【感想・ネタバレ】基軸通貨ドルの落日 トランプ・ショックの本質を読み解くのレビュー

あらすじ

トランプ関税の本当の狙いを徹底解明

世界を揺るがせた「トランプ・ショック」。
この唐突な関税措置に対して、こう考えている人は少なくないだろう。

<自由貿易というリベラルな国際経済秩序は、アメリカを含む世界各国に利益をもたらしており、堅持すべきだ>
<トランプは「取引」によって、短期的な利益を上げることしか考えていない>
<リベラルな国際経済秩序に反するトランプ政権の行動は、ドルの急落を招く。経済指標が悪化すれば、アメリカは翻意するかもしれない>

本書で示されているのは、これらとはまったく違う認識である。
まず言えるのは、既存の国際経済システムには致命的な欠陥があるということだ――

「通貨」という視点から、世界経済の歴史的な構造変化を徹底分析。
本書を読むことで、世界経済についての解像度が上がる!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

外貨準備としてのドルを各国が保有するため、ドルの需要は国際貿易における需要よりも準備通貨としての需要の分だけ多くなる。ドルの価値は国際貿易の需給の均衡点より高く評価されている。また米国は世界員準備通貨を供給する必要があるから経常収支赤字となっている。トランプとニクソンの類似性。商品貨幣論と「信用貨幣論(貨幣とは特殊な負債)」。商業銀行は新規の融資を行うことで銀行預金形式の貨幣を創造(信用創造、貨幣創造)。貸出は口座に金額を記帳するだけ。個人や企業は、銀行によって発行された負債である銀行預金を使って勘定を決済し、さらに銀行は最上層の政府の負債を使って勘定の最終的な決済を行うために、中央銀行に準備預金を設けている。自国通貨を創造する政府及び中央銀行は、自らの負債を返済するために自らの負債を使っている、すなわち、政府は自国通貨建ての国債の償還を自らの負債である自国通貨で行っている。よって、変動為替相場制下(=自国通貨は不換通貨=負債のピラミッドの頂点は自国通貨)で自国通貨を発行する政府は、債務履行の意志を放棄しない限り、財政破綻に陥ることはないし、そうなった実例もない。政府が国債を発行し民間が購入すると、民間銀行が有する準備預金(中央銀行が民間銀行に対する信用創造によって供給した中央銀行の負債)が政府預金に振り替えられる。この政府預金を使って政府が民間に支出を行うと、その支出額と同じ額だけ支出先の民間事業者の口座がある民間銀行の準備預金が増え、同時に当該民間事業者の銀行預金も増える。すなわち、国債の購入によって減った民間銀行の準備預金は、政府支出の結果、準備預金として戻ってくる。つまり、国債を発行して政府支出を行うと、民間経済への貨幣供給が増えるが、民間銀行の準備預金の増減はない。為替取引高の8割はドル。各国中央銀行の外貨準備は、ドル6割、ユーロ2割、円5%、人民元3%。ドルが国際通貨であるということは、米以外の国は、国際決済に米の銀行システムを使わざるを得ない、ということ。国際決済の多くは、米の民間銀行の当座預金勘定(準備預金)間の振替を通じて決済される。それゆえ、米の民間銀行には多数の非居住者名義のドル建て預金口座が集中している。そして、米の民間銀行が信用創造を行い、居住者名義及び非居住者名義のドル預金を設定することで、国際通貨ドルが供給される。この米銀行システムを管理しているのが米政府。つまり、海外の政府や企業のドル資産は米政府の管轄下。ゆえに米国は一方的に他国のドル資産を凍結できる。トリフィンのディレンマ(基軸通貨国アメリカはドルを政界に供給するために国際収支(特に経常収支)を赤字にしなければならないが、その赤字がドルに対する信任を損なうというディレンマ)は存在しない。中国の米国債大量保有は、経常収支黒字によって積みあがったドルを運用する必要があったから。仮に米国債を売り浴びせたとしても、その結果ドル安になれば損をするのは大量のドル資産を有する中国。しかもドル安(人民元高)は中国の輸出競争力を弱める。中国にとって米国債は、米に取られた人質。輸出主導レジームは賃金抑圧、自国通貨切り下げ、内需低迷。これに外需を提供したのが債務主導レジーム。低所得者でも債務拡大により消費を増加。共通するのは労働者の所得は低迷する一方、資本家やグローバル企業の利益は拡大し、所得格差が拡大。この2つのレジームの成立がグローバル・インバランス。自由市場は自然に発生するものではなく、制度として人為的に造られるもの。そして、制度を造り執行するためには政治権力が必要、なので、新自由主義は口では政府の介入を否定しながら、強権的な政府介入と必然的に結びつく。暗号通貨は信用貨幣ではなく、供給量には上限がある。よって、暗号通貨は預金痛tかと異なり、需要に応じて柔軟に供給できない。現在の中国が自由貿易を望んでいるのは、過剰生産のはけ口を求めてのこと。中国における安価な製品の輸出は、輸入国に対するデフレ圧力となる。つまり、中国はデフレ不況を輸出する「近隣窮乏化策」をとろうとしている。

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2026年07月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

マールアラーゴ合意の内容
基軸通貨であるドル債を通貨準備として保有する動機が常にあるため、金利が下がる。
関税の引き上げは輸入インフレの可能性があるが自国通貨高が相殺する。輸入は減らず関税収入が入る。
各国のドル債を売らせてドル安を演出、同時に超長期債と交換して金利の上昇を抑制する。そのために、関税と安全保障の傘を使う。
関税と安全保障の傘の脅し、国際緊急経済権限法で、 ドル安を狙う。

商品貨幣論=貨幣は商品交換の手段としてそもそも価値があるものが貨幣となった、とする説。
信用貨幣論=価値が時間を超えて移転することに貨幣の価値を置く。借用証としての貨幣。

貸し出しの源泉は貯蓄か、信用創造か。
貨幣は国家の負債。納税の手段として法定しているから流通する。通貨が流通するのは国家の役割。通貨の価値を支えているのは徴税権。
機能的財政=国家財政は国民経済に与える影響を基準にする。国債は金利を操作するための手段であり、金利が上昇しないのなら、上限はない。

イギリスのトラスショックとは。
財政出動に対して年金基金が保有国債を投げ売りをしたためにおこった。すでにインフレ気味のところに財政出動をしようとした。財政運営と金融政策の協調の必要性を提示した事例。

固定相場制で経常赤字の国は、外貨の制約のため、輸入量を減らす必要があり、政府支出は制限される。変動相場制では、その制限がない。輸出産業がないと、通貨安でも輸出が増えない。
ドルが国際通貨である以上、国債決済にアメリカの銀行システムを使うことになる=預金封鎖が脅威になる。これがアメリカだけが享受できる法外な特権というべき。
基軸通貨であれば、対外債務が持続不可能になることはない。対外債務による破綻=基軸通貨から外れる、こと。しかし、ドルに変わる通貨は今のところない。

低金利によって新興国に資本が流出すると、自国通貨高になった新興国は、自国通貨を発行して外貨準備として蓄積した。
信用創造の歯止めはないので、実態がない需要でもバブルは起きる。貨幣の供給について弾力性が高い。

トリフィンのジレンマ=世界がドル通貨準備を必要とするために、アメリカの経常赤字は解消できない。そのためドルの信認が低下するというジレンマ。
信用貨幣論から言えば、これは存在しない。
記事苦痛過酷だから経常収支は赤字、ということはない。1880年から1913年まで、ポンドが基軸通貨だったがイギリスの経常収支は黒字だった。1960年代のアメリカも赤字ではなかった。アメリカの経常収支が赤字だったのは、アメリカが経済運営に失敗したから。それを隠すためのものがニクソンショック。

中国がアメリカ国債を売っても、FRBが購入すればいいだけ。中国のアメリカ国債売却は、ドル資産の凍結を恐れるため。
ドルの準備資金としての需要がなくなれば、基軸通貨から外れる。

変動為替相場制は、貿易収支を調整できるはず。これは新自由主義の想定。しかし、価格弾力性が低いものは、交易条件が悪化しても価格は下がらず、輸入額は上がる。
相手国は自国通貨高からデフレ圧力がかかる。その結果輸入量が減る。この結果、貿易収支は改善できない。
変動為替相場制では、輸出主導経済では、自国通貨高になるが、国内のインフレ圧力は下がる。その結果、インフレを輸出できる。
経済の金融化によって、株主資本に報いるため賃金上昇は抑制され、消費需要は低迷する。グローバリゼーションも労働コストの上昇を抑える方向に働く。
輸出主導の国も、グローバル競争を勝つために賃金抑制に動く。内需が低迷するので、ますます外需に頼る結果、外貨が蓄積する。
債務主導の国は、所得が伸びなくても資金が還元するので債務拡大による消費拡大が可能となった。
このレジームの源泉は、債務主導の国のバブル。常にバブルは弾けて、再び起こる。
グローバル・インバランス=過剰貯蓄論が問題になるが、この原因は輸出主導と債務主導のバランスの問題。これは新自由主義が引き起こした。

中国の台頭の契機は、WTOの加盟。中国は貯蓄率が高い。内需主導が難しいので輸出に頼らざるを得ない。
グローバル・インバランスを是正するために関税政策を取るのは無意味。

アメリカは2010年政治資金の上限規制を撤廃した。この結果、テック業界の資金が流れ込んだ。人材も回転ドアという仕組みで、太いパイプがつながった。
テクノリバタリアンとは、新自由主義より先の自由放任主義。
トランプ政権のベッセントとバイデン政権のサリバンの経済哲学の違いがある。
新自由主義は、政府の規制を嫌うが、その自由を守るために、政府の強権を必要とする。自由市場は自然にできるのではなく、制度として人為的に作る必要がある。

暗号通貨は希少性故に価値があるが、貨幣は流動性がなければ貨幣とはならない。暗号通貨というより暗号資産というべきもの。資産の裏付けはない。

アメリカが基軸通貨国特権を武器にできるのは、SWIFTがあるから。それに対抗してオフショア市場に資産を移すだけでなく、別のシステムを作ろうとしている。ロシアのSPFSに中国、インド、イラン、トルコも参加できるようにした。中国はCIPSを立ち上げた。EUは、INSTEXを立ち上げた。
基軸通貨特権によるドル依存を武器にしようとすると、基軸通貨制の崩壊につながる。

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2026年03月12日

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