あらすじ
大手製薬会社社員の藤井賢一は、不祥事の責任を取らされ、山形の系列会社に飛ばされる。鬱屈した日々を送る中、東京で娘と母と暮らす妻の倫子から届いたのは、一通の不可解なメール。“家の中でトラブルがありました”数時間後、倫子を傷害致死容疑で逮捕したと警察から知らせが入る。殺した相手は、本社の常務だった――。単身赴任中に一体何が? 絶望の果ての真相が胸に迫る、渾身の長編ミステリ。
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親が姉と同じ扱いをしてくれないという寂しさと憎しみ、姉の妹に対する優しさがかえって妹の憎悪を増大させる。
子供の頃に体験した傷は大人になっても癒すことが出来ない、自分も子供の頃に抱えた傷を持っているからこそ、この点に関しては寄り添いたくなる。
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主人公の藤井賢一は42歳の会社員。第1部の冒頭に描かれるいくつかの場面だけで、彼が満足のいく生活を送っていないことが分かると思う。東京の本社から、系列会社の営業職として飛ばされたのだ。賢一がこの状況を耐えているのは、本社在籍時の不祥事のため。出向は単身赴任で、妻からはあまり帰ってこなくてもいいと言われ、娘の香純にすら電話もしたくないから用がある時はメールにしろ、と言われる。そんな四面楚歌の賢一に、現在の会社の部下である若い女性に優しくされ、食事にも行ってしまう。そこに、妻から混乱しているようなメールが届く。ここから、本当の物語が始まる。
第二部に入るにつれてどんどん状況が変わっていき、ころころと転がされる読者。私もそのひとりだった。ネタバレになるのであまり詳しくは書けないが、なぜ妻が、、、?という動機を探っていたはずなのに、、、まさかの、、。という感じだ。
興味深いのは、『痣』などに出てくる真壁刑事が出てくるところ。真壁は妻を亡くしたと賢一にこぼしており、それが『痣』なのである。積読してあるので、すぐに読もうと思う。また、伊岡瞬の家庭崩壊三部作、四部作の一部目がこの『悪寒』らしい。そして、その次が『不審者』、『朽ちゆく庭』『陰りゆく午後』で、後半二作はこれから文庫化の予定があるそう。『不審者』も持っているので、次は『不審者』、そのあとは『痣』を読んで、伊岡瞬の手のひらで転がされてこようと思います。
この作品、集英社文庫のナツイチの作品ですが、たしかに名前の通り悪寒がして、少し寒気を感じる気もしなくはないですね。
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絶望の最下層にいたと思いきや、更なる絶望へと突き落とされていく物語の展開。
2転3転とする「真相」に、脳が混乱し、疲弊していく様は、主人公の絶望とストレスを少しでも共有できたのではないかと感じさせられるほど強烈だった。
【以下ネタバレ】
家族とは、最愛と憎悪の綱渡りだと、作品を通して思った。
ほんの一言で憎悪に傾き、小さな仕草で最愛に傾く。揺れに揺れながらも、細い綱の上を歩いてゆく。
そしていつか、月日が流れ、思い出が積もり、今までの「揺れ」を踏まえて、どちらかに大きく体が傾く時がくる。
1度、「憎悪」側に落ちたら、かけられた言葉が最愛でも、皮肉だと感じてしまうだろう。最愛側に落ちた別の家族をひたすら憎み、身を呈してでもハチャメチャにしたいと、思うようになるのだろう。
彼女…優子も、その憎悪側に落ちた1人なのだと思う。
祖母が、初めに南田を殴った、その1発を、優子は「汚い言葉が嫌いだったみたい」と評していたが、
それは紛れもない、祖母の優子に対する愛情からだったのではないだろうか。
大切な人が襲われている。何とかしてでも、守らなくては。そう思い、怪我した右手にも構わず、祖母は重い酒瓶を南田の頭に当てた。
これを、優しさや愛の類と言わずに、なんと言えばいいのだろう。
主人公夫婦や娘が前に進めて嬉しく思う。
それと同時に、優子が、人からの優しさを素直に受け入れ、少しでも幸せな人生をあゆめたらと切に願う。
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なかなか、最後の方まで、誰が犯人なのかわからなかった。人の増悪って、ここまで極端なことはないんだろうけど、妬みや嫉妬から、根強いものがあるんだろうと思う。
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「どんでん返しに次ぐどんでん返し」で、先の展開が読めず一気読みしてしまいました。
『悪寒』は、心理ミステリーとしての珠玉の構成、家族と信頼を巡る深いテーマ、そしてそのすべてを包む恐怖と驚きによって、読者の心に深く突き刺さる作品です。登場人物たちの心情の揺らぎに共鳴しつつ、一人一人の証言や行動を追うことで、自分の価値観までも問い直されるような読書体験が待っています。
「信じること」「家族の絆」「トラウマとの向き合い方」といった複雑なテーマに惹かれるなら、この作品は間違いなくおすすめです。
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殺人事件を起こした家族の心情ストーリー。といっても、温かい話ばかりではない。主人公の男性が「流れに身を任せる」だけの冴えないサラリーマンでイラっとしてしまう。
殺人事件の動機が、レアなものなので「新しい視点」を感じざるを得ない。
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「大切なものは失ってから気づく」というが、賢一はまさにこの典型だろう。出世が家族のためになると自分に言い聞かせて、実際は家族と向き合うことから目を逸らしていた。
この作品は問いかけてくる。「目先の利益の誘惑に負けて、本当に大切なものを見失ってはいないか」
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中年男の鈍感さは、それだけで犯罪
男と言うか女も愚か。
人間は本当に愚かな生き物だなと。
前半は主人公の会社での立ち位置や真面目さのお話。後半は妻が自分の上司を撲殺した…一体何が…
とストーリーは進みますが、真犯人は何となく読めました。
もらわれっ子症候群の真実には驚き。
真壁さんの過去気になりました!
『代償』めちゃくちゃ読みたい!
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最後まで一貫して思ったのは、
優子さんは本当に心の底から恨んでたのかな?ということ。
お姉さんへの甘えだっただけじゃないのか。
子供は親にどこまで許されるか試すことがあるという。それが甘えだと。
家族から愛されないと感じる優子は、倫子を憎みながらも、受け入れてくれることに甘えていたのではないか。
一方倫子も、自分だけが血が違うことから、家族として必要とされているということを、優子をかばうことで感じていたのかも。
優子は倫子が羨ましかった。
お金や権力になびくことのない実直な旦那がいて、無条件に愛されている。
本当に血のつながった家族を作っていく様子。
すごく幸せに見えたに違いない。
そんなお姉さんを羨み、憎みながら、その気持ちを昇華させられず、こういった事件に至った。
羨ましい、という気持ちは妬む気持ちと紙一重。
特に女性のその感情は怖いと感じた。
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いくつかの付箋がありつつ、色々な事実が判明していく。
そして犯人が2転3転し、最後はスッキリ。
本当に妻と娘の事が分かってない&人の事も理解出来ていない所にイラっとしました。
自分の事で精一杯何だろうな~って感じました。
最後は心が温かくなったので良かったです。
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「男は何もわかってない」これにつきる。
ところどころに伏線があり、
事件が進まんなあ〜と思っていたら最後に
大どんでん返しが起こる。
おそろしいが、家族のあたたかさも感じられる。
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最近久しぶりに読書にハマってて、ここ最近でいちばん読んでて気持ちよかった本。
推理小説の1番気持ちいい瞬間は、今までのもやもやが全部解決するときなのに、今回はそのもやもやが最初からずっとあって、途中までめちゃ気持ち悪かった。でもそれがスッキリした瞬間、ほんまにページを捲る手が止まらんかった。
この話は、賢一って言う1人の中年男性が主人公で、この賢一が女心も娘の心もわかってなさすぎて腹立つ(笑)「中年男の鈍感さは、それだけで犯罪だ。」って、ほんまにそー思う。なんか自分のお父さんみたいやった。
家族って温かいなあってめっちゃ思ったしそれを文学作品で、ミステリーで表現できるんは凄いなーて思った。ほんまに読んでて面白かった。
前に読んだ「いつか虹の向こうへ」となんか似てるなーって思ってたら、作者一緒やった笑この人の作品はなんかあったかいなあって思ったー泣きそうなりながら後半読んでた
なんか、めっちゃいい作品と巡り会えたなって感じ!後半のスピード感とか、これこそミステリー!て感じで伏線回収も気持ちよかったし読んでてほんまに楽しかった!絶対また読む!
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裏のまた裏をかいてくる。それでいて筋が通っている。ただ、だんだん誰が犯人でも驚きがない、言ってしまえば、裏をかかれることに慣れてしまう。この娘が嫌う父親の感じがリアルで解像度が高かった。娘の成長を認識できず常に上から目線であたかも自分が正解だと疑いもしない感じ。また、いわゆる、"もらわれっ子症候群"。これは誰もが感じることなのか、と自分の中だけにあった塊が広がった気がした。自分の考えを客観視するための読書でもあるのでものすごく良かった。読みやすかった。
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面白かった!
最後まで話が二転三転して、話に引き込まれた。
ただ賢一の態度がいつも優柔不断な感じで、「しっかりしろー」と言ってやりたい気持ちになった笑
姉をここまで憎む優子が狂っているように思うが、やはり母親の浮気や父親の優子に対する厳しい育て方等考えると優子も気の毒な気がした。
そういう意味では倫子も優子も被害者じゃないかな…
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中々の読み応えでした。
前半から『誰かやを庇ってる』コトには思いつきながら読み進める感じですが、この『庇う人』が誰なのかがとても深い話に加え『庇われた真犯人の動機』のエグさがタイトルに繋がります。
おすすめします。
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読み終わってから『悪寒』の意味がわかった。
優子視点と賢一視点で悪寒の種類が違うように思う。
犯人も殺した動機も真相も全部わかった気でいたけど全部違って混乱したw
賢一が優子にネタバラシする場面の賢一の静けさが良かった。
どこかで優子のこと救えへんかったんかなー。本当に昭和生まれの頑固ジジイは嫌やな。
家族って難しい。
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地方の子会社に左遷された主人公が、東京に残した妻の不可解なメールと警察からの連絡によって、妻が傷害致死で逮捕されたことを知る。被害者は主人公の左遷とも関係のある会社役員で、娘とも疎遠なまま、主人公は休職して事件の真相を追い始める。
序盤から中盤にかけては伏線が丁寧に張り巡らされ、物語終盤の4分の1で一気に加速。真実が明らかになるにつれ、家族間の断絶とすれ違いがもたらした悲劇が浮き彫りになる。
突然の事件に巻き込まれたとき、人は何を信じるべきか。家族なら、どれだけ分かり合えなくても「信じなければならない」というメッセージが込められている。
『痣』の真壁刑事が再登場し、彼の人間的な深みが増している点と、宮下刑事とのコンビ継続も読みどころの一つ。
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主人公の鈍感さは、なかなかのものだった。序盤の時点で「おそらくこの人物が犯人だろう」と目星はついていたものの、物語は次々と展開を変え、複雑に絡み合っていく。その巧妙な構成が、読んでいて非常に面白かった。一瞬たりとも気が抜けない。
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主人公の藤井賢一の気弱であるが、人を疑う事を知らない実直で優しい性格。
家族経営での会社の派閥争いに巻き込まれ、事実上左遷されてしまう。単身赴任している間に妻や娘との家族関係も悪くなり、本社の上司を妻が殺めたと自白した事件が起こるが、、、。
物語が何度となく変化し、解決するかと思いきや段々と複雑化し、読者の頭の中を完全に錯乱させてしまう技はすごいとしか言いようがない!
展開や結末に悪寒を感じ、だから悪寒なのか!
妙に納得させられた。
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真相は気になるしそれなりに面白かったけど、なんだかずっとモヤモヤイライラしてしまう物語だった。主人公があまりにも「冴えない普通の中年男性」で、内面にも全く魅力が感じられなかったからかな。彼が自身を省みて家族を取り戻す成長ストーリーでもあるようだから、本人に足りない部分が必要なのかもしれないけど。加えて脇役にも魅力的な登場人物が居なくて残念。
真相は二転三転して予想できなかったし、結末は温かくてなかなか良かった。
Posted by ブクログ
夫の上司を殺したのは妻なのか?話が進むにつれ真相は二転三転します。
そうなってからが面白かった。
前半は言っちゃ悪いけど賢一の愚鈍さにイライラ。重役にいいように従わされてるし、事件が起こってからも的外れなことばかり言ってるし。
犯人の気持ちの方が分かる。
『痣』の真壁刑事が出てきたのにはホっとしました。
Posted by ブクログ
2024/9/8
会社の不祥事で飛ばされた主人公。妻が自宅で本社の上司を殺した?
主人公が最低。自分の保身や気持ちばかりで娘を心配する気持ちもない。
思っていた結末と違ったけれど、上司以上に主人公に腹が立つ。