伊岡瞬のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ達也・道子親子との出会いから、両親を失い、浅沼家に引き取られるも虐待まがいの扱いを受ける子供時代の第一部、弁護士となり達也の弁護を引き受けながら、達也を有罪にすべく奔走する第二部と、時間軸的には隔たりがあるが、心に受けた傷やトラウマは変わらずに残っていることを感じさせられた。ストーリーも、前半の「検察側の証人」のエピソードが後半に活きる設定で、先が読めない展開だった。達也の、救いようのない悪役感がよく伝わってきて、著者の書きたかったというキャラクターと合致していると感じた。淡々とした語り口で読み進めやすかったが、主人公・圭輔が誰にも心を開ききっておらず、素の心で何を考えているか伝わりきってこなかったので、葛藤する心の中を投影して描くパートなどがあってもよかったと感じた。
-
Posted by ブクログ
妊娠中パン屋さんのおかみさんが、ほとんど白骨化してみつかった。前後するように学生時代一緒にアメリカ留学に行った友達も、行方を絶った。後者の捜査を小野寺と宮下のコンビが任されるが、実家を調べても確証となりそうなものは何も出てこない。アメリカ留学中の写真を見つけただけだ。ただ実家の引出しに亡くなった娘の遺骨が残っていたので、自らの失踪ではなさそうだとは思う。
一方、後天性の読字障害だったが、アメリカ留学中に州知事候補の選挙応援をやり、その力で州知事が勝利させたという触れ込みで、TVのコメンテーターとして活躍している三条という男がいた。
週刊誌の記者が三条を追う。アメリカ留学中の話を三条に振るも、なんだかはっきりしない。どうやら短期留学中に女の子が行方不明になったために、翌年から短期留学自体が廃止になったことも知らなかったようだ。ただ、パン屋のおかみさんとその友人がアメリカで撮った写真には、三条は写り込んでいたから、アメリカにいたこと自体は確からしい。
記者も行方不明になる。三条をバックアップした女も、裸で死体になって転がされていた。果たして捜査の手は及ぶのか? -
Posted by ブクログ
倉沢はプロ野球のピッチャーだったが、相手チームのバッター西野真佐夫のオデコに当ててしまい、再起不能にしてしまった。倉沢も投げる球が甘くなってプロを辞めて、便利屋をやっている。
第1話 最近水曜日の夜に子供のサッカー観戦だとか野球観戦につきあわされる案件が立て続けにあった。毎回同じ男の子だが、彼は観戦よりはむしろ勉強がしたいようだ。
第2話 プロ野球選手の村越がやってきて、ある人物を空港まで送って、出国するのを見届けてほしいと。ところが帰国前に妹に会いたいと言い出した。
第3話 夫の一周忌も近いことだし、資料を整理する仕事が舞い込む。本を次々収納ケースに納めていく。なぜかその日はお客さんの家に泊まることも依頼のひとつだった。晩御飯をいただき寝る。
第4話 倉沢の見ていた西野真佐夫は幻だった。西野の妹の指摘で現実を直視してしまった倉沢は引きこもってしまう。そこに取引先の戸部がやってくる。 -
Posted by ブクログ
『教室に雨は降らない』
その不協和音を、希望の旋律へ。
------------
「一年経てば、ここを出ていく」
そんな冷めた決意を胸に、音大卒のエリート候補・森島巧が足を踏み入れたのは、小学校という名の「異界」だった。
1. 「腰掛け」の青年が、戦場で見つけたもの
音楽家の両親を持ち、自らもエリートの道を約束されていたはずの巧。
しかし彼には、音楽にすべてを捧げる勇気がなかった。逃げるように選んだ「臨時講師」という道。
チャイムと共に幕を開ける日常は、楽譜通りの平穏など微塵もない、剥き出しの戦場。
戸惑いながらも泥濘に足を踏み出す彼の姿は、どこか私たちの「不器用な日々」に重なります。
2. 教室に渦巻く、言葉なき「SOS」
モンスターペアレント、事なかれ主義の同僚、そして崩壊の兆しを見せる学級。
正論も綺麗事も通用しない現場で、巧の武器になったのは、彼が捨てようとした「音楽家の感性」でした。
子供たちの心の乱れを、目に見えない「不協和音」として察知する彼。
音を奏でるように対話を試みるその不器用な誠実さが、閉ざされた教室の空気を、鮮やかに塗り替えていきます。
3. 教育ドラマの皮を被った、峻烈なミステリー
物語は、一筋縄ではいかない謎へと踏み込んでいきます。
子供たちのSOSの裏側に潜んでいたのは、大人の身勝手な悪意と、あまりに冷酷な無関心。
巧が暴くのは、単なる犯人ではありません。
「正しさ」とは何かを自問自答し、傷ついた魂にどう寄り添うべきか。探偵役として葛藤する彼の姿に、胸が締め付けられます。
4. 読後、タイトルの意味が鮮やかに反転する
物語の終着点、巧が見つけたのは「自分にしかできない役割」という名の旋律でした。
読み終えたとき、空を覆っていた重い雲が去るように、タイトルの意味が胸の中で静かに、そして力強く反転します。
これは、迷える大人と傷ついた子供たちが、共に「新しい一歩」を刻むまでの再生の物語です。 -
Posted by ブクログ
前読んだ伊岡瞬さんの作品が、私にはずしっと重い話だったのでしばらくお休みしてました。半年ぐらい積まれたままになってたこの作品も躊躇してたけど、もうそろそろ読もうと思って手に取りました。
主人公の尾木は罪を犯し刑務所から出てきた元刑事。警備の仕事についてはいるが、アルコールに溺れながらの生活。そんな彼の元には3人の居候がいる。石渡、ジュンペイ、恭子の3人。この3人訳あり。尾木も訳あり。そんな4人だからなのか、和気あいあいと暮らしている。まるで家族みたいに。そしてまた新たな居候が。訳ありの早希だ。早希が転がり込んできた事によって事件に巻き込まれていく。
面白かったです。デビュー作ということで、そこまでずっしり重くなくてライトな感じで読めました。私にはドタバタ劇に思え、義理人情もあり最後はジーンとくるところも。ただ、もう尾木を痛めつけないでとは言いたい。そこはちょっとな、という感じです。
尾木家にいる人たちは何かから逃げている人ばかり。それは人だったり、目を逸らしたい事実だったりと。その何から逃げているのかをそれぞれ小出しに明かしていくから、私は気になってしょうがない。みんなどういう事情があるのか知りたくて、ページをどんどん捲っていました。
あとは頭脳戦が良かったですね。尾木vsヤクザvs刑事。この三つ巴戦に勝つために尾木が痛みに耐えながらも奮闘します。不利にならないように仕掛けていくのが良かったです。
また伊岡瞬さんの別の作品読んでいきたいです。
(あまり重くない話限定で)