中野剛志のレビュー一覧
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TPP参加が、わが国の国益に深刻なダメージを与えるという危惧を、各種のデータを示しながら論じた本。
日本の関税障壁は、すでに韓国やアメリカよりも低く、TPPに参加して「開国」しなければならないという意見は当たらないと、著者は論じています。また、日本経済の最大の問題はデフレであり、TPP参加による貿易の自由化は、むしろデフレを加速させる恐れがあると語られています。
構造改革の必要性や財政赤字の縮小などといった、常識として受け入れられている議論が、じつはそれほど自明のものではないという主張も展開されており、私自身はその真偽について判断することはできませんが、こうした意見もあるのかと、興味深く読 -
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トリレンマ理論では、国際的な資本移動の自由、為替の安定、各国の金融政策の自律性の3つを同時に確保することはできない。戦前の金本位制では、為替を固定し資本の移動を自由にする代わりに、各国の経済政策は自由にできなかった。この体制下で第一次グローバル化が起きたが、国民生活が不安定になった。戦後のブレトンウッズ体制では、ドルで為替を固定し資本の移動を制限する代わりに、各国の経済政策を自律的に行えるようにした。70年代以降にドルが弱くなると、この体制を維持できなくなった。ニクソンショック以降は、為替の安定化をあきらめる代わりに、金融政策の自律性と資本の移動を認める体制になった。途上国は投資を呼び込むこと
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以下まとめ
政府の考える意義
1.経済効果の側面
2.外交戦略上の側面
TPP参加国は小さい国(GDPは日米で9割)⇒実質日米FTA
最終消費地であるアメリカの消費の落ち込み⇒従来までの貿易構造は破綻(グローバル・インバランス)
アメリカの輸出倍増計画の目的
1.グローバル・インバランスの是正による世界経済の再建(互恵的)
2.国内雇用の拡大(利己的)
TPP参加 アメリカの目的
⇒利害一致国と協力した、日本市場の開放に伴う輸出増
経常収支とは
⇒黒字:貯蓄>投資 赤字:貯蓄<投資
⇒経済成長という観点でみれば、それ自体に適切な水準はない。
デフレとは
⇒需要不足・供給過剰が続く -
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「世界は矛盾に満ちあふれている。」
ともすれば「中二的」と揶揄されるこの言葉は、しかし物事の本質をついている。久米田康治さんのマンガ『かってに改蔵』の中で、『名探偵コナン』の台詞をもじった「真実はいつも一つとは限らない」という台詞があったが、まさしくそのとおりであろう。
さて、経済や政治の分野においてもまた、矛盾だらけというのが現状のようだ。たとえば、日本において「脱官僚」が望まれている風潮がある。しかし実際には、日本は――そして世界も――着実に「官僚制化」の道をたどっているらしい。
本書は、ウェーバーを初めとする経済学や政治学の数々の先行研究を参考に、現在の世界にある矛盾を解 -
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ネタバレ政治に関する話はいいとして…
最初のうちはいいのだが、途中から橋下批判、それもtwitterで悪口書かれたとかいう話が何度も…
そして橋下大阪市長の周囲の学者批判とか。この人たちの思想からすると批判の対象になるんだろうけど、なんせ橋下批判がしつこいので、坊主憎けりゃ袈裟までという感じがする。
橋下批判も、政治思想、政策に対することではなく、悪口書かれて恨んでるだけに思える。
因みに僕は橋下市長派ではありませんし、確かにあの人はtwitterで自分を批判した人に対して、連続して批判返しtweetしてるのを見て気分が良くない(というかあっちもしつこい)ですが、それにしてもこの本の橋下批判は読ん -
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低成長あるいは不況と、デフレ不況とは別物なのです。(…)増税賛成派は、デフレを単なる不景気と誤認しており、デフレが絶対に避けなければならない異常事態であることを理解していません。14
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輸入原油、輸入食料そして消費税増税というコスト・プッシュのインフレは、物価を上昇させますが、需要を縮小させるデフレ圧力となります。40
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重工業が発展して起きた「第二次産業革命」以降、事業活動が飛躍的に大規模化したため、巨額の -
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ネタバレインフレとデフレの政策の双対性を示し、それらの対応に関しては枝葉の政策だけではなく、体制を変更する事を必要だというのが筆者の主張。
そして、デフレなのに、デフレレジーム(インフレ対策)の政策をうってきたことが失敗だったとも主張している。これらは私も大賛成。
ただし疑問が2点。
1点目は、インフレレジームの転換の際に、政府の規制強化を入れている事。確かに、デフレ下で、既存の規制を緩和していく体制は望ましくないのはわかる。規制緩和とは、供給能力の向上に他ならないから。
しかし、既存の規制を強化することは、それによって満たされていた需要を制限する事にもつながる。供給能力の削減によって、デフレを克服 -
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『TPP亡国論』は、読み易かったし、説得的だった。しかし、本著は、概ね論旨は説得的だが、細部がどうも引っかかる点があるな。
p.14-5 天皇制持ちだすとやっぱり経済ナショナリズムって、ってなことにならないのかなー, p.67=核の抑止力で「現在」の国際秩序が成り立ってるって一体...
Political Economy的な観点から見れば、至極アタリマエのことしか書いていない。ナショナリズム論も同様。
昨今の新自由主義に対抗するアジテートとしてはその通りなんだが、これがいわゆる主流派経済学のイデオロギーに対する有効な理論になりえているのかは、この新書だけでは判断できない。やはり、『国力論 -
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なんのきっかけで購入したか失念。
中野さんは、経済産業省を経て、現在、京都大学の先生。
読み終わって、ちょっと悩む。
国民の利益や国家の必要性を正面から説明し、東日本大震災にももっと国家が前面にでるべきだという主張は、魅力的。
経済自由主義、グローバリズムもそれがこれまで国民の富の増加と幸福の実現に比較的つながってきた、ましな制度だと思うから、自分はいままでも賛成してきた。
中野さんのいう「経済ナショナリズム」は、究極的に国民の利益を考えるべきという主張には同感できるが、その手法でうまく経済運営できるのか、という実践論について、不安が残る。
中野さんは国家