中野剛志のレビュー一覧
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フリードリヒ・リストは「自由放任」を批判して、「保護貿易政策」の必要性を主張した。本著は、そのリストから学ぼうとするもので、‟貿易自由化の問題点“について、リストの理論を援用したものだ。
自由貿易が望ましいとした主張として有名なものは、リカードの定理。二つの国が自由貿易を通じて相対的に得意とする産業分野に特化することで、両国とも経済厚生を高めることができると言う比較優位論である。しかし、リカードの定理は、二つの国で1つの生産要素のみが存在する、労働は完全雇用されている、運送費用はゼロである、などの前提条件の上に成立するもので、現実には、あり得ないと著者は述べる。また、一般的に高所得者よりも低 -
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東洋経済にて、新しい封建制がやってくると合わせて紹介されていたので入手。いわゆる「西側」諸国(ぶっちゃけ欧米)を今までリードしてきている新自由主義が何をもたらしているか、を解説する。基本思想が強者総取りのところに更にテクノロジーによる支配を加速させて、少数のテック貴族によって多数の下流層(中流層は下流層にに叩き落される)が支配され、民主主義が蔑ろにされていく現状が語られている。そのような状況だからこそ、トランプのようなデマゴーグがそういった層のニーズをすくい取って伸びていく、と解説される。筆者は多元民主主義(地方の有力者に率いられた集団が多数ひしめき合う状況)の復活を提示しているが、テックオリ
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何かで聞いたことがあったMMT(Modern Monetary Theory)の唱道者である著者が、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』に続いて書いたもので、おそらく内容的にも同じことが書かれてあるのでしょう。
これからの政策で必要なことは、
①財政支出を拡大して、デフレを脱却すること。つまり緊縮財政から積極財政へと転じること。
②これまでの「ムチ型(企業利潤主導型)成長戦略」から、「アメ型(賃金主導型)成長戦略」へと転換すること。
とまとめにある。
とにもかくにも、デフレは悪だと。
そして、一見放漫な政策と思えるMMTこそが、このデフレ脱却には効果があると。
MMTは、 -
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日本でもたまに話題になるグリーンウォッシュ、いわゆる「やっていないのにやってるふり」です。
ところがアメリカではそれどころではありません。それが儲かる仕組みとして成り立っているそうです。しかも、「意識高い系」の会社が、SDGsやESGがうまくいかなければいかないほど儲かるという悪夢のような構造になっています。
SDGsやESGに対する何か底知れぬ違和感について、少しだけ分かった気がしました。
あと、日本の資本主義はこのレベルに達しておらず、滅ぼす対象の「民主主義」もそもそも怪しいので、ただただ世界から取り残されていくだけ、と寂しい状況らしい。やっぱり、戦って勝ち取ったのと、敗戦で与えられ -
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「政府はすでに財政削減を行っています。しかし,政府は,公共支出の運営を学習しなかったがために,財政削減による即時の問題解決を期待し,あるいは,財政削減が困窮を次第に累積させていくことを知らないのです。」
この本は19世紀を生きたコールリッジという人の思想を中心として,時代の趨勢とその結果から保守の態度を明らかにしようとするもの。上記の文はそのコールリッジのもので,これによれば,日本の自称保守政権が数世紀の歴史に対する無学を露呈していることになる。統計的方法だけでなく,デフレといった経済現象の解釈も明示的でない時代の慧眼。貨幣や国債の精確な理解。為政者や御用学者は経世済民が分かっていないのでは -
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シリーズ前2冊を読んでいたので、主張自体にはそれほど目新しいものはなかったのが正直なところです。本書は、主に財務省事務次官の矢野さんの論文を中心に、緊縮財政派の主張をとことん論破しています。全著を読んでいても、それはそれで楽しめるものでした。レトリックばかりで結局理論的には何が言いたいのかさっぱりわからない矢野論文に対して、中野さんのツッコミは理路整然としています。
権威の意見を鵜呑みにせず、自分で考える力をつけよう、というのが主なメッセージですが、それはつまり矢野さんを始めとする人々に考える力がないと暗にディスっています。最後の問題として、矢野さんは実は間違っていることを自分で分かった上で -
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中野剛志氏の著書は結構読んでいるが、今回もシニカルかつ的確な分析が光っている。
ここ最近積極財政か緊縮財政どちらが相応しいかがメディアで議論されるようになった。日本がやっとこのような状況になったのも、10年以上前から様々なメディアで経済について語っていた著者の功績もあると私は思っている。そんな人物が書いた新書が難しいはずがない。昨今メディアで取り上げられる経済テーマに関しては基本的なことがこの本でわかるようになっている。
きっと、経済についてあまり勉強してこなかった人からしたら、今までなんとなく学んできた知識を覆す内容ばかりだろう。だからこそ、本書のタイトルは『どうする財源』なんだと思う。(も -
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本書タイトル「脳・戦争・ナショナリズム」から何を想像して書店で手に取ったか、奇妙な組み合わせだなと思いながらも、脳科学者中野信子氏、批評家の中野剛志氏、そしてズバズバともの言う哲学者適菜収氏と普段良く手に取って読んでいる御三方の座談会形式に、いったいどんな会話がなされたか気になって読んでしまった。内容はタイトルそのまんま、3名の分野がそのまんま話の中心として、なんかこう、練り上げられていくと言う表現が正しいのか、形容し難いが面白い内容となっている。
まずは信子氏の脳科学的な知見が飛び出してくる。人の見た目に関して描かれる書籍は数多くあるが、本に書いて文字に起こして大丈夫か不安になる様な記載でか -
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著者の話のエッセンスは前著(「基礎知識編」)で言い尽くされている。それぐらいわかりやすくシンプルということだ。本書は、なぜその主張が世の中に広がらないのかを論じている。その着眼点や議論の進め方は切れ味鋭いが、それは著者の立ち位置がユニークでブレないからこそ、生み出されたものだろう。ただ、この議論が実際にグローバル化にブレーキをかけ格差是正につながるという道筋を具体的かつ現実的に描けているかというと若干心もとない。新自由主義がやはりシンプルで勢いのある議論を展開しながら、肝心なところで“トリクルダウン”という甚だ怪しい理屈に走ったことが想起されるが、著者の議論が同様のものでないことを祈りたい。1