中野剛志のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
著者の想いがこもった本である。読んでよかったと思える。
MMTを解説しながら日本の政策について論考している。私としては、こういった内容がなぜ政府などにこれほど受け入れられないかに興味がある。
暫定的な回答としては、中野氏に限らず、批判者は現行の方法の理論的な欠陥とただしい理論の論理を示すことはできていると思う。しかし、どのように社会を変えるかについての戦略というか、私の言葉でいえば官僚のジョブに沿った浸透戦略にかけるのではないかと思う。
既存のシステムの利得構造を変えるには、新しいシステムのあり方を示すだけでは不十分である。なぜならばシステムの変容過程では不安定状態となりパフォーマンスが下がるのだが、これを主導すると手動したプレイヤーとしての利得、つまり出世や安定などはむしろ危機になってしあうからだ。一種のエージェント問題と言ってもいいだろう。よりよい駅の構造に作り変えるのに、長期の果てしないめんどくさい工事を経る必要があるのににている。
これについて、中野先生や藤井先生に力添えできるほどの力が私にあればいいのだが。せめてすこし論考ぐらいのものはだせればと思っている。 -
Posted by ブクログ
以前に発売されていた前2作が面白かったが、今作が発売されてることを知らず、今更購読。
2021年に文藝春秋に掲載された財務省事務次官であった矢野氏の論文を題材に、主に現代貨幣理論観点から健全財政の間違いを批判する内容。
一冊丸ごとこの論文に対する批判の嵐。
もうコテンパン。
前2作に比べると分かりにくい部分はあるが、この論文を批判する流れの中で現代貨幣理論の大枠を解説するとともに、現在の経済政策の何が間違っているのを説いている。
また後半のデマンドプル・インフレとコストプッシュ・インフレ、デフレの記述は、2025年3月現在にコストプッシュ・インフレに悩まされている日本の課題を浮き彫りにし、その対策を示唆していると思う。
-
Posted by ブクログ
米国も新規の開業率は低減傾向。すぐに儲からなければ生き残れない。起業は平凡な業種で起すもの。イノベーションなど担えない。その役割は現存の大企業が行うものだが、株主資本主義が進み、資金が投資家に流れる。短期的視野の快楽主義が投資を阻み、大企業もその役割を果たせない。革新的なiPhoneが生まれたのも、政府の支援があってこそ。公共の役割が民間よりも大きい。資本主義は成功するから社会主義になる。それは自然な流れで思想ではない。…日本の失われた30年は、20世紀前半のこの偉大な経済学者の理論の正反対を行った結果。
自由主義経済をある程度続ければ、民間でできることはやりつくされる。それでも人々が満ち足りることはない。残りは、公共セクターでしかできなことになる。資本主義が行き着けば、公共の役割が増え、次第に社会主義になっていく。自然に考えればその展開を想像できるはずなのに、「公共事業は無駄だ」「支援を求めるより自己責任でなんとかしろ」「民間の方が活力がある、何でも民営化しろ」「サヨクは共産主義だから嫌い」という感情論に民衆が支配されたことが、現在の日本の低迷を招いている。他ならぬ国民が負わなければならぬ責任である。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ市場均衡理論を基礎とする経済学は、イノベーションが起きない定常状態を想定している。ワルラスの世界では、経済は戦争など外部要因でのみ変化する、と想定している。
イノベーションを起こす人間は、合理的な決定をする経済人ではなく、やむにやまれぬ行動力で経済の均衡をぶち壊す人。
構造改革は、自由競争によって経済は成長する、という考え=市場原理主義、新自由主義。均衡理論では、経済の成長を考察できないはず。
均衡理論では利潤はない=資本はたまらない。
信用創造は銀行しかできない。貸出のもとになっているのは今や預金ではない。銀行は貸出をする=信用創造することで、お金を作り出せる。
資本主義の三要件
生産手段の私有、利益と損失の自己責任、銀行による信用創造=商業社会と資本主義を区別する要素。
信用創造は、一時的にインフレを引き起こす(信用創造によるカネで物不足になる)。生産が増えるとデフレになるのでインフレは解消する。信用インフレと信用デフレ。
信用インフレ以外のインフレ=人手不足、戦争、石油ショックなど。
量的緩和が効かなかったのは、銀行の貸出が増えなかったから=信用創造がなかったから。
貨幣循環理論=民間銀行の貸出によって預金が創造される。企業の資金需要がなくなれば信用創造が機能不全になる。政府支出の財源は税金ではない。
政府支出が先で税収は後=政府が支出し、貨幣が出回る。それを税で回収して貨幣を破壊する。=税は財源の破壊の手段=財政健全化は、民間から金を引き抜いて破壊すること=デフレとは、貨幣が消えていくこと。
企業が貯蓄過剰でいる限り、政府債務が減るわけはない=民間がプラスなら政府はマイナスにならざるをえない。企業が貯蓄過剰なのは、デフレだったから。
逆に回れば、企業が貯蓄不足になり政府の収支は黒字になる。
投資の増加は一時的なインフレを呼ぶ。供給が安定すれば収まる。財政規律に固執しているとどんな政策もうまくいかない。
不況とは、新結合によって次の段階に至る際の副作用のようなもの。
シュンペーターマーク1=イノベーションの担い手を個人と考えた。マークⅡでは、大企業組織と考えた。
完全競争はない。常に市場は独占的競争をいている。価格が伸縮的だと、企業は技術革新に挑めない。将来の不確実性を飲み込めるのは大企業。自動車はブレーキがあるから速く走れる。
独占的な大企業は停滞しているわけはない。いつでも競争で他社に駆逐される恐れがあるから。
完全競争とイノベーションは両立しない。完全競争であれば利益はゼロだから。
市場原理主義の構造改革は、創造的破壊を生まない。
大規模で市場支配力が強い企業のほうがイノベーションを起こしやすい=シュンペーター仮説。実証研究が多数ある。
競争の激化は、イノベーションを促進しない。抑制する。失敗を恐れて保守的になる。
内部留保と再投資、終身雇用がイノベーションに必要。
株主価値の最大化イデオロギーが、これをやめて削減と分配を正当化した。
株式市場は、資金を調達する場ではなく、企業価値を分配収奪する場となった。イノベーションの阻害要因。スタートアップが生まれにくくなった。スタートアップとはごく一部を除いて零細企業のまま。
スタートアップは非効率なので、保護は非効率な資源配分を助長する。
日本がイノベーションを起こせなくなったのは、アメリカのコーポレートガバナンス改革を真似したから。
アメリカは軍事産業を中心に政府がイノベーションを主導した。iphoneはアメリカの産業政策の産物。
外生的成長理論=技術進歩が生まれ経済を成長させる。技術進歩を因子としてモデルに取り入れたものが、内生的成長理論。これが主流派経済学の成長理論=一定の確率でイノベーションが成功すると考える。
シュンペーターは、イノベーションは不確実に起きるもの、と考える。不確実性を低下させるには、国の政策が重要。
アメリカ技術革新には、政府の起業家としての役割が大きい。
貨幣循環論はMMTと似ているが、MMTは統合政府を考えるところに違いがある。
アメリカでは政府支出によって、イノベーションを起こしていた=政府支出によらなければ、イノベーションは起きない。規制緩和をしても、イノベーションを起こす不確実性を埋めることはできない。むしろ規制緩和によって不確実性が高まる。
シュンペーターは資本主義が成功することで、社会主義=中央政府が精算を支配する、になると言っている。公共セクターの役割が民間よりも大きい経済システム。
イノベーションが日常的に政府で起こされると、企業家は不要になる=資本主義ではなくなる。
所有と経営の分離は、個人のイノベーションを遠ざけている。
合理主義の精神では子供を持たないことが正しい選択=一生よりも長い期間を考えない。
家族動機が資本主義の大本だが、それがなくなれば資本主義は崩壊する。=公共セクターの役割が大きくなる。
インフレは社会主義化(政府の役割が大きくなること)を促進する。
資本主義の私有財産制度と契約の自由は、個人を想定したものだが、今は形骸化して崩壊している。
政府の介入によってかろうじて資本主義を保っている=酸素吸入器付き資本主義。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ内部留保と再投資、から、削減と分配、へ変化したことがイノベーションが起きないことの原因である。
完全競争状態の矛盾=どうやって独占が出現するのかを説明していない。企業の生産性の違いを考慮していない。
シュンペーターは、完全競争は劣った者であり、理想的な効率性のモデルではない=イノベーションの道筋がない。
イノベーションは不確実、集団的、累積的、なもの。
特許は幼稚産業保護論の関税と同じ。イノベーションの理論を前提にしている。
過去には、そのように保護して生まれた巨大産業がたくさんあった。パシフィック鉄道、AT&T、航空路線、高速道路、インターネット、など。インフラ投資として、大学(1862年のモリルランドグラント法により、土地が隔週に付与された)。農業試験場、衛生研究所、など。
もともと株式市場の役割は、投機資金の調達ではなく、オーナー企業の出資者への投資回収手段だった。今は、所有と経営の分離によって、資金調達の場となっている。
そのため、企業の目的が価値創造ではなく、価値抽出変化した。M&Aのための通貨としての株式。
ストックオプションの普及。ストックオプションを貰うことで、株価の上昇と経営陣の利害が一致した。
株主価値の最大化=株主は唯一の残余請求権者。
株式市場を動かす要因がイノベーションではなく、投機や株価操作になった。
自社株買いをすることで、株価が上がる=ストックオプションを行使するチャンスになる。
企業は確定拠出年金にして、キャッシュアウトを容易にした。
公的年金は確定給付型なので、積立不足の可能性がある。そのため株主行動として市場から高い利回りを要求する。機関投資家は、価値創造と価値抽出の違いがわからない。価値抽出しても株価が上がれば利害は一致する。
株主価値最大化というスローガンは価値創造と価値抽出を区別できない。
巨大インデックスファンドは議決権行使助言会社のいいなりになる。その結果、価値抽出に拍車がかかる。
ヘッジファンドのアクティビストはさらにそれに加担する。
一般株主は、常に市場から逃げられるので、リスクを負っていない。エージェント理論のリスク負担者は、一般株主だが実は、そうなっていない。
提案事項
自社株買いの禁止、経営者報酬の再設計、株式型報酬の禁止。
ビジネススクールで、エージェント理論ではなくイノベーション理論の教育をする。
株主民主主義が破綻している。法人税制の改革。
ストックオプションと自社株買いの組合せが、イノベーションへの傷害になっている。価値を奪い取る組織。
日本も,失われた30年の間に、それを追従した。
1997年ストックオプションの導入、自社株買いが取締役会で決定できる、労働者派遣法、確定拠出年金、NISAの導入、など。
ガバナンスコードでROE経営を重視すると、株主還元で分母の自己資本を毀損する方が、ROEが高くなる。
金融機関との関係が深い旧来型の企業と、外国人株主の影響が強い企業では、賃金のレベルが違う。
配当金は6.2倍に増えたが給与は0.96、設備投資も同じくらい減った。