中野剛志のレビュー一覧
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「財政赤字は悪」という日本の大手メディアの偏った論調に違和感があり読んでみた。
本書によれば、財政赤字とは単に、政府支出を通じて民間部門に通貨を供給しているだけに過ぎず、高インフレ(デマンドプル・インフレ)になっていない限り問題はないという。
具体的な理由についても分かりやすく解説されており、読んでいる最中は全て腑に落ちる、いや、むしろ「目から鱗が落ちる」内容。でも、自分の言葉で要約しようとすると難しい・・・だからこそ、経済の話、特にマクロ経済は色んな論者がいて、世論も「赤字=ダメ」みたいに単純な論理がまかり通り、思考停止に陥りやすいのだろう。
国家としての金融政策の難しさ(世論の理解 -
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渋沢栄一からの日本経済思想の流れについて。軸がハッキリしていて、論旨が明確。中野剛志氏らしい、MMTへの我田引水的な論理誘導もあるような気がしたが、それはそれで、私は否定派ではないのでノイズなく読む。渋沢栄一の思想には、プラグマティズムとナショナリズムの二つがあり、この日本経済学を支える柱をそれぞれ人物から導き出す。
後期水戸学が渋沢の論語と算盤のルーツ。単純にこの事をもってナショナリズムと言うのでは無い。引き合いに出すのは、経済ナショナリストであるフリードリヒ・リスト。ドイツにおける鉄道建設事業の先駆者だが、交通インフラの発達とそれによる近代産業社会の成立は、国内各地の人々の間のコミュニケ -
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名前はなんとなく知っていても、実際に原書を読んだことはない(ハードルが高い)ような社会学の古典を、わかりやすく解説してくれる。述べられている通り、長く読み継がれる古典には深い洞察があり、現代に当てはめても十分納得できる内容であることが理解できた。内容の大枠が掴めたことで、逆に興味が増し、原書にもトライしてみたい気持ちになった。
ただ一点、最後の堺屋太一批判が少々引っかかった。視点が逆だの、まるっきりわかっていないだの、個人的に恨みであるのかと。笑
自分の主張の正しさの論拠の一つとして述べているが、結果論として後からアレコレ言うのは簡単で、この部分はなくてもよかった気がする。
著者は非常に優 -
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【星:4.0】
前作の「基礎知識編」ほどのインパクトはなかった。
また、本書もMMT理論全面推しなのかと思ったが、そうでもない感じである。
言っていることは一貫していて、財政赤字が増えても日本は通貨発行権を持っているので、自国国債でのデフォルトはない。このデフレ時代には緊縮財政ではなく積極財政でといった論調である。
ただ、この本の面白いところは、経済の話を中心に据えつつ、経済の観点から国際情勢、政治情勢など幅広い内容となっているとことだと思う。
そして、視点の中心をMMT理論という新しい経済学に置いているので、色々な物事に対するこれまでとは異なる見方を見につけられた気がする。
ただ、こ -
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フリードリヒ・リストは「自由放任」を批判して、「保護貿易政策」の必要性を主張した。本著は、そのリストから学ぼうとするもので、‟貿易自由化の問題点“について、リストの理論を援用したものだ。
自由貿易が望ましいとした主張として有名なものは、リカードの定理。二つの国が自由貿易を通じて相対的に得意とする産業分野に特化することで、両国とも経済厚生を高めることができると言う比較優位論である。しかし、リカードの定理は、二つの国で1つの生産要素のみが存在する、労働は完全雇用されている、運送費用はゼロである、などの前提条件の上に成立するもので、現実には、あり得ないと著者は述べる。また、一般的に高所得者よりも低 -
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東洋経済にて、新しい封建制がやってくると合わせて紹介されていたので入手。いわゆる「西側」諸国(ぶっちゃけ欧米)を今までリードしてきている新自由主義が何をもたらしているか、を解説する。基本思想が強者総取りのところに更にテクノロジーによる支配を加速させて、少数のテック貴族によって多数の下流層(中流層は下流層にに叩き落される)が支配され、民主主義が蔑ろにされていく現状が語られている。そのような状況だからこそ、トランプのようなデマゴーグがそういった層のニーズをすくい取って伸びていく、と解説される。筆者は多元民主主義(地方の有力者に率いられた集団が多数ひしめき合う状況)の復活を提示しているが、テックオリ
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何かで聞いたことがあったMMT(Modern Monetary Theory)の唱道者である著者が、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』に続いて書いたもので、おそらく内容的にも同じことが書かれてあるのでしょう。
これからの政策で必要なことは、
①財政支出を拡大して、デフレを脱却すること。つまり緊縮財政から積極財政へと転じること。
②これまでの「ムチ型(企業利潤主導型)成長戦略」から、「アメ型(賃金主導型)成長戦略」へと転換すること。
とまとめにある。
とにもかくにも、デフレは悪だと。
そして、一見放漫な政策と思えるMMTこそが、このデフレ脱却には効果があると。
MMTは、 -
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日本でもたまに話題になるグリーンウォッシュ、いわゆる「やっていないのにやってるふり」です。
ところがアメリカではそれどころではありません。それが儲かる仕組みとして成り立っているそうです。しかも、「意識高い系」の会社が、SDGsやESGがうまくいかなければいかないほど儲かるという悪夢のような構造になっています。
SDGsやESGに対する何か底知れぬ違和感について、少しだけ分かった気がしました。
あと、日本の資本主義はこのレベルに達しておらず、滅ぼす対象の「民主主義」もそもそも怪しいので、ただただ世界から取り残されていくだけ、と寂しい状況らしい。やっぱり、戦って勝ち取ったのと、敗戦で与えられ -
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「政府はすでに財政削減を行っています。しかし,政府は,公共支出の運営を学習しなかったがために,財政削減による即時の問題解決を期待し,あるいは,財政削減が困窮を次第に累積させていくことを知らないのです。」
この本は19世紀を生きたコールリッジという人の思想を中心として,時代の趨勢とその結果から保守の態度を明らかにしようとするもの。上記の文はそのコールリッジのもので,これによれば,日本の自称保守政権が数世紀の歴史に対する無学を露呈していることになる。統計的方法だけでなく,デフレといった経済現象の解釈も明示的でない時代の慧眼。貨幣や国債の精確な理解。為政者や御用学者は経世済民が分かっていないのでは -
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シリーズ前2冊を読んでいたので、主張自体にはそれほど目新しいものはなかったのが正直なところです。本書は、主に財務省事務次官の矢野さんの論文を中心に、緊縮財政派の主張をとことん論破しています。全著を読んでいても、それはそれで楽しめるものでした。レトリックばかりで結局理論的には何が言いたいのかさっぱりわからない矢野論文に対して、中野さんのツッコミは理路整然としています。
権威の意見を鵜呑みにせず、自分で考える力をつけよう、というのが主なメッセージですが、それはつまり矢野さんを始めとする人々に考える力がないと暗にディスっています。最後の問題として、矢野さんは実は間違っていることを自分で分かった上で