、小泉政権以降「改革」の名の下で推進された新自由主義にあると分析する。この思想は、民主主義の基盤である中間組織や共同体を「既得権益」として切り捨て、個人と国家を直結させた。その結果、社会の連帯が失われ、格差が拡大する一方で、トップダウンの決定に従うだけの受動的な国民が増殖したと指摘する。
議論では、行き過ぎたリベラリズムが文化や伝統を排除し、必然的に強権国家を招く危険性が示唆された。真の民主主義には、国民の多様性を尊重するナショナリズムと、社会を支える中間組織の再評価が不可欠である。また、財政出動を恐れる緊縮財政からの脱却と、危機時にボトムアップで修正可能な強靭な社会基盤の整備が求められている。
日本は独自の長期ビジョンを欠き、陳腐化したグローバリズムに追従し続けている。国家としての自律性を取り戻し、効率化の名の下に破壊された社会の余力を再構築することが、今後の危機の時代を生き抜く道であると論じている。
-
Posted by ブクログ
国家は、行為主体に依存はするが還元はできない実在する「構造」であるとし、自律的なパワーを持ち、社会に半・規則性を与える。
・主流派経済学の非科学性
・国会のパワーの源泉は、「埋め込まれた自律性」
→さまざまな利益集団との重層的な力関係に巻き込まれることによって、かえってその力関係の合間を縫って泳ぐ余地、いわゆる「マヌーバー」を確保できる
・国家行為者は政策担当者として特別に訓練されることで、実在の領域の中から個別の事象を生成する構造やメカニズムを遡及的に推論し、判断する能力=「特別に訓練された直感的裁量」を獲得する
・「既知の結果(あるいは設定された目標)から未知の原因を推論する」
・政策の一次管理と二次管理
・「漸進的であるが総合的な変化」をもたらすことこそがポスト批判的実在論に基づく公共政策の要諦
・社会は複雑系であり、経路依存性を帯びる
・現代貨幣理論との整合性 -
Posted by ブクログ
この本は、現代アメリカ資本主義の変質を解剖している。
著者は、1980年代以降に広がった「株主価値最大化(MSV)」というイデオロギーが、企業経営・資本市場・投資家行動を同じ方向に収束させ、企業の内部留保を再投資から自社株買い・配当に振り向ける構造を作ったと指摘。
経営者はストックオプション利益のために株価を上げ、機関投資家は短期リターンを求め、アクティビストは還元圧力を強める。
→このように三者が結託した「協調的略奪」が米国経済を短期志向に変えてしまった。結果、研究開発や設備投資は停滞し、賃金も上がらず、格差が拡大し、経済の成長エンジンが痩せ細ったと警告している。
著者は最後に、自社株買い規制、経営者報酬の改革、取締役会の再構成、税制改革、利益の再配分といった具体策を示し、「株主価値は結果であり、目的ではない」という原点に立ち戻るよう提言。
アメリカで起きた「株主第一主義」の行き過ぎが、実は成長を損なったという指摘は、日本企業にとっても示唆的。日本は2010年代に米国型ガバナンスを急速に導入し、今まさに配当・自社株買いが急増中。「還元=善」という単純図式から一歩進み、成長投資と還元のバランスを取る視点が不可欠。