伊岡瞬のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
犯罪小説は大抵分厚くて読むのに勇気がいる。けれど良作の場合1度読み出すとページを捲る手が止まらずスラスラと読み進めてしまう。本書もこんな感じ。
途中までは誰か真の黒幕なのか、真相は何なのかとハラハラしたけれども、どうやらどす黒い闇だけが描かれる作品では無いことに終盤になって気がついた。
解説には本書がとある映画のオマージュになっているのではないかという指摘がある。確かに本書は純粋な人間の闇模様だけでは無い、人の善性をも描き出そうという姿勢が自分にも感じられた。
そしてこの本の良かった点のひとつは、あくまで詐欺を題材に、上手い具合に登場人物たちの行動の起動装置を連続させることで善と悪の繋ぎ -
Posted by ブクログ
ネタバレラストについての考察だが、
浩樹は最終的に和泉夫妻を殺した(殺そうとした)ということだろうか?
まず、ラストシーンで友里が「鈴の音が聞こえた」と述べている点から考えると、
ラストシーンで友里が浩樹と出会った際に、友里は「鈴の音が聞こえた」と言っているため、浩樹の顔を見て、恐怖の対象でもあった「鈴の音」を思い起こしたということになる。つまり、その時の浩樹に、何かしらの残虐性や殺意を見出したのではないだろうか?
次に、
友里が浩樹に面談を行っている際も
浩樹は、
「雨が降ったせいで、面談する場所が、当初会う予定だった死角の多い公園ではなくなった。あなたは運がいい。」
「仮に例のイタズラで死人が -
Posted by ブクログ
ネタバレ絶望の最下層にいたと思いきや、更なる絶望へと突き落とされていく物語の展開。
2転3転とする「真相」に、脳が混乱し、疲弊していく様は、主人公の絶望とストレスを少しでも共有できたのではないかと感じさせられるほど強烈だった。
【以下ネタバレ】
家族とは、最愛と憎悪の綱渡りだと、作品を通して思った。
ほんの一言で憎悪に傾き、小さな仕草で最愛に傾く。揺れに揺れながらも、細い綱の上を歩いてゆく。
そしていつか、月日が流れ、思い出が積もり、今までの「揺れ」を踏まえて、どちらかに大きく体が傾く時がくる。
1度、「憎悪」側に落ちたら、かけられた言葉が最愛でも、皮肉だと感じてしまうだろう。最愛側に落ちた別の家族 -
Posted by ブクログ
題名の"仮面"を被った人間ばかり登場する話でした。誰しも仮面は被っていると思う。そう分かってるのだけど、この作品に登場する仮面を被った人間は、仮面を脱ぐと変な人間ばかり。読んでて、まともな人間は出てこないのか?もう嫌だ、と思ってしまうほど。たいていこういう変な人間ばかりだと私は読むのが苦になってしまう。読んでも読んでも先に進まないぐらい。
でもこの作品は面白かった。なんかあっという間に読めた感じ。苦手な暴力描写もあったりしたけど、そんなに気にならなかった。一番面白いと思ったのが、こういうサスペンスには珍しい胸キュンもあった。そういうギャップもあり、私はこの作品好きです。
この作品は何年か前に