あらすじ
じっと動かない植物の世界。しかしそこにあるのは穏やかな癒しなどではない! 植物が生きる世界は、「まわりはすべてが敵」という苛酷なバトル・フィールドなのだ。植物同士の戦いや、捕食者との戦いはもちろん、病原菌等とのミクロ・レベルでの攻防戦も含めて、動けないぶん、植物はあらゆる環境要素と戦う必要がある。そして、そこから進んで、様々な生存戦略も発生・発展していく。多くの具体例を引きながら、熾烈な世界で生き抜く技術を、分かりやすく楽しく語る。
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Posted by ブクログ
植物がいかにして自然界での生存競争に生き残ってきたか。その戦略を分析している。動物や昆虫の力をしたたかに利用して進化してきた様は実に見事だ。
植物の進化は同時に動物や昆虫の進化でもある。どちらが先かわからないが、相手からの補食を防ぎ、あるいはその防御を突破し、お互いの利点を利用し合うことで自然界でのバランスが絶妙に取れた結果、生命が成り立っていることがわかる。
あとがきがまた面白かった。かつて地球は二酸化炭素で充満し、そのため植物が大発展。結果酸素という「毒性物質」を大量に地球上に放出することで動物が過ごせる環境を作り上げてしまった。人類は二酸化炭素を排出し、植物が過ごしやすい環境を急速に作り、原始の地球を取り戻そうと行動しているのだ、と結んでいる。
SF的な考え方だが、あながち荒唐無稽と言いきれないように思える。
Posted by ブクログ
植物に対するイメージがくるりと一回転する本だ。木や花を見ると癒しを感じる!? 植物自身にとっては、とんでもない話で、植物は常に戦いの日々を送っているのだ。彼らは、とにかく自分のことしか考えていない。結果的に、共生になったり、人間の癒しになったりするが、そんなつもりは全くない。
①植物vs植物ーとにかく他の植物に先んじようと必死
②植物vs環境ー雑草は実は弱いので、競争相手のいない厳しい環境の所へ逃れたのだ。
③植物vs病原菌ーこの章が白眉。常に病原菌との戦いをしているとは知らなかった。抗菌物質や活性酸素で防ごうとしたり、侵入された細胞が自死したりする。ポリフェノールやアントシアニンは自分が出した活性酸素を除去するためのものなのだ。
④植物vs昆虫ー毒を自分で生産して昆虫から守ろうとするが、昆虫はその防壁を潜り抜けようとする。その鼬ごっこなのである。そのせいで、特定の植物を好む昆虫が出てくるのだ。植物がわざわざ作った毒を体内に取り込んで利用するとんでもない昆虫もいる。
⑤植物vs動物ー被子植物が進化してアルカロイドという毒成分を持ったことにより、恐竜が滅んだとも言われている。哺乳類は味覚を発達させることで対抗しようとする。
⑥植物vs人間ー植物は毒で対抗しようとするが、人間はこれを利用したり、苦みを美味しいと感じたりする。しかし、人間のおかげで栽培が広がったりした。
あとがきで、著者は、人間はせっせと植物出現前の地球環境に戻そうとしていると言っているが、酸素のない、オゾン層もない地球だからね。皮肉がきつい。
Posted by ブクログ
昆虫もおもしろいけど昆虫と共に進化してきた植物もおもしろくないわけなかった
考えてみたらニュースでよく聞く蜜蜂がいなくなってるとか今のままだと10年後くらいに食糧危機になるとか、取りも直さず植物の危機は人類の危機なのね
Posted by ブクログ
植物の生存戦略には、CSR戦略というものがある。
C:競争戦略(弱肉強食の世界で勝つ)
S:ストレス耐性型(普通の植物がストレスで死んでしまうような環境をあえて選ぶ。ex:砂漠、日陰)
R:レルラント(変化が激しい環境を選んで、変化に対応して成長する)
これらの戦略に基づくと、
・サボテンが丸い形をして、棘をはやしているのにも理由があるし、バラに棘が生えている理由も物理的な防御という以外に理由がある。植物は、過酷な生存競争の中で生き残るために形を変えてきた、という話が面白かった。
Posted by ブクログ
これまでのどかに咲いているなぁとしか思っていなかった植物が、これほど熾烈な生存バトルを繰り広げているとは思わなかった。小学生の理科の時間のように知的好奇心がわくわくする本。以下面白かった点。
・マメ科植物と根粒菌の一見美しい共生関係の裏に隠された搾取関係(見せかけの友情)
・抜けば抜くほど生えてくる雑草のメカニズム
・蟻は昆虫界最強の種族
Posted by ブクログ
動物と異なり動かない植物にも適者適存、過酷な生存競争がある。植物同士の戦い、対環境、対病原菌、対昆虫、対動物、対人間について分かりやすい記述で語る。
植物の生存競争に関する本。特に花と花粉に関する進化が有名だろう。花粉を運ぶ役割を昆虫に持たせる共存関係。時に蜜だけを長い口吻で奪う蝶のようなフリーライダーも存在するが。同じように種を鳥に食べさせ遠くまで運ばせる戦略やネズミやリスの習性を利用したドングリ。あまりドングリが豊富であるとネズミ、リスが増えて全て食べられてしまうため、あえて数年おきにのみ豊作となる戦略を取ったという。
対人間。苦味のあるピーマン、辛みのトウガラシ。動物に食べられないための戦略が、まさか人間が調理に活用するとは植物の誤算だろう。ただし農作物も考えようによっては品種改良の結果、人間が育ててくれるのだから成功した戦略なのがしれない。
奥の深い植物の進化の世界を堪能しました。
Posted by ブクログ
植物を見ると何となく安らかな気持ちになりますが、実は日々激しく戦っています。
その生き残り戦術は、会社を経営するうえで参考になりそうな気がしました。
Posted by ブクログ
無知な私には平和そうに見える植物の世界…その生存競争について記された著。
次郎でも読みやすい文章にして、その内容は大変興味深く、とてもよく出来た書籍だと思います。
植物が利己的に生存競争した一つの結果が「共生」というのも興味深い点です。
植物のあり方を通じて、人間というものが以下にあるべきなのか?ということを考えさせられます。
また後書きが秀逸
Posted by ブクログ
この本には、恐れ入りました。
素晴らしい。
3か所ほど、ワープロ変換ミスがあります。
驚異→脅威 トカ。
増刷時に変更、お願いします。
(2015年10月11日)
Posted by ブクログ
植物は大人しい存在ではない。その生存戦略には驚かされる。
たたかう相手として、植物相手だけでなく、その環境、病原菌、昆虫、動物、人間など様々なものに戦いを挑んでいるのだ。植物の専門家だけあって、その記述は詳細にわたり、植物のしたたかさに興味は尽きない。
意思を持っているわけではないだろうが、戦いに勝ち抜いたものが残っていくことで、植物はその様相を変えていく。人間にとっては、食用であり薬であり、そして毒でもある。そんな植物の多面的な様は、子孫を残していくための結果にすぎないのである。
植物に興味のある人には、おすすめの一冊。
Posted by ブクログ
静かに平和に生きていると思っていた植物も、色んな敵とたたかって生き残っているということが分かった。
植物だけでなくほかの生物の特徴なども学べて面白かった。
みんな生き残っていくことに必死で自分中心に生きているのに、結果助け合いや共生出来ているのはすごいと思った。
Posted by ブクログ
植物がどう戦っているのかよくわかって面白い。
雑草は草むしりされる事で、土の中にある雑草が光を浴びて、雑草が生えてくるという無限ループの仕組みに納得。
草むしり、どーするかな…
Posted by ブクログ
植物自身、環境、病原菌、昆虫、動物、人間。その闘う相手を変えながら、植物は常に生き残る道を作ってきた。留保はあるが、ただし、人間を除いて。「与えよ、さらば与えられん」という一句になぞられられるのは、興味深い。
CSR戦略、日本人の雑草愛、サボテンの話しは稲垣氏の他の本にも出てきたネタだった。しかし、それ以外の圧倒的な量のネタは初見である。
・酸素が引き起こした進化。植物による酸素の発生→オゾン層の作成→紫外線の遮断→有害である酸素呼吸する生物の発生
・最強の昆虫はアリ。だから植物はアリを利用しようと進化してきた。
・恐竜絶滅の一つの原因は裸子植物から被子植物の進化。エサとなる裸子植物が減少したため。
・その被子植物を食べた恐竜が「アルカロイド中毒」を起こした可能性もある。
・タイヌエビ(稲に似ている)は擬態植物
・ヨーロッパでは、新石器時代の遺跡から雑草の種子が見つかっている。
Posted by ブクログ
以下よんで気になったところのメモ・
- 植物は光を得る競争をしている。競争していく中で、他の植物より早く高い位置に葉を広げようとしている
- アサガオは、茎に頼らずつるを伸ばし他の植物を頼りにしながら伸びるので早く伸びることができるようになった
- 「他人に頼れば、苦労せずに早く大きくなれる」 このつる植物の考え方を、さらに進めたのが、寄生植物。
- 寄生植物は他の植物から栄養分を奪うことで生きている
- 植物の成功戦略はC・S・Rという3つの戦略がある
- C戦略は、コンペティティブ(競争型)
- S戦略は、ストレス・トレランス(ストレス耐性型)
- 水や光が不足している環境での耐性があるなど
- R戦略は、ルデラル型
- 予測不能な激しい環境に臨機応変に対応するタイプ(雑草など)
Posted by ブクログ
筆者は雑草生態学を専攻する農学博士で、「仁義なき生存戦略」という副題のとおり、我々の身近にある植物たちの生き延びるための壮絶な戦いの系譜がまとめられている。戦いは第7ラウンドまであり、第1ラウンドから順に、植物VS植物、植物VS環境、植物VS病原菌、植物VS昆虫、植物VS動物、植物VS人間という構成になっている。自ら動くことのできない植物たちが編み出した驚異的な防衛戦略の数々に感心させられる。かなりシニカルなタッチの後書きは、筆者の地球環境についての思いが色濃く込められているので、これは必読。
Posted by ブクログ
強い植物が侵入してこないような条件の悪い場所こそが雑草の棲み処。除草されたり踏まれたりする逆境こそが雑草の生存のために必要な場となる。雑草は毟られても地面の下には無数の種を準備している。一般に植物の種子は土の中にあるので、光があると芽を出さない。ところが、雑草の種子は逆で光が当たると芽を出すようになっている。即ち除草により種子に光が当たるということは、人間が草を毟って周囲に植物がなくなったことを示す合図。雑草の種子はこれをチャンスと捉え我先に芽を出し光を独占するのである。雑草にとって逆境は耐えることでも、克服すべきものでもない。寧ろ順境。逆境を順境として活かしきっている。光を奪い合い水を奪い合いながら、植物同士、あるいは、環境や病原菌、昆虫、動物たちと戦い続けてきた植物。静かで熾烈な戦いに自然界の冷徹な弱肉強食、適者生存の理を見る。