あらすじ
人気植物学者が贈るサイエンスミステリー。
生命の本質に迫る一週間には、驚きの結末が……。
極上の読書体験間違いなしの一冊。
大学で植物学を教える教授のもとに
ある日、届いた一通のメール。
内容は植物にまつわる素朴な質問……のはずだった。
質問に誠実に答えようとすると、
どうしても考えなければならない問題がある。
生命とは何か?
死とは何か?
生きるとは何か?
ある一週間における
植物学者の思索の物語。
※カバー画像が異なる場合があります。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
植物の解説本としてとても面白かった。
植物に関しては高校の時しか学んでいなかったが、
植物は生きているのか、死ぬのか、
草は何か等視点が個人的に斬新でとても面白かった。
また、こういった解説本でも、教科書のような堅苦しさはなく、あくまで小説として書かれているので非常に面白く読めた。
特に、
どうして死ぬのか→それぞれの細胞が無秩序に分裂を繰り返していけば、細胞の役割分担も成り立たくなる
のは腑に落ちた。
生きることも不思議、死ぬことも不思議、でも命ってとても美しい
与えられた命を生きて、与えられた死を受け入れるってすばらしい
という言葉はとても良かった。
また読みたいと思う
Posted by ブクログ
生きて死んでいくこと、命がある奇跡を、教授と学生との1週間のやり取りの中で解き明かす。
明快な表現で、知らなかった生命の不思議を植物学を通じて学べる傑作。
思春期に読んでほしい一冊。もちろん大人も!
面白かった。
学生の質問に対する教授のモノローグという体裁の文章なので
スラスラと読めました。
忙しいはずの教授が質問の裏を読んで
どんどん想像を膨らませていく様が
とても面白かった。
Posted by ブクログ
先日、予定のない休日にふらりと訪れた「本」がメインの商業施設で、なぜだか妙に気になってしまったので連れて帰ってきた。
とある植物学者の、謎のメールを巡る1週間が彼の日常と共にゆる〜く、かる〜く綴られている。
章立てがそのまま月曜日から日曜日の1週間になっていたので、せっかくだからわたしも曜日を合わせて1章ずつ1週間かけて読んでみた。
ちなみに、つい先日読んだ朝井リョウさんの「生殖記」の影響と、最近新しく聴き始めたPodcastの番組がキッカケで、
「生物ってなんだろう?」という問いが自分の中でめっちゃ熱い。
Podcastの方は確か、AIの話題から、今SNS上にある個人のアカウントの投稿をもとに生成AIでその人らしく投稿を続けられるなら、仮にその人物が亡くなったとしても、デジタル上、ネット上のアカウントでは、その人の新しい投稿を生成し続けることは可能で、それはもはや、不死なのではないか?という話だった。
また、ややSFじみた話ではあるが、環境問題が行き着く先に生じる未来で、人類は身体を無くしてその記憶、その情報が、永遠にネット上で生成され続けられたとして、果たしてこれは人類の滅亡なのか?それとも人類の生み出した文明は続くのだから、次なる新世と言えるのではないか?
そこから派生して種とは?遺伝子とは?
…みたいな、果てしない内容で聴いていていい意味でクラクラするものだった。
そしてそんなクラクラの真最中にこの本に出会った。
うっかりしていたけど、植物も生物だ。
そして植物と動物の最も特徴的な違いは、動くか動かないか…ということ。
こんな些細な気づきがとてつもない拡がりの問いを運んでくる。
すなわち、
「生命とはなにか?生きるとはどういうことか?」
途中途中に、昔習った「理科」の生物の授業で出てきた被子植物、裸子植物なんかのワードをおさらいさせてもらえたり、植物の殖え方…栄養繁殖と種子繁殖の違いなどを分かりやすく教えてもらったり、その上で進化論や多様性の話になったり、遺伝子の話題からテセウスの船に言及したりと、
全然難しくはない言葉で終始軽やかに書いてあるんだが、めちゃくちゃ勉強になるし、めちゃくちゃ思考が深まる。
そして、完全にこの本は私を呼んでたんだな、と思ったのが、件のPodcastで言っていた印象的なフレーズが、日曜日の章で最後の最後に出てきたこと。
「植物は星のかけらでできています。それは私たちも同じです」
出典はこの本ではなかったが、同じような意味の言葉をPodcastで聴いていたので、この偶然性には運命的なものを感じてしまった。
人によっては今までの「死生観」を揺るがしかねないスリリングな本だと思う。
少なくとも私はめちゃくちゃスリリングでエキサイティングな1週間を共に過ごすことができた。
生物学にちょっとでも興味がある人、
そもそも生物とは?命とは?みたいな漠然とした問いを考えるのが好きな人、
朝井リョウさんの「生殖記」に気持ちを持って行かれた人、お勧めです。
いやぁ面白かった〜!
ちょっとしたエッセイ風に
教授と学生のQ&Aという体裁を取ったエッセイ風な外見に仕立ててある。もっとも語られている内容は著者が専門とする植物学全般である。生死とか命とかを扱っているのでやや哲学めいたところもあるが、内容はあくまで生物学 植物学の立場から見たもので哲学分野へは踏み込んでいない。それでも知識面を中心とした著者の既刊と比べると、概念的な問い合わせが多い。
Posted by ブクログ
とても読みやすい。大学教授の一週間、学生からのメールの質問に対する回答を考えるプロセスで、読者を考察の世界に誘い込む。
植物と人間の対比が気付きをもたらせてくれる。
人間は上半身から摂取して下半身から排泄する。子孫を残す機能は下半身に宿す。これに対して植物は真逆の構造になっている。下半身(根)から摂取して上半身に栄養が届けられる。植物の上半身(花や種)には子孫を残すための機能がある。
また細胞分裂も真逆である。人間は古い細胞が外側から抜け落ちていく。これに対して植物は、例えば木であれば、幹の中の細胞は死んでいて、外側に新しい細胞が広がっていく。細胞レベルで選択されたこの仕組みに意思が感じられるのが謎である。
Posted by ブクログ
人間から見ると不思議に見える植物の特性も、進化の過程で選択されてきたものであり、植物にとっては何の不思議もないはずだ、ということが面白く読みやすく綴られている。中に大学教授の生活の一端が垣間見えるところも興味深い。
著者紹介の中で、既に読んだことのある本が幾つかあったことに気が付いた。著者の語り口や一般向けに分かりやすく説明するところが各書に共通しているのだろう。
Posted by ブクログ
植物は死なない!?植物学者が思索する生命論
人気植物学者が贈るサイエンスミステリー。 生命の本質に迫る一週間には、驚きの結末が…極上の読書体験間違いなし‼︎大学で植物学を教える教授のもとに ある日届いた一通のメール。 内容は植物にまつわる素朴な質問のはずだった質問に誠実に答えようとすると、 どうしても考えなければならない問題がある。 生命とは何か? 死とは何か? 生きるとは何か? ある一週間における 植物学者の思索の物語。
プロローグ 命を考える一週間
月曜日 どうして植物は動かないのか?
・ 大学教授の朝 ・どうして植物は動かないのか?
・植物が動かない理由
・独立栄養生物と従属栄養生物
・光合成はすごい! ・古代の地球に酸素はなかった
・禁断の酸素 ・モンスターに支配された惑星地球
・「植物は動かない」は本当か?
・動かない動物たち ・植物は人間の想像力を超える
・アリストテレスにとっての「植物」
・プラトンにとっての「植物」 ・月曜日の答え
火曜日 植物と動物はどこが違うのか?
・ 学問は「そもそも」から始まる ・植物の定義
・分類の難しさ ・動物と植物はどこが違う?
・植物と動物の決定的な違い ・植物細胞の戦略
・「葉緑素を持つのが植物」は本当か?
・ウミウシとミドリアメーバー
・全生物最終共通祖先「LUCA」
・シアノバクテリアの存在 ・誰にもわからないミステリー ・進化の不思議 ・火曜日の答え
水曜日 草って何? ・ 草のスピード感
・草と木の意外な関係 ・裸子植物と被子植物
・被子植物はなぜイノベーションなのか?
・そして植物は小さな草に進化した
・どうして長寿より短命を選んだのか?
・植物が手に入れた「確実性」
・すべての生物は死にたくないと思っている
・水曜日の答え
木曜日 木は何本あるのか?
・ 春の風物詩にまつわる疑問
・ソメイヨシノの特殊性
・タネで殖やすか、枝で殖やすか
・ソメイヨシノはクローン ・孫悟空は一人二人か?
・大学教授の非常食 ・バナナと温州ミカンの共通点
・減数分裂と三倍体
・三倍体の動物がいない理由
・それでも種子を作るのはなぜか?
・栄養生殖の危険性と種子繁殖の利点
・栄養繁殖と人類史 ・ラメットとジェネット
・接ぎ木は何がすごいのか?・ソメイヨシノ接ぎ木
・接ぎ木の本体はどっち?人魚の本体はどっち?
・臓器移植を考える ・木曜日の答え
金曜日木は生きているか? ・ 木の柱は生きている!?
・木は生きながらに死んでいる
・人間と木の共通点 ・脳と生死生命の本質とは?
・繰り返される生と死 ・テセウスの船
・私とは何?私の心はどこ?
・私の本質 ・フランケンシュタインの思い
・金曜日の答え ・大学教授の悩み
土曜日 植物は死ぬのか? ・ 死なない生物
・永遠に分裂を繰り返す ・「死」という発明
・老いの不思議 ・死へのカウントダウン
・老いは進化の証 ・細胞の役割分担
・「死」が生まれるまで ・分化全能性
・分化全能性の消失と再現 ・植物は死なないのか?
・HeLa細胞 ・自然はSFよりも奇なり
・生物は遺伝子の乗り物に過ぎない ・より優れた乗り物へ ・コピーのために死ねるか?
・死ぬ繁殖、死なない繁殖 ・生きているとは?
・生物の条件 ・土曜日の答え
日曜日 植物は何からできているのか? 最後の質問
・植物のデザイン ・宇宙と生命をつなぐもの
・日曜日の答え エピローグ 最後のメール
Posted by ブクログ
エッセイのような小説のような(多分、中学高レベルの)生物の解説書
知ってることがメインだからか、文体が優しいからか、理科の本の中では読みやすい
Posted by ブクログ
中一の息子は、中学生になってスマホを手にして以来、うちにいるときはほとんどの時間スマホを見ている。ゲームをしたり、ショート動画をひたすらみたり、YouTubeを見たり。学校の成績はというと、笑えないくらい低い。本人の危機感もうすい。ルールを決めても効果なし。もうスマホを取り上げるしかないのかもしれない。
さて、そんな息子が年に数冊読んだ貴重な一冊が、この『植物に死はあるのか』、である。
息子と一緒に本屋に行ったとき、自分で見つけてきて面白そうだからと図書カードで買っていた。
読み終わって、「おもしろかった」という程度の感想しか聞けていないが、ママも読んでみたらと勧められて長い間後回しになっていたのだが、息子と共有できるものをつくりたいと思い、今になってやっと読んでみた。
著者の稲垣さんが学生からの質問メールを機に、一週間毎日生物の生と死について考えた過程がとても簡易な言葉で綴られている。木は死ぬのか、なぜ人は死ぬのか。植物と動物の違いは何か。
最終的には宇宙の話につながっていき、思わぬところに連れて行かれた。
木と人間は何が違うのか。どうして野菜は同じ形のものができるのか。
そんな「当たり前」と思っていたことにクエスチョンマークがつくと、そういえばどうしてだろう、とかどういうことなんだろう、とはっとさせられる。人間は地球の上に生きていて、地球は宇宙に存在しているのだから、人と宇宙が繋がっているのは当たり前のことなのだけど、日常的に宇宙のつながりを感じているわけではないから、とても新鮮な驚きというか気づきだった。
稲垣栄洋さんは、たくさん本を出していて、教科書にも使用されているくらい有名な方らしい。息子は最近、ちょっとだけ宇宙にも興味があるらしく、稲垣さんの他の作品や宇宙関連の本を薦めてみたいと思うが、親が薦めてみたところで携帯を手放して読むとも思えないが、少しでも息子の学習意欲を引き出したいと親としては四苦八苦する日々だ。
でもそんな私は宇宙と言われてもぴんとこなさすぎて、あまり興味を持っていなかったのだけど、今年に入ってSFを数作品読み、宇宙の話に触れる機会があった。また、NHKで放送した『宇わたる教室』は、人生で何度もつまづいてきた定時制の生徒たちが、科学部での宇宙への探求を通して成長と、それを指導する先生の生きなおしを描いており、とてもいいドラマだった。
知識を学ぶことは、人にとって喜びであり、生きる世界を広げること、思考を深めること、可能性を大きくすることなのだな、と改めて思わせてくれるドラマだった。
ドラマの話に脱線してしまったが、息子が宇宙のことを考えるようになったのは、この本がきっかけかもしれない。私にとっても新たな興味や気づきをくれた一冊。大事にしたい。