あらすじ
読むと経済学者・官僚が困る本ナンバー1
平成の過ちを繰り返さないために!知っていますか?税金のこと、お金のこと。経済常識が180度変わる衝撃!
第1部 経済の基礎知識をマスターしよう
1.日本経済が成長しなくなった理由
2.デフレの中心で、インフレ対策を叫ぶ
3.経済政策をビジネス・センスで語るな
4.仮想通貨とは、何なのか
5.お金について正しく理解する
6.金融と財政をめぐる勘違い
7.税金は、何のためにある?
8.日本の財政破綻シナリオ
9.日本の財政再建シナリオ
第2部 経済学者たちはなぜ間違うの?
10.オオカミ少年を自称する経済学者
11.自分の理論を自分で否定した経済学者
12.変節を繰り返す経済学者
13.間違いを直せない経済学者
14.よく分からない理由で、消費増税を叫ぶ経済学者
15.経済学は、もはや宗教である
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Posted by ブクログ
私はデフレ、インフレもあまり理解できていないような素人ですが、この本の内容には驚きました。
そして、今まで政府がやってきたことが、全然役に立っていない、むしろ逆効果な事ばかりやっているとは。
たしかにデフレの対策とインフレの対策を比べると、インフレ対策の方が一般の人にはウケが良い気がする。
驚いたのは多くの著名な経済学者達もまともな理論を知らないと言う事。
意見をコロコロ変えたり、成果をあげれないことが多いとのこと。
経済学というのは確かな科学的根拠があると思っていたが、そもそも胡散臭い、内輪だけの理論が広まってしまっているのだろうか。
本当に恐ろしいなと思った。
なぜ政治家達がこのような過ちをおかしてしまうか、続編があるようなので、そちらも気になる。
Posted by ブクログ
過去の日本の経済政策について納得する解説でとてもわかりやすかった。
また、私が資格試験で学んでいる経済学の分野は主流派であり実際のマクロ経済に落とし込んだときに必ずそうはならないという、考えていなかった視点を持つことができた。
Posted by ブクログ
インフレやデフレ、財政赤字などについて分かりやすく説明されており、特に、デフレ下のわが国で正反対のインフレ対策しかやってこなかった、ってことが詳しく述べられています。
Posted by ブクログ
あまりにも読みやすく、自分が理解できているか不安になるほどだった。
今回3回目を読んでみて、少し内容の理解が進んだように思う。わかりやすいことと、分かることは違うということも理解できるよい読書体験だった。
そして何より経済学者や評論家と呼ばれる人たちの無責任さを思い知らされた。 もっと多くの人が知るべき内容。
Posted by ブクログ
目からウロコが5、6枚落ちる感じ。現代貨幣理論入門の決定版。
銀行は家計から集めた資産を元手にせずお金を貸す。
政府の支出拡大は赤字に制限されない。ただしインフレの度合いを考慮する。
デフレ下ではむしろ競争や生産を抑制し、大きな政府志向の政策が有効、緊縮財政は有害。
Posted by ブクログ
定説とされてきた経済理論や考え方、政治家や経済学者などを鮮やかな理論でバッタバッタと斬り捨てる所はまさに痛快。
一方で、現代貨幣理論(MMT)の確からしさを読みながら感じつつも、現実にはまだ主流とはなっていないのも事実。経済の地動説だ、との話もあるように、一旦世の中に定着してしまった理論を覆すのは、きっとその理論に深く浸かっている人ほど難しいのだな、と感じた。
なんでも鵜呑みにせず、根本の視点から変えて考えて見ることの大切さをあらためて学べた。
自分自身、一読しただけではまだ完全に理解できていないので、アタマを整理しながら再読したい。
続きとなる戦略編にも期待。
Posted by ブクログ
その主張や文体からして、いわゆる「逆張り」の議論のようにも見えるが、本書の内容に目を向ければ、理路整然としており、かつ、ここ何十年かの日本経済の動向についての自らの肌感覚に照らしても、なるほどと思わせられる。著者の議論にも何か穴があるのかもしれないが、とりあえず「戦略編」を読んでみようと思う。財政健全化や自由貿易を絶対的な善とする考え方を疑ってみることが必要だと思う。
Posted by ブクログ
タイトル通り、目からウロコが落ちるほど、驚きの内容だった。
筋の通っており、非常に分かりやすく、内容もよく理解できた。是非とも政府関係者に読んでもらって、デフレの早期解決を図ってもらいたい。
続きの戦略編も読むのが楽しみだ(^^)/
Posted by ブクログ
別著の戦略編で学んだMMT理論の理解が深まる。その裏付けとなる信用貨幣論について、対する商品貨幣論寄りの仮想通貨を引きながら、ビットコインの可能性を称賛したウォズニアックや東浩紀、竹中平蔵の誤りを正す。更にはこの理論の延長で橘玲や浜田宏一に対しても反論。下世話な観点だが、強者たちへのこの無双っぷりが先ず痛快。そして、名指しで論を挑むだけあって、やはり明解で筋が通った理屈だ。
また、MMT理論に辿り着く前に、長引く日本の不況について、デフレ対策の過ちを指摘。デフレとインフレの対策の相違については、これ程分かり易い説明は見たことが無い。単純化し過ぎてないかと不安になる程。
知的満足度高く、多くの学びがある。願わくば、MMT理論に抜けが無いこと、その上で、理論だけでは無く、実証される事である。
Posted by ブクログ
現代貨幣理論MMTについて調べようと考え、書店で手に取って購入。
経済に関して無知であることを再認識することになるが、前半は非常にわかりやすい。
特に日本が財政破綻する、財政赤字が膨らむ一方だが、銀行の預金額、個人の貯蓄額で賄えるから大丈夫、と言った
世間に流れている話に関する考察など、自分が全く今まで理解できなかったことを解説してくれている。
非常に面白い本だと思う。一回では理解しきれない、腑に落ちきれないので、数回読む予定。
Posted by ブクログ
これはラディカルな主張の本のように見えて,実は当たり前なことが書かれているのかもしれない。ラディカルに見えるのは,例えば,自由貿易,競争力,財政再建といった,メディアを通じて聞き慣れている概念が,主流派経済学の言葉でありながら,実はインフレの時にやるべきものだということに,当の主流派の人が気づいていないということを暴露している点。でも,内容は至極当然。
もう1回読むつもり。
需要不足で供給過剰というデフレから脱却するためには,需要拡大と供給抑制を狙った対策が必要で,緊縮財政や増税などもってのほか。
海外の消費税(正しくは付加価値税)は導入されていても,生活必需品は非課税だったりするのであり,トイレットペーパーもダイヤモンドも同じ税率としているのは日本以外にない。ひどい税制だ。
*****
したがって,政府は,デフレにはならないように,かといって過度なインフレやバブルは避けるようにして,経済を運営しなければなりません。言い換えれば,インフレ対策とデフレ対策を巧みに使い分けて,ちょうどよい塩梅のインフレを維持することを目指して,経済の舵取りをしなければならないのです。(p.32)
ミクロ(個々の企業や個人)の視点では正しい行動も,その行動を集計したマクロ(経済全体)の世界では,反対の結果をもたらしてしまう。デフレしたで支出を切り詰めて楽になろうとしたら,それがさらなる需要縮小を招き,デフレが続いて,生活がますます苦しくなる。このデフレという現象は「合成の誤謬」の典型であると言えます。(pp.38-39)
企業や個人の個々(ミクロ)の行動が正しいと,全体(マクロ)として間違ってしまうというのが「合成の誤謬」です。だとすると,企業や個人といったミクロのレベルの行動では「合成の誤謬」の問題は解決できません。「合成の誤謬」は,マクロの経済全体を運営をつかさどる「政府」が直すしかないのです。
ここに,政府の存在意義があります。(p.39)
政府が,企業や個人の行動を是正する(つまり経済に介入する)必要がある理由は,企業や個人が馬鹿だからではない。その反対に,企業や個人が合理的だからこそ,政府介入が必要になるのです。
企業や個人の経済合理的な行動の積み重ねが,経済全体に意図せざる結果をもたらすというのが「合成の誤謬」です。そして,この「合成の誤謬」があるから,政府が経済に介入する「経済政策」が必要になるのです。
そして,デフレとは,まさにこの「合成の誤謬」の典型です。したがって,デフレ脱却は,政府の責任でなされるべきです。民間に任せていては,デフレから脱却することは,できません。(pp.41-42)
言い換えると,リスクの高い投資を[デフレなのに]バクチのようにやる人は,経済合理的ではないのです。ところが,一方では「人間は経済合理的だから市場に任せろ」と論じながら,他方では「リスクを恐れず投資をしろ」ばどと経済合理性のない行動を推奨する経済学者や経済評論家が後を絶ちません。困ったことです。(p.43)
公共投資をはじめとする財政支出の削減,消費増税,「小さな政府」を目指した行政改革,規制緩和,自由化,民営化,そしてグローバル化……。
これらは,いずれも①のインフレ対策です。「構造改革」とは「インフレを退治するために,人為的にデフレを引き起こす政策」なのです。
…
それにもかかわらず,平成日本は,デフレ対策が求められるタイミングで,「構造改革」と称するインフレ対策を実行しました。しかも,それを20年以上,続けたわけです。(p.55)
平成とは,「新自由主義」が席巻した時代だったと言ってよいでしょう。
この30年間,日本で提案された改革は,ほぼすべて新自由主義をもとにしていました。「小さな政府」「財政再建」「グローバル化」……いずれも,新自由主義の考えです。こうした新自由主義の改革に反対した人々には「抵抗勢力」のレッテルが貼られ,彼らの多くは政治や言論の表舞台から追放されました。
昭和の日本は,一種の社会主義だった。しかし,冷戦は終結し,社会主義は敗れ去った。平成の日本は,新自由主義へと改革しなければならない。おそらく,こんな気分だったのでしょう。
しかし,繰り返しますが,新自由主義は「インフレ対策」のイデオロギーなのです。(pp.57-58)
政府は,まずはデフレ脱却を果たし,経済をインフレにする。その上で,生産性の向上を促し,経済成長を実現する。そういう順番で政策を実行するべきなのです。(p.63)
企業であれば,無駄な部門を廃止したり,企業の外に追い出したりすることができます。また,出来の悪い社員を解雇することもできる。企業は無駄を削ぎ落すことで,確かに「効率的」「筋肉質」になれるでしょう。
しかし,経済全体となると,そうはいきません。企業が潰れたら,従業員は国の中から消えるのではなく,失業者としてとどまり続けるのです。
失業者とは,働く能力があるのに働けない,いわば「有休資産」です。したがって,失業者を抱えた経済とは「有休資産」のある経済,つまり「筋肉質」とは反対の非効率な経済だということになります。
要するに,競争を激しくして,競争に負けた企業の淘汰を進めると,失業者という「有休資産」が増え,国の経済はかえって非効率になるのです。
ですから,企業の経営と国の経済運営とは,性格がまったく違うものと考えてください。停滞する企業を再生させた名経営者が,停滞する日本経済を再生させる方法を知っているとは限らないのです。名プレイヤーが名監督とは限らないという話に近いでしょうかね。
いずれにしても,民間のビジネスセンスで,国の経済運営を考えると間違えてしまうのです。(pp.65-66)
「国民が身を切っているのだから,政府も身を切って財政支出を削減する!」というのは,一見もっともらしく,格好いいですが,これは単なる「合成の誤謬」に基づく愚かで迷惑な政策にすぎません。
政府の歳出削減は,国民受けはしますが,そのせいでデフレが悪化し,それで苦しむのは国民です。「身を切る改革」を断行する「改革派」の政治家は,国民の身を切り刻む迷惑な存在でしかありません。
デフレの時には,「大きな政府」こそ望ましいものとなります。
政府が支出を増やせば,需要が生まれます。公務員など公共部門で働く人の数を増やして,雇用を創出するのもいいでしょう。公務員の給料を上げれば,民間企業も給料を上げざるを得なくなります。従業員の給料が上がれば,所得が増え,消費も増えます。このように,政府を大きくすることは,需要を創出するので,デフレ対策として有効なのです。(pp.68-69)
仮に財政赤字が問題だとしても,デフレである限りは,経済は停滞し,税収は増えないので,財政赤字は減りません。政府が歳出を削減したら,デフレ不況が悪化し,税収はさらに減るので,結局,財政赤字は減りません。
どうしても財政赤字を減らしたいというならば,最低限,デフレを脱却するしかないのです。インフレになれば,無駄な歳出は,気が済むまで削減して結構です。いや,むしろすべきです。
もっとも,インフレ時には,そんなにやっきになって歳出をカットしなくても,経済成長により税収も増えているでしょうから,財政赤字は勝手に減っているでしょう。(p.71)
もっとも,歴史をひもとけば,国家が納税手段として法定していないものでも,貨幣として流通した例があります。確かに,国家が納税手段として法定していないものが,貨幣として使われることは,あり得るかもしれません。しかし,そのことは,「現代貨幣理論」を否定するものではありません。
というのも,「現代貨幣理論」は,国家の徴税権力は貨幣の「必要条件」ではないが,「十分条件」ではあると考えているのですが。「現代貨幣理論」が言いたいのは「国家が納税手段として法定したものは,すべて貨幣として使われる」ということなのです。
そして実際に,現代の通貨は,その価値を国家の徴税権力に裏付けられています。(pp.107-108)
日本がデフレから脱却できないのは,経済政策を動かすエリートたちが貨幣を正しく理解していないからです。しかし,「現代貨幣理論」の貨幣理解をマスターすれば,正しいデフレ脱却の方策も見えてくることでしょう。
日本経済の再生は,貨幣を正しく理解することから始まると言っても過言ではありません。(p.108)
もし,民間に借入れの需要があるならば,金融政策は有効に機能するでしょう。例えば,借り入れの需要が多すぎて,銀行が貸出しをしすぎている場合,つまりインフレの場合には,中央銀行が金利(準備調達の価格)を上げることで,貸出しを抑制できます。そうすると,インフレもまた抑制される。
しかし,デフレの時のように,民間に借入れの需要がない場合には,準備預金を増やしたところで,銀行の貸出しは増えようもありません。預金通貨が増えるから,それに応じてマネタリー・ベースが増やされるのであって,マネタリー・ベースが増えるから預金通貨が増えるのではないのです。
馬が水を飲むのは,水が飲みたいからです。水を飲みたくない馬を無理やり水飲み場に連れていっても,水を飲ませることはできない。それと同じです。
こうしたことから,中央銀行は,インフレ対策は得意ですが,デフレ対策は苦手なのです。このことは「紐では,引けるけれど,押せない」という格言でも知られています。
ところが,経済学の教科書には,中央銀行がマネタリー・ベースを操作することで,貨幣供給量を操作していると書いてあるのです。
恐ろしいことに,経済学の教科書は,事実とは正反対のことを教えているのです。これは,現代の天文学の教科書が天動説を教えているようなものではないでしょうか。(pp.114-115)
黒田日銀の量的緩和[マネタリー・ベースの増加]がインフレを起こすのに失敗したのは,当然でしょう。
貨幣供給量が増えるとマネタリー・ベースが増えるのであって,マネタリー・ベースが増えるから貨幣供給量が増えるのではないのです。(p.116)
貨幣供給量を増やすということは,単純化して言えば,負債を増やすということです。
しかし,デフレの時には,民間企業は,負債を増やすことが難しい。このため,貨幣供給量は増えず,デフレが続いてしまいます。
ならば,民間企業の代わりに,政府が負債を増やせば,貨幣供給量は増えるでしょう。
財政赤字が拡大すれば,貨幣供給量が増えるというおは,「貨幣は負債」とする信用貨幣論からすれば,当たり前のことなのです。
そして,信用貨幣論によれば,負債(=貨幣)は,返済することで消滅してしまいます。
ということは,政府が財政赤字を減らそうとすると,貨幣供給量が減り,デフレが悪化してしまうということです。
それにもかかわらず,平成の日本は,消費増税や歳出削減による財政健全化を頑張ってきました。デフレから脱却できないのも当然といえるでしょう。(pp.128-129)
当たり前ですが,個人や民間企業は通貨を発行できないので,収入を得て,そこから借金を返済しなければならない。
ところが,通貨を発行できる政府には,その必要はないのです。
したがって,自国通貨建ての国債は,返済不能に陥ることはあり得ません。自国通貨建てで国債を発行している政府が,債務不履行になって財政破綻することはないのです。(p.142)
自国通貨以外の通貨に関して,政府に通貨発行権がないので,外貨建て国債ならば,債務不履行はあり得ます。政府の返済能力の制約があるのは,外貨建ての国債の場合だけです。言い換えれば,外貨建ての国債に関しては,政府と民間主体との違いはなくなります。
2008年の世界金融危機の余波を受けて,ギリシャやイタリアなどが財政危機に陥りました。それは,これらの国々の国債が自国通貨建てではなく,ユーロ建てだからです。
共通通貨ユーロを採用したヨーロッパの国々は,自国通貨というものを放棄しています。ユーロを発行する能力をもつのは欧州中央銀行だけであって,各国政府ではありません。
ユーロを採用した国々は,自国通貨の発行権という特権を放棄したために,国家であるにもかかわらず,民間主体と同じように,破綻する可能性のある存在へとなりさがってしまったのです。(pp.143-144)
永遠に財政破綻しない政府であれば,債務を完全に返済し切る必要もありません。国債の償還の財源は,税金でなければならないなどということもありません。
「国債は,将来世代へのツケ」だという批判が,数多くあります。これは「国債の償還の財源は,将来世代の税金でまかわなければならない」という間違った発想によるものです。
国債の償還の財源は,税である必要はありません。国債の償還期限が来たら,新規に国債を発行して,それで同額の国債の償還を行う「借り換え」を永久に続ければいいのです。
実際,ほとんどの先進国において,国家予算に計上する国債費は利払い費のみで,償還費を含めていません(日本政府は,なぜか償還費も計上していますが)。政府債務は,完済しなくてもいいものだからです。(p.145)
通貨発行権を有する政府は,個人や企業のような民間主体とは決定的に異なる特殊な存在です。国家財政もまた,ビジネス・センスでは語ってはいけない。これは,経済政策の基本です。
ところが,日本の財務省が発行する「日本の財政関係資料」には,「我が国財政を家計にたとえたら」と題するコラムがあります。国家財政を家計にたとえるというのは,素人はともかく,政策担当者であれば決して犯してはならない最も初歩的な誤りです。
政府からしてこの調子では,日本経済が停滞するのも無理はありません。(p.146)
財政のよし悪しの判断基準は,インフレ率です。財政赤字の額とか,対GDP比の政府債務残高の比率だけでは,財政がよいか悪いかは,判断できません。
対GDP比の政府債務残高が230%を超えようが,300%を超えようが,デフレである限り,財政赤字が足りないのであって,自国通貨建てで国債を発行している政府の財政が破綻することはないのです。
ちなみに,歴史をひもとくと,イギリスは1760年から1860年の100年間にわたって,累積政府債務は国民総生産の100%を下回ることがなく,19世紀前半には300%にまで達していました。しかし,当時のイギリスは,ハイパーインフレにも財政破綻にも至っていません。それどころか,この時代は,大英帝国がその繁栄を謳歌した時期と重なっているのです。(pp.150-151)
これまで,税金は,政府の支出に必要な財源を確保するのに不可欠なものだと考えられてきました。
しかし,自国通貨を発行できる政府が,どうして税金によって財源を確保しなければならないのでしょうか? そんな必要はないのです。
とはいえ,無税にするとハイパーインフレになってしまう。税というものは,需要を縮小させて,インフレを抑制するために必要なのです。
インフレを抑えたければ,投資や消費にかかる税を重くする。逆に,デフレから脱却したければ,投資減税や消費減税を行う。
つまり,税金とは,物価調整の手段なのです。財源確保の手段ではありません。
「機能的財政論」は,税も経済全体を調整するための「機能」とみなすのです。
税金が物価調整の手段であるということは,信用貨幣論によって,次のようにも説明できます。
貨幣は負債の一種である。
貨幣は,貸出しによって創造され,返済によって消滅する。
したがって,政府が負債を増やすことで,貨幣供給量は増えて,インフレに向かう。政府が増税によって負債を返済すれば,その分だけ貨幣が消え,貨幣供給量が減るから,デフレへと向かう。
こう考えると,実に単純な話でしょう。(pp.152-153)
消費増税を正当化する理由は,「財源の確保」です。しかし,そもそも,税は,財源を確保するための手段ではない。物価調整の手段です。
デフレ下の日本で必要なのは,投資減税や消費減税といった手段によって,物価を上げることなのです。
「財源赤字をこれ以上,増やすべきではない。政府の借金の返済の財源を確保するために,消費税の増税が不可欠だ」などという通説が,あたかも良識であるかのように,まかり通っています。しかし,これは,信用貨幣論からすれば,「デフレを悪化させて,国民をもっと苦しめたい」と言っているのに等しいのです。(pp.153-154)
実は,所得格差の是正は,需要を生み出し,デフレの克服に一役買うものです。
というのも,高所得者よりも低所得者のほうが,所得に占める消費の割合がより大きいからです。高所得者は所得の2割ほどを貯蓄に回すでしょうが,低所得者はしょとくのほぼすべてを消費に充てざるを得ません。
ということは,低所得者にお金を回すほうが,消費需要が拡大するというわけです。
その意味で,所得格差を是正する「塁審所得税」は,国全体で見れば,消費需要を刺激する効果をもつと言えます。
格差の是正は,需要の拡大を通じて,経済成長を促します。「格差の是正か,経済成長か」という二者択一であるかのように言われることがありますが,それは間違いです。格差が拡大したら,需要が減少し,経済成長は阻害されるのです。(p.155)
しかしながら,同じ減税であっても,需要を刺激せず,デフレ対策にならないようなものもあります。
例えば,法人税の減税。
企業の設備投資額の一定割合を税額控除する「投資減税」であれば,投資をしないと減税にならない。これは,投資需要を刺激する効果があるので,確かにデフレ対策となります。
しかし,単に法人の所得に対する税率を引き下げるような法人税減税の場合は,デフレ下においては,投資を促進するとは限りません。
というのも,デフレとは,投資よりも貯蓄が有利となる経済状態です。したがって,法人税を減税されても,デフレである限り,企業は投資には及び腰ですから,かえって貯蓄(内部留保)を増やしてしまうでしょう。(pp.157-158)
所得税や法人税は,景気が悪い時には税負担が軽減されて不況対策の役割を果たす。逆に,景気がよくなると税負担が重くなり,景気の過熱を抑制する。こうして,景気の好不況の変動をならす。所得税や法人税には,このような巧妙な機能が内蔵されているのです。この機能は「自動安定化装置」と呼ばれています。
これに対して,消費税には,このような自動安定化の機能はありません。失業者であろうが赤字企業であろうが,消費をする以上は,税を課す。それが消費税です。
税収を確保したい財務健全化論者にとっては,不景気になると税収が激減する所得税や法人税よりも,不景気であろうが税を確実に徴収できる消費税のほうがいいのでしょう。だから,消費税は「安定財源」とある程度呼ばれるのです。
しかし,これまで説明してきた通り,日本は財政危機の状況にはないし,そもそも税は財源確保の手段ではない。デフレ下において,税収が減るのは何の問題もないどころか,むしろ税収を減らすべきなのです。(p159)
政府は,企業の巨額の内部留保を問題視しています。
しかし,デフレなのに,消費税を増税して法人税を減税したのは,政府なのです。企業の内部留保の増大は,デフレ下で企業が経済合理的に行動した結果にすぎません。そして,デフレが続いているのは,企業のせいではなく,政府の経済政策のせいです。
内部留保が増えているのは,企業経営者が無能だからではありません。政府が無能だからなのです。(pp.160-161)
国家の経済政策は無免許運転?
正しいことを言っても、間違った経済政策(緊縮財政、プライマリーバランス黒字化、消費税増税等)が実行され続け、日本人が不幸になって行くことが許せないという気持ちが伝わってくる。何故このような誤った経済政策が実行され続けているのかという原因が判りにくいが、おそらく20年以上間違って実行してしまったことを、今更間違ってましたとは誰も言えないという間抜けな理由が、最大の原因ではないだろうか。
Posted by ブクログ
備忘用
自国通貨を発行できる政府は、国債をいくらでも発行できる
日本はデフレなのにインフレ対策をしてきて財政出動も少なかったから失われた30年になった
Posted by ブクログ
著者の想いがこもった本である。読んでよかったと思える。
MMTを解説しながら日本の政策について論考している。私としては、こういった内容がなぜ政府などにこれほど受け入れられないかに興味がある。
暫定的な回答としては、中野氏に限らず、批判者は現行の方法の理論的な欠陥とただしい理論の論理を示すことはできていると思う。しかし、どのように社会を変えるかについての戦略というか、私の言葉でいえば官僚のジョブに沿った浸透戦略にかけるのではないかと思う。
既存のシステムの利得構造を変えるには、新しいシステムのあり方を示すだけでは不十分である。なぜならばシステムの変容過程では不安定状態となりパフォーマンスが下がるのだが、これを主導すると手動したプレイヤーとしての利得、つまり出世や安定などはむしろ危機になってしあうからだ。一種のエージェント問題と言ってもいいだろう。よりよい駅の構造に作り変えるのに、長期の果てしないめんどくさい工事を経る必要があるのににている。
これについて、中野先生や藤井先生に力添えできるほどの力が私にあればいいのだが。せめてすこし論考ぐらいのものはだせればと思っている。
Posted by ブクログ
日本の経済が間違った方向に向かっていたことに気付かされる。全てはデフレなのにインフレ対策をするから日本の経済はデフレ化、今やスタグフレーションを起こしてる事を各章にわたり説明あった。ある種納得。
Posted by ブクログ
信用貨幣論や機能的財政論といった、現在主流ではない経済学の解説と日本のデフレの理由
一般的な感覚と違っているために少し受け入れ辛い理論であるが、見事にデフレの理由を説明できており、まさに目からウロコ。
学問は研究されていれば進歩していく。経済学も修正されていて当然であり、より解像度の高い経済学に触れることができて興味深い。
Posted by ブクログ
日本経済の歩んできた道、現状、これからどうしていけば良いのか、著者がMMT(現代貨幣理論)を軸に主張している。本来は難しい内容が理解しやすいように書かれている。理論が絶対に正しいのかは証明が困難だが、もっともらしさは感じたし日本の財政を変革するひとつの手段になりうる可能性はあると考える。
Posted by ブクログ
経済について無知のわたしでも、読みやすく、理解しやすかった。ただ無知だからこそ、これだけを鵜呑みにするのは危険なのかなとも思う。でも思想とか感情論ではなく、エビデンスに基づいて書かれている。それに現状批判だけではなく、次作では対策まで論じるというので、この方を信じて読み切ってみたい。
どんなコミュニティにも、現代の批判されるべき政治家や経済学者みたいな人は、ある一定数はいるのだろう、そういう構造なのかもと、少々絶望的になった。でもそれを裁くことのできない国民も国民で、わたしもその1人なのだと痛感した。
“奇跡”が起こればいいなと思う。
Posted by ブクログ
とても興味深い視点ですね。
政治思想を専攻してみえるようなので、経済学は専門ではないようですね。だからこそ、異端児的な発想がこの本に繋がっているかも知れませんね。
政治と経済は強い繋がりがあります。確かに、わたしは、バブル崩壊後の日本経済や政治をみていると上手くやってきたとは言えないと感じています。
若者が夢や未来に期待出来る社会になって欲しい。そのために経済成長は必要ですね。
デフレ脱却のための方策は、ここまで駄目だったら、そんな方策しかないのかも知れないと感じました。
Posted by ブクログ
最近流行りの財務真理教というのは、経産省と財務省の暗闘と解釈することも出来る。確かに筆者は経産官僚だが、それを割り引いて読めば良いだろう。
奇跡を起こすため、日本の全国民に読んでもらいたい本。
Posted by ブクログ
ちゃんと理解出来たかはわからないがニュースなどで日本の借金の問題が取り打坐されてとにかく借金を減らす経済対策が必要だと思っていたがこの本だと逆に国が借金して日本の仕事を増やすことで所得が増えデフレ脱却の糸口になり得るというのが目から鱗で面白かった。
Posted by ブクログ
デフレは需要不足・供給過多、貨幣価値が上がる。インフレは真逆。対策も真逆。デフレ対策は直感では誤ったように見える物がおおい。日本はずっとほぼ真逆である、インフレ対策として働く政策を実行してきた。
仮想通貨は発行量上限が決まっているがゆえに問題が生じる。皆が使い始めたときに供給量が増えないので貨幣価値があがり、デフレになる。
貨幣とは負債の一形式であり、経済において交換手段として受け入れられた特殊な負債である。「ロビンソンとフライデーしかいない孤島」のたとえ。ロビンソンは春に野いちごを収穫してフライデーに渡す。秋にはフライデーがとった魚をロビンソンに渡す。春の時点で、クルーソーにはフライデーに対する「信用」がうまれる。反対にフライデーにはクルーソーに対する「負債」が生じる。春にはフライデーは「貨幣」という「借用書」をクルーソーに渡す。
銀行が貸し付けをすると預金が創造される。全銀行で合計すると、貸し付け=預金となる。貸し付けは銀行の預金にもとづいて行われるのではない。ただし準備預金の何%までという制約はある。従って中央銀行からマネタリー・ベースが供給されようとも、借りたい人がいなければ貸し付けは生まれず、預金が創造されない。つまりインフレは起こせない。中央銀行の操作は、ひもは引けるが押せない、と例えられる。
国債は償還する必要はなく、利子だけ払えば良い。償還費を計上しているのは日本だけ。(60年償還ルールのせいか。)
国債発行額を制限するのはインフレだけ。
税金は財源ではない。インフレを抑制したり、富を再配分したり、炭素税のように炭素を減らすために使ったり。などなど。
マクロ経済をミクロ経済で説明する試みが80年代から。その前提はセーの法則。生産物は常に他の生産物と交換できる(供給が需要を生む)と。いわば物々交換が前提とされていて、信用経済が入っていない。ミクロ経済で説明使用とするみは非現実的という批判がたくさんある。供給過剰・需要不足つまりが生じない理論のため、デフレ対策ができない。供給が需要を生むという考えに立脚しているので、供給を増やす系、生産性を高めるなどという議論しかでてこない。財政支出の話にならない。需要を増やすと供給が追いつかずにインフレになるという考えになってしまう。
云々。。
Posted by ブクログ
インフレ/デフレ、なんとなく理解しきれてなかった部分を補完してくれた。
言葉の根本の定義について詳しく解説してくれるので、本質的な理解がすすむ。
デフレに苦しむ日本が、インフレ対策(財政支出減、消費税増税、規制緩和など)を行っていて、効果も出ずどんどん疲弊しているという部分で、
ヘトヘトな夜に勉強して寝不足になって、
次の日グタグタになっている自分を思い出した
Posted by ブクログ
日本の低成長の原因はデフレ
デフレ脱却に失敗している政府のせい
グローバル化は供給力を強化するインフレ対策
日本政府がデフレ化におけるインフレ対策を続けてきたから
貨幣は物々交換や市場における取引ではなく、信用/負債の関係を起源としてる
銀行は貸し出しによって預金という貨幣を創造している「信用貨幣論」
「通貨は、納税の手段となることで、その価値を担保している」現代貨幣理論
貨幣供給量が増えるとマネタリーベースが増えるのであって、その逆ではない
銀行が国債を買い、政府が支出することで、その支出と同じだけ民間の預金が増える
銀行が手元の資金を貸し出しているわけではない
量的緩和政策では、貨幣供給量を増やしてデフレを克服することはできず、財政赤字を拡大して貨幣供給量を増やすしかない
デフレ脱却と経済成長には、財政支出を拡大する財政政策や、供給過剰を是正する産業政策が有効
政府の財政赤字は、民間部門の貯蓄によってファイナンスされているのではない。
したがって、民間部門の貯蓄の量が制約となって、財政赤字が拡大できなくなるということはありえない
政府の返済能力に限界はない。
財政赤字の制約を決めるのは、インフレ率(物価上昇率)ハイパーインフレになるのはだめ
自国通貨建の国債には返済不能に陥らない
外貨建て国債のデフォルトはある
無税国家はなぜいけないのか。
ハイパーインフレになるから。
税金が必要な理由はインフレが行き過ぎるのを防ぐため
税金とは物価調整の手段、財源確保の手段ではない
新自由主義は本来インフレ対策のイデオロギー
デフレ対策のイデオロギーは民主社会主義
感想
MMTについての本は今まで何冊か読んできたがやっと腑に落ちた気がした。
MMTは胡散臭い気がしてたが、ここまで具体的に書かれるとほんとに通用するのではないのかと考えさせられた
Posted by ブクログ
本書は第一部と第二部にわかれています。
第一部はインフレ/デフレの仕組みと経済対策についてかかれており、初心者向けだと思います。
第二部は今、日本の政治の経済対策への著者の意見になっており、少し深いと感じました。
初心者にとっては、第一部が勉強になります。
第二部は応用になりますが、全体的には初心者向けになっています。
投資もなにもしたことがない(興味がない)家族が読んでましたが、
「簡単な文章で書かれていて、わかりやすかった!」と言っていましたので、
普段から経済ニュースなど見てない人でも読めます。
本書は二部構成です。
第一部 経済の基礎知識をマスターしよう
第二部 経済学者たちはなぜ間違うのか?
Posted by ブクログ
今更ながらなのですが、MMT論者の人たちの主張を分かりやすく解説した本は無いかと思い買ってあったもの。
買ったのは少し前で、しばらく積ん読になっていたのですが、読んでみたらこれが何とも分かりやすい。いや、おかげでよく理解でき、続編の『戦略編』も読んでみたくなりました。
経済をもっと知りたくなりました
平易に書いてくださっていましたが、何度か読まないと私には真の理解は難しいです。でも、「えっ?そうなの?」という驚きがいくつかあり、もっと深く知りたくなりました。
Posted by ブクログ
経済は人の営みを映す鏡である。だがその舵取りを担う経済学者や政策担当者も常に正しい判断を下すわけではない。緊縮が美徳とされれば需要は冷え込み過剰な拡張は物価を揺さぶる。財政政策の誤りが国民生活に直撃する現実を説く。貨幣は国の信用に基づく道具であり恐れて握りしめれば循環を止める。私たちが知識を持たねば誤った処方箋に従うしかない。経済を学ぶことは未来を守る力を得ることでもある。
Posted by ブクログ
現在の経済学者に対しての批判が多いけど、経済の仕組みについてわかりやすく書いてあった!税の仕組みとか特に面白く読めた!何事も鵜呑みにするのではなく、こういう批判も理解してから考えないとな〜と思いました。
Posted by ブクログ
・デフレはモノが売れない。モノよりカネの方が価値がある状態。将来に悲観的になり個人も企業もカネを貯める。カネの価値がどんどん上がるならローン借りづらい。返す額増えるから。
・デフレ脱却には公共支出増やしたり税金減らしたり財政赤字を進める。
・国はお金いくらでも刷れるから財政赤字になっても大丈夫。ハイパーインフレにならないよう気をつければいい。その調整弁が税金や金利。
・銀行の貸出量は預金額ではなく、借り手の需要に左右される。国がお金刷って、借り手の需要増やせば、銀行の貸出は増え、貨幣供給が増える。
・家計の常識と国の財政の常識は直感とは異なるから理解得づらい。
・自国通貨建ての国債は返済不能に陥ることはない。ギリシャとかは外貨通貨建て(ユーロ)を返せなくなった。
・税金は政策手段や格差是正にも使える。消費税は一律だから増税すれば格差広がる。
・ビットコインは現金と違って供給量に制限があるから、貨幣の価値アップ=物価ダウン、デフレを引き起こす。