【感想・ネタバレ】どうする財源 貨幣論で読み解く税と財政の仕組みのレビュー

あらすじ

あらゆる経済政策には、財源の裏づけが必要である。政府は往々、財源として増税を実行する。
では、私たち国民は、増税の根拠となる「財源」についてどれほど知っているだろうか。
本書では、貨幣とは何かという根本論から説き起こし、財源をどのように確保すべきか、
豊富な具体例と「現代貨幣理論(MMT)」など最新の研究成果を踏まえて、わかりやすく説明する。
さらに、日本経済の現在と将来、正しい経済政策はどうあるべきか、なども語る。
著者の先見性・教養・学識の総合知が生んだ21世紀の経済原論であり、
何より「政治参加のための武器となるようにと願って」書かれた、渾身の衝撃作である。

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Posted by ブクログ

話題の「財源」がテーマだが、著者の代表作「富国と強兵」のダイジェストとして読むこともできる。
ポイントは直感に反する「貨幣とは特殊な負債である(資産ではない)」という事実が理解できるかどうかにかかっている。
この点が理解できれば景色が変わり、日経等の経済記事のレベルの低さに愕然とするようになるだろう
意識して身近な人に正しい貨幣観を広めていきたい。

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2023年05月20日

Posted by ブクログ

経済学者や財務官僚がいかに不真面目なのか、がわかる本だと思う。
なぜなら彼らの緊縮財政に対する主張も、MMTをはじめとする積極財政に対する批判もあまりにも的外れなことがわかるから。
せめて相手の主張を理解したうえで批判することは最低限の分別だと思うけれど、それすらできていない。
最近は事実すらまともに把握せず、適当に自分の主張だけを繰り返すいい加減な人が増えたような気がする。

1
2023年04月12日

Posted by ブクログ

『どうする財源』が暴く、日本財政の不合理と財務省の罪

戦後日本の財政運営をめぐる“常識”が、いかにして国の未来を縛り、衰退を招いてきたのか――。中野剛志氏の著書『どうする財源――貨幣論で読み解く税と財政の仕組み』は、その根本原因として、財務省による財政規律信仰と、それを無批判に受け入れてきた日本社会の病理を鋭く告発する一冊である。

著者が最も強調するのは、「貨幣とは負債である」という事実に立脚した、現代貨幣理論(MMT)的視点だ。政府が支出すれば、民間の預金が増える。つまり、財政赤字とは、民間の黒字なのだ。こうした貨幣の本質を無視し、「赤字は悪、黒字は善」とする財務省の均衡財政論は、前近代の領主の家計簿的発想にすぎないと、著者は喝破する。

実際、日本は1997年から2017年にかけて、先進国の中で唯一、ほとんど財政支出を増やさなかった国である。成長を放棄したも同然のこの姿勢こそ、失われた30年を招いた元凶ではないか。アメリカや欧州諸国が、インフラ投資や社会保障の拡充に国家予算を投じ続けたのに対し、日本だけが「財政再建」の名のもとに縮小均衡を選び続けた。その裏にあるのが、財務省主導の「財政法第四条」の解釈であり、国債発行への過剰なアレルギーだ。

しかもその「健全財政」の理念には、皮肉にも戦後の“戦争放棄”の精神が潜んでいるという。赤字=戦争の道と結びつける論理は、あまりに感情的で非合理的であり、経済政策においてはむしろ有害ですらある。朝日新聞などが国債発行を「戦争への道」と結びつける報道を続けるのも、まさにこの思想の延長線上にある。

中野氏はまた、日銀が政府に支払われた利子を最終的に国庫に納付しているという仕組みにも注目する。つまり、国債の金利負担は「国の借金」としても、実質的には政府内で完結する循環であり、「国民へのツケ」では決してない。さらに、バーゼル規制においても、自国通貨建ての国債は信用リスクゼロと見なされているにも関わらず、国内では未だに「国債暴落」「財政破綻」の危機が煽られ続けている。

著者はこうした現状を、機能的財政(Functional Finance)への理解不足として批判する。財政は予算制約ではなく、「実物資源」(人手、技術、設備など)の制約によって運営されるべきなのだ。つまり、インフレ率や供給能力こそが財政運営の基準であり、単なる収支バランスに縛られる必要はない。

こうした視点に立てば、日本の防衛費が20年以上ほぼ横ばいであること、中国がその間に軍事費を5倍に拡大したことが、いかに異常であったかが分かる。国民の命と安全を守る防衛すら、「財源がない」という空虚な言い訳で先送りされてきたのだ。

総評:財務省主導の国家縮小路線にNOを

『どうする財源』は、単なる経済書ではない。これは、国家のかたちと未来のビジョンを問う、極めて政治的な書物である。そして、その矛先は、何よりも財務省という「見えざる支配者」に向けられている。

“破滅するまでバラマキを続ける!?”などという論法で、あらゆる財政出動を封じる財務省のプロパガンダは、もはや論理ではなくイデオロギーである。真に必要なのは、「国債=借金」という刷り込みから脱し、財政を通じて国民の豊かさと安全をどう守るか、という現実的な議論であろう。

中野剛志氏の本書は、その出発点を我々に提供してくれる。
いまこそ、財務省の“財政神話”に冷静なメスを入れる時である。

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2025年12月19日

Posted by ブクログ

貨幣論について非常に勉強になりました。
お気に入りの一冊です。
ただ、世間の通説(?)に囚われてるような人が読むとセンメルヴェイス反射的にアレルギー反応を起こしちゃうかもしれない。

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2023年11月09日

購入済み

MMT(現代貨幣理論)についての新しい入門書。2022年末に政府が防衛力の抜本強化のための財源について一部増税により賄うとした件をきっかけに、「財源」の考え方をいちから説き起こしており、ひととおりの理解が得られる。批判派から責められがちなインフレの危険についてもページを割いて説明しており納得感がある。最近のさまざまなMMT批判への反論も豊富。

#タメになる

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2023年08月20日

Posted by ブクログ

再読の価値あり。貨幣や国家がどういうものかを考えると当然の帰結。国民の常識になるべき内容。

「新しい資本主義」というフレーズが岸田から出てきたことがあったが、シュンペーターによる資本主義の定義からすると、日本は新しい資本主義以前に、そもそもの資本主義を理解できていなかった。財源は投資・消費したいという需要から生まれる。つまり、政府が需要を高めて債務を負えば、財源となる。新しい資本主義という抽象論ではなく、実態をよく見た真の資本主義によるマクロ経済政策を行えばよい。

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2025年03月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

循環貨幣理論と現代貨幣理論。政府はお金をいくらでも生み出せる。政府が支出しなければ貨幣も生まれない。支出が先で、税収は後。税金は財源ではない。財政赤字はむしろ正常な状態。政府の支出に資金制約はない。ヒトとモノの実物資源が制約だ。いくらお金があったとしても、物理的存在量には限りがある。財政破綻など起きない。やってくるのはデフレ継続の供給能力破壊。需要に対する供給の好循環。それが築けるかが問題なのだ。お金は機動的に使うもの。知らぬは大罪。理解しようとしないのは極悪人。失われた30年。いくつの命が失われたことか

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2023年12月23日

Posted by ブクログ

中野剛志氏の著書は結構読んでいるが、今回もシニカルかつ的確な分析が光っている。
ここ最近積極財政か緊縮財政どちらが相応しいかがメディアで議論されるようになった。日本がやっとこのような状況になったのも、10年以上前から様々なメディアで経済について語っていた著者の功績もあると私は思っている。そんな人物が書いた新書が難しいはずがない。昨今メディアで取り上げられる経済テーマに関しては基本的なことがこの本でわかるようになっている。
きっと、経済についてあまり勉強してこなかった人からしたら、今までなんとなく学んできた知識を覆す内容ばかりだろう。だからこそ、本書のタイトルは『どうする財源』なんだと思う。(もちろん現在放送中の大河ドラマからの引用というのは踏まえている)

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2023年08月17日

Posted by ブクログ

自分には経済的素養がないから、この著者の主張が正しいかどうかは判別できない。ただ経済学の偉い先生たちとは意見が大きく異なっているようだ。
この真偽はどうやって判別したらいいのだろうか。
またこの著者の政策はどの政党、政治家が実行するのか興味深い。

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2023年07月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

はじめに
・本書を最後まで読み通した後で、序章に戻って読んでみてください。きっと、愕然とすると思います(8)

序章 防衛財源を巡る様々な見解

第1章 貨幣とは、何だろうか
・商品貨幣論と信用貨幣論
・商品貨幣論の間違いは、信用と負債の関係の記録を表示する媒体(貴金属)を貨幣そのものと見間違えてしまったところにある(43)

第2章 資本主義の仕組み
・シュンペーター:資本主義の中核は「民間銀行による決済手段(銀行手形あるいは預金)の創造」(「物理的生産手段の私有」や「私的利益と私的損失責任」よりも)(50)
・貨幣循環の仕組み:①(企業は)支出が先、収入が後、②企業の財源=企業の需要、③企業の収入と返済が、貨幣を破壊する、④すべての企業が完済してしまうと、貨幣がこの世から消えてしまう(55-58)
・ミクロ(一企業単位)で見れば、負債というものは必ず返すべきものであり、また、負債が少ない企業経営のほうが健全だという考え方もあり得る。しかし、マクロ(経済全体)で見れば、負債とは貨幣のことであり、負債が存在しなければ、貨幣もまた存在しなくなってしまう。むしろ、負債=貨幣が減少して、人々が貧しくなっているのならば、それは不健全な経済状態(59-60)
・デフレは、資本主義の死:貨幣循環を止め、貨幣を破壊していく恐ろしい現象(63)デフレになると、銀行は貸出し(貨幣の創造)ができず、企業は返済(貨幣の破壊)に走らざるをえない

第3章 資本主義と国家財政
・税は、政府支出の財源確保の手段ではない(75)
・デフレの時に、財政赤字が拡大し、政府債務が増大するのは、何ら悪いことではない。むしろ、良いこと(79)
・政府が債務を増やすことは、将来世代にツケを回すことだというのは、完全な誤解(84)
・現代貨幣理論(Modern Monetary Theory, MMT)、貨幣循環理論のいずれにおいても、税は貨幣を成立させる上で必要ではあるが、政府支出の財源を確保する手段ではない(90)

第4章 資本主義における経済政策
・政府支出には、予算的・資金的な制約は、一切ない(93)
・財政支出は、ヒトやモノなどの実物資源には制約される(94)
・なぜ資本主義経済は成長するのか:資本主義以前の世界では、経済成長という現象はきわめて稀だった。近代政府のように、新たに貨幣を創造して国民の資産を増やすことができれば、経済成長が可能になる(100)
・増税や歳出改革によって財源を確保するという発想は、資本主義以前の社会における封建領主の発想(101)
・日本だけがデフレであり続けた理由:1997年から2017年の間、日本がほとんど財政支出を増やさなかったこと、そして、そんな国は日本しかない。日本は、放漫財政どころか、世界に冠たる緊縮財政国家(105)
・好景気、あるいは経済成長を実現するためには、需要がやや供給を上回るマイルドなインフレの状態である必要がある(108)
・機能的財政(アバ・P・ラーナー):国家財政を、財政収支の均衡を基準にして運営するのではなく、インフレ率など、国民経済に与える影響を基準にして運営するという考え方(109)
・財政赤字(あるいは黒字)が国民を幸福にするなら善、不幸にするなら悪。これが、機能的財政の基本的な考え方(健全財政では、財政黒字は常に良いもの)(110)

第5章 「国民の負担」とは何か
・機能的財政における税の考え方:税というものは、政府支出の財源を確保するための手段ではなく、国民経済を望ましい姿にするための政策手段。e.g. 所得格差の是正、増えると望ましくないものに課すことで、その量を減らす効果(118-9)
・消費税は、消費を抑制する(119)
・国民(今を生きる世代)は、追加的な税の負担はしなくてもよいが、高インフレという負担、実物資源のひっ迫という負担を課せられる(126)
・自らの国は自ら守るとの国民全体の当事者意識(133)

第6章 インフレの問題
・MMT:貨幣とは国家が創造したものである、という理解から出発(138)
・財政支出の上限は高インフレ(実物資源の供給がその制約に達したことを示すサイン):この場合インフレは「デマンドプル・インフレ(需要が実物資源の供給制約を超えた原因が、需要の増大にある場合)(142)
・最近のインフレは主としてコストプッシュ・インフレ(実物資源の供給制約がより厳しくなったことに起因する)。コストプッシュ・インフレは財政赤字の大きさとは何の関係もない(146)
・コストプッシュ・インフレ対策には、政府による公共投資の拡充や民間投資の促進(ある種の産業政策)が必要になる(153)

第7章 金利の問題
・政府の赤字財政支出により、民間貯蓄は減るのではなく、その反対に増えている(167)

第8章 矢野論文の衝撃

第9章 自己制裁
・憲法第9条と財政法第4条:同じ歴史観(220)

第10章 歴史の教訓
・戦争への道を開いたのは、浜口内閣の健全財政路線とそれが引き起こした恐慌(245)
・終戦直後のインフレは、「コストプッシュ・インフレ」(250)
・対GDP比政府債務残高の水準とインフレとは関係がない(254)

おわりに

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2025年01月26日

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