中野剛志のレビュー一覧
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本書を読むと経済学という学問がいかに人間社会からかけ離れた社会科学であるかが良く分かる。そもそも経済学が大前提としている「経済人(エコノミックマン)」という考え方自体が現実とはあっていないのだ。人間は合理性があるかどうかだけを基準に物理的に動く原子のような物体では決してない。人間は社会あるいは人と人とのつながりの中で能動的に行動する社会的生物なのだ。間違った前提のもとでいかに議論を精密化させ数式のみを弄しても決して現実に合った解答は得られない。ノーベル賞から経済学賞は今すぐ廃止すべきだ。
しかし、著者の中野剛志氏は膨大な学術書を読みこなし我々に分かりやすい言葉で解説してくれる。なんと頭の良い人 -
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得たもの:
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日本的な人事慣習として評判の良くない「長期雇用志向」「年功序列型賃金制度」について、「イノベーションを産むために必要な人事制度」という方向性の目線を得ることができた。
企業人事を考える上でいたずらに社内での昇格降格を激しくすれば良いと言うわけでもないと言うバランスの良い感覚を持つ一助になったように思う。
内容:
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感想
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読んでいる時は「ふむふむ」と納得しながら読めた。
(1) アメリカがイノベーションを生み出し繁栄したのは軍事産業のおかげ
(2)日本の「終身雇用」的な人事制度はイノベーションに必要な
「長期の濃密な人間関係」
を築く上では有効で -
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国民の20%以上を難民が占めるようになっていると言われている、ドイツやイギリスなどのヨーロッパの国々の状況は、単純に難民を受け入れる寛容さという事では看過できない様々な問題を孕んでいる。
頭では難民を受け入れて、人間らしい生活をおくる手助けをしなければいけないと分かってはいるが、現在のヨーロッパ諸国の状況を日本に置き換えた時、日本の伝統や文化の崩壊や、新しい宗教の広がりにる身近な生活の中に広がる歪みなど、果たして自分は受け入れられるだろうか、大いに考えさせられた。
ミシェル・ウェルベックの「服従」を読んだ時に感じた生々しい不気味さは、小説の中だけの事では無いのかもしれない。 -
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ネタバレ新型コロナウィルスのパンデミックと中国の軍事的、経済的台頭を総合的、理論的に解釈・説明するとともに今後のあるべき経済政策の姿が述べられている。主張をサポートする海外の知識人のコメントが豊富に引用されており、説得力のある内容となっている。特に気になったのは、最終章で外国人労働者の規制緩和は難しくなるだろうと述べられている点である。一方、現実は規制緩和の方向で動いていくことが報道されている。この期に及んで、今だに新自由主義的な政治を行うのか、この本の言及する"社会主義"的な政治を行うのか重要な分水嶺であると思われるため、現在の政治を評価する上での貴重な一冊であると考えられる。
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日本の米国流崇拝を疑い解明す
日本が米国へ過剰な劣等感を抱くのは、幻想、思い込みであり、米国流を疑ってみて、詳細に分析すれば、世間で流布する通説(日本人は親方日の丸に頼り過ぎ、シリコンバレーを筆頭とした米国ベンチャー企業の精神を見習うべき、など)は誤りで、本質は違う(日本流は世界的に正しいとか、シリコンバレーの成功企業は国家の手厚い支援で生まれたなど)と分かる。日本の現代病を解剖し、治療策を提示する、日本人必読の一冊だ。
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経済は集団行動。政治も同じく。地政学的環境による。
集団行動を科学するアイデアはマッキンダーの地政学から。
経済は地政学なしでは語れない。逆もまたしかり。なので地政経済学。
大きなトレンド転換は地政経済学の環境大変化が必要。
ケインズを再評価+新自由主義批判。
地政学、経済学、それぞれの国の実情を踏まえないとダメ。
19世紀は自由主義。
2度の世界大戦による戦時統制経済でケインズ主義が実現。
終戦後も体制が経路依存性で持ち越されて民政化した統制経済。
これによって高度経済成長期。
ケインズ政策の副作用がインフレ→これによりケインズ主義の人気が低下。
この戦後ケインズ主義は亜流だけど。
インフ -
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自分は大企業側の人間なのだが、確かに入社した90年代から少しづつ研究開発が近視眼的になってきて、成功確率だとかリスク評価だとか訳の分からない算数を駆使して不確実なことを避けるようになってきた。こんなことでイノベーションなんか起こるわけがないのだが、その変化と経営陣がコーポレートガバナンスを叫び始めたり、業績評価にROAを取り入れたりしだした時期が重なる。著者の分析は概ね正しいと思われる。
でも日本人は何か手本がないと何もできないのですよ。太古の昔から。「発展途上国メンタリティ」、まさにその通り。であるからして、バブル崩壊後に自信を失ったリーダー層がアメリカを手本にするのは必然だし、それに味をし -
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【政治・経済】
よく政治経済といいますから経済と政治は密接に絡んでいるということです。
しかし、われわれ賃金労働者は無知であるが故にいいように扱われています。
資本家の論法は、
景気がよくないから賃金を上げることができない。
会社が潰れたら給料を払えなくなる。それは困るでしょ。
だったら会社を存続させるために、少しの減給は我慢できるはず。
このような論法になっています。
ー デフレ ー
デフレとはお金の価値が上がる状態です。
お金を持っている富裕層、資本家、企業はデフレでそれほど困ることはありません。しかも、コストとなる労働者の賃金は抑えることができます。
発言権を持つ人がデフレで困っ -
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近年読んだ中で最高の本です。
日本経済はなぜ長く停滞しているのか?から始まり、デフレ、お金、国債、税金の本当の意味をわかりやすく解説してくれます。
・デフレで日本は不況だが、政府は真逆のインフレ対策を行っているため、長年デフレから脱却できない。
・新しいお金は現金通貨が発行される時ではなく、銀行が貸出を行い通帳に金額を記載する時に、生まれる。
・日本はいくら国債を発行しても、財政破綻にはならない。
・税金を円で払うことによって、円は価値を持つ。
などなど、今まで学校教育などでは習ってこなかったことや、習ってきたことと逆のことが実は正しかったと知り、衝撃を受けました。
「国債=借金」では -
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コロナウイルスが流行し、経済がズタボロになっている中で政府の対応などに疑問を感じ色々勉強していく中で、出会った本。これまでの学校の教育で悪いものだと教えられてきた財政赤字についてや、政府の債務について目からウロコの話ばかりだった。まだ20年くらいしか生きてはいないけれども、日本がどんどん貧しくなっているように感じていた。それは政府の対応が間違っていたからなのだと気付かされた。今のコロナの状況で経済的に苦しみ倒産や自殺を選択せざるを得ない人が増加している現状を、政府は救う力があるのにも関わらず救ってくれない。今の日本の状況を考えると絶望を感じてしまう。日本が死なないためにも国民が政治に興味を持っ
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Posted by ブクログ
長きにわたり日本がなぜデフレから脱却できずに経済成長しないのか?答えは簡単でそれは日本政府がデフレであるにも関わらず、「馬鹿のひとつ覚え」的に増税、緊縮財政、規制緩和などいわゆるインフレ対策を繰り返してきたからに他なりません。筆者はそれを「栄養失調なのにダイエットをしている」というわかりやすい表現を使ってます。じゃあどうすればデフレ脱却ができるか?答えは簡単でいままでやってきたことの逆をやればいいのです。デフレなのだから、減税、積極財政、規制強化をやればいいんです。少し考えてみたら子どもでも理解できますよね。
「貨幣」、「銀行」、「国債」、「税金」についていままで間違って理解してきたことについ