あらすじ
「WOKE」という切り口で、企業が社会問題に取り組むことそのものが本音レベルで利益に直結する現代資本主義の構造と裏側を読み解く。
■「WOKE」とは:「WAKE=目を覚ます」という動詞から派生した言葉。公民権運動時代から使われていた言葉だが、近年は「社会正義」を実践しようとする人びとの合言葉になっている。
■「WOKE CAPITALISM」とは:企業が気候変動対策、銃規制、人種平等、LGBTQなど性的平等実現などに取り組む様子。
【「WOKE CAPITALISM」のチャート図】
リベラルな「WOKE CAPITALISM」の実践で企業イメージ&株主価値が向上
⇒翻って保守層は「意識高い系」に反発し、選挙では保守党派に投票
⇒保守党派の伸長は、「WOKE」な企業にとっても実はプラス。むしろ「減税」政策の恩恵を受けチート化。さらなる利益がもたらされる。
⇒この構造が継続し続けることで、社会階層は固定化。民主主義の破壊につながり社会はディストピア化。しかし、企業はどちらに転んでもユートピア化。
⇒繰り返し
近年「WOKE」という言葉がよく使われている。「wake=目を覚ます」という動詞から派生したこの言葉は「社会正義」を実践しようとする人びとの合言葉になっている。
たとえば、一般消費者向け企業が、気候変動、銃規制、人種平等、LGBTQなど性的平等、性的暴力廃絶などに参加する様子は「Woke Capitalism」と呼ばれる。
Woke Capitalismの実践で成功した企業は「社会正義」に取り組むことで、株主価値向上にも顧客の開拓・維持にもつながる。
一方で、リベラルなWokeの実践は保守層の反動を煽り、その反動による投票行動で政治は企業に優しい保守党に委ねられる。トランプ現象はその象徴だ。あまつさえ伝統的に企業に優しい保守党派により減税にも与れる。「Woke」を糧にしたキャピタリズムというわけだ。
ある意味で企業にとっては無敵である。ただし、社会には深刻な分断がもたらされ固定化し、民主主義が破壊されることにもつながってしまう。
「WOKE」という切り口で、企業が社会問題に取り組むことそのものが本音レベルで利益に直結する現代資本主義の構造と裏側を読み解く、オリジナルかつユニークな論考。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
まず、三点でなければまともにバランスが取れないところを、二点にしてしまった現経済観念に問題があるのだと感じられた。
また現在の正さはある意味で、「営業スマイル」「営業トーク」がどれだけ巧みであるかになってしまっていると。
こう言ってごめんなさいだけど、かつてアメリカ製品はポンコツと思われていた時代があったが、アメリカ思想もそうだったのかもなと冷静になった。
Posted by ブクログ
日本でもたまに話題になるグリーンウォッシュ、いわゆる「やっていないのにやってるふり」です。
ところがアメリカではそれどころではありません。それが儲かる仕組みとして成り立っているそうです。しかも、「意識高い系」の会社が、SDGsやESGがうまくいかなければいかないほど儲かるという悪夢のような構造になっています。
SDGsやESGに対する何か底知れぬ違和感について、少しだけ分かった気がしました。
あと、日本の資本主義はこのレベルに達しておらず、滅ぼす対象の「民主主義」もそもそも怪しいので、ただただ世界から取り残されていくだけ、と寂しい状況らしい。やっぱり、戦って勝ち取ったのと、敗戦で与えられた違いなのか?
Posted by ブクログ
「ウォーク」が偽善的だってんでなんか攻撃しているけどその根拠は薄いというか見方がネガティブすぎる。しかしアメリカの知らん事情が多くて勉強になる。ポリコレ興味ある人は一読しておくべきだ。
Posted by ブクログ
企業が社会貢献することで企業イメージは向上し、株主価値も上がるが、実態は羊の皮を被ったオオカミで、富裕層が労働者層から搾取する構造が固定化するばかりである。
ウオーク資本主義が民主主義を滅ぼすという論考である。
私は資本主義自体が危うい状況であると考えているので、この構造も早晩崩壊するのではないかと思う。
Posted by ブクログ
昨今の企業主導SDGsとか、製品名を出さずに疾患啓発CMを出す製薬会社に胡散臭いものを感じる人は特に面白いはず
Work(目覚めさせられた)を”意識高い系”とした訳者に拍手
ふてぶてしいなとも必要悪だとも感じるところが難しいけど
Posted by ブクログ
ウォーク資本主義的な振る舞いは、経済のアジェンダにおいては今まで通り企業が利益を得続けるための隠れ蓑であり、本来民主主義にて政治が担うべき役割までも進出しようとする危うさを孕む。
企業は利潤だけを追求すべき
企業は社会的な責任を果たすべき
どちらでもなく、私たちが本来のウォークネス(人種や経済における不平等をきちんと見つめる知識を持ち、その解消のために戦う)を取り戻すべきなのだ。
Posted by ブクログ
意識高い系には裏があり気をつけろとの主張に読めたが、なにぶん自分は政治的な所が弱い(興味がない)ので理解がついていけてないような気がする。何時になったら理解できるようになるのだろうか。
Posted by ブクログ
「企業のウォーク(woke)には気を付けろ」という主張か。
(個人のwokeは民主主義的にあって良いが)企業のwokeは損得勘定に則ったもので、民主主義に対する改善意識によるものとは限らないので、寧ろ民主主義には害を為す。
企業のwokeは、会社の利益最大化を目指す活動手段である。主義主張への共感・賛同よりも「大衆の多くの支持を得られるか」か判断のポイント。
なぜなら、wokeな企業のCEOの報酬は極端に高くて貧富の差を助長しており、その企業の多くは租税回避策により税金を納めていない。つまり、民主主義的に正直とは言えない行為を平然と行っていて、woke本来の問題意識に従った行動をする人物・組織と言えないからである。
経済的に見るとwokeは新自由主義をベースにす企業が民衆に自社の商品を買わせるための手段の一つということ。
一方で、右派保守主義者(グループ)や保守的宗教団体から見ると、wokeな行動は自分の価値観存在意義への攻撃となる。古くからの良き伝統(と本人は思っているモノ)のために反撃すべきであり、実際にSNSやメディアでヒステリックに意見を発信し、結果として民衆の分断を煽っている。
従って、企業のwokeは社会全体への利益という観点からはマイナスになっている。
また、保守党派が伸びても減税政策による恩恵を受けられるので、wokeな企業にとっては全然痛くない。
企業のwokeな行動や情報発信から単純に良い事を言う会社と見なす事無く、その裏にある狙いを意識し全面的に信頼を安易に与えないように注意が必要である。
個人的に感じていたSDGsに賛同する企業の胡散臭さも、企業のwokeの胡散臭さに通じていて、SDGsで儲ける気満々な姿勢が透けて見えるからと納得。
「やらない善意より、やる偽善」という考え方もあるが‥
30年程前の大学時代に『アメリカでは優秀で社会を良くしていこうという若者が政治家を目指さずに企業家(スタートアップから起業)を目指している』という話を聞いた事があるが、そんな元〝wokeな若者〟の罪滅し的な行動という一面もあるような気がしたが、そんな甘い考えは持っていないかと瞬時に自己否定。