あらすじ
トランプ関税の本当の狙いを徹底解明
世界を揺るがせた「トランプ・ショック」。
この唐突な関税措置に対して、こう考えている人は少なくないだろう。
<自由貿易というリベラルな国際経済秩序は、アメリカを含む世界各国に利益をもたらしており、堅持すべきだ>
<トランプは「取引」によって、短期的な利益を上げることしか考えていない>
<リベラルな国際経済秩序に反するトランプ政権の行動は、ドルの急落を招く。経済指標が悪化すれば、アメリカは翻意するかもしれない>
本書で示されているのは、これらとはまったく違う認識である。
まず言えるのは、既存の国際経済システムには致命的な欠陥があるということだ――
「通貨」という視点から、世界経済の歴史的な構造変化を徹底分析。
本書を読むことで、世界経済についての解像度が上がる!
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Posted by ブクログ
相変わらずキレッキレ
たぶんそうだろうな~って感じてたことがしっかり分析されて言語化されてる。ワイの直感も的外れではないって確認できて嬉しい。
Posted by ブクログ
ブレトン・ウッズ体制を崩壊させたニクソン・ショック。冷戦の終結。東側諸国も巻き込む自由貿易圏の構築。世界は新自由主義の道を突き進んだ。資源供給国としてのロシア、巨大な消費市場を持つ中国の台頭。相互依存によって紛争を回避しようとする理想は、依存の重要性の偏りという現実の下に崩れた。トランプ政権による関税引き上げも、新自由主義の枠組みの中で踊っているだけである。故に失敗し、基軸通貨としてのドルの弱体は一層進む。米中は力関係が接近し、第二次冷戦が到来する。世界は主流派経済学の過ちに一刻も早く気付かねばならない。
Posted by ブクログ
経済的な視点でのトランプ政権の理解としては学ぶべきことが多い。ただ、トランプ政策を反グローバリゼーションと理解しているように感じられる。トランプの政策は、反グローバリズムであり、似ているが異なる。その視点がない様なので、本質的には違うのではないかという指摘が感じられた。
Posted by ブクログ
数年前なら基軸通貨のドルが危ないと言われても笑って済ましていましたが、再登場したトランプ大統領が今年(2025)4月に全世界に向けて関税を適用する、と言い出してからなんか不安になっていました。
以前読んだ本で、ニクソンショックの時に最初にアメリカが最初に行ったのが「関税の適用」と記憶していましたので、この本にもそのことが記されていました。この本の著者の中野氏は書かれていることが専門的なことが多く私の理解が追いつかない部分もありましたが、最近巷で話題になっている「関税問題」は、近い将来に何かが起きる前触れだという気がしました。
アメリカの夏休み明けの9月から10月にかけて、週の明けた月曜日に何が起きても動じないように覚悟をしておく必要がありそうですね。
以下は気になったポイントです。
・第二次トランプ政権が企てているのは、既存の国際経済秩序、とりわけ国際通貨体制を再編することである、しかしこの企ては必ず失敗する、リベラルな国際経済秩序を復活させるのではなく、その崩壊を決定づける、戦後のドルを基軸通貨とする国際経済秩序が終焉を迎える可能性がある(p15)人々は関税に目を奪われているが、トランプショックの本質は、関税ではなく「通貨」にある、通貨というレンズを通して見れば(ドルを切り下げようとしている、p19)世界で何が起きているか、よりはっきり見えてくるであろう(p16)
・基軸通貨国であるアメリカは、各国に準備通貨ドルを供給し続けなければならないため、経常収支の赤字が続く。アメリカの輸入が多すぎるからではなく、世界に準備通貨を供給する必要があるから経常収支は赤字になっている(p21)
・ニクソンはアメリカの輸入品に対して10%の課徴金を課し、他国に対して自国通貨の切り上げを迫った、トランプも2025年4月2日10%の一律関税を導入したが、ミランは関税を他国に自国通貨を切り上げさせる手段として論じている、ニクソンが課徴金を導入した根拠法は、第一次世界大戦中の戦時立法である「対敵通商法」であった、トランプが追加関税の根拠としたのは、その後継法である「国際緊急経済権限法」である、トランプショックとは、ニクソンショックがそうであったように、既存の国際通貨体制を破壊し、アメリカに有利なものへ作り変えることである、そうだとするならば、トランプショックの本質は、関税にでなく通貨にある(p41)
・トランプはバイデン前政権の外交方針から大きく転換し、ウクライナ戦争の停戦交渉の仲介に乗り出したが、ロシア側を有利にするものと懸念されている、相互関税の対象から、ロシアとベルラーシは除外された、ニクソンがソ連との対決を有利に進めるために中国に接近したように、トランプは中国との対決に備えて、ロシアとの関係を改善しようとしているかもしれない(p42)
・アメリカに基軸通貨国としての特権があるとしたら、アメリカ以外の国は国際決済にアメリカの銀行システムを使わざるを得ない、つまり、海外の政府や企業のドル資産はアメリカ政府の管轄下(ドル資産を凍結可能)にある(p89)
・アメリカ以外の国は、対米経常収支黒字によって得たドルを運用する必要があるから、米国債を購入しているに過ぎない、アメリカ以外の国が米国債を保有しなければならない理由は、アメリカにではなく、むしろ対米経済収支黒字国の方にある(p103)
・ロシアがウクライナに侵攻したことで、アメリカは制裁としてロシアのドル資産を凍結した、中国はアメリカによるドル資産の凍結を恐れて、米国債を売却している(p105)
・アメリカが実施してきた「新自由主義=市場原理主義」とは、自由市場が最適な資源配分を実現するという信念を基本とする、小さな政府・健全財政・自由化・民営化・独立した中央銀行による物価の安定。国際資本移動の自由、これはケインズ主義を攻撃目標とした(p111)
・アメリカの貿易赤字は1985年のプラザ合意によるドル安にも拘らず拡大した、1988年にはドルの価値が半分にまで下がり、原油価格が急落したおかげで貿易赤字は縮小、1991年に大きく縮小したのは、アメリカが不況に陥って輸入が減少したのと、湾岸戦争によって日本、ドイツから巨額の戦費分担金を受け取ったからに過ぎない(p116)
・新自由主義は2つのレジーム(状況)をもたらせた、1)輸出主導レジームで、ドイツ・中国・日本・韓国・東南アジア、輸出の拡大にによって経済成長する、労働者の賃金をできる限り低く抑える、自国通貨の切り下げと同じように輸出競争力を強化した、労働組合は無力化、内需は低迷、2)外需を提供した、債務主導の国々で、アメリカ・イギリス・欧州周辺国である、所得が伸びなくても債務を増やして消費を拡大できた(p123)両者は対照的であるが、共通としては、賃金上昇が抑制で労働者所得は低迷するが、資本家・グローバル企業の利益は拡大し、所得格差が拡大する(p124)
・2014年のロシアに対する制裁、2010年代後半の米中対立の激化、2022年のロシアのSWIFTからの排除、さらに第二次トランプ政権による関税措置は、人民元の国際化を明らかに進展させている(p197)中国はロシアがクリミアを奪取した2014年以降、デジタル人民元の構想を進めている、暗号通貨とは異なり、中央銀行が発行する法定通貨である、この狙いはSWIFTを介さない国際送金を可能にすること(p198)
2025年8月6日読破
2025年8月6日作成