中野剛志のレビュー一覧
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資本主義制度で最悪の状態デフレの症状が説明され、その状態から脱却させる処方箋が書かれている。
インフレ経済から脱却する手法としてのデフレ・スキームをサッチャーなどが採用してきた過去の経験はあった。
インフレ退治するスキームであるデフレ・スキームをあろうことにデフレに悩む日本で数十年に渡って採用してきたと著者は指摘する。
ミンスキー、マリナー・S・エクルズ等の主張を参考に恐慌を突破する逆転の発想としてのレジーム・チェンジを先人の知恵を紹介しながら書かれたすぐれた著作である。
トックビルの言説を紹介し、自らこの本を出版したとしている。
とにかく、逆転の発想を紹介すべく、所謂、主流派経済学者が採用しない先人の知恵・知識をよく学ばれている中野剛志氏である。
最後に、氏の提唱するTPP亡国論も、デフレ・スキームの方策であることも理解できました(笑)。 -
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筆者は、冒頭、外圧を使い、TPPへの参加をヌケヌケという元外務省官僚を批難する。
そして、そのことは、新自由主義、グローバル化が霞が関官僚の官僚、政治家、経済界も含め、現代社会を大衆化させてしまった弊害だと論じているのである。
論説の、根拠は、スペインの哲学者オルテガ・イ・ガセットとマックス・ウェーバーの主張である。
引用されたウェーバーの一節を紹介。
官僚制が「非人間化」されればされるほど、それだけより完全に、官僚制は、資本主義に好都合なその独特な特質を発展させることになる。
ここで、より完全にというのは、官僚制が、愛や憎しみ、およびいっさいの純個人的な、総じて非合理的な、計算できない感情的要素を、公務の処理からしめだすのに成功することなのであって、それは、官僚制の徳性として賞賛される固有の特質なのである。
まことに、近代文化が複雑化と専門化の度をくわえるにつれて、それは、個人的な同情、恩寵、恩恵、感謝の念に動かされる旧い秩序の首長のかわりに、人間的に中立・公平な、それゆえ厳密に「没主観的」な専門家を、それ「近代的文化」をささえる外部的装置のために必要とするのである。
とにかく、日本をもとより、現代社会がかかえる官僚制の問題に警鐘を鳴らすすぐれた著作でありました。 -
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デフレ脱却のための方法が書かれている。金融政策単独でのインフレターゲットの達成に懐疑的であることがわかる。実際に金融政策単独でのインフレターゲットの達成はむずかしいだろう。歴史的にもデフレからインフレへと金融政策単独でチェンジしたことはない。
そもそもインフレターゲットとは、インフレ下の国々で生まれ、インフレを退治するために利用されてきたものだからだ。岩田規久男やポール・クルーグマンがインタゲでインフレ期待を人々に抱かせて、デフレから脱却することを提案しているが、マネタリーベースの増加で銀行、借り手の期待を刺激するの難しいかもしれない。 -
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本書は、反TPP論者で評判の中野剛司氏と経済思想家柴山圭太氏の対談をもとにしただけに、一般人にもわかりやすい内容となっているが、その内容は深く、またおもしろく、そして興味深く、高く評価できると感じた。
本書では、現在の世界経済の現状について「世界がグローバル化のわなに落ちた」と喝破している。柴山氏は「グローバル化は経済危機の原因であって、グローバル化を経済危機の処方箋とはできない」と語っている。そのわかりやすい主張は説得力があると感じた。
また、危機の根本原因を「グローバルインバランス」と分析していることも、興味深い。世界的なマネーの流れが危機の原因であるならば、小手先の各国別の対処ではどうにもならないと感じた。
「格差社会」「デフレ」についての議論も説得力があると感じたが、この二人の対談で、一番興味深く感じたのは、『敵の発見』である。二人の対談では、結果的に誰も得をしないグローバル経済のもとで唯一利益を得ているのは「金融資本」であると結論付けている。これは、正しい認識なのだろうか? マルクスの時代には、労働者と資本家の対立が語られたが、まだ金融資本主義という段階ではなかったという。この論争は「金融階級vs他の階級」の階級闘争にまで至るのだろうか。
本書の「グローバル経済が不安定なのは当たり前。国内経済と違って誰も管理するものがいない」との指摘は説得力がある。本書の指摘が正しければ、世界経済の混迷はまだまだ続くどころかはじまったばかりという事になる。現在の世界経済の混迷には経済・思想・政治全てにわたる考察が必要とする本書の内容を高く評価したい。 -
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ネタバレグローバル恐慌の真相
■合計196ページ
一章:グローバル化の罠に落ちたアメリカと世界 42ページ
二章:デフレで「未来」を手放す日本 66ページ
三章:格差と分裂で破綻する中国とEU 40ページ
四章;冬の時代のための経済ナショナリズム 46ページ
本書は2008年度に起こったリーマンショックによるグローバル恐慌の要因を、
1989年冷戦集結後にアメリカやEU、中国各国のグローバル化の弊害を基に
言及した本。
アメリカの経済格差や日本の政治問題(デフレ対策)について述べたあと、
中国の民族問題についても触れているところは非常に興味を持った。
・日本経済の安定化
→公共投資増によるデフレ脱却措置
→内需拡大による国際競争力強化
→イノベーションを生める土壌づくり
を行うべきだと感じた。
難しかったので約10%程しかできていないように思う。 -
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ネタバレ・グローバル化というものが今始まったものではなく、第一次世界大戦前や第二次世界大戦前において起きていたものだという見方、考え方に驚きました。ITの進歩も含め、過去のグローバル化の歴史がそのまま現在に当てはまるとは思っていませんが、歴史に照らし合わせることができる部分が多分にあるという点では、面白い観点だと思いました。
・アメリカの住宅バブルという幻影がリーマンショックを引き起こし、現在のヨーロッパ経済の不安を引き起こしている点についての記載については自分の考え方を確認する意味でも読んで良かったと思いました。また、デンマークなどの福祉国家がうまくいっていた要因として、アメリカの住宅バブルの恩恵の大きさが挙げられていた点についても自分にとっては新たな気づきでした。
・保護主義、重商主義、自由主義など、これまでの自分の中での定義と異なる定義がなされており、とても勉強になりました。
一般に言われている「~主義」というのも含め、それぞれ言葉の定義の解釈に違いがあるのだから、広いとらえ方で話を解釈しないと大きな誤解を生んでしまうなと思いました。
色々と書きましたが、まだまだ自分が不勉強な為、ただただなるほどと思いながら読んだという印象です。
他の方が書かれているように、同じ方向性を持った人同士での対話だったので、この考え方に対して反対意見を持っている方の考えを見てみたいなと思いました。 -
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本書を読み終わって、これは経済書でもあるのだろうが、世界経済の現状を鋭く分析し、日本が今後進むべき道を指し示した政治的イデオロギーの書でもあると驚嘆した。すごい本である。
本書はまず「危機に直面する世界」で、グローバル経済と経済危機について考察している。経済がグローバル化した世界では「国家が労働市場の規制を緩和しなければ、国内ではなく海外へと投資するようになってしまう。それを恐れる国家は・・・労働市場の規制を緩和し・・・賃金を引き下げたりできるように・・・構造改革を実施するようになる」と語る。そしてその構造改革は、必然的に労働賃金の低下を招き、デフレへとつながる。本書は、「グローバル経済」と「構造改革」とそれを裏打ちする「新自由主義思想」、その結果の「労働賃金の低下」と必然的に「デフレ」を招く等の諸関係を整合的かつ論理的に主張しており、それは説得力がある。
経済危機の背景である世界経済の「グローバルインバランス」についてもわかりやすく主張している。アメリカが過剰な消費で経常収支の赤字を積み上げ、東アジアの新興国と中東諸国が経常黒字を抱える世界レベルの経常収支不均衡の構造は、持続可能性がない構造だったというのだ。そうであるならば2008年のリーマンショックから現在に至る世界経済の危機は、必然だったというわけか。本書では、その根本的解決策として「リバランス」すなわち世界レベルの経常収支不均衡構造の是正しかないとしているが、現在の世界はそれに失敗しているとしている。どの国も自国での経済危機と失業率の増大を抱えて輸出増を目指しているが、今までのアメリカのように巨大な貿易赤字を積み上げてきた国が新たに出現でもしない限り、実現不可能だ。本書では、詳細な考察のもとに、「現在の世界的な危機は、かつての世界恐慌時より深刻」と結論する。この一見出口がない危機に対して、本書ではその解決策として「経済ナショナリズム」を提唱している。
「経済ナショナリズム」とは、あまり聞いたことがない言葉だと思った。本書は「国家」と「国民」「国力」等について、歴史を含めて精緻な論理を展開するが、その内容は決して退屈ではない。これは、過去の「右」と「左」の概念を超えていると感じた。経済ナショナリズムの内容では「国家(ステイト)」と「国民(ネイション)」を区別することが重要だと主張する。「国家(ステイト)」は法の支配や権威によって人民を統合する。国民は「国民(ネイション)」共同体の一種だという。ここまで根源的に思考しなければ、世界経済の現状と危機は理解できないというのだ。これはイデオロギーだと思ったが、斬新にも感じた。
そして「経済ナショナリストはネイション内における資本家階級と労働者階級の対立を招くような経済政策を採用しない」「経済ナショナリストが選択するのは、同じ国の資本家と労働者が相互に協力し、利益を分かち合うような政策理念なのである」と語る。著者が動画の中で、PTT賛成論者に対し攻撃的に「売国奴!」と罵る姿があったが、このような理論的基礎が背景にあったのかと思わず頷いてしまった。
本書では「我々に残された選択肢は、国民国家をより良いものに改善し、国民国家の力をもって、グローバルな諸課題を解決する」「資本主義をグローバル化するのではなく、その反対にナショナル化していく、つまり国民のものとする」と主張する。じつに説得力のある素晴らしい主張ではないかと思った。
まだまだ多くの議論を経る必要はあるだろうが、堅牢な論理と激しい攻撃性、冷徹な知性と、人間に対する深い愛情やロマンに満ちた本を久しぶりに読んだ。思わず読後にもう一度読み直してしまった。本書を絶賛したい。 -
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われわれ国民はもっと勉強せんといかんね。
TPPは自由貿易の推進なんだから、時代の流れとして正しいのではないか。いつまでも規制に守られている方が古いのだ。とそんな風に漠然と考えている人は多いだろう。私もこの本を読むまではその程度の次元だった。しかしその考えは一瞬で改めさせられた。
自由貿易は常に相互に恩恵があるとは限らない。自由貿易は、品目あるいは取引国同士の状況によって、いとも簡単に買い手市場・売り手市場に偏って価格が操作されるものであり、いわば自由競争であり自由なる戦いだ。オイルショックやレアアースがその例として挙げられている。むむむ。
日本の農業改革の停滞を打破するには、TPPの外圧が効果的?それも一刀両断。構造改革(生産性改善と自由競争による市場価格下落)はインフレ時に効果を発揮するものであり、デフレ時はデフレを促進させるばかりで逆効果と言い切る。仮に日本の農業改革が実現して国内既得権益が破壊されたとしても、その後に来るのは構造改革ではなく、より強大なアメリカの既得権益の襲来だと言う。
---この本が全てとは思わないが、われわれ国民はもっと勉強しないといけない。同時に、江戸幕府の開国になぞらえて平成の開国の筋書きを描いた政府の単純さにも鳥肌が立つ。もし、政府がこの本に書かれていることくらい認識済みにも関わらずTPP交渉参加を決めたのならば、そうせざるを得なかった理由は何なのか。国民にもアメリカにも明かすことのできない策略は何なのか。これが謎ならまだいいのだが。 -
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モノと情報が、国境を超えて移動を続ける事象であるグローバル化が顕在化している現代において、国家とはもはやただの枠組みにすぎないという議論が活発である。それを示す具体的な例として、多国籍企業は国家の意思とは関係なく、自らの利益最大化のために市場を求める主体であるし、NGOもまた自らの理念によって、国家の思惑に左右されずに活動するのである。従来は国際政治における最高位の主体として考えられてきた国家というアクターは、このような動きが活発になっている現代では、もはやただの枠組みでしかないように考えることはごく自然である。
一方で、グローバル化が様々な問題を引き起こしてきたのは紛れもない事実である。2008年のリーマンショックのように、グローバル化が進み、国家同市の境界線がなくなった現代世界では、ある一カ国における限界突破は、瞬く間にあらゆる国に波及するのである。このような問題点が指摘される中で、私たちは問題の解決方法をこれまで通り、グローバルな分野に求めるべきなのだろうか。この点において、筆者はナショナリズムを主張する。
筆者の主張するナショナリズムは、「ネイション」を理念化したものである。ネイションとは、「歴史、制度、文化、生活様式や行動様式を共有する政治共同体」(p228)であり、ナショナリズムは人々を統合し、ネイション全体の長期的発展のためにそれを動員するのである。ネイションは経済発展によって自らを強化することができ、この過程で生み出される政治力と経済力が「国力」となる。この国力の強化を目指すことが「経済ナショナリズム」であると筆者は定義する。
この経済ナショナリズムを高めるのは、「ネイションの能力」を目的とする。ネイションの能力とはネイション自身が何かを行う能力である。この点、グローバル化の特徴の一つと言えるような、他国市場の搾取とは異なる。筆者によって、後者は「ステイトの支配力」として、ネイションの能力=国力と分けて分類される。
グローバル化の中では、国家は自らが資本主義化し(国家資本主義)、富の獲得競争を行う。これは前述の議論でいう「ステイトの支配力」であり、筆者がいうナショナリズムとは異なる。この点において、筆者が主張する経済ナショナリズムは、従来のナショナリズムとは異なり、他国を侵略する際のイデオロギーではないため、協調の可能性は十分あり得るのである。
筆者はこのように定義した上で、国力を高めるための政策として、日本はまず外に対する防衛線をはることや、ケインズ主義的政策によってデフレから脱却することを主張している。