稲垣栄洋のレビュー一覧
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「雑草魂」は力強さのことではなく、多様性のことだった!
「雑草魂」という言葉があるように、雑草には力強いイメージがありますが、そんな雑草も実は巧みな戦略をもってサバイブしていることに、この本を読んで驚きました。
商品として売り出される野菜や花などの作物は、人間があつらえてくれた良質な土壌に植えられ、人間の手で守られ、収穫時期や性質は一定に管理されています(今をときめく言葉「多様性」とは真逆!)。しかし雑草は当たり前ですが人に世話してもらえません。むしろ引っこ抜かれたり刈られたり、除草剤をまかれて邪魔者扱いです。しかしそんな雑草のことを嫌っている人間のそばでないと、雑草は生きられない。人間と -
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「老いることができる」という進化は何かしら合理的なんだから、ポジティブに老いていこうぜというお話。
結論から言ってしまえば、なぜヒトは老いるのかは分からず、結局「生命の神秘」に落ち着くんですが、植物も動物も進化の形はその種にとって有利な方向へ向かうもの。老いてからも生きられる長い寿命と環境を手に入れた人類にとって、「老いることができる」という進化は何かしら合理的な理由があるはず! そんなやや結果論的ではあるけれど「老いは優れた生存戦略だ」というポジティブなメッセージが込められた1冊。エッセイ然としていて肩肘はらずに楽しめるうえ、途中途中にミニコラムが挟んであり、読みやすいように細やかに編まれ -
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食材の味や栄養、調理法について、食材が植物や動物として生きていたときの性質や進化の過程およびヒトの歴史を踏まえて科学的に説明されている。本書も稲垣先生の著作として期待どおりの楽しさと学びが得られた。
15ページ
→レタスを包丁で切ってはいけない理由
29ページ
じつは、多くの動物は、ビタミンCを自らの体内で合成する能力を持っています。ところが、果実からは豊富すぎるほどのビタミンCが摂取できたため、果実食のサルは、ビタミンCを作る能力を失いました。
36ページ
植物は寒さに当たると、葉っぱの中の水分が凍りつかないように、糖分や栄養分を葉にため込みます。そのため、寒さを経験した葉菜類は甘く、 -
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単行本は2010年に家の光協会から刊行されている。
それがこの度、新潮文庫に入ったということだ。
どうしてレタスを刃物で切ってはいけないのか。
玉ねぎを切ったとき目に刺激が少ないのは縦に切ったときか、横に切ったときか。
グリーンピースの臭みの元は何か。
ねぎの葉の「表」とは、筒の内側か外側か。
こんな謎が提示され、明晰に説明されていく。
私には特にネギの葉の表裏問題と、ピーマンの苦みを減らすには、刻まない方がよいという話が面白かった。
食卓のサイエンスといった風情の一冊。
そういうたぐいの本は他にもあるが、稲垣さんの文章は明晰で、その点で異彩を放っていると思う。
ついでに、解説で食品化 -
- カート
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試し読み
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稲垣先生の雑草の本が好きなので本書も期待して読み始めた。
20種類以上の雑草について生存戦略の術が説明されている。
ほかの著書との重複もあるが、初めて見る話も多かったため新たな学びを得ることができた。
雑草の性質をヒトの営みに活かす教訓を学ぶような書き方になっているが、全テーマに学びを設定するのは少し無理がある気がするし、説教っぽさもあってあまり好きではなかった。しかしこれを差し引いても十分におもしろい一冊だと思う。
<特に気に立った部分>
・64ページ「花とハチの関係はまだまだ謎が多い。ただ、ホトケノザは蜜の量をばらつかせていることが知られている。」
→有名な心理学の連続強化と部分強化の実 -
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果実食のサルはビタミンCを体内で作る能力を失った。
肉食動物は肉を分解するために人類の20倍の胃酸濃度。腸は体長の3~4倍と短い。
植物食の人類の腸は12倍、有毒物質が発生しやすい。
食物繊維が排出し、餌としている善玉菌も増える。
葉菜類
冬を越しやすいロゼット形状 根っこを太らせる 旬は冬から春
ジャガイモ
茎が太ったもの 芽が地上に出る時に食べられないように毒のソラニンを生成する
トウガラシ
カプラシンを解毒するため胃腸が活性化、 脳内モルヒネのエンドルフィンを分泌
コロンブスが新大陸から持ち込んだ インドのカレーの味も胡椒から唐辛子へ
距離を移動し辛さを感じない鳥のみに運 -
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コロナ禍や不景気、色々生きづらい世の中ということもあり、普通の生活を送ることがしんどく感じることがある。適応障害やうつなど、心の課題を抱えるのは環境やタイミングの問題なんじゃないかと感じるくらい身近な存在になったし、それくらい社暗く感じる今の社会。
「普通」に働いて、「普通」に結婚する。
自分の親世代がこなしていたことが難しくなった今だからこそ、個性を尊重することが必要だとこの本を通じて改めて感じた。
SDGsがトピックになったりするけれど、そもそも現状維持・検討する・様子見というもの自体が衰退の要因。変化を求め、行動することが再生可能な社会になる -
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14種類の作物のお話。
小麦、稲、胡椒、唐辛子、じゃがいも、トマト、綿、茶、サトウキビ、大豆、玉葱、チューリップ、とうもろこし、桜。
アンデス原産のじゃがいもがヨーロッパで広まるときの君主の奮闘ぶりが意外や意外でおもしろい。
マリー•アントワネットの『パンがなかったらケーキを食べなさい』発言が、話者も(本当は叔母)対象物も(本当はブリオッシュ)相対価格も(本当はパンの半分の価格の食べ物)、全てがでっち上げの捏造あおりネタで、実際のマリーは、コスパのいいじゃがいもの普及に努め、国民を飢饉から救おうとしたのだとか。
P217 あとがき
もし、地球外から来た生命体が、地球のようすを観察するした