稲垣栄洋のレビュー一覧

  • 怖くて眠れなくなる植物学

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    植物のさまざまな生存戦略と生態系全体のつながりが多彩なトピックスを題材に面白おかしく綴られていて飽きさせない。

    魔女狩りによって猫も狩られ、そのためネズミが増え、ネズミによって媒介されたペストが猖獗を極めたという話が紹介されているが、それはややフライング。
    歴史的にはペスト禍の後に魔女狩りの最盛期を迎えているので、ペストによる大量死の責任が魔女に押し付けられて魔女狩りが起きたという説もある。
    つまり鶏と卵。おそらく悪循環だったのだろう。

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    2023年08月24日
  • 一晩置いたカレーはなぜおいしいのか―食材と料理のサイエンス―(新潮文庫)

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    あれもこれも美味しい秘密!

    タイトルに惹かれて読み始めた。カレーに始まり朝ごはん、チャーハン、お好み焼きなど人気のメニューを手がかりにさまざまな野菜や肉その他食材の育ち方、栄養素、調理の秘密などが紹介される。知らなかったこともあるし、知っていたこともあるし、そういうことだったのかと気付くこともある。毎日食べるご飯がより美味しくなる本。

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    2023年07月06日
  • 身近な植物の賢い生きかた

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    植物の生存戦略に関する雑学を詩的に・擬人化を活用して(人の営みに例えて)説明されている。稲垣先生の著作らしく文章が面白くて読みやすい。
    本書は文章表現を楽しむ読み物としての性質が強く、植物の詳しい解説は比較的少なかった。過去に別の本で読んだことのある話が多かったため、本書の表現を楽しむことはできたが、知識の積み上げはあまり多くなかった。

    59ページ
    雄と雌とで子孫を残す有性生殖であれば、必ず親とは違う子孫が作られる。つまり、変化し続けることができるのだ。たとえ親の世代の防御法を破る病原菌が現れたとしても、その子孫はさまざまな新しい防御法を持っているので病原菌の感染を防ぐことができる。
    →VUCAの時代なので柔軟に変化するべし、などという言葉が巷では飛び交うが、ヒトや有性生殖の生物たちは大昔から柔軟に変化することをしていたのである。ただしこれは世代を跨いだ変化であり、VUCAの文脈で要求されているのは同一個体の変化なので実は別の話である。

    65ページ
    つまり、根粒菌を体内に住まわせることによって、大気の主成分である窒素を獲得することを可能にしたのである。
    →昔、社会科の授業で学んだ輪作についての知識を深掘りしている。マメ科が良いという話は知っていたが、そのメカニズムについてはあまり知らなかったので本書を読んだことで学びがあった。

    84ページ
    せっかく芽生えても、まわりがすでに強大な植物によって覆いつくされていたら、小さな芽生えは育つことができない。逆に光が地面まで射し込んでいるということは、地上に障害となるライバルがなにもないことを意味している。
    →この知識は好き。別の本で読んだことあり。

    85ページ
    むしろ、緑色の光だけが射し込んできたということは、まわりに生い茂る植物があるということなのだ。だから、緑色の光では種子は発芽しない。
    →この知識も好き。別の本で読んだことあり。意外と簡単な話ではない。

    133ページ
    そこで、多くの植物は、蜜の量が多い花と蜜の量が少ない花を交ぜ合わせている。
    ここのさじ加減が難しい。蜜の量が多い花は、昆虫が長居して移動しないという問題があるものの、あまり蜜の量が少ない花ばかりだとケチな店だと評判が落ちて他の花に客を奪われてしまう危険もある。
    →この知識も好き。別の本で読んだことあり。ヒトの営み、仕事でのコミュニケーションに応用できるところがある。みんなも見習ってほしい。

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    2023年06月27日
  • はずれ者が進化をつくる ──生き物をめぐる個性の秘密

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    将来できるかもしれない子供に読ませたいと思った。
    中身についていうと、同じことを違う例えで何度も繰り返しているようにみえた。章ごとに言っていることがそんなに変化しないののも退屈だった。
     小さい頃は何事も競争させられた。まだ世の中がわかってないときに運動でも勉強でも競争させられたら、違うことに価値があるなんて思うなんてことは無理。この教育のやり方を変えずに考えた方だけを無理やり変えようとしているのがいま。子供にとって厳しい世界になっていはしないか。

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    2023年09月01日
  • 弱者の戦略

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    動植物の特徴とその背景事例を多く示していて面白い。確かに弱者の戦略なのだろうが、それをビジネス環境等で活用するというのはちょっと違う気もする。

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    2023年06月08日
  • 生き物が大人になるまで~「成長」をめぐる生物学

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    面白く、読みやすい本。ヒトとその他の似ているところ違うところをわかりやすい文章で教えてくれています。他のことも教えてほしくなる文章です。

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    2023年04月16日
  • 眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話

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    ※以前、旅行中に読んでたが登録漏れ

    植物のメカニズムは本当によくできている、知れば楽しい、知らねばそれだけ

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    2022年12月12日
  • 世界史を大きく動かした植物

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    【感想】
    もし「重要な植物ランキング」があるとすれば、文明を形作った「穀物」がエントリーするのは間違いないだろう。実際、世界で最も多く栽培されている作物はトウモロコシであり、二位がコムギ、三位がイネだ。トウモロコシ、コムギ、イネは「世界三大穀物」と呼ばれており、やはり穀物が植物界の中心にいる。四位にジャガイモ、五位にダイズと続き、食料として重要なこれらの主要な作物に次いで生産されているのが「トマト」とのことだ。

    本書には上記のほか、大航海時代を作った「コショウ」、アヘン戦争を生み出した「チャ」、糖のもととなる「サトウキビ」、産業革命を引き起こした「ワタ」など、重要な植物を様々に取り上げている。植物一つひとつの原産地や生育方法といった「生物学的知識」はもちろん、その植物を通じた世界史上のできごとも学べる、一粒で二度おいしい本となっている。

    各植物の紹介も非常に面白かったが、私が一番印象に残ったのは、「おわりに」の記述だった。そこには人間を介した植物の生存戦略が書かれている。
    人類ははるか昔から災害と飢饉の間を生き抜いてきた。病気や干ばつに見舞われても生き残れるよう、植物を品種改良することでより安定した収穫を目指してきたのだ。ムギで言えば「非脱粒性」という性質を持つ変異株を選別し、交配させてきた。イネで言えば病害虫に強い新品種を開発し続け、増え続ける人口をカバーできるように進化させてきた。
    こうした取り組みを目の当たりにすると、ともすれば「人間は自らの都合のいいように植物を飼いならし続けてきた」と思うかもしれない。しかし、筆者に言わせれば逆だ。植物が自らの生存範囲を世界中に広げるため、人間を飼いならし続けてきた、というのである。

    ――作物は、今や世界中で栽培されている。種子を広げることが植物の生きる目的であるとすれば、世界中の隅々にまで分布を広げた作物ほど成功している植物はない。そして、一面に広がる田畑で、栽培作物は、人間たちに世話をされて、何不自由なく育っている。そして人間は、せっせと種をまき、水や肥料をやって植物の世話をさせられているのである。 そのために、人間の好みに合わせて姿形や性質を変えることは、植物にとっては何でもないことなのだろう。人間が植物を自在に改良しているのではなく、植物が人間に気に入るように自在に変化しているだけかも知れないのだ。(略)
    人間の歴史は、植物の歴史かもしれないのである。

    なるほど、考えてみれば確かにそうだ。世界中のどこを見渡しても、ここまで植物の世話に熱心な生き物は人間しかいない。そう考えると、今まで人間に食べられてきた植物の数々が、実は人間に食べさせるよう誘導し、裏で支配し続けてきたように思える。実は全てが植物の掌の上だったなんて、何とも面白い視点ではないだろうか。
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    【まとめ】
    0 まえがき
    人類は植物を栽培することによって、農耕をはじめとした文明を生みだした。植物は富を生みだし、人々は富を生みだす植物に翻弄された。人口が増えれば、大量の作物が必要となる。作物の栽培は、食糧と富を生み出し、やがては国を生み出し、そこから大国を作りだした。富を奪い合って人々は争い合い、植物は戦争の引き金にもなった。

    人々の営みには植物は欠くことができない。人類の歴史の影には、常に植物の存在があったのだ。


    1 コムギ
    イネ科植物は、乾燥した草原で発達を遂げた植物だ。
    イネ科の植物は、ガラスの原料にもなるケイ素という固い物質を蓄えて身を守っている。 さらに、イネ科植物は葉の繊維質が多く消化しにくくなっている。こうして、葉を食べられにくくしているのである。

    イネ科植物は、他の植物とは大きく異なる特徴がある。普通の植物は、茎の先端に成長点があり、新しい細胞を積み上げながら、上へ上へと伸びていく。
    ところが、これでは茎の先端を食べられると大切な成長点も食べられてしまうことになる。
    そこで、イネ科の植物は成長点を低くしている。イネ科植物の成長点があるのは、地面スレスレである。イネ科植物は、茎を伸ばさずに株もとに成長点を保ちながら、そこから葉を上へ上へと押し上げるのである。これならば、いくら食べられても、葉っぱの先端を食べられるだけで、成長点が傷つくことはない。

    じつは、イネ科植物の葉は固くて食べにくいだけでなく、苦労して食べても、ほとんど栄養がない。イネ科植物は、食べられないようにするために、葉の栄養分をなくしているのである。

    人類は、葉が固く、栄養価の低いイネ科植物を草食動物のように食べることはできなかった。人類は火を使うことはできるが、それでもイネ科植物の葉は固くて、煮ても焼いても食べることができない。
    それならば、種子を食べればよいではないかと思うかも知れない。現在、私たち人類の食糧である麦類、イネ、トウモロコシなどの穀物は、すべてイネ科植物の種子である。
    しかし、イネ科植物の種子を食糧にすることは簡単ではない。なぜなら、野生の植物は種子が熟すと、バラバラと種子をばらまいてしまう。何しろ植物の種子は小さいから、そんな小さな種子を一粒ずつ拾い集めるのは簡単なことではないのだ。

    ところがあるとき、私たちの祖先の誰かが、人類の歴史でもっとも偉大な発見をした。それが、種子が落ちない突然変異を起こした株の発見である。種子が落ちる性質を「脱粒性」と言う。自分の力で種子を散布する野生植物にとって、脱粒性はとても大切な性質である。しかし、ごくわずかな確率で、種子の落ちない「非脱粒性」という性質を持つ突然変異が起こることがある。人類は、このごくわずかな珍しい株を発見したのだ。

    恵まれた場所の方が、農業は発達しやすいと思うかも知れない。しかし、実際にはそうではない。自然が豊かな場所では、農業が発達しなくても十分に生きていくことができる。たとえば森の果実や海の魚が豊富な南の島であれば、厳しい労働をしなくても食べていくことができる。農業というのは重労働であり、農業をしなくても暮らせるのであれば、その方が良いに決まっている。そのため、自然が豊かな場所では農業は発展しにくいのだ。
    厳しい環境の中で、多くの人々が生き抜くための術を身につけたのである。それが「農業」だった。

    そして、農業が生み出すのは、単に食糧だけではない。種子は食べるだけでなく、保存することができる。保存しておけば翌年の農業の元となるが、残った種子は、人類にある概念を認識させる。それが「富」である。
    植物の種子は、そのときに食べなくても、将来の収穫を約束してくれる。保存できるものだから、たくさん持っていても困るものではない。また、保存できるということは、分け与えることもできる。
    つまり、種子は単なる食糧に留まらない。それは財産であり、分配できる富でもある。こうして富が生まれていったのだ。


    2 イネ
    農業を行うためには、水を引く灌漑の技術や、農耕のための道具が必要である。
    必要は発明の母というとおり、農業によってさまざまな技術が発展した。農業は「富」を生みだし、強い「国」を生みだした。そして、技術に優れた農耕民族は、武力で狩猟採集の民族を制圧することができるようになった。
    稲作はコメだけでなく、青銅器や鉄器といった最先端の技術をもたらしたのだ。

    イネはムギなどの他の作物に比べて極めて生産性の高い作物である。イネは一粒の種もみから700~1,000粒のコメがとれる。これは他の作物と比べて驚異的な生産力である。十五世紀のヨーロッパでは、コムギの種子をまいた量に対して、収穫できた量はわずか3~5倍だった。これに対して十七世紀の江戸時代の日本では、種子の量に対して20~30倍もの収量があり、イネは極めて生産効率が良い作物だったのである。現在でもイネは110~140倍もの収量があるのに対して、コムギは20倍前後の収量しかない。
    さらにコメは栄養価に優れている。炭水化物だけでなく、良質のタンパク質を多く含む。さらにはミネラルやビタミンも豊富で栄養バランスも優れている。そのため、とにかくコメさえ食べていれば良かった。
    唯一足りない栄養素は、アミノ酸のリジンである。ところが、そのリジンを豊富に含んでいるのがダイズである。そのため、コメとダイズを組み合わせることで完全栄養食になる。ご飯と味噌汁という日本食の組み合わせは、栄養学的にも理にかなったものなのだ。かくしてコメは日本人の主食として位置づけられたのである。

    十六世紀の戦国時代の日本では、同じ島国のイギリスと比べて、すでに6倍もの人口を擁していたとされている。それだけの人口を支えたのが「田んぼ」というシステムと「イネ」という作物である。 
    ヨーロッパの三圃式農業に対して、日本の田んぼは毎年イネを育てることができる。一般に作物は連作することができない。しかも昔はイネを収穫した後に、コムギを栽培する二毛作を行った。ヨーロッパでは三年に一度しかコムギが栽培できないのに、日本では一年間にイネとコムギと両方、収穫することができたのだ。


    3 コショウ
    コショウは肉を保存するために必要なものであった。しかし、贅沢な食生活をする貴族であれば、金さえ出せばいつでも新鮮な肉を食べることもできる。じつは、コショウは実用的な保存料というだけではなく、むしろステータスを表すシンボル的な存在だったのだ。

    どうしてヨーロッパの人々に必要な香辛料がヨーロッパにはなく、遠く離れたインドに豊富にあったのだろうか。
    それは、気候に関係がある。香辛料が持つ辛味成分は、もともとは植物が病原菌や害虫から身を守るために蓄えているものである。冷涼なヨーロッパでは害虫が少ない一方、気温が高い熱帯地域や湿度が高いモンスーンアジアでは病原菌や害虫が多い。そのため、植物も辛味成分などを備えているのだ。


    4 トウガラシ
    カフェインはアルカロイドという毒性物質の一種で、もともとは植物が昆虫や動物の食害を防ぐための忌避物質であると考えられている。このカフェインの化学構造は、ニコチンやモルヒネとよく似ていて、同じように神経を興奮させる作用があり、依存性がある。他にいくらでも植物はあるのに、世界の人々が魅了されているのは、すべてカフェインを含む植物なのである。

    それでは、トウガラシはどうだろう。トウガラシの辛味成分はカプサイシンである。このカプサイシンも、もともとは動物の食害を防ぐためのものである。ところが、人間がトウガラシを食べるとカプサイシンが内臓の神経に働きかけ、アドレナリンの分泌を促して、血行が良くなるという効果がある。カプサイシンを無毒化して排出しようと体の中のさまざまな機能が活性化され、血液の流れは速まり、発汗もする。
    しかし、それだけではない。カプサイシンによって体に異常を来したと感じた脳が、ついにはエンドルフィンまで分泌してしまうのである。結果的に私たちは陶酔感を覚え、忘れられない快楽を感じてしまう。こうして、人々はトウガラシの虜になるのである。

    こうしてヨーロッパからアジアへと伝わったトウガラシだが、アジアでは瞬く間に広まっていき、ごく自然に現地の食事の中に取り入れられていった。高価なコショウを求めていたヨーロッパの人々にとって、新しい大陸の見慣れない植物よりも、アジアの香辛料こそが本物で価値あるものである。そのため、トウガラシもヨーロッパの人々に次第に広まっていった。


    5 ジャガイモ
    ジャガイモの原産地は、南米のアンデス山地だ。
    現代のヨーロッパ料理には、ジャガイモは欠かせない。土地がやせていて麦類しか作れなかったヨーロッパにとって、やせた土地でも育つジャガイモは、まさに救世主のような存在だった。今でもドイツ料理に代表されるように、ヨーロッパではジャガイモは欠かせない食材となっている。

    しかし、見たことも聞いたこともないアメリカ大陸の作物が、簡単にヨーロッパの人々に受け入れられたわけではなかった。
    もともとヨーロッパには「芋」はない。芋は、雨期と乾期が明確な熱帯に多く見られるものである。雨期に葉を茂らせながら貯蔵物質を地面の下の芋に蓄えて、その芋で乾期を乗り越えようとしているのである。

    冷涼な気候のドイツ北部地域にとって、飢饉を乗り越えることは大きな課題であった。しかも近隣諸国との紛争の多かった中世ヨーロッパでは、食糧の不足は国力や軍事力の低下を招く。そのため、ジャガイモの普及が重要な課題だったのである。
    ジャガイモはコムギが育たないような寒冷な気候や、やせた土地でも、たくさんの芋を得ることができる。しかも畑が戦場となってコムギが全滅することがあっても、土の中のジャガイモはいくらかの収量を得ることができる。
    ジャガイモは保存が利き、冬の間も食糧とすることができた。そして、豊富にとれたジャガイモを家畜の餌にすることができた。その家畜が豚だ。

    ジャガイモの普及によって食糧供給が安定したヨーロッパの国々では人口が増加した。そして、この労働者の増加は、後の産業革命や工業化を下支えしていく。

    ジャガイモは食文化にも革命をもたらした。ジャガイモによってヨーロッパは肉食が可能になったのだ。
    ヨーロッパは牧畜文化圏ではあるが、安易に肉食を行うような余裕はなかった。馬は馬車を引いたり、荷物を運ぶためのものであったし、牛は鋤で畑を耕したり、農耕に利用した。牛乳を得ることはあっても、殺して肉にすることはできなかったのである。また、アジア原産のワタが伝わる以前のヨーロッパでは、衣服を作るために羊毛が重要であったから、ヒツジの肉も得られない。
    保存が利き、あり余るほど豊富に得られるジャガイモは豚の餌になる。ジャガイモさえあれば、たくさんの豚を一年中飼育することができる。さらにジャガイモが食糧となったことによって、それまで人間が食べていたオオムギやライムギなどの麦類を牛の餌にすることができる。こうして、ヨーロッパの国々は冬の間も新鮮な豚肉や牛肉を食べられるようになった。そして、さまざまな肉料理が発達し、肉食文化の国となっていくのである。


    6 ワタ
    ワタはワタの実から採取される。ワタの実は種子を守るために、やわらかな繊維で種子をくるんでいる。このやわらかな繊維が「ワタ」となるのである。

    産業革命のきっかけとなった植物の一つがワタだった。イギリスは、材料のワタのみをインドから輸入し、綿布の国内生産に努めるようになった。そして、マニュファクチュアによって綿織物が作られるようになっていく。
    布を織る作業が効率化すると、今度は糸をつむぐ作業が間に合わない。やがて糸をつむぐ紡績機が発明され、作業が効率化していく。作業が効率化すれば、生産工場は大規模化していく。大規模化すれば、作業は分業化され、都市がどんどん大きくなっていく。
    そして十八世紀の後半になると、安価な綿織物を求める社会に革新的な出来事が起こる。石炭を利用した蒸気機関の出現により、作業が機械化され、大工場での大量生産が可能になったのである。これが「産業革命」である。産業革命によって安価な綿織物が生産されるようになると、伝統的なインドの織物業が壊滅的な打撃を受けてしまったのだ。


    7 サトウキビ
    それまでの農業は奴隷を必要としていなかった。
    ところが、サトウキビは違う。なにしろサトウキビを栽培し、収穫するのは重労働である。それまでの農業にも重労働はあったが、鋤で畑を耕すような単純な作業は、牛や馬を使うこともできた。
    しかし、サトウキビは三メートルを超える巨大な植物であり、収穫という、家畜ではできない作業が重労働となる。二十世紀になって機械が開発されるまでは、サトウキビの重労働は人力で行われるものだった。
    これがプランテーションである。


    8 ダイズ
    中国の農耕を支えたイネとダイズは、自然破壊の少ない作物である。イネは水田で栽培すれば、山の上流から流れてきた水によって、栄養分が補給される。また、余分なミネラルや有害な物質は、水によって洗い流される。そのため、連作障害を起こすことなく、同じ田んぼで毎年、稲作を行うことができる。
    また、ダイズはマメ科の植物であるが、マメ科の植物はバクテリアとの共生によって、空気中の窒素を取り込むことができる特殊な能力を有している。そのため、窒素分のないやせた土地でも栽培することができ、他の作物を栽培した後の畑で栽培すれば、地力を回復させ、やせた土地を豊かにすることも可能である。


    9 トウモロコシ
    世界で最も多く作られている農作物は、コムギでもなく、イネでもなく、トウモロコシである。
    じつは、トウモロコシはさまざまな加工食品や工業品の原料としても活躍している。
    さまざまな加工食品に用いられるコーン油も、コーンスターチも、トウモロコシを原料としている。トウモロコシのデンプンからは、「果糖ぶどう糖液糖」という甘味料が作られるため、チューインガムやスナック菓子、栄養ドリンク、コーラなど、さまざまな食品に入っている。私たちは知らず識らずにトウモロコシを食べているのだ。
    一説によると、人間の体のおよそ半分はトウモロコシから作られているのではないかと言われるほどである。まさに神がトウモロコシから人を作ったという、マヤの伝説そのものだ。

    現在では工業用アルコールや糊もトウモロコシから作られており、ダンボールなどさまざまな資材も作られている。また、限りある化石資源である石油に代替するものとして、バイオエタノールがトウモロコシから作られている。二十一世紀の現代、私たちの科学文明は、トウモロコシ無しには成立しないほどだ。

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    2022年11月10日
  • 植物たちのフシギすぎる進化 ──木が草になったって本当?

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    植物について学ぶの、物凄い久しぶりかも。忘却の彼方にいってしまいそうな懐かしい単語たちにも、久しぶりに触れられた。
    本シリーズ(あと岩波ジュニアスタートも)を、趣味嗜好を問わず、基本的に全部読破したいと考えるようになったんだけど、それは偏に、こういう出合いを求めるからこそ、なんだな。いきなり専門書ってのはハードル高いし、ひどい分野だと、小学校卒業以来、ほとんど触れていないみたいなのもあるしな。

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    2022年10月27日
  • 一晩置いたカレーはなぜおいしいのか―食材と料理のサイエンス―(新潮文庫)

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    身の回りの食材には、さまざまな「謎」がある。トウガラシはなぜ辛くて赤いのか?ニンニクはどうして健康にいいのか?メロンにはなぜ網目があるのか?そして、そんな食材たちが使われる料理にもたくさんの「謎」が隠されている。これらの謎を解くカギは、食材が生きていたときの姿にあった。本書では、野菜や肉、魚などの生き物としての特徴を手掛かりに、食材や料理の謎を、科学的に解き明かしていく。
    久しぶりに店頭でタイトル買いした本。言われてみれば理由を知らないことってたくさんあるなあ。植物学とか全く知らないので、へえ~~という思うことばかりで純粋に面白かった。毎日何気なく食べている食材にも奥深さがありますね。夏休みの読書感想文の課題とかに良さそう。

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    2022年10月10日
  • 一晩置いたカレーはなぜおいしいのか―食材と料理のサイエンス―(新潮文庫)

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    面白かった!

    もしも、孫に「肉しか食べないよ!」と言われたらコレを言いましょう。

    人間はサルから進化したから、ライオンと体が違うんだよ。
    ライオンは胃酸の濃度も20倍だし、腸の長さも短くて体長の3~4倍しかないんだよ。人間は12倍もあるから、肉だけだとヤバいんだよ、有毒なものが出来ちゃうから早く体から出さないと!
    肉だけ食べて生きていくためには特別な体の仕組みが必要なのよ。

    コレでいこう!

    バナナの減数分裂。
    ヒガンバナ・オニユリ・シャガなど球根を使う植物は、中国から持ってくる時に三倍体の物が選ばれたから、種が出来ない。

    ソバが救荒食なのは、イネ科の植物と違って茎や葉も食用にする事ができるから。

    印度カリー子さんの浸透圧の話が、私には一番すんなり府に落ちました。

    ワサビでは涙がでるけど、唐辛子では出ない

    サツマイモから根がでるけどジャガイモからは芽が出る。

    大根は土から頭が出るけど、ニンジンは出ない。

    ネギの先っぽの緑の葉っぱの裏表は?

    もう楽しい~。家族には迷惑だけど、アウトプットして、はじめて自分の知識になるから
    ボケ防止にね。









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    2022年09月20日
  • 世界史を大きく動かした植物

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    判りやすく面白いけれど、キッパリさっぱり明快すぎる感じも。そんなに全て植物で説明つくものだろうか?という。
    植物に着目して世界史を見るとこういう感じに見えます、ということなんだろうけども。
    そこさえ肝に銘じて読めば、大変興味深い内容と思う。

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    2022年08月15日
  • はずれ者が進化をつくる ──生き物をめぐる個性の秘密

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    ネタバレ

    ナンバー1になれるニッチを探すには、コツが二つあります。
    一つ目は、小さくしぼりこむこと
    二つ目は、フィールドは自分でつくること

    「好きなこと」、「得意なこと」、そして「人から求められること」、そんなニッ値のヒントを探し当ててみましょう。そして、「小さなチャレンジ」を繰り返すのです。

    人間は勝ち負けが好き
    しかし、「勝ち」っていったい何なのでしょうか。
    あなたが楽しく満たされていれば、それでいいのではないですか。

    負けたっていい
    偉人たちは、どうやってこの境地にたどりついたのえしょうか。
    おそらく彼らはいっぱい戦ったのです。そして、いっぱい負けたのです。

    敗者が進化する
    勝者は戦い方を変えません。負けたほうは、戦い方を考えます。負け続けるということは、変わり続けることでもあります。

    「高さで評価される」ということは、皆さんにとっては成績や偏差値という言葉が当てはまるかもしれません。「高さ」という尺度は大切な尺度です。「高さ」で測ることはダメなことではありません。成績は悪いより良いほうが決まっていますし、成績が良い人はほめられるべきです。しかし、それだけのことです。それはたった一本のものさしではあったたった一つの尺度に過ぎません。大切なことは、高さで測れることは、成長を図るたった一つの尺度でしかないと知ることです。

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    2022年08月02日
  • 「雑草」という戦略 予測不能な時代をどう生き抜くか

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    雑草は邪魔なものというイメージがあったが、日本人は雑草魂といったように雑草を好む傾向があるということを改めて感じた。
    人間社会(ビジネス)と雑草が関連する部分もあり、「ナンバー1になれるオンリー1の場所」を見つけていきたいと思った。
    また、変化や逆境を力に変える雑草の生き方を、日本人にも活かして行けたら良いかなと思う。

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    2022年07月15日
  • 植物たちのフシギすぎる進化 ──木が草になったって本当?

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    進化、多様性、個性を植物から学ぶ!

    まずページ数が少ないのでさらっと読める。それでいて勉強した気持ちになる。被子植物と裸子植物のどちらが昔からあったか? 単子葉植物の利点とは? もしかしたら理科の授業で習ったことかもしれないけど、なるほどと楽しんで読めた。

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    2022年06月18日
  • 世界史を大きく動かした植物

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    自宅で観葉植物や花を育てているだけでも、毎日土を触り水をやり、肥料や日当たりに気をつけて世話をしているとどっちが主人なのだろうと思う時がある。農業革命によって権力や国が生まれ社会や文化は成長してきたのは事実だが、狩猟採集を行っていた時よりも、人間の働くしんどさは格段に増えている。そんな歴史を13の作物と1つの花で語る本。生まれ故郷から遠く離れた場所に運ばれて食文化として根付いたり、神の宿る木と信じられていたりなど、人間とは切っても切れない強い絆で結ばれた植物が愛おしく感じる。

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    2022年05月05日
  • 面白くて眠れなくなる植物学

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    (Audibleで視聴)
    知的な面白さはあった。
    ただあまり記憶には残ってないなぁ…
    もう一回聴き返してもいいくらいには面白かったが、絶対聴き返したいと思うものではなかった。

    聴くより読んだ方がより面白く、且つ学びにもなると思う。

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    2022年04月21日
  • 散歩が楽しくなる 花の手帳

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    ネタバレ


    ドクダミ…日本在来。クローン種子を作れる
    チューリップ…原産国のトルコ語ではラーレ
    藤…日本原産…右利きと左利きがある
    朝顔…種に下剤、利尿作用あり。牽牛子
    パンジー…惚れ薬「真夏の夜の夢」。皮膚炎の民間薬
    ギリシャ神話で美少年に例えられる花は球根物が多い
     (球根と睾丸が似ているとか?)
    金魚草…花が枯れた後ドクロのようなフォルムに変化
    サツキ…欧米ではツツジの1種と認識されている
    とげのないバラ、モッコウバラ
    サザンカ…日本固有の花木。
    椿…日本原産。捨てるとこなしの万能植物
    マーガレット…花びらが21枚
    福寿草…日本原産。アイヌの霧の女神クナウ
    桜…田の神様が降りてくる木。ソメイヨシノはクローン
    アジサイ…日本が原産地だが古典和歌では不人気
    南天…江戸時代厠のそばに植えられていた。葉や茎には抗菌作用のあるベルベリンが含まれている。ナンジニンにと言う成分は熱と水分により解毒作用のあるチアン水素を発生させる。
    シクラメン…正式和名は豚の饅頭。以前は食用だった


    逆さスマホ撮影で花畑を独り占め
    1.通路など花が手前、人が奥に来る場所を確保
    2.スマホ逆さ持ち、レンズを花に近づけ
     被写体以外の人が入らないよう調整
    3.被写体をタップしてピント合わせ、明度を上げて撮影

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    2022年02月24日
  • 雑草手帳 散歩が楽しくなる

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    カタバミ
    別名 黄金草、鏡草、銭みがき
    片喰紋は日本十大家紋のひとつ。
    揉んで十円玉を磨くと酸でピカピカになる。
    金属や鏡を磨くために用いられた

    雑草とは望まれないところに生える植物であると定義されている。
    よもぎは畑の雑草だが草餅の材料になったりお灸として薬草にもなる。雑草は人間が邪魔者扱いしたときに初めて雑草になるのである

    アメリカの哲学書エマーソンは、雑草を次のように評した。「雑草とは、未だその価値を見出されていない植物である」

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    2022年02月19日
  • 一晩置いたカレーはなぜおいしいのか―食材と料理のサイエンス―(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    稲垣栄洋『一晩置いたカレーはなぜおいしいのか』新潮文庫。

    食にまつわる科学的蘊蓄エッセイ集。全体的には平凡な内容かな。

    カレー自体の美味さの秘密はそういうことか。そして、一晩置いたカレーがなぜ美味いのかという謎については興味があるが、その理由を読むと新たな謎が。家庭のカレーなら解るが、洋食屋のカレーはなぜ美味いのだろうか。

    食材の色や匂い、味の秘密や栄養素、調理の裏技などが紹介される。

    本体価格550円
    ★★★

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    2022年01月31日