稲垣栄洋のレビュー一覧
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「弱者」とは何か。植物たちの生き残り戦術
動物と植物との大きな違いは、
動物は、動き回り、自分に合った環境を探し回るのに対し、
植物は、動き回らず、自分が環境に合わせる。
動物は、長い世代をかけて環境に応じて変化するのに対し、
植物は、一代で環境になじむ。
植物は、いつも、搾取される。動物に食われる。ほかの植物との生存競争にもさらされる。その場で生き残ることが「勝ち」であり「価値」だ。
植物には、さほど複雑な構造はない。動物に比べ、パーツは「繰り返し」でできている。
とにかく、植物は、人とは大違いだ。
なのに、とある歌では、世界に一つだけだの、どれもみんなきれいだの、ナンバーワンになりたがるだの、人と比べている。
しかし、植物は、
オンリーワンかつナンバーワン
なのだという。
自分らしさにおいてナンバーワンでなければ生き残れない。その環境、その場において、オンリーワンかつナンバーワンを求められる。むしろ、もっと過酷な世界だ。人間なんて、ナンバーワンになれなくても、死にはしないからね。
植物の生存戦略は、主に3つ。
Cタイプは、競争型。とにかく強い。通常やれば敵なし。ぐんぐん育ち、他を圧倒する。
しかし、それでは弱者にチャンスはないのか、というとそうでもない。環境は変化する。絶対王者のボルトだって、転ぶ条件が整えば転ぶ。
そこで、まずは、Sタイプ。ストレス耐性型だ。例えば、極端に水のない環境、氷雪の多い環境など、強い悪条件に耐えうる力だ。
最後にRタイプ。攪乱適応型である。つまり、環境が激変する場で生き延びる。
そして、この3つのタイプの割合が違うことでオンリーワンになり、ナンバーワンになる。そして、それを植物界では「ニッチ」という。
競争型は、安定環境下での勝負で、他の植物を出し抜くが、ストレス耐性型と攪乱適応型は、ほかの植物とは戦わない。勝負は、環境という、植物ではないものとなのだ。
だから、「どれが一番強い?」と問うのに意味はない。
生き残っていること、それがそのものの、その場においての強さなのだ。 -
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海洋全蒸発や全球凍結など環境が激変しても生命体は生き残って来た。強者でなく変化してきた逞しい弱者も含まれる。弱いものの取る戦略は強者から見れば嫌悪感をもたらすものかもしれないが自然界においてもそれは存在する事を知ればそれも微笑ましく暖かく見守れる気がする。本書はそんな視点を作ってくれる本である。
※群れる→生物界にもある戦略
※擬態→シマウマはライオンやヒョウに見えない。
カサゴの赤色は深海で見えなくなる
※逃げる→ガゼルのサイドステップ
※ずらす→夜の蝶、日本のタンポポ
※棲み分け→平和的共存
※弱者の戦略とは→小さな複雑な局地的な戦いにもっていく。
※野生動物は比較的競争を避けるがメスを手に入れる為には命をかける(←人間との違い)
→ところが動物界にもコソ泥のような戦略もある(スニーカー戦略)(サテライト戦略)
※食べられる事により子孫を残す植物的戦略→
蜜で昆虫を呼び寄せ花粉を運ばせる
※強者の力を利用する→コバンザメ、ハチアブ、アブラ虫 -
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ネタバレ雑草は遷移の初期段階にだけ生える植物。
耕したり、草刈りをすると、リセットされてしまう。
休眠
土の中でチャンスをうかがっている。
水、酸素、温度。
赤色光で周囲に他の植物がいないことを認識。
多様性
変えられるものを変える。
種子を結ぶことは変えない。
ミツバチ
頭が良く、働き者、飛翔能力が高い、紫色を好む、
紫色の花
たくさんの蜜、蜜標と細長く入り込みにくい花の形
自殖を避ける
雌しべの方が長い。
ウリ科は雌花と雄花、キウイは雄の木と雌の木。
種子植物
花粉と種子で移動
外来種:明治末期から日本に来たもの
日本の欧米化で帰化植物に有利な環境が増えた
西洋タンポポ:他の植物が生えない新しい土地で繁殖
家畜のえさがトロイの木馬に
アレロパシー:化学物質を出し周囲を抑制、一定期間は有効な化学兵器
除草剤
2,4-D:イネ科以外に効き、生理作用を混乱させ枯らす。
生物除去
アイガモが虫を食べ、泳いで水が濁り光が不足
鯉、ジャンボタニシ、ヤギに食べさせる
ナンバー1の棲み分け=ニッチ(生物的地位)
すべての生物はその場所でナンバー1のオンリー1
うまくいかないときは「ずらしてみる」
教えない力 -
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植物自身、環境、病原菌、昆虫、動物、人間。その闘う相手を変えながら、植物は常に生き残る道を作ってきた。留保はあるが、ただし、人間を除いて。「与えよ、さらば与えられん」という一句になぞられられるのは、興味深い。
CSR戦略、日本人の雑草愛、サボテンの話しは稲垣氏の他の本にも出てきたネタだった。しかし、それ以外の圧倒的な量のネタは初見である。
・酸素が引き起こした進化。植物による酸素の発生→オゾン層の作成→紫外線の遮断→有害である酸素呼吸する生物の発生
・最強の昆虫はアリ。だから植物はアリを利用しようと進化してきた。
・恐竜絶滅の一つの原因は裸子植物から被子植物の進化。エサとなる裸子植物が減少したため。
・その被子植物を食べた恐竜が「アルカロイド中毒」を起こした可能性もある。
・タイヌエビ(稲に似ている)は擬態植物
・ヨーロッパでは、新石器時代の遺跡から雑草の種子が見つかっている。 -
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弱者の取った生き残りのための戦略。蘊蓄が豊富で、読んでいて飽きない。偶然が重なって進化が起きたとは思えない複雑さ、巧妙さだ。
ただ、CSR戦略、ナンバー1でオンリー1のところは、同著者のちくまプリマー新書と一緒だった。
・「強いものは単純に。弱いものは複雑に」これは勝負の鉄則。
・カゲロウは生きた化石と言われるほど古く、現在知られている昆虫としては最も古い化石がある。3億年前から変わらない。命が短いのがそのひみつ。
・ミミズは、もともとは頭や足のような器官のある生物だったと考えられている。ところが土の中で土を食べて棲むというニッチに合うように、そのような姿になった。
・自然が破壊された環境に、最初に生える植物は「パイオニアプランツ(先駆種)」と呼ばれている。挑戦し続けることを宿命づけられている。
・多様性とスピードが弱者の戦略のキーワード。 -
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ネタバレ『モテる構造』という社会学の本で、「できる男はモテるが、できる女はモテるとは限らない」と言っていて、生物学的にはどうなのだろうと読んでみる。もともと生物学的は、子孫を残すのはメスなので、メスにオスを選ぶ権利がある場合がほとんどで、だから、オスは孔雀のように羽をきれいにしたり、他のオスと戦ったりして、「できる」ことを主張するのだと。オスは、メスの資質に関係なく、数を打てるので、浮気性だと。『モテる構造』は生物学的にも言えている気がした。それにしても、オスとして生まれてきて、あまり、どちらが得かとか、考えたことはなかったが、この本によると、メスにはメスの、オスにはオスの役割があると。わかりやすい説明で書かれているので、あまり生物学に詳しくなくても読めます。
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強い者が勝つのではない。勝った者が強いのだ。
強いものは単純に、弱いものは複雑に。
体が小さいと隠れやすい。
いくつかのオプションを残す。
時間軸をずらしてすみわけする。競争を避ける。条件の良いところは競争が激しい。競争を避けて「ずらす」ことこそが弱者の戦略。他の生物がナンバーワンになれない場所を探して、自らがナンバーワンになれる場所を探す。どんなに小さい場所でもそこでナンバーワンになれるほどの力はつけなくてはいけない。
弱者は変化がある場所でパイオニア的に生きる。変化をチャンスと捉えて、常に新しい椅子へ乗り換える。挑戦し続けることの宿命づけ。人気が出てきたら別の未開の場所に移行する。
戦うことよりも戦わないことを選択し続ける。女装する戦略。与えよ、さらば与えられん。 -
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読書録「徳川家の家紋はなぜ三つ葉葵なのか」4
著者 稲垣栄洋
出版 東洋経済新報社
p88より引用
“ 日本の主食である米は、炭水化物を豊富
に含み、栄養バランスに優れている。
一方、大豆は「畑の肉」と言われるほど、
たんぱく質や脂質を豊富に含んでいる。その
ため、米と大豆を組み合わせると三大栄養素
である炭水化物とたんぱく質と脂質がバラン
スよく揃うのである。”
目次から抜粋引用
“徳川家康はなぜ江戸を都に選んだのか
完全リサイクルの循環型社会ができるまで
お城にはなぜ松が植えられているのか
織田信長はトウモロコシが好き
ヨーロッパ人を驚かせた園芸大国”
みちくさ研究家である著者による、戦国時
代などの昔の武士達と植物の関わりを記した
一冊。
江戸が都に選ばれた理由から大名の家紋と
植物の関連についてまで、史実を元に推測を
立てながら書かれています。
上記の引用は、米と大豆の組み合わせにつ
いて書かれた項での一節。
米に含まれていないアミノ酸は大豆に有り、
大豆に含まれていないアミノ酸は米に有って、
お互いを補い合う良い組み合わせとのことで
す。古くから食べ続けられているものは、や
はりそれなりの理由があるのでしょうね。
参考文献を見てみると、植物学に関するも
のは殆ど無く、植物に関する文献をたどろう
とするのは難しいでしょう。
家紋や武士の食生活についての文献が紹介さ
れているので、そちらを辿るのには有用では
ないでしょうか。
今の我々の生活が、いかに過去の人々の足
跡の上に出来ているかがよく分かる一
冊だと思います。
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Posted by ブクログ
弱ければ生き残れないはずの弱肉強食の自然界。しかし弱者には弱者なりに生き残るための戦略を駆使している。
天敵や他種が生存できない厳しい環境をあえて選択することで、自分だけのの「ニッチ」を獲得する。そこでは「ナンバーワンでありオンリーワン」でいられるのだ。
同種間の競争でいえば、強いオスだけが遺伝子を残せるのではなく、弱いオスも遺伝子を残す為の戦略がある。
メスに偽装して強いオスもメスすらも騙して思いを遂げる弱いオスがいたり、別種かと思うほど個体を小さくして目立たないように強いオスの隙を狙って掠め取るオスがいたり。
人間界においても置き変えられる戦略が多く、ビジネス本として読むのもありかと。他人がやらないニッチを探す。最終的には変化に対応できる者が生き残るのだ。
『強い者が勝つのではない、勝った者が強いのだ』ベッケンバウアーの至言が響く。