あらすじ
「現在も社会一般・経済分野でベストセラーの『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』の続編です。が、前の二冊を読んではいない方でも理解できるよう、分かりやすく書かれています。コロナ禍など前二冊刊行以後の世の中の変化も踏まえた内容になっています。しかし、本書には、それ以上に、前二冊にはない特別な点があります。それは、経済についての知識を学ぶためだけではなく、ものごとを「考える力」を磨くということを目的として書かれているということです。世の中には、たくさんの情報があふれ、いろいろな議論が日々流れています。しかし、政府の発表、新聞、テレビ、ネットなどのマスメディア、最近ではソーシャルメディアから流れてくる情報、あるいは大学教授や専門家による解説や主張について、普通の人々は、つい鵜呑みにしてしまいがちです。実は、経済についての専門的な知識がなくても、私たちが普通に持っている「考える力」を引き出しさえすれば、どの専門家が正しくて、どの専門家が間違っているかが、かなりの程度、分かってくるようになるのです。実際、大学教授や専門家といった人々でも、矛盾しているとすぐ分かるようなことを平気で言ったり、書いたりしていることが、たくさんあります。しかも、だいたい、同じような間違いをしています。そうは思えないのは、おそらく「経済学の教授」「経済の専門家」といった肩書に惑わされているからでしょう。しかし、専門的な知識がなくても、普通に「考える力」を使えば、専門家たちの間違いに気づくことができます。そして、自分は、同じような間違いをしないですむようになります。本書の本当の目的は、その「考える力」を使うコツを伝授することにあります。経済というテーマは、「考える力」を引き出すための題材に過ぎません。ですから、本書で身につけた「考える力」は、経済以外の問題について考える際にも必ず使えるものになるのです。」(中野剛志)
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Posted by ブクログ
貨幣や財政のイロハをある程度理解した上でも、論点を醸成させてくれる1冊。なかなかに読み応えあり。
大論争編と基礎編は、現物買って保有しようかと思いました。
この国を正しい方向に導く
2019年に相次いで発表された「奇跡の経済教室【基礎知識編】」、「奇跡の経済教室【戦略編】」に続く三作目。MMT(現代貨幣理論)を肯定する立場から日本の経済・財政政策の問題を解説している主旨は前二作と変わりはない。丁寧な説明なので、前作を読んでいなくても大丈夫だが、合わせて読むと一層理解が深まる。今回は、昨年10月に文藝春秋に発表されたいわゆる「矢野論文」を素材にして、これに徹底的に批判を加えている。この四半世紀、なぜ日本だけが豊かになれなかったのか、なぜ政府は経済政策を誤り続けてきたのかを解説。一人でも多くの人がこれを読んでくれることを祈りたい。
Posted by ブクログ
当代きっての論客、中野剛志氏が「矢野論文」というプロパガンダを徹底的に批判してくれる。弱者切り捨ての現代政治に思うところがある人は必ず読むべき。
我々にできることは①情報を鵜呑みにせず、自分の頭で考えること②有権者としての権利を行使すること、の二つしかない。
本書は①を実行するための絶好の教科書である。
Posted by ブクログ
問題はたくさんあります。経済にフォーカスしても、日本はたくさんの問題を抱えています。というよりも、問題がない国は無いのかもしれません。
正しい方向に向かうための政策を実行しているかを考えるには、とても参考になる本でした、私は労働者なので、デフレ脱却を最も優先して欲しいのですが、どうやら日本の政策は、違う方向を向いているようです。
とても分かりやすい言葉で、経済の重要なことを知ることができるとてもいい本です。他のシリーズも気になります。
Posted by ブクログ
以前に発売されていた前2作が面白かったが、今作が発売されてることを知らず、今更購読。
2021年に文藝春秋に掲載された財務省事務次官であった矢野氏の論文を題材に、主に現代貨幣理論観点から健全財政の間違いを批判する内容。
一冊丸ごとこの論文に対する批判の嵐。
もうコテンパン。
前2作に比べると分かりにくい部分はあるが、この論文を批判する流れの中で現代貨幣理論の大枠を解説するとともに、現在の経済政策の何が間違っているのを説いている。
また後半のデマンドプル・インフレとコストプッシュ・インフレ、デフレの記述は、2025年3月現在にコストプッシュ・インフレに悩まされている日本の課題を浮き彫りにし、その対策を示唆していると思う。
Posted by ブクログ
財務次官の論文を丁寧に反論していく。
多くの経済学者の言うことを覆していく。
常識だった様な事が覆される、画期的な1冊。
MMTを解説している。
Posted by ブクログ
「財政赤字は悪」という日本の大手メディアの偏った論調に違和感があり読んでみた。
本書によれば、財政赤字とは単に、政府支出を通じて民間部門に通貨を供給しているだけに過ぎず、高インフレ(デマンドプル・インフレ)になっていない限り問題はないという。
具体的な理由についても分かりやすく解説されており、読んでいる最中は全て腑に落ちる、いや、むしろ「目から鱗が落ちる」内容。でも、自分の言葉で要約しようとすると難しい・・・だからこそ、経済の話、特にマクロ経済は色んな論者がいて、世論も「赤字=ダメ」みたいに単純な論理がまかり通り、思考停止に陥りやすいのだろう。
国家としての金融政策の難しさ(世論の理解を得ること)も痛感する。日本の大手メディアは米国だけでなくその他の経済先進国の財政施策についても調査・報道し、財政赤字という近視眼的な内容を超えて、長期的な視点で日本の在り方を国民に伝えてほしい。
Posted by ブクログ
中野さんの著書らしく、緊縮財政に対しての反論がしっかり書かれており、読み応えがあった。また、自分とは違う意見に対して闇雲に否定するのではなく、ソクラテスのように問答によって互いの意見をブラッシュアップさせる技法は参考になった。
Posted by ブクログ
シリーズも3作目だけに、言っていることは常に同じながら、言い回しや譬えや構成がすっきり整理されている印象。一般向けである以上、ある程度の単純化であったり、立場が異なる者への皮肉が混じることはあるだろうが、それがだんだん濃くなってきているところは、やや気になるが。とはいうものの、今後著者が、世界や日本の経済トピックにどのようなコメントをつけていくのはには興味がある。トラスの辞任劇とかアメリカの高インフレと利上げ政策とか。
Posted by ブクログ
シリーズ前2冊を読んでいたので、主張自体にはそれほど目新しいものはなかったのが正直なところです。本書は、主に財務省事務次官の矢野さんの論文を中心に、緊縮財政派の主張をとことん論破しています。全著を読んでいても、それはそれで楽しめるものでした。レトリックばかりで結局理論的には何が言いたいのかさっぱりわからない矢野論文に対して、中野さんのツッコミは理路整然としています。
権威の意見を鵜呑みにせず、自分で考える力をつけよう、というのが主なメッセージですが、それはつまり矢野さんを始めとする人々に考える力がないと暗にディスっています。最後の問題として、矢野さんは実は間違っていることを自分で分かった上で何か意図があってやっているのではないかという、読者が一番知りたい問いへの答えが示されます。それは、純粋にわかっていないだけだという、かなり絶望的な結論で救いがないです・・。
Posted by ブクログ
政府は自国通貨を発行できるのに、なぜ課税をしているのか?→通貨の価値を保証するため。
MMTでは、お金の価値は政府が発行する通貨で納税できるからであると説明している。
財政赤字は当然。なぜなら政府支出が先にあり、民間に供給されたお金で税金を払うから。
国債発行→民間銀行の日銀当座預金(日銀が供給)から支払う。
なぜ、政府支出で民間銀行の民間口座に加えて、民間銀行の日銀当座預金が同額増える?それが増えると金利がなぜ下がる?それを防ぐために国債発行している。
分配無くして成長無し!
→消費性向から考えて、高所得者が溜め込んでいるよりも低取得者がお金を手にすることで社会の消費全体が増える。また、教育が不十分な家庭が教育費の支出拡大することで将来の成長につながる。
→インフレはお金の価値が下がること。したがって、格差が是正される方向にいく。
成長戦略による生産性の向上、それによる供給能力の増大は需給ギャップをさらに拡大。デフレ圧力を生んでしまう。あくまで需要の増大が重要。
コストプッシュインフレ(需要増ではなく外的要因でのコストアップ)とデマンドプルインフレの区別が非常に大事。前者には財政出動の減少はNGで、供給力アップのために財政出動する必要がある。
セーの法則では、財政出動を減らしても経済成長は阻害しない前提にたっているが、それがそもそも常識的に間違い
Posted by ブクログ
奇跡の経済教室三部作の三つ目。矢野財務事務次官の「論文」を題材に、経済政策のあり方を考える本。
インフレには2種類ある。コストプッシュインフレとデマンドプルインフレ。この2つの違いとコントロールの仕方を丁寧に解説していて、よく理解できた。
しかし、どうやったら日本はプライマリーバランス黒字化至上主義から脱せるのだろうか…?
Posted by ブクログ
ソクラテス論法=相手の主張の前提をつく。同意できる部分から一歩一歩確認しながら論を進める。
シャーロックホームズの「白銀号事件」何もしないことが問題。
自国通貨建ての政府債務/GDPは持続可能性の指標とする意味はない。財政赤字の上限はインフレ率によるべき=機能的財政。
政府への貸し出しの原資は民間の預金、ではない。政府の貸し出しが民間の貯蓄を生む。
通貨の価値は納税義務があるから。政府の徴税権力が貨幣価値を担保している。=税は通貨の価値を保証するために必要。税は財源確保の手段ではなく、政策の実施のために必要である。消費税の効果は消費を減らすこと。
政府は支出のための財源として税を徴収する必要はない。財政の赤字は民間の黒字。政府が国債を発行すると民間貯蓄は増える。
家計貯蓄は一般政府総債務と並行して増えた。
自国通貨建て国債はデフォルトしない=国債を買わなくなって金利が高騰することはない、と同義。
デマンドプルインフレとコストプッシュインフレを区別する。
MMTは、供給力が限度になる。供給力以上に通貨を供給すれば高インフレになる。
プラグマティズム=柔軟な考え方。結果を見て判断する。ドグマティズム=教条主義、原理主義。
公共工事が増大したのは90年代前半だけ、後半以降は減少。需給ギャップを埋めるだけでも価値がある。
分配なくして成長なし、は正しい。分配は成長を促す。成長してから分配、では永遠に分配できない。
成長戦略は規制緩和や自由化ではない。供給力が増えてもデフレ圧力を発生させるだけ。デフレは格差を拡大する。インフレは格差を是正する。
構造改革は、労働者の力を弱める改革だった。
魅力ある商品を生み出さないから低迷、ではなくデフレだから積極的に投資できず、低迷。
家計の金余り、は政府の経済運営の失敗を表す。
量的緩和で国債を買い入れても、財政支出を拡大しない限り通貨の供給量は増えない。インフレが通貨の供給量を増やす。量的緩和がインフレを起こすのではない。
インフレを抑えるのは生産力増強以外にはない。
積極財政で増加した投資はまず需要のかくだいとして現れる。しかし数年後は供給力の拡大として供給を強化する。供給力を拡大しないものが無駄な投資。デフレときは、それでも需要を増やす分意味がある。
法人税、所得税は景気が良くなると税収が増える=スタピライザーが組み込まれている。消費税にはこの効果はない。
MMTでは、就業保障プログラムでスタピライザーの役割を提案している。
大恐慌の時、フーバー大統領は健全財政を重視して増税して悲惨な目にあった。日本の浜口内閣も同じ。橋本内閣の財政構造改革も同じ。
ドイツやフランスはユーロを発行できないので財政健全化には意味がある。コロナでは付加価値税は引き下げた。
金融政策、財政政策、構造改革の3つの中で何をやるか。構造改革で生産性が上昇すれば、供給力が高まってますますデフレ化する。金利が0%のときに、リターンが10%ある公共投資を行うのは効率がいいはず。
新しい見解:低金利時には、財政出動は民間投資を阻害しない、むしろ呼び込む。支出先が効果的であれば継続するべき。各国の協調が望ましい。
不況になると設備投資を控える。その結果供給力が落ち込み、回復時に供給力も上昇しない。金融危機による一時的な落ち込みの後遺症が起きる。
セイの法則を前提にすれば、財政出動が民間投資を呼び込む根拠はない。しかし現実は構造改革しても、いつまでたっても需要も供給も回復しない=逆セイの法則のようなもの。需要不足が供給も需要も減らす。