【感想・ネタバレ】遺伝子はなぜ不公平なのか?のレビュー

あらすじ

遺伝子は、私たちが生きるための武器だ――。
生物の進化の歴史から学ぶ
ダメな自分の存在理由

なんの結果も出せないとき、
自分の努力不足や能力のなさを呪ってはいけない。
それはすべて、遺伝子のせいだ。

・平凡な自分にどんな価値があるのか?
・秘めた可能性はどうやったら見つかるのか?
・遺伝子の本当の目的とは何か?

懸命に生きるあなたへ贈る、
植物学者からの渾身の努力論。


【目次】
プロローグ―すべては遺伝子のせいだ
世の中は何と不公平
努力をすればいつか報われる?
すべては遺伝子のせいだ
努力で遺伝子に逆らった結果
「ビリがなければ一位はない」
どうして足の遅い遺伝子があるのか?
進化の過程で残された個性の意味

第1章 世界がもし“勝ち組”だけだったら―個性とは何だろう?
エリートばかりが残ったらどうなる?
もし世界が全員「僕」だったら
一卵性双生児に個性が生まれるとき
九八パーセントのガラクタ遺伝子の意味
生物がさまざまな答えを用意するとき
明るい人が正解か、暗い人が正解か

第2章 私たちはなぜ人と比べたがるのか?
頭がいいって何だろう?
「エラい人はいない! みんなバカ!」
頭の良さは勉強の出来不出来で決まる?
比べて評価する私たち
脳は「多様性」に耐えられない
やっかいな植物の分類
人間は世界一比べることが好きな生き物
多様性と管理社会は相性が悪い
“おいしいお米”は、おいしくなかった?
意味のわからないルールの正体
人間の悩みのすべての根源
のろまは長所である
生物は意味のない個性を持たない

第3章 人生は自分の武器を探す旅である
「あきらめる」は「明らかにすること」
自分のパーツは箱を開けてみなければわからない
才能は自分の手柄じゃない
持ち合わせた遺伝子を愛するということ
努力をしなければならない本当の理由

第4章 なぜ生命は死ぬのか?
遺伝子の壮大な挑戦
ダーウィンが解けなかった謎
なぜアリは自らの遺伝子を残そうとしないのか?
働きアリが女王アリを利用している
単細胞生物の意外な弱点
オスはなぜ子どもを産まないのか
命にはなぜ限りがあるのか

第5章 遺伝子四〇億年の旅
役に立たない私にも意味はある
伸びる爪のすごい仕組み
DNA・遺伝子・染色体・ゲノム
たんぱく質の驚きの役割
私たちはかつて不老不死だった
身体は偉大なる遺伝子の歴史
生きる意味は細胞たちが教えてくれる

第6章 人生の使命
親は選べないけれど
四〇億年のバトンを持つ私たち
七〇兆分の一の奇跡
あなたは過酷なサバイバルレースを生き抜いた
この世はあまりに厳しすぎるけれど
「死ぬほど苦しい」と思ったときは

第7章 欠点には意味がある
「悪いこと」をしたくなるのはどうして?
「本能」と「知能」という戦略
失敗経験は実はすごい
「群れ」が生き残るために必要なこと
ホモ・サピエンスは弱いから生き残った
助け合うと幸せな気持ちになるのはどうして?
生きづらさの問題は、たいていは社会にある
突然変異は進化のチャレンジ
なぜ人は生殖機能を失っても生きるのか?
私たちは皆、弱い生き物
きっと、足が遅いことにも意味がある

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Posted by ブクログ

■命にはなぜ限りがあるのか
 「死」は40億年に及ぶ生命の歴史の中で最も偉大な発明の一つ。一つの命がコピーをして増えていくだけであれば、環境の変化に対応することができない。変化し続けるために生命は「死」を作り出した。
 新しい命を宿し、子孫を残せば、命のバトンを渡して古い命は消えてゆく。この「死」の発明によって生命は世代を超えて命のリレーをつなぎながら永遠であり続けることが可能になった。永遠であり続けるために生命は「限りある命」を作り出した。
■もし祖父と祖母とが別の誰かと見合いをして結婚していたら、私はこの世に存在しない。遡ってみて、曽祖父と曾祖母が出会っていなかったとしても私は存在しない。
 両親が2人、祖父母は4人、曾祖父母が8人…と単純計算していくと10代遡るとその世代だけで1024人の祖先がいることになる。父母から10代前の直系の祖先数をすべて足すと2046人になる。20代遡ると20代前の祖先の数は100万人を超える。父から20代前の祖先を足せば200万人以上だ。この200万人がそれぞれ会うべきパートナーと出会わなければ私は生まれることができない。
■遺伝子は束ねられていて染色体という遺伝子の束が作られている。人間には46本の染色体がある。染色体は2本で一組の対になっているので人間には23対の染色体があることになる。子供は親から日本ある染色体のうちのどちらかをランダムに引き継ぐことになる。そして父親から1本、母親から1本の染色体を引き継いで、23対の染色体が作られていく。
 このたった23対の染色体の組み合わせの違いだけで、どれだけの多様性を作り出せるか計算してみる。父親から受け継ぐ染色体の組み合わせは何通りか。
 1番目の染色体で2つの染色体のどちらを選ぶかの選択肢は2通り。
 2番目の染色体でどちらを選ぶかも2通り。
 つまり、1番目の染色体と2番目の染色体の組み合わせは2×2の4通り。
 同じように3番目の染色体の選び方も2通りだから組み合わせは2×2×2の8通りとなる。
 23本の染色体では、この2×2×2×…が23回繰り返されて計算するとだいたい838万通りになる。これだけではない。母親がもつ2本で一対の染色体からどちらを選んだかというだけの組み合わせは父親と同じように838万通りになる。そこで838万×838万を計算すると驚くことに70兆を超える組み合わせが作られる。

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2025年06月01日

Posted by ブクログ

新書のイメージを覆すような親しみやすい文章で、あっという間に読み終えた。
最後の締めくくりのエピソードに泣いた。
新書で泣いたの初めて。

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2025年01月05日

Posted by ブクログ

生物学的観点から生きる意味について考えさせてくれる良書でした。
ただ、他の方がコメントされているように深く考察されたい方には物足りないかもしれません。

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2025年01月04日

Posted by ブクログ

自分がコンプレックスに感じている個性があるかもしれない。でもそれは生物学的な観点から言えば必ず意味があるものである。ただ現代の評価軸で評価されればコンプレックスに感じるというだけで、必ず意味はあるのだから生まれる時代が悪かったというただそれだけである。
この本は自分の個性について改めて考える機会を与えてくれる。

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2024年11月27日

Posted by ブクログ

人が生き残ってきたのは弱いから。弱いからこそ利他的に生きることで生き残ってきた。
得意、不得意があるのは集団でみれば、その個性が必要だから。これは職場という組織でも類推される。

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2025年03月13日

Posted by ブクログ

光明を得たような読書であった。

進化が弱肉強食に完全に決着がつくなら、最も強い生き物のみが残る。だが、食料としての弱者が居なくなれば、強者も生きていけない。こういう論理で考えたとしても、強者に都合の良い生態系は形成されそうだが、実際にはこうした「食物連鎖」に関与しない種も多く存在する。熊やライオンがいくら強くても、彼らは昆虫を滅ぼしたりはしないように。

弱肉強食における「強さ」とは、捕食・被食の関係の上で意味をなすものだ。その上で、進化は天下一を極めるような「強さ」を求める淘汰をしないし、できない。生き物たちは、共生しなければ生きていけないのだ。

人間は有性生殖により多様性を重んじる社会的動物であり、頭脳や肉体における優劣の指標を持っているが、しかし、必ずしも人間の価値観においても優秀なものが生き残るようにはできていない。ミスを起こす個体がランダムに生き残る事はよくある。

で、本書を読んでの光明というか示唆を得たような気がしたのは、この多様性による生存確率の向上という戦略は実は人間だけで考えられているのではなく、この地球の複数の種全体で設計されているのかも知れない、という事だ。何かの種が滅びても、他の種が生き延びるというように。そのために直線的な進化や淘汰はされずに、複数の種を残したまま、種の範囲でマイナーチェンジをしていったのだ。

ー ゾウリムシは単細胞生物なので、ふだんは細胞分裂をして増えていく。しかし、それでは、自分のコピーしか作れない。そこで、ゾウリムシは、二つの個体が出会うと、お互いに体を密着させて、遺伝子を交換する。こうして、遺伝子を変化させるのである。自分の遺伝子が突然変異を起こすだけであれば、変化の幅は小さい。しかし、まったく違う遺伝子を持っている個体と遺伝子を交換すれば、劇的に変化することができる。ゾウリムシは二つの個体が遺伝子を交換して、まったく新しいゾウリムシとなる。これは単なる細胞分裂とは違う。古いゾウリムシがなくなり、新しいゾウリムシが誕生したように見える。つまり、古いゾウリムシに死が訪れたようにも見えるのだ。

更に、ゾウリムシが食い尽くされる事はなくジェノサイドには至らない。変化の大きさに関わらず、彼らすら生き残る自然の意味とは。

ー 私たちは学ばなければならない。知能を持つ私たちは経験を積むことで、行動を変えることができる。他の動物にとっては必要なくても、人間として生きていく以上、それを知らなければ生きていくことができない。だから私たちは、勉強をして、言葉を覚え、計算を覚えていく必要があるのだ。

だが学ばなくても生き延びている種が大半だとしたら、私たちは直線的な進化に対する考え方を改めなければならない。この世界は、種全体で何かしらの生命を未来に繋げていく事に意味を見い出し、そのために複数種類により保険をかけている。

直線的・序列的な進化観から抜け出した、ネットワーク的・保険的な進化観が見えてきた。これこそ「レジリエンス・多様性の戦略」だが、長い年月を経て自然と構築されたこのバランスに、そこまでして生命を残そうとする何かの意思を感じてしまうが、どうだろうか。

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2025年09月20日

Posted by ブクログ

2025.8.19
文章は面白い。けど、期待していたようなことは書いてなかった。(生存のために多様性が必要、という一般論だけだった)

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2025年08月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私も足が遅いので(リレー大嫌いでした)共感しました。

よくよく考えると人間はそんなに強くもない動物。
昨今だと熊や山火事の対応に苦慮している。
協力して生きていかないといけない。

データがほぼ載っていないしエッセイみたいな
内容なので対象年齢は中学生~かと。
文字数もかなり少ないです。

ちょっとnot for meだったかな(汗
もちろん夜の空に瞬く星に感動できるのは
生まれてきた特権ではあるけれど。

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2025年01月13日

Posted by ブクログ

遺伝子の秘密を解き明かすため、筆者なりの知見がてんこ盛りでした。
特に自分に劣等感を抱いている方は、自分が苦手だとか劣っていると思っている部分について何かしらの知見が得られるのではないでしょうか。

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2025年01月11日

Posted by ブクログ

植物学者による遺伝子論。たいへんわかりやすく書かれており、内容もなるほどと思えるもので、楽しく読むことができた。しかし、専門家ではないので、単なるエッセイに終始し、ブログを読んでいるような感覚を覚えた。

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2024年12月22日

Posted by ブクログ

遺伝子が全てを決めていると言う話で興味深かった。作者のお父さんはすごくスポーツ万能で、お母さんは運動音痴結果、その子供である。作者は運動音痴逆上がりを努力しても、人並みにしかできない子もいれば、23回の練習でくるくる回る子もいるセンス遺伝子それを踏まえた上でどこまで努力するかを考えていきたい。

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2024年12月11日

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