阿津川辰海のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
またしてもこれは読んではいけない本でした。タイトルにもあるように、読んだ本の紹介、解説、そしてエッセイで構成されている一冊です。が、紹介されている本の量が尋常じゃない……でもって海外ミステリが多めなので、読んでいない本が多い……チェックすらしていない本も多い……そしてどれも面白そうなんだけれどどうすればよいのでしょうか。私も大概本を読むペースは一般よりは早いと思うのですが。それでも追いつける気がまったくしません。
とりあえずはヘニング・マンケルとラグナル・ヨナソンが気になるなーと思ったのだけれど。ヘニング・マンケル……上下巻が何冊あるのよ! まあ頭の片隅に引っ掛けておいて、そのうち読んでみようかなっと。 -
Posted by ブクログ
現在も連載中の阿津川さんによるミステリレビュー+解説+α。「入れ子細工の夜」とかでも書名等を挙げてミステリ愛を語っていたけど、こちらでは景気よく次々爆発させていてその熱量に圧倒される。海外物多めなのでそちらには疎いからその殆どにはそうなんだ、位の知識しかないけどたまに読んでいる作品が出てくると嬉しい。熱量に影響されて色々読んでみたくなったけど、ヴァランダーシリーズとかディック・フランシスとかどれだけ時間あれば読破出来るのか。(ディック・フランシスは昔途中までは読んだ)ミステリに留まらない膨大な巻末の人名、作品目索引を見ているだけでも楽しい。いいブックガイドだと思う。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ辻堂ゆめ「十四時間の空の旅」
凪良ゆう「表面張力」
城平京「これは運命ではない」
木元哉多「どっち?」
阿津川辰海「成人式とタイムカプセル」
芦沢央「この世界には間違いが七つある」
ひとつめ:怖い話になるかと思ってたら、意外とハートフル。
でも、思春期の娘の父親への憎悪や、
あの時期の転校とか、そう簡単には癒やされないのでは?と思う。
でも、家族愛が伝わったのは良かったよね。
ふたつめ:さすが!面白く読めました。
スピンオフなら先に本編読みたかったなぁ。
誰が一番怖いかって話だけど、さりげなく病んでる人がいて
大丈夫かな?と思う。一番心配な人はお祓いされたら大丈夫かな?
みっつめ:虚構推理の人(作家)だーって読んでたら
虚構推理の人(登場人物)でした。
虚構推理は未履修だけど、読みやすかったし、
とっつきやすかったから、いつか読んでみてもいいかな、と。
よっつめ:これも、誰が一番怖いのかって話。
イヤミス?主人公はとても愚か。
いつつめ:この二人の話が他でも読めるのか?と思ったけど、
そうでもないみたい?タイムカプセル周りの話になるほど、しつつ、いい感じに伏線置いてくれてたからとっつきやすくはあったかな。他の作品もちょっと読んでみたくなった。
むっつめ:さすが!
突然の挿絵に戸惑いつつも、なるほどそういうことか、と
なりました。さすが! -
Posted by ブクログ
ネタバレまことさんのレビューからポチっとゲットした一冊。
これはまたとてつもなくすごい本を手に入れてしまった。
若干28歳(かな?)の若手作家によるミステリ愛ほとばしる書評・解説・エッセイ集。
何かの解説で見ていたことがあったのは『オクトーバー・リスト』と『レイン・ドッグズ』でした。
これらの解説を読んでフラグを立てていた自分を褒めたいぐらい。
何がすごいってこの年齢にして古今東西のミステリを押さえ、完璧なまでのクリティー評を備え、ディック・フランシス、ヘニング・マンケル、D・M・ディヴァインの攻略を記すことができ、泡坂妻夫、土屋隆夫、鮎川哲也にまで通じながら、伊坂幸太郎が入口だと言う圧倒的な土台。
この作品の解説にあれを当ててくるかぁ、なるほど読んだことないけどあの系譜なのね、そうそうあの作品はそう読むよね(指示代名詞ばかりで意味わかんないですね)、ともう関心しきり。
海外ミステリ好きなら絶対読むべき。
刺さること間違いなし。
もちろん国内ミステリ好きも。
著者のミステリ作品は実はまだ読んだことないのだけれど、もう既にファンになってしまった。
むしろ敵愾心すら感じる(どの分際でw)。
青崎有吾?、斜線堂有紀?、近いうちに読むさ。
R・ゴダードやT・H・クックは読んだことあるかい?(あるんだろうなぁ。。。)
と何か一人でムキになってしまいました。
そして、読みたい本が100冊は増えましたとさ。 -
Posted by ブクログ
6人の作家による6話の短編集。気に入った作品は作者の他の作品も読んでみたい。特に辻堂ゆめと阿津川辰海は気になる。
辻堂ゆめ「十四時間の空の旅」
小5から高2まで父おやの転勤で4年のアメリカ生活から誕生日にビジネスクラスで帰国する。
思春期を馴染めない外国で過ごす事になった恨みから父を毛嫌いする娘。
我が家もこんな感じかも。この話はとても好き。
凪良ゆう「表面張力」
アパートの取り壊しで見つかった壁一面のお札の謎。
怨念か?
城平京「これは運命ではない」
恋愛物の定番の様な出会いを何度も繰り返す謎
先輩の謎解きがすごい。
木元哉多「どっち?」
妻の友人との不倫を解消しようとするが。
ある意味恐ろしい結末?
阿津川辰海「成人式とタイムカプセル」
小4の時に埋めたタイムカプセルを開けると空っぽだった。
この話が一番面白かったかも。
芦沢央「この世界には間違いが七つある」
「この世界」とは? -
Posted by ブクログ
ネタバレ警察庁の補助機関として探偵機関なる組織が存在する世界。その世界における名探偵,阿久津透が,その特殊世界でも初めてとなる探偵弾劾裁判に掛けられる。「探偵機関」,「探偵弾劾裁判」という2つの特殊設定に加え,もう1つS Fじみた特殊な設定として「転生」が加えられる。あるペンダントを身につけて死ぬと,誰にも発見されていない死体に転生できるという。
警察官の補助機関として探偵機関が存在し,100人もの探偵士がいる世界で,転生をして生まれ代わっている人物を絡めながら,探偵弾劾裁判で被告人とされている阿久津透が,過去に解決した4つの事件について議論をするという盛り沢山のミステリ。分量もそれなりの分量となっているが,登場するキャラクターが魅力的に描かれており,最後まで一気に読み進めることができた。
この作品の中で扱われる事件は4つ。1つ目はRPGに見立てられた連続殺人事件であるFOB連続見立て殺人事件。犯人は10歳の少年である天童勇気。天童勇気は探偵を招くために見立て殺人を行なっていた。この事件で,探偵士,阿久津透の探偵助手である火村つかさの兄であり、警察官だった火村明が「火」の見立てとして殺害される。火村明の恋人であった水原優子も「水」の見立てとして殺害される。火村つかさは,阿久津透は犯人が天童勇気だと分かっていたのに,その犯行を暴くために火村明の死を待っていたと阿久津透を糾弾する。この事件が阿久津透の探偵弾劾裁判で議論される事件の1つとなる。阿久津透は,FOB事件の解決に際し,故意に解決を遅延させ,犠牲者を増やしたのではないか。探偵弾劾裁判において,そのように主張された。
そして,この事件の被害者である水原優子と火村明が別の人物に転生する。特に,冒頭ではモブキャラかと思われた火村明は,この物語の主人公ともいえる役回りを与えられる。
探偵弾劾裁判で扱われる2つ目の事件は陽炎村童謡殺人事件。この事件で阿久津透は,犯人三宮朱莉に告発文を送り,死に至らしめ,推理による解決を放棄したのではないかとして,弾劾される。探偵弾劾裁判では三宮朱莉の夫である三宮雄夫が証人となる。そして,この三宮雄夫は,交通事故で死亡し,水原優子が転生した人物でもあった。
探偵弾劾裁判で扱われる3つ目の事件は私立黒鉄学園での男子生徒坂巻の自殺事件。この事件で阿久津透は,不必要にプライバシーを侵害し,探偵に課せられる注意義務に著しく違反したのではないかと糾弾される。この事件では自殺した坂巻が自分を振った星影美空が売春グループの1人であると嘘をついており,そのことが原因で星影美空はうつ状態になっていた。坂巻の自殺という事件の真相解明に,事件関係者のプライバシーを暴くことが必要だったのか。星影美空は,うつを理由に自殺しており,火村明が転生していた。
そして,探偵弾劾裁判で扱われる4つ目の事件は相島早苗殺害事件。当時14歳だった阿久津透が,当時9歳だった相島早苗を殺害した容疑者として逮捕されたが,裁判で無罪となった事件である。この事件が,この作品でメインとして扱われる。相島早苗の父,相島雅夫,相島雅夫が経営しちた私塾の生徒であり,阿久津透の友人でもあった神木柚月,そしてこの探偵弾劾裁判を開催するために尽力した,相島早苗殺人事件で阿久津透の取調べを行った警察官である黒崎謙吾。この3人が証人となり,相島早苗殺人事件において,3つ点から阿久津透を弾劾する。1つ目は,推理の誤りを19年も認めずに放棄したこと,2つ目は真犯人の存在を隠蔽するために一蓮の推理を行ったこと,3つ目は相島早苗を殺害したこと。この事件の被害者である相島早苗も,転生はまだしていないものの幽霊となっており,火村明は相島早苗から,阿久津透が偽装工作をしていたことを聞いていた。
探偵弾劾裁判に登場する裁判官榊遊星,検察官役の遠上蓮,弁護人役の瀬川邦彦の3人も魅力的なキャラクターとして描かれている。榊遊星は,裁判官きっての変わり者という設定。実際にこんな裁判官がいたら関わりたくはないが,ミステリの登場人物としては極めて優秀。抜群の推理力でなんと,星影美空と三宮雄夫が,火村明人と水原優子が転生した姿であることを見抜いてしまう。最後は阿久津透の死体に相島早苗を転生させて,被害者からの証人尋問まで行ってしまう。最後に「彼は探偵として生まれ,探偵として死んだのです。」という判決は,入り組んだ探偵弾劾裁判の締めくくりとしてふさわしい判決といえるだろう。
検察官役の遠上蓮は,裁判官役の榊遊星や弁護人役の瀬川邦彦ほど魅力的なキャラクターではないが,まずまずいい味を出している。原告として卒なく探偵弾劾裁判を進める。黒崎謙吾とは名コンビという関係を見せる。エピローグでは,榊遊星に邪魔されつつ,事件の火消しに奔走していると描かれており,非常に微笑ましい。弁護人役の瀬川邦彦は,まさに老雄という感じで,相島早苗殺人事件の新たな証人として出てくる宇田川朴人の尋問では,抜群の切れ味を見せる。阿久津透殺害事件の捜査では,火村明人といいコンビを見せる。非常に魅力的なキャラクターとして存在感を示す。
探偵弾劾裁判の焦点は,相島早苗殺人事件の真犯人が阿久津透かどうかに絞られる。読者には,被害者の相島早苗の目線から,阿久津透が偽装工作をしていたことが語られるので真相は分かっているのだが,しっくりこない部分がある。そんな中,探偵弾劾裁判の2日目に阿久津透がまさかの自白をする。そして,大地震。更に阿久津透の死体が見つかり,相島雅夫が殺害を認める。
相島早苗殺人事件の犯人は阿久津透で,阿久津透が相島雅夫に殺害されて終わりという安直な終わり方はしない。ここでさらにどんでん返し。実は,阿久津透は,1日目の探偵弾劾裁判の後に,火村つかさに殺害されていた。そして,探偵弾劾裁判の2日目は,相島早苗が転生していた。この殺害と転生にはしっかり伏線が張られている。相島早苗は,阿久津透として自殺して新たに転送しようとして相島雅夫に殺害される。火村明は,阿久津透の殺害現場で,既に別の殺人が行われていたこと,その犯人が火村つかさであることに気付くのである。
面白いのは,相島早苗が阿久津透に2回転生することで,火村つかさと相島雅人による阿久津透の殺人がなかったことにされてしまうところだ。この作品での阿久津透の立ち位置は非常に悲しい立ち位置である。実際は,相島雅人と神木柚月を守るために,自分が一度捕まった上で,第三者の仕業に偽装する。そして,火村つかさに殺害されてしまう。相島早苗として蘇っても阿久津透としての魂は存在しなくなるわけであり,少なくとも阿久津透は完全なる被害者である。
ほかにも,宇多川朴人がFOBマニアだったり,相島雅夫の妻である相島美佐子がFOBの伝説的プレイヤーのミサだったりするなどの小ネタも楽しい。
相島早苗殺害の真相は,最後の段階では,虫嫌いの神木柚月による犯行であることが予想できてしまう。これはまぁ,仕方がないところ。ここまでよくできたミステリなので,最後のサプライズがあれば完璧だったが,サプライズを追求するには,ここまで長い作品にしないで仕上げるべきだろうし,仕方がないところだろう。
ここで使われているトリックを整理しておく。盛り沢山である。
◯ FOB事件
犯人が,満タンのポリタンクを持ち上げることができなかったことから,犯人がポリタンクを持ち上げることができなかった非力な小学生である子どもである天童勇気だと推理
◯相島早苗殺人事件
阿久津透は自分が相島早苗を殺害したことを自白し,他の探偵の介在を避ける。公判では否認し,Xという外部犯の存在を推理する。
ダミーのトリック1。公判で披露したトリック。外部犯Xが阿久津透を犯人に見せかけるために偽装工作をする。阿久津透は,靴下に血が付いているが,血がついた足跡がないことを指摘。第一発見者が相島雅人が部屋の中に入らないように工作。相島雅人が用意したスノコの上を通って脱出
ダミーのトリック2。犯人Xは阿久津透が殴られたときに部屋にいなかったと推理。血が付いていない硬貨が持ち去られていなかったことから,持ち去ることができなかった=部屋にいなかったと推理。スケッチブックの絵が切り取られたのは,何も描かれなかったことを隠すため。阿久津透を殴った鈍器は,相島早苗の首。犯人は外部から首を投げて阿久津透にぶつけた。腕と足はハケに使った。
真相。相島早苗が幽体にまるまでの1時間44分の間に阿久津透が行っていた行動がポイントになる。阿久津透の行動のうち,必要だったのは首の切断,暖炉,スケッチブック。相島早苗が死んだ場所は離れではなく,本宅側の客間。時間は午前10時。相島早苗を刺したのはフレイの等身大銅像。相島早苗からクワガタの絵を見せられた神木柚月は,相島早苗を突き飛ばした。突き飛ばされた相島早苗はフレイの等身大銅像が持っていた剣で刺され死亡する。阿久津透はこの真相を隠すために偽造工作を行っていた。
◯阿久津透殺人事件
阿久津透は,1日目の夜と2日目の地震の後,2回殺害されていた。1回目の殺害の犯人は火村つかさ。2回目の殺人の犯人は相島雅人。阿久津透には1日目の殺害の後,相島早苗が転生していた。槍と日本刀。血を洗った跡がある洗面台,フックの指紋等からこの事実が暴かれる。
◯叙述トリック
第4章✳︎二月,三宮雄夫の一人称。この最後で「車のヘッドライトに照らされて,まるで脚光を浴びた舞台俳優のように,三宮雄夫の気分はどこまでも晴れやかだった。」とあるが,ここで三宮雄夫は交通事故で死亡する。交通事故に遭う直前とは分かりにくい描き方をしつつ,三宮雄夫の一人称による描写があることで,三宮雄夫に水原優子が転生しているはずはないと思わせる効果を狙っている。
◯伏線
第4章✳︎三月 神木柚月が無類の虫ぎらいであることが示されている。この神木柚月の虫嫌いが,相島早苗殺害につながるので,重要な伏線
第4章✳︎七月 探偵弾劾裁判所を行う場所を法務省所管のセミナーハウスから私大の施設せせらぎの丘に変更。ここで地盤が弱いと,弾劾裁判二日目の地震のあからさまな伏線がある。
1日目の法廷 1日目の法廷で相島早苗の幽体が判事席の下に隠れていたことで,2日目もどこかに隠れていたと思わせる。実際は,阿久津透に転生していた。
第6章 火村つかさが阿久津透に「あんた,これは一体どういうことよ!」と激した声で言う。何かトラブルがあったように思わせるが,この前日に火村つかさは阿久津透を殺害し,阿久津透に相島早苗が転生している。そんなことがあったとや思わせないような叙述でありながら,後で読み返すと,ここで阿久津透殺しがあったことが示唆されていると分かる。
総合的に見て非常に完成度の高い作品。何より,筆者の最近の本格ミステリへの愛を感じる作品。久々の★5で。