【感想・ネタバレ】夜が明けたら、いちばんに君に会いにいくのレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年05月03日

今回は読みながら何度も涙を流した。

❥❥❥
小学生のある出来事をきっかけに
学校でも家でも常に気を遣っている茜。

思っていることは口に出しているのに
なぜか学校で好かれている青磁。

犬猿の仲みたいなふたりだけど
文化祭をきっかけに
距離が少しずつ縮まっていく。

❥❥❥❥
青磁の言葉によって
...続きを読む茜は思っていることを言えるようになるし
青磁のことが気になり始めるし
息ができる感じがしてくる。

信頼できる人が1人いるだけで
凄く安心できる気持ちよく分かるなぁ。

青磁は青磁で
言えない過去がありそうとは思うけど
それが何なのか想像できないから
先の展開が気になって仕方なかった。

❥❥❥
茜と青磁は高校が初対面じゃなくて
実は小学生の頃に出会っていた。

青磁はその頃の茜に出会っていたから
その後の辛い時期を乗り越えて
今を精一杯生きている。

でも茜は青磁のことを忘れていて
その事を知った青磁の気持ちは
どんなだっただろう。

❥❥❥❥
青磁が世界で2番目に美しいと
思ったのが“空”だったから
いちばんは何だろうと考えながら読んだ。

青磁の絵がコンクールで大賞を取って
その時に描いたのが
青磁が世界でいちばん美しいと思ったもの。

それは••••••

“小学校の頃の茜の涙を流しならの笑顔”

このシーンを読んだ時がいちばん泣いたかも。

❥❥❥
青磁が描いた実際の絵は出てこないんだけど
読めば読むほどその風景が想像できて
なんて美しいんだろうって感動した

それに
気づいたら空を見上げてることが増えた。

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購入済み

匿名 2024年02月28日

すごく素敵なお話でした。優等生でいようとする気持ちやみんなに嫌われなくないという気持ちもすごくよく分かるし、苦しいけど身動きできない気持ちもすごく共感できました。
そんな中で出会えた2人の関係が素敵で、きれいな情景がたくさん出てきて私もふと空を見上げたくなりました。

#泣ける #共感する

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購入済み

物好き?空に何が見えるか?

2023年12月15日

嫌いなはずなのに好きになるなんてことがあるのだろうか。
嫌うのも気になるからって場合もあるのか?
物好き?
それから、倒れて横になって空を見て考えることって、
『戦争と平和』にもあった。
人生、自分のやりたいことって?
考えさせられる。
ポローニアスさん、あの雲の形…
フェルン!あの雲って…
(『ス...続きを読むクラップアンドビルト』にも
ある雲の形が…)

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購入済み

匿名 2023年10月14日

映画を観て、本でも読んでみたくなりました。
映画よりも更に心情が伝わってきて、読み進めるのが楽しかったし、特に後半は一気に読みたくなる程、引き込まれました。
良い作品に出会えてました!

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購入済み

匿名 2023年10月07日

2人の繋がりはとても強くてお互いを思う気持ちがなんとも言えないぐらい素敵です。
2人のすごーく昔の思い出を語り合うのがとてもよかった。

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Posted by ブクログ 2023年10月01日

控えめに言って、最高だった。
推しの子が映画に出るから手に取ったけど、すごく大切な本になった。

マスクに頼ってしまうところは自分にも少しあって、茜ちゃんに共感できるところがたくさんあった。
もっと自分の気持ちに素直になっていいと思えて、読む前よりも楽な気持ちで生活できるようになった気がする。

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Posted by ブクログ 2023年08月22日

生きづらさを感じている中高生にお勧めしたい本。
恋愛要素もあるが、「正直に生きる勇気」を与えてもらえる気がする。これはずっと手元に置いてきたい。
映画も近々公開されるようだから、期待

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Posted by ブクログ 2023年08月10日

展開がスムーズでとても読みやすかったです。印象が悪かった青磁のことも、なかなか本音を吐き出さない茜のことも最後には大好きになっていました。なにより世界観が好きでした。Another Storiesも読もうと思います。

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Posted by ブクログ 2023年07月22日

周りの人に嫌われないように愛想をふりまき、その反動でマスク依存症となっていた茜、言いたい事をすぐに言って自由な青磁。そんな二人が一枚の絵をきっかけに距離が縮まり、茜は本当の笑顔を取り戻していく青春ストーリー。夕日や朝日を一緒に綺麗と思ってくれる人と見れたら素敵だなと思いました。

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Posted by ブクログ 2023年06月28日

マスク依存症の話ってまとめることもできる。
でも私にとって心を隠していないと普通でいられないと異常さが心に刺さった。

マスクを着けないと不安で仕方ないことはないけれど、自分の思ってることを口に出したり感情表現することが無意識にできなくなってきたからすごく響いた。
誰かにとっての自分を演じ続けている...続きを読むからいつも嘘をついているみたいで人といることがしんどくなった。
だからこの本を読んでいて自分を見ているみたいだった。
というのが前半を読んだ私の感想です。

最後まで読み切ってみると、心がすっごい温かくなった。
お兄ちゃんのファインプレー良かったなあ…
やっぱり改めて素直でいるっていいなって思った。
自分を偽って、いいところだけを見せようと頑張りすぎて得られる共感とか支持なら必要ない。
いろんな人と関わっていくうちに、うまくいくようにって自分でも無意識に予防線張ってみんなにいい顔して愛想振りまいてってしてる。
そんな自分を少しずつでも変えたいな
久しぶりに人を好きになるのっていいなって思った!
言葉とか表現とかがすごく綺麗でめちゃくちゃ良かった

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Posted by ブクログ 2023年06月23日

とても読みやすかったし没入することができた

お互い悩む事は違えど見る角度を変えると解決できる悩みがあると言う事、悩み事を抱えながらも上手く付き合う方法がある事、誰かの為に行動する事が結果自分のためになっていた事

茜と青磁の行動が自分のこれからの生活を変えていこうと思える作品

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Posted by ブクログ 2023年05月28日

あっという間に読み終えてしまった。生徒にお薦めされて読んだ本だが、3時間で面白くて一気読み。きゅんきゅんした。夜明けに会いたいと思う人が、自分にとって1番大切な人というフレーズに妙に納得してしまった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年05月02日

JO1のメンバー(推し)が実写化するから読んだけど…
学生だからか、分からないけど、すごく現実的な作品。少し長いけど、どのシーンもマスクが取れない主人公にとっては大切な言葉ばかり。そんなふたりが結ばれてるなんて読むまでは分からなかった。とりま、さいこー。

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Posted by ブクログ 2023年04月18日

映画化との事で手に取ってみた。
思いのほか感情移入してしまい、涙がポロポロとでてきた。
ココ最近でいちばん早く読み終えるほど面白い作品だった。汐見さんの他の作品も読んでみたいし、映画も見に行こうと思う。

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Posted by ブクログ 2023年03月28日

よがあけたらと、きようとのおてらをあさぼらけとどうじに、ぎかいおくそくではないんだから、ないんちいなんちゆうものわなと、こうこうそつぎそく、ぽるの、れじすたんにて、からかわれました!そのとき、にんげんには、せとぎわねく、はんだんが、あんがいやんくみくさくむずかしく、なんぎともなわない、あらまほしたね...続きを読む、ぐりむどうわ、かまいなんちやんちやんこ、おい、いなかでかい、こまわり、まねきのない、なんやとおやさらいなんちかなんかいわれてき、せっちやんひかたわし、かわのつきそもんてこないんなんて、ぽるのもうそうひはんやら

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年02月14日

情景描写が非常に美しかったです。
学生時代に人間関係や自己意識で思い悩んだ日々を思い出しました。主人公の茜の気持ちはとてもよく理解ができて、一緒に苦しくなったり胸が高まったりしたりしてしまいました。
茜を思わぬ形で救った青磁は、言葉足らずで横柄ではあるけれど、芯があたたかくて、今の私にも響く言葉があ...続きを読むりました。
ただ、そんな青磁にも思い悩むことが本当はあって。でもそれを茜にぶつけずに、むしろ茜を助け、自分のことはひとり戦ってきた姿に、強いなあ、という尊敬と、大きなものを抱えてよく耐えてきたね、という守ってあげたい気持ちと、どちらも抱きました。
茜にどこか自分を重ねてしまったからか、架空の人物なのに青磁に心を動かされました。

大切な人が苦しんでいる時、私もいつか救ってあげたいし、世界の美しいものを沢山見つけたいと強く思えた本でした。
そして、『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』この言葉が素敵で気に入ってしまいました。

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Posted by ブクログ 2022年10月08日

この本を読み終わった後に「夜が明けたら一番に君に会いに行く」の意味がわかってすごく泣けました、優等生の茜と自分の思ったことを直ぐに口に出す青磁の関係性が最初と最後で変わっていてすごく好きです!

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購入済み

知る

2022年05月09日

文庫本として初めて手に取って全て読むことができました。話の展開のリズムがよくて読んでいても全く飽きませんでした。
自分の知らない景色をこの本で知って、新たな視点を身につけられたことにとても喜びを感じます。また、
自分を表現することの大切さを知りました。
作者様、その他関係者様、素晴らしい作品をありが...続きを読むとうございました。

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Posted by ブクログ 2020年08月23日

この作家の小説を読むのは、これで2作目だが、情景の表現、心理描写に長けていると思う。
つい、引き込まれて、感情移入してしまう。
素晴らしい作家だと思う。
しばらく目が離せない。 この作家の他の作品も読んでみたくなった。

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Posted by ブクログ 2024年03月18日

この本が出された時は、自分も高校生で、マスク依存症などの問題視されていた学生生活で、なおかつ思春期もあり、学校内での自分のキャラクター作りという登場人物の悩みがとても共感できるものであった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年03月02日

作者あとがきより
思春期のころ進路や人間関係で悩みを抱えていた時、いろいろな小説を読んで、そこに登場する人物の生き方や、彼らのセリフに救われたことが何度もありました。

以下本文より
きれいな景色はこんなにも近くに、いつもここにあったのだ。
私がそれを見ていなかっただけで、見ようとしていなかっただけ...続きを読むで。
いつだって、美しい世界はそこにあった。

正しいかどうかよりも、好かれるかどうかのほうが、この社会で生きていく上では大事なのだ。

人から嫌われないように、言いたいことも言わず我慢して、細心の注意を払って生きていたのに、青磁は嫌われることなんてこれっぽっちも怖れずに、言いたい放題やりたい放題で生きていて、それなのに誰からも嫌われていなかった。むしろ誰からも好かれているように見えた。そんなところがうらやましくて、そして妬ましかったのだ。

『夜が明けたら、いちばんに君に会いに行く』
それが、この絵のタイトルだった。夜明けに会いたいと思った人が、一緒に朝焼けを見たいと思った人が、あなたにとって一番大切な人。

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Posted by ブクログ 2023年09月09日

映画をきっかけに再読!
こんなに綺麗な世界観だったことを忘れてしまっていたのが悔しくなるほど、とても優しいふたりに何度も心動かされました。
欲を言えばこのまま、この世界のまま映画化することは難しかったのかなと‪ ; ;

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Posted by ブクログ 2023年01月12日

茜と青磁の葛藤それぞれがとても面白かった。
すれ違いを経て、最後の結末がとても良かった。
人間味のあるストーリーでした。

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Posted by ブクログ 2022年10月03日

「夜が明けたら、いちばんに君に会いに行く」というタイトルにラスト腑に落ちる。
八方美人な主人公には思わず共感してしまうことが多かった。透明感に溢れ、まっすぐで、でもどこか素直になれない2人の関係には言葉で表すことができないほど、引き込まれるものがあった。

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Posted by ブクログ 2022年08月17日

この本は人気があると聞いて読んでみることにした。最初のうちは高校生の恋愛物、、、
ってことでついていけないかもと思っていたのだが
読めば読むほどに不思議と引き込まれていった。
茜ちゃんの気持ちわかるなぁ
青磁の生き方や考え方もかっこいいなぁ
想い合うほどにすれ違ってしまう二人に
涙しました。
高校生...続きを読むだからこその純粋で真っ直ぐな気持ちと
少しひねくれてしまう心のアンバランスさ。
全体を通して透明感と柔らかな温もりを感じるストーリーで、読んでいて心が浄化された気がします
シリーズで次の本も出てるみたいなので
読んでみたい!



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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年02月21日

青磁は茜のことが嫌いと言いながらも茜に関わりにいっていたので、そこに違和感を感じていましたが、最後にその意味が分かりました。最後に知らされた事実を知って、もう一度読んだら違った見方ができると思いました。真っ直ぐな青磁と関わって変わっていく茜を見てみて、大事なことに気付かされました。

"言...続きを読むいたいことだけ言ってれば良いんだよ。したいことだけしてれば良いんだよ。周りの顔色ばっか窺って自分を押し殺したりするな“

"きれいな景色はこんなにも近くに、いつもここにあったのだ。私がそれを見ていなかっただけで。見ようとしていなかっただけで。”

"夜が明けた時に会いたいと思った人が、その人にとって一番大切な人なんだって”

心に刺さる文章が沢山ありました。

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Posted by ブクログ 2021年12月23日

良かった…
キツイ印象から始まったけど、それがいいかも。
途中のいきなりの拒絶は解るかなぁ
その理由はなんとなく想像出来た。
一番の見どころはなんと言っても[外す]シーンですネ! 勝手に想像してニンマリしてしまった。
追伸
やっぱり本は一気読みですねー
入り方が違う

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Posted by ブクログ 2021年12月15日

『私にとっては、マスクを外されることは、無理やり服を脱がされるのと同じようなものだ』。

2020年に入って世界を襲った新型コロナウイルス、そして陥ったコロナ禍で日本人が当たり前のものと思っていた『マスク』もすっかり世界の人々の間に広がりました。良くも悪くも『マスク』というものが世界の人々の間でも一...続きを読む般化した今日。そんなコロナ禍で誰もが『マスク』で顔を覆っている姿がすっかり日常と化した今。人と人とのコミュニケーションも『マスク』をしたままの会話とならざるを得ません。しかし、私たちはコミュニケーションを取る際に、単に会話の内容だけをもって話を進めることはないと思います。こちらが語る一言ひとことを相手がどんな風に捉えるかを微妙な表情の変化をもって理解していると思います。それは、逆から見れば相手が語る一言ひとことにどんな表情をとるべきか、そんな風に緊張感をもってその場に臨む必要があるとも言えます。なんとも私たちの日常というのは気が休まらないものです。

そんな場で一枚の『マスク』があれば状況は一変します。『マスク』に覆われた素顔を相手は見ることができません。そんな状況は『顔が引きつっていないか心配だったけれど、笑顔が上手くいかないときはたいてい、口もとや頬がおかしくなるわけで、マスクをつけていれば大丈夫だ』という安心感を生んでもいきます。人が生きる上で安心感を得るということはとても大切なことです。不安に苛まれながら生きるよりも当然に安心感の中に生きる方が幸せだとも言えます。しかし、そんな風に素顔を隠したまま生きることが本当に良いことなのでしょうか?本当に幸せなことなのでしょうか?そして、本当にコミュニケーションが取れていると言えるのでしょうか?

ここにそんな『マスク』をずっと着けたままに生きる一人の女子高生が主人公となる物語があります。『私にとっては、マスクを外されることは、無理やり服を脱がされるのと同じようなものだ』と語るその女子高生。この作品は、そんな女子高生・茜が『マスクに依存しなければ生きていけない、弱くて醜い自分』に悩むその先に、『私は本当はあんなふうに笑えるのだ』と、気づく瞬間を見る物語です。

『高校二年になって三回目の席替え』で『新しい席に移動』し、『まさかこいつが隣になるなんて』と『隣の席に腰を下ろす男子』のことを見るのは主人公の丹羽茜(にわ あかね)。『げんなりしながら右手でマスクをつまんで引き上げ』る茜は、隣の席に座る深川青磁(ふかがわ せいじ)のことが『世界でいちばん大嫌いな人間だ』と感じています。一方で、『わあ、茜の近くだ。嬉しいな』と反対側から声をかけるのは『仲良しの沙耶香』。そんな沙耶香に『あ、茜のお隣、青磁なんだ。うるさくなりそうだねー』と言われ『ほんと』と笑う茜。そんな時、『あ?なに、俺の話してる?』と左側からの声に『マスクの中でひっそりと深呼吸をして』、『笑顔を貼りつけたまま』振り返った茜は『青磁が隣だと、うるさくなりそうだね、って言ってたの』と言葉を絞り出します。そんな茜の言葉に『俺だって茜の横なんか嫌だっつうの』と言い返す青磁の大きな言葉に教室の『空気が凍』ります。そして、『うぜえ』と吐き捨てて教室を出て行った青磁。そんな青磁とは『今年から同じクラスになり、四月に初めて言葉を交わした』という茜。一方で青磁は『同学年の全員』、『他学年のほとんどの生徒にも、顔と名前を知られている』という存在でした。『ほとんど白といってもいい銀髪』で、『感情と行動が直結している』その性格、そして『いくつもの絵画コンクールで受賞』するほど絵が上手いという青磁。そんな風に有名な青磁のことを『あんなに嫌味なやつなのに。みんな、どうかしている』と感じる茜。一方の茜は、自分のことを『私は、”優等生”』と感じています。『真面目』で『勉強は抜かりなく』、『みんなと交流』も欠かさない『学級委員長として『我ながら絵に描いたような優等生だ』と改めて思う茜。そんな中、『文化祭の出し物』を準備する季節となりました。『うちのクラスは劇をやることになっている』ため、学級委員長の茜は、配役を決めていきます。『王子役は青磁がいいんじゃね?』と盛り上がる声にも『頬杖をついて』空を見ている青磁に『聞こえてたでしょ。王子様役は青磁がいいって…やってくれる?』と訊くも『はあ?嫌だよ、なんで俺が』と返す青磁。そんな青磁に粘って頼むも『うるさい、黙れよ』と遮られます。結局、他の男子が名乗りを上げてくれて決着した配役。そして、下校時『もう少しクラスのことに協力的になってくれたら…』と言うも『はあ?なんだそれ…』と反発する青磁に戸惑う茜。そんな青磁は『絵を描く時間をとられるのは我慢できない… 邪魔されないんだったら、いくらでもやるよ』と言い残して去っていきました。そして、そんな風に険悪だった二人の間にまさかのきっかけで繋がりが生まれていく物語が描かれていきます。

『高校二年になって三回目の席替え』という何気ない学校生活のワンシーンの描写から始まるこの作品。そんな時代を遠くに過ぎ去った私でも、そんな場面でドキドキした思いというのは今も残っています。思えば高校時代というのは、思った以上に狭い世界の中で生きていく時代です。一日の大半を同じ教室で、同じ面々と、同じ空気を吸いながら同じ時間を過ごしていく学校生活。そんな狭い世界では隣席が誰かということはある意味死活問題とも言えます。この作品はそんな席替えで『世界でいちばん大嫌いな人間だ』と思う男子と隣り合わせになってしまった主人公・茜の視点で隣席の男子・青磁との関係が描かれていきます。

そんな物語で、読者が間違いなく、えっ?と感じることになるのが全編に渡って登場する『マスク』だと思います。今までに400数十冊の小説を読んできて、その文中に『マスク』という言葉を見た記憶はありません。もしかしたら、どこかにあったのかもしれませんが、あったとしてもそれはあくまで何かしらの演出の一環でのワンシーンにすぎないと思います。それがこの作品では、なんと
・『マスク』: 158回登場
と、文庫435ページの実に3ページに一回という高い割合でこの言葉が登場します。そんな『マスク』を常時着けているのが主人公の茜です。そんな茜は『私にとっては、マスクを外されることは、無理やり服を脱がされるのと同じようなものだ』と感じて常時『マスク』を装着しています。『たまたま風邪を引いてしま』い、『毎日マスクをつけて登校』する中で風邪が治っても『マスクは外さなかった。外せなかった』と『マスク』装着が常態化した茜。そんな茜はその理由を『顔を、表情を隠せるという安心感を手離せなくなっていた』と語ります。『夏になってどんなに暑くなっても、体育の授業のときも、お弁当を食べるときも』ずっと『マスク』を外さない茜。そんな風に『マスク』がずっと手放せないという状況について『マスク依存性』という言葉があるかと思います。『自分の脆い部分や触れられたくない部分を覆い隠してくれて、まるで毛布に包まれているような安心感を与えてくれ』る『マスク』、そんな『マスク』に依存する生活にかつて『思い悩んでいた』ことがあったと語る汐見夏衛さん。そんな汐見さんは、『マスク』依存の人生から『卒業したいのだけれどなかなかできない』という人に向けてメッセージをこの作品で届けたかったとおっしゃいます。『私だって、好きでマスクをつけているわけじゃない。好きでマスクを外せなくなったわけじゃない』と語り、『これはもう私の一部だから。素顔は誰にも見られたくないし、自分でも見たくない』とも語る茜。昨今、コロナ禍により、他人の素顔を見る機会が極端に減っている状況があります。人は相手とコミュニケーションを取る時、その言葉の内容だけでなく、相手の表情の些細な変化にも気を留めます。逆に言えば、相手にも自分の表情の細かい変化を見られていると思うと、そんなコミュニケーションの場面は確かにある種の緊張感と共にあると言えないこともありません。しかし、一方でそんな風に『素顔』を見せない、『素顔』を見れないという中では、お互いの関係性の深まりが薄いようにも感じます。『マスク』をすることで一種の鎧で武装している、相手の侵入を許さないかのように心を守り続けている、『マスク』にはそんな印象を受け、また与えもする様にも感じます。そんな中で『私がマスクから解放される日は来るのだろうか』と答えを見つけられない茜。今のコロナ禍による『マスク』前提の日常が、やがて『マスク』不要となった未来に、果たしてどの程度の人が『マスク』を取ることができるのか。また、『マスク』によってコミュニケーションの感覚に変化が生じた今の時代だからこそ、この作品は一つの問題提起をしてくれているように感じました。これから読まれる方には汐見さんがどのようにそんな茜の悩みを決着させるかにも期待いただきたいと思います。

そんなこの作品は視点の主である主人公の丹羽茜と深川青磁の二人の関係性がその中心に描かれていきます。茜の家族や二人のクラスメイトなど、もちろん他にも多くの人物は登場しますが、彼らは極端に脇役です。あくまで二人の関係性に絞ったストーリー展開で物語は進みます。そんな主人公の茜は『誰かと一緒にいると、私はいつも相手の顔色を読み、自分が不快な思いをさせていないかということばかり考えて、疲れてしまう』という生き方をしてきました。中盤で語られるそんな生き方になった起点の出来事以来、『ちゃんとみんなの前で”私”を演じる』ことを常に意識し、『笑顔』を無理して作り続けてきた茜。『腹が立ったからといって不機嫌な顔をしてはいけないし、誰かが間違ったことをしたからといって怒ってはいけない』と、周囲の目を常に意識しながら、緊張感の中で毎日の生活を送る茜。そんな茜に上記した『マスク』がなくてはならないものになるのはある意味必然でした。しかし、席替えによって図らずも隣に座ることになった青磁の生き方は全くの正反対です。『誰からも好かれてるやつも、世界中から嫌われてるやつも、生きてることには変わりない。嫌われてようが好かれてようが、人は生きていける。生きてるならそれでいい。だから、どうだっていいんだよ』という生き方の青磁。そんな青磁は、『思ったことはすぐに言葉にするし、行動に移す』という生き方を貫いています。茜からすると『感情と行動が直結している』、まさしく正反対の性格の主である青磁を毛嫌いするのは当然のこととも言えます。世の中生きていればいろんな考え方を持つ人がいるのは当然で、なかなかにその中の誰が正解で、ということを言い切ることは難しいと思います。しかし、この作品の主人公である茜は自分のことを『優等生』だと思い、その理想の姿を演じながら生きています。そんな人生は、それが正しいかどうか以前に生きづらい思いをするのは当然のこととも言えます。この作品では、そんな両極端な二人の生き方の丁寧な描写によって、鎧の下に隠されていた茜の感情の変化が、緩やかに、でも大胆に、そして確実に変わっていく様が描かれていました。『誰が側にいようが気にせずに、まるでひとりでいるかのように気ままに振る舞う彼の隣は、とても楽な居場所だった』と青磁の隣に居場所を見つけていく茜。『誰にもなんにも気を使わなくていい、という解放感』に包まれていく茜。物語は、そんな二人の間に恋の感情が芽生えていく様子が描かれていきます。そんな恋の物語は、あまりに清純でキュンとするような描写に満ち溢れています。そう、そこに描かれるのは高校生のひたむきで真摯な眼差しの先に見る恋愛物語、そんな言葉にピンとくる方にも是非読んでいただきたい作品だと思いました。

『常に人の顔色を窺って、その人が言葉の裏にどんな気持ちを隠しているのか、自分のことをどう思っているのか読み取ろうと必死になっている私』が全く正反対の生き方をしている青磁との出会いを経て、そんな感情に変化が生まれていくのを感じるこの作品。思えばこの国では、”空気を読む”ということが非常に重要視されています。私たちはそれを当たり前に感じています。一方で、2021年のノーベル物理学賞を受賞された真鍋淑郎さんが、自分には”周囲に同調して生きる能力がない”ので日本には戻りたくない、と語られたことが話題になりました。この国に普通に存在する”空気を読む”という感覚は必ずしも世界の標準ではないのだろうと思います。そして、そんなこの国では”マスク依存性”ということが問題となってもいます。素顔を隠して生きていくことに安心感を得る社会の存在。この作品では、そんな感覚に高校生の主人公の生き方を重ね合わせることで一つの問題提起がなされていたように感じました。

『私は本当はあんなふうに笑えるのだ。自然な笑顔を、そして心から嬉しそうな笑顔を、浮かべることができるのだ』と顔を上げる茜の姿を垣間見るこの作品。高校生の眩しい青春の輝きの中に、素顔に生きる人の美しさを見た、そんな作品でした。

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Posted by ブクログ 2020年12月18日

ズバズバものを言うさっぱりした男の子と本音をマスクの下に隠して生きる女の子のお話。

些細なことで傷ついて、自分が世界で1番不幸に思えてしまう10代の柔い心が優しく表現されていて、懐かしくてちょっと気恥しいような、あの頃の自分が救われるような、くすぐったい気持ちになりました。

純粋にまっすぐ、損得...続きを読む勘定なく人を想うことができる恋する気持ちも素敵だったなぁ。高校生の純愛眩しい!

そしてあらゆる言葉で様々な「空」が鮮やかに表現されていて、日本語って美しいな、世界って美しいな、そんな風に思いました。

汐見先生が描く世界はいつだって繊細で優しくて美しい。

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Posted by ブクログ 2023年05月16日

ピュアっピュアな、青春本。制服を着ていた時、茜と青磁みたいに、私の見える世界も色彩豊かで麗らかなものだった。世界は、紛れもなく私のものだった。

「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」

永遠ではないこの人生を、刹那的に楽しんでいこう。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年04月20日

深川青磁
人目を引く容姿をしている。中性的な印象。綺麗に整った顔立ち。すらりとさた細身で背が高い。ほとんど白といってもいい銀髪。かなり変わった性格をしていて、やることなすこと常識からかけ離れている。自由奔放な言動。中学の頃から絵画コンクールで受賞している。

丹羽茜
学級委員長。高校二年の三回目の席...続きを読む替えで世界で一番大嫌いな青磁の右隣になった。マスク依存症。

亮太
高校二年の三回目の席替えで青磁の前になった。

沙耶香
高校二年の三回目の席替えで茜の席の近くになった。

友里亜
ふわふわの髪に甘い笑顔の、誰が見ても可愛らしい女の子。文化祭のお姫様役。

玲奈
茜の妹。

健斗
文化祭の王子様役。

里美
美術部部長。三年生。

遠子
美術部。一年生。大人しくて可愛らしい女の子。

三田
美術部。二年生。いつもゲームをしている。

吉野
美術部。一年生。いつも漫画を描いている。

彼方
陸上部。棒高跳びの練習をしている。遠子と付き合ってる。

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Posted by ブクログ 2022年06月02日

茜が、青磁に影響されてどんどん変わっていき、いつしか青磁を好きになっていく、、
青磁が小さく時出会った茜に、言葉は厳しかったかもしれないけどメッセージを伝え続け、届いた、2人の不器用だけど温かいストーリーにほっこりしました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年04月20日

茜の不器用な生真面目さや気を遣い過ぎてしまうところにすごく共感できた。1度自分の本音を話して、それがもとで友達を失うと自分の本心を隠すようになってしまう気持ちはよく分かる。だから、最初は青磁の茜に対する態度はあまりにも酷いんじゃないか、いくら言っていることが芯を食っているとしても、あの言い方では内容...続きを読むよりも先に攻撃的な物言いが茜に届いてしまうではないかと憤った。けれど、途中で茜がこれ以上なく落ち込んでいるときに、それでも青磁がふてぶてしい物言いを直さず、なんなら「悲劇のヒロイン気取りか」と追い討ちをかけるようなことを言ったとき、私はむしろ青磁は優しいと感じた。青磁はずっと茜が本音を話せるように自分が本音を話していたのだと気付いたのだ。彼もまた不器用な人間なのだとそのとき初めて分かった。過去のトラウマからなかなか素直に本心を打ち明けられない2人だけれど、お互いがお互いの「夜明けにいちばん会いたい人」なのだと分かっている限り、この2人の未来は明るいと思った。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年02月01日

読みやすすぎて一気読みでした!
スラスラと読める、とても読みやすい本だったと思います!2人とも過去に辛いことや悲しいことがあって、それを乗り越えてきたのだと思いました。
青磁のはっきりとものを言えるところがとてもすごいと思ったし、とても強い男の子なのだろうなと思っていましたが、辛さを乗り越えたからこ...続きを読むその強さなのだと知りました。周りの環境で人は変わらないといけなくなってしまったり、本当の自分を押し殺さなくてはいけなくなることがあります。でも、本当の自分を好きになってくれる人はきっといるし、本当の自分でいることを許してくれる人もきっといるんだと思わせてくれるようなお話でした。
青磁の病気がもう二度と再発せずに、茜と青磁がずーっとずっと幸せでありますように!!!

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Posted by ブクログ 2022年01月10日

主人公に共感する方、沢山いると思います!
新型コロナウィルスが感染拡大している今、こんな本が読みたかった!って思いました。
今だからこそもっと共感できると思うし、だんだん主人公が変わっていくところに心を奪われていき、長めの本ですが次々と読み進められます。
本に慣れていない方にもぜひおすすめします!

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