汐見夏衛のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
▼汐見さんは初めて読みました。高校生モノ。古都琴子さんという転校生が、
「孤立を恐れない、美人、大まかなんでもできる、ズケズケとものを言う、他人からどう思われるだろうかを恐れない気にしない」
という、日常スーパーマン的なキャラクターで、その琴子さんが作る波紋を、振り回される同級生などの視点から描きます。5~6章からできていて、1章が、同級生なりひとりの視点で描かれます。
▼・・・・と書くと、とっても「成瀬は天下を取りに行く」シリーズによく似ています。実際、成瀬第1作は2023年なので、絶対にその影響はあったんだろうなと思いました。
▼ただ、成瀬シリーズは、高校生の人間関係とか、高校生の「生きづらさ」みたいなものにそんなに拘泥せずに、もっとファンタジックに「膳所」という地域とか、「漫才」という非日常とか、に縦横無尽に楽しませてくれたんですが、「古都琴子」はひとすらに高校生的な「生きづらさ」が主題でです。
同調圧力
クラス内の政治力学
身体的劣等感
不登校
みたいな、ダークな(誰でも日常でかすっていることだから、ダークなんでしょうが)局面から目を離さずにやってみた、という感じでしょうか。
▼面白く読めたのは、主人公?の古都琴子さんが、なんでも解決してしまう・・・・という訳ではない、というあたりです。古都琴子さんが、何かの波紋を投げかける。それがきっかけで色んな小さな物事が起きる。結果として各位が、これまでよりもちょっとだけ勇気をもって、ちょっとだけ自主的に、ちょっとだけ周囲を気にせずに、ちょっとだけ大胆に、行動するようになる・・・・・という作りになっています。
そのあたりは作者の苦慮苦心が感じられる味わい深さ。かつ全体に説話の滑らかさはなかなかのもので、力のある作者さんなんだろうなと思いました。
小6の娘と読んだ一冊。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ表紙の雰囲気に惹かれて手に取ったが、転校生・古都琴子のインタビューを通してクラスメイトの心の葛藤を描く構成に一気に引き込まれた。周りの目を気にして「キャラ」を守り、優しく振る舞うことで本当の自分を見失いそうになる登場人物たちの姿には、自分自身の記憶や日々の社会人生活と重なる部分が多く、深く共感した。
特に印象的だったのは、最低な自分に落ち込む人物へ琴子が放った「じゃあ、今から最高になればいい」という一言だ。どん底から「ここからは上しかない!」と前を向く切り替えの思考は非常に新鮮で、私の心にも強く残った。
本を通して様々な価値観や非日常に触れられる今だからこそ、周りの視線や「あるべき姿」に縛られず、自分らしい生き方ややりたいことを見つけていきたいと思わせてくれる一冊だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ26年夏、映画化するということがきっかけで。
前作の映画+書籍も読んで、本作の映画を見てから手に取りました。映画はまあ感動場面はあるものの正直興ざめ(壁ドン、生徒の前で嘆願)もあり、改めて本作には口直しの期待も込めました。結論、読んでよかった。
ひたすら青く甘酸っぱい中学生男子の恋愛模様がしばらく続くので冒頭はラブコメラノベ感は否めないですが、どうしてこんなに百合の一言一句は重いんでしょう。まるで戦時中の惨状を見てきたように感じる表現を、リアルに文言で表現されているのは強く感情移入させられました。
「将来の夢があるのって、すごく幸せなことだよね」
「恩返しできてないことって、ある?」
恩送りのくだりは本当にいい話ですね。あげた恩を返せなんて思わないし(現実たまにはいるけど)、返せなかった時の後悔や辛さ、その苦渋が人を優しくするんでしょうね。あした死ぬかもよ?を読んだ時も同じ感覚を得ました。恋愛模様に死生観を絡ませてる深い内容です。
後半の、彰を受け入れてからの涼は本当にかっこいい。脱中2で厨二。
今回は先に映画を見てからだったので福原遥さんと細田佳央太さんのイメージが脳内再生されてるのも受け入れやすかったところかもしれません。キャストはよかったのですが、資料館で彰の遺影と涼が出会うシーンや、夢の中で百合の花に囲まれて空を見上げる百合のシーンなどは映像だけでは正直伝わりきらなかった部分でした。
書籍でしかなかった居酒屋で百合の真意を聞くところや、涼のサッカーと進学について親との確執のくだりは深みを感じました。一方映画のみでいうなら、老いた千代さんとの再会はよかったですよね、でも特別授業の際、教室に千代さんつれていけばよかったのになとは思います。
恋愛模様から死生観、ひいては大学に進んだ百合の世界の平和を願う、といった壮大なストーリーでした。これからも映画⇔書籍のザッピングは続けていきたいですし汐見夏衛さんの作品はまた触れてみたいです。